2017年4月7日(金)
「僕が一番、『狼と香辛料』を愛しているんだ!!」
(巨大ロボットのパイロット風の声で)
――えっ? あ、はい。。。
コラボカフェは数あれど、『New Type新宿』のような、常軌を逸しているのではないかと疑ってしまうほど作品への愛を体現したコラボはあっただろうか。
本日は『狼と香辛料』のコラボカフェで大好評を博す、サブカルカフェ&BAR『New Type新宿』の渡部薫店長の話をお届けしたいと思う。見返りを求めない作品への異常な愛こそが成功への近道、その一端を紹介させて欲しい。
▲サブカルカフェ&BAR『New Type新宿』 |
都営新宿線『新宿三丁目駅』から徒歩10分。サブカルカフェ&BAR『New Type新宿』。飲み屋街【新宿ゴールデン街】の喧噪から少し離れたところにその店はあった。
現在は、電撃文庫発刊の『狼と香辛料』とのコラボイベント中で、店舗入り口では作品のヒロインである“賢狼ホロ”が出迎えてくれる。
この作品は、1巻発売から10周年を迎え、日本のみならず海外にも根強いファンが多い。シリーズの続刊である『狼と香辛料 Spring Log』、そして新シリーズ『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙』も好評発売中。10年を読者とともに歩み、そして新たな歴史を刻み始めている。
だからこそ、作品ファンがコラボイベントに期待するハードルも高い。生半可でお茶を濁したようなコラボでは、その期待にはまず応えられないだろう。
だが連日、店内は大勢の客で賑わいを見せている。『狼と香辛料』に出てくる言葉でいうところの“幸せと笑いがわきでる湯屋”そのものだろう。それはいったいなぜなのか?
さっそくだが、今回のコラボの仕掛け人である渡部店長に独占インタビューを敢行してみることにした。
▲サブカルカフェ&BAR『New Type新宿』渡部薫店長 |
ということで、冒頭の言葉に戻る。
なぜかア○ロ風の言葉で始まった店長へのインタビューだったが、実はこの方、声優からナレーションまでこなすマルチタレントなのだ。話し上手でイケメンボイス、料理も上手で、しかも独身!(店長これくらいでいいですか……)
――それにしても声優なのに、なんでBAR経営もされているんですか。
渡部店長:やっぱり僕の師匠の存在が大きいです。声優をされている柴田秀勝さん(青二プロダクション所属。『機動戦士ガンダム』デギン・ソド・ザビ役、『鋼の錬金術師』キング・ブラッドレイ役ほか)という、僕が最も尊敬している方なんですけども、新宿で50年上、飲み屋を経営されています。
渡部店長:この師匠は、アニメに3,000本以上出ている凄い方なんです。そんな柴田さんが、「俺が声優を続けられたのは店を持っていたからだ、だからお前たちも店を持て」というんです。
――「声優を続けたいなら店を持て」どういうことでしょうか。
渡部店長:店にはお客さんが来ますよね? たくさんの人と出会うことで、何より人と喋ることができる。普通の会社で、パソコンの前で仕事をしていても意味がない、声優なんだから声を出すことが大事だと。そんな師匠に「店でもやってみれば?」って言われたことがきっかけで始めたんです。
――人と喋る=声優としての成長、理にかなってますね。
渡部店長:だから営業中は、お客さんと壁を作らないでどんどん環の中に入っていきます。店のコンセプトがユーザーフレンドリーなので、いかにユーザーと一緒になって楽しむかを一番に考えています。
▲店内は『狼と香辛料』一色 |
――今回の『狼と香辛料』とのコラボイベントの手応えは。
渡部店長:そうですね、みなさんに満足してもらえている実感はあります。でもそれ以上に自分が楽しんでいますね。やっぱり自分がお金を払ってもいいなぁと思えるものでないと、やる意味がないと思うんです。
渡部店長:メニューへのこだわりとかお店の内装に力を入れるとか、どんなコラボであろうと自分が好きというところが第一なんじゃないかなと。特に今回の『狼と香辛料』とのコラボに関してはそういうところ、こだわってます。
――自分が楽しめる。つまりファン目線からコラボを組み立てるということですか。
渡部店長:そうですね、僕もいちファンとしてその辺はしっかり考えていますよ。作品が10周年ということもありますし、僕自身も著者の支倉凍砂先生のファンなので、この作品への思い入れは強いですね。
――経済という一風変わったテーマも魅力的ですよね。
渡部店長:主人公のロレンスが戦闘したりとか、大きな動きがあるわけではなく。そもそも、支倉先生の作品って、主人公は戦いとか苦手そうですしね(笑)。
渡部店長:でも、そういう部分を含めて、好きで私は読んでいました。作品に出てくる料理もとても美味しそうで、これを再現できたらいいなっていうのは思ってましたね。
▲店長オススメの羊肉のにんにく炒め/800円(税抜) |
――ホロたちが食べていた料理が、こうして目の前にあるって凄いことですよね!
渡部店長:僕も食べてみたかったので、はりきってメニューを作りました。ホロが切望してやまないあの『桃の蜂蜜漬け』もレギュラーメニューに組み込んでいますよ。
渡部店長:僕もそうでしたけど、桃っていうと白桃をイメージしますよね。でも、中世ヨーロッパでは中国から黄桃が渡ってきたばっかりのはず。だから黄桃を使うのが、いやむしろ使わなければいけないという使命感で、仕入れました。
――レシピはどうしたんですか?
渡部店長:作品に書いてあるものを忠実に再現していますよ。まあ、話を聞いてびっくりしたんですが、支倉先生も想像で書いていたんだとか。それをこうやって、ちゃんと再現してくれて嬉しいと喜んでいただきました。
――ジビエ系の料理も充実してますよね。
渡部店長:こちらも、もちろんこだわりました。中世ヨーロッパで、流通していた食肉はなにか……。食肉に関しては鹿とかウサギとかが主流だったんではないかと。ですので、森や野原にいる野生動物を狩猟して食べていたんじゃないのかなと。
――肉の仕入れには猟師と交渉したとうかがいましたが。
渡部店長:そうなんです。お客様の中に、狩猟免許を持っている方がいて、紹介してもらって仕入れています。今回ですと干し鹿肉がそうです。
渡部店長:シチューに入っているウサギ肉は、スペイン産。以前提供した週替わりメニューの『雨に追いつかれ飛び込んだ教会での食事』のジャガイモに乗っているヤギのチーズは、ギリシャ産のものを仕入れています。ニシンの塩漬けは、オランダ王室御用達のものです。
――これはコラボメニューを食べに来るだけでも、その価値がありますね。
渡部店長:絶対に来て損をしないメニューであるという自信はありますよ。シチューに使ってるウサギ肉自体、食べるのは初めての人も多いですしね。価格も大分勉強させてもらってます。
渡部店長:嬉しかったのが、店に置いてある『交流ノート』にも作品は知らないけど、料理が美味しそうなので食べに来たと書いてくれた方がいた事です。
▲店内に設置されているファン交流ノート |
――こんな安くて大丈夫ですか?
渡部店長:大丈夫だ、問題は……あるんですが、そこはある程度採算に目をつむっています(笑)。
――店長オススメのメニューは?
渡部店長:そうですね、今回一番のオススメは羊肉。これ、本当においしいんですよ。甘い脂が口いっぱいに広がって。お陰様で、もうすでに70kg分も出た、大人気メニューです。正直、こっちも驚いていてます。
――なるほど、こんなに注文が来るとはってことですね。
渡部店長:そっちではなくてこんなに『おいしい!』とはということです。最初は、どこにでもあるラムチョップぐらいの認識で仕入れてみたら、嬉しい大誤算でした。肉厚で、油もすごいのっていて、今まで僕が食べた中でも一番おいしいと太鼓判を押して提供しております。
――実際に食べられてのお客さんの反応とかは。
渡部店長:皆さんにはおいしいと言っていただいてます。まぁ直接聞いているので、全てが本当かどうかはわかりませんけども(笑)。しょっぱいと言う意見があったりすると、こちらでもその意見を受けて味の調整を行ったりしてます。
――徐々に料理もパワーアップしてるんですね。
渡部店長:そうですね反応をみながら、後は時間が経ったものをあえて食べてみたりして、改良を加えながら日々味も進化していますよ。
心を尽くした『コラボメニュー』。お客様を第一に自分も楽しむという、店長が掲げるユーザーフレンドリーという姿勢を、今回のコラボに強く感じることができた。何度でも訪れたくなるという、リピーターの気持ちも納得できる。
ということで、第一話「ニョッヒラ新宿に建つ!!」をお届けさせていただきました。さらに、店長が今回の『狼と香辛料』コラボにかけた秘策を紹介する、第二話「コラボの常識破壊命令」に続く!
湯屋『狼と香辛料亭』NewType新宿出張所
開催期間:3月4日(土)~4月16日(日)
(C)KADOKAWA CORPORATION 2017
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