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2017年3月19日(日)

【電撃PS】高橋慶太氏のコラム『電撃ゲームとか通信。』全文掲載。質問の回答と『Wattam』について

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している高橋慶太氏のコラム『電撃ゲームとか通信。』。ゲームデザイナーとしての日常や、ゲーム開発にまつわるエピソードを毎号掲載しています。

『電撃ゲームとか通信。』
『電撃ゲームとか通信。』

高橋慶太氏PROFILE

 バンダイナムコゲームス(現BNE)時代に『塊魂』、『のびのびBOY』を制作。その後『Tenya Wanya Teens』を発表。現在は新作『Wattam』と、GoogleのARプロジェクト“Tango”向けに『WOORLD』を開発中。

 この記事では、電撃PS Vol.634(2017年3月9日発売号)のコラムを全文掲載!

『電撃ゲームとか通信。』

第八十八回:いただいたご質問にお答えいたします。&『Wattam』の開発は山あり谷ありです。

 どうも。数少ないゲーム業界の友人の1人が突然結婚したことを知ってちょっと驚いた高橋です。今回は、以前から密かに募集していた質問が3通ほど集まったようなのでそれの紹介から。

 まずはペンネーム“ひよこ”さん。

「Wattam作成の秘話、貴重なエピソードを知ることができて楽しかったです。顔を隠すことの考えもなるほどなーと思いました」

 これは質問というか感想ですね。今気づきました。基本的に人間の体のデザインというのは全て機能的であり且つ効率的にできていて、無駄なものはほぼ無いと思います(無駄毛とかはあるけど)。中でも、見るための目、嗅ぐための鼻、食べるための口、そして聞くための耳というスーパー重要な機能を持った要素の集合体である“顔”が、人間の部位の中でも上位を占めるイケメントップグループであることは合点がいきます。そして、グループという言葉通り“顔”というのは部位というよりも、優秀な人材が揃った光GENJIやSMAPと言った集合体/グループなのです。

 それぞれに違う機能/目的を持った集合体に対して、本来の機能とは違う美しいやら不細工やらというアイデンティティーを付け加えていることがとても興味深い。見て、匂いを嗅げて、音を聞けて、食べたり飲んだり話したりできれば全然十分なのに。そして、その回のコラムに書いたような顔をマスクで隠すこととFPSゲームの関係性など、トップアイドルグループ“顔”がいかに人間を根本のところから翻弄している事実も面白い。そういう意味でも人間部位総合ランキング上位を占めているのが“顔”なのです。生存のために必要ランキングになると“心臓”などの内臓系がランクインしてくるかな。自分的重要度ランキングでは“手”と“脳”あたりが同率首位かなあ。

 はい、次はペンネーム“春日の局”さん。

「トリコの開発現場に行けるなんてうらやましいです。高橋さんと上田さんはお友達なんですか?」

 あのゲーム業界のスターと自分を同等に扱わせてもらってよいかどうかわからないけど、仲良くさせてもらっています。とはいえ、お互いが住んでる場所が離れているので、テキストメッセージで時々やりとりしたり、GDCやE3で上田さんがアメリカに来た時にご飯を食べるくらいなんですけど、日本のゲーム業界では数少ない友人の中の1人です(ちなみに冒頭に書いた最近結婚したゲーム業界の友人というのは別の人)。当時のトリコの開発現場に行けたのは本当にラッキーでした。あのコラムでも書いたかもしれないけど、本当はトリコチームのブースに行くのはNGが出ていたらしいし。今は名前も変わってしまったので、当時のSCEJのグッズとかもらっておけばよかったなあ。次はgenDESIGNに訪問して新作のアイディアを聞いてきます。その時にはここで報告させてください。

 そして最後にペンネーム“花粉症は辛いよ”さん。

「WattamのTシャツはいつ発売になりますか?」

 そうですねえ。以前作った『Wattam』のTシャツはE3やPAXで無料で配るためのものだったので正直言うとそんな気合い入れてデザインしたものではありませんでした。で、販売前提デザインのTシャツとなると、『Wattam』の発売前後にリリースされるのではないでしょうか。わかんないけど。あと、何も音沙汰ないから誰も信じてくれないかもしれないかも知れませんが、まだまだ『Wattam』絶賛製作中です。このコラムを書きながら、あそこはどうしよう、こうしようかと頭を悩ませてる最中です。ゲームの終わり方や、どういう構成になるかは大体決まってるんだけど、各要素を綺麗で透明に近い不明瞭な線で結ぶ事がまだできてない状態なんですねえ。

 あともうちょっとで全て繋がりそう、と言うのは自分でも感じているし、もっと頭をひねれば出てくる気配もあるんだけど、開発初期から放置されたまま残っている幾つかの初期構想の取捨選択と実際/現在のゲームの辻褄合わせも同時にやっているので、全部が脳内で繋がるのに時間がかかってます。ざっくり言うと3年間くらい広げっぱなしにしていた風呂敷を今年に入って畳み始めてる感じです。ということで、今年のどこかで再度発表できると思います。興味がある人はお待ちください。

 そういえば『Wattam』Tシャツではないけど、海外ゲーム業界の友人であるBrandon Boyer(Venus Patrol)とのコラボによるVideogame Romantics Tシャツのシリーズ第3弾“Romantic’s Quest”が完成しました。振り返ると第1弾はバンクーバー、第2弾はサンフランシスコに引っ越してきてすぐつくったもの。そして今回のデザイン的ゴールは、アメリカ人の“顔”に合うもの、です。自分的にそれは何かというと太くてくっきりとしたデザイン。

 第2弾“Legend of Romantics”のような細い線で構成されたTシャツがいわゆる欧米顔(特に白人男性)にはどうやら合わないかもという事に気がついたのです。アジア顔はOKなんだけど、欧米顔だと彼らの“顔”の濃さが勝っちゃうんですよねえ。実際売り上げ的にも第1弾の方が売れてるし、あながち自分の穿った見方も間違ってない。という事で、今回は第1弾の時のような太さと第2弾の繊細さをうまくブレンドする、というデザインコンセプトのもと「いのちは闇の中のまたたく光だ」というご存知の通りナウシカの名言と、今のアメリカの排外的な感情などを1つにまとめあげた素晴らしいものとなっております。

 と、なんだかんだやっぱり“顔”に振り回されてます。興味ある人はVenus Patrolのサイトから購入できるので、宜しくお願いします。

(C) Keita Takahashi

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.634』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2017年3月9日
■定価:639円+税
 
■『電撃PlayStation Vol.634』の購入はこちら
Amazon.co.jp

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