News

2017年5月17日(水)

戦略のぶつかり合いを突き詰めた『グウェント』の魅力に迫るプレイレポート&コアスタッフインタビュー!

文:電撃オンライン

 CD PROJEKT REDが、近日配信するPS4/Xbox One/PC用オンラインカードゲーム『グウェント ウィッチャーカードゲーム』。本作をいち早くプレイしたレポートと開発者インタビューを掲載する。

『グウェント ウィッチャーカードゲーム』

 『ウィッチャー3 ワイルドハント』といえば、日本でも大きな人気を獲得したオープンワールドRPG。その名作を手がけたCD PROJEKT REDが満を持してリリースするのが、今回紹介するPS4&日本語版オンラインカードゲーム『グウェント』だ。

 1マッチ3ラウンド制、カードにコストの概念がないなど独自のコンセプトで展開される本作の魅力はどこにあるのか? 今回はそれを伝えるべく、プレイレポートの様子をレポートしていこう。

 また、記事の後半では、本作のディレクターを務めるJakub Kowalski氏と、ジャパン・カントリー・マネージャーとして『ウィッチャー3』本編に引き続き日本語版ローカライズを担当する本間覚氏両名へのインタビューも掲載。こちらも必見だ。なお、インタビュー中は敬称略。

そもそも『グウェント』ってナニ? 『ウィッチャー』シリーズとの関係は!?

『グウェント ウィッチャーカードゲーム』

 『グウェント』という名のカードゲームは、もともと『ウィッチャー3』で楽しめるミニゲーム的なコンテンツのひとつ。『ウィッチャー』の世界では一般的に遊ばれている娯楽の1つであり、酒場などでよくプレイされているという設定だ。現実世界に置き換えれば、トランプのようなものといえるだろう。

 『ウィッチャー3』自体は1人プレイ専用のRPGなので、グウェントも当然対戦相手はCPUのみ。だが、カード収集やデッキ構築の楽しさ、ほかのカードゲームとは一味違うシステムなどでコアな人気を獲得し、グウェント専用のファンサイトまでできるほどの盛り上がりを見せた。

 『グウェント ウィッチャーカード』は、このグウェントを基本無料の単体の作品として遊べるようにした、ある種のスピンオフ作品だ。『ウィッチャー3』のグウェントの根幹はそのままに、対戦ツールとして改良を加えた、デジタルカードゲームとして生まれ変わっている。グウェントのもっとも基本的なシステム以外はほとんど新たに作っている。アートワークなども一新するというこだわりようで、今後は1人で楽しめるシングルキャンペーンなどの要素にも力を入れていくとのこと。

『グウェント ウィッチャーカードゲーム』

 カードには『ウィッチャー』シリーズに登場した人物や怪物などが描かれている。ゲームだけでなく原作小説や日本未発売のコミックなどからも登場するとのこと。また、絵柄が動く特別仕様のカードも存在する。

グウェント独自の要素とは? その魅力に迫る

 『グウェント』がほかのカードゲームと異なるところは、簡単にいうと次の3つ。

【1】1マッチ3ラウンドで行われる。先に2勝したプレイヤーが勝利
【2】カードのコストやプレイヤーの体力といった概念がなく、勝敗は場に出たカードの総ポイントで判断される
【3】毎ターン必ず1枚カードを出さなければならず、パスを選択するとそのラウンドは以後カードを出せない

 この3つの要素が、ゲームにどのような駆け引きを生み出すのか、順番に見ていこう。

 なお、記事の内容や画面写真は開発中のバージョンに基づいたものであり、今後変更の可能性がある。

1マッチ3ラウンドで行われる。先に2勝したプレイヤーが勝利

『グウェント ウィッチャーカードゲーム』

 多くのカードゲームと異なり、グウェントでは各ターンの始めにカードを引くというプロセスがない。つまり、基本的には“最初に配られた手札+2ラウンド目以降、ラウンド開始時に引く少量のカード+何らかの要素で引いたカード”のみで最大3ラウンドを戦い抜かなければならない。つまり、ラウンドごとにカードを出す配分を考える必要があるのだ。

 勝敗は2ラウンド先取で決まる。例えば、すべての手札を使えば最初のラウンドは勝てるだろう。しかし、続く2、3ラウンドで相手が余力を残していたなら、こちらは出せるカードが少なくなって負けてしまう。3ラウンドのうち自分が勝てるラウンドを2つをいかにして作り出すかが、本作の基本的な駆け引きといってもいい。逆にいえば、1ラウンドは意図的に負けられるということだ。

 だが、自分の“負けラウンド”であっても、1枚もカードを出さなければ、相手は弱いカードを1枚出すだけで簡単に勝利を得てしまう。それはおいしくない。なので、“負けラウンド”ですべきことは、いかに自分の出すカードを少なく、それでいて相手に出させるカードを多くさせるかを考えること。

 次のラウンドで自分の手札が5枚、相手の手札が3枚であれば、そのラウンドを勝てる確率は高くなる。手札=余力が多いほうが有利、というカードゲームの原則は本作にも当てはまることを覚えておこう。

カードのコストやプレイヤーの体力といった概念がなく、勝敗は場に出たカードの総ポイントで判断される

『グウェント ウィッチャーカードゲーム』

 本作にはカードにコストの概念がなく、どんなカードでも無条件で場に出すことができる。各カードには数字が描かれており、これがそのカードのポイント(強さ)を表す。場に出たカードのポイントの合計が、最終的に相手の総ポイントより多ければ、そのラウンドを勝利できるという仕組みだ。

 「じゃあ単純に数字の大きいカードをたくさんデッキに入れればいいんじゃない?」と思うかもしれないが、各カードには多彩な能力が設定されており、相手の数字を下げるものや、味方の数字を上げるもの、デッキから別のカードを直接場に出せるものなど、効果はさまざま。こういったカード同士の影響を考えてデッキを組み立てるのも、ほかのカードゲーム同様に楽しい部分である。

 なお、カードを出す場は“近接”、“間接”、“攻城”の3種類あり、カードごとに記載された列に出すことになる(どの列にも出せるカードもある)。特殊効果を発揮するスペシャルカードの中にはいずれかの列に置かれたカードの数字をすべて1にする効果のものもあるため、それをめぐる攻防も白熱する要素の1つだ。

『グウェント ウィッチャーカードゲーム』

 カードにはデッキに入っているものとは別に、1枚だけ選択できる“リーダーカード”というものがある。ゲーム中に1度しか使えないが、どれも盤面に大きな影響力を及ぼす切り札的な効果を持つ。相手がどのリーダーカードを持っているかはゲーム中に確認できるので、それを考慮して戦術を組み立てたい。

 1つ前で“手札が多いほうが有利”という原則について触れたが、カードの能力の使い方しだいでは、少ない枚数で戦況をひっくり返すことも可能だ。“有利であることは確かだが、最後まで油断はできない”というのがグウェントにおいての基本。試合が終わるその瞬間まで、緊張感のある駆け引きを楽しめる。

毎ターン必ず1枚カードを出さなければならず、パスを選択するとそのラウンドは以後カードを出せない

『グウェント ウィッチャーカードゲーム』

 カードにコストがないということは、無制限に強いカードを出せるかというと、そうでもない。グウェントではプレイヤーが各ターンに出すカードは1枚と決まっている。この“出す”というのがキモで、必ず何か1枚は場に出す必要がある。カードを出したくないなら、“パス”するしかない。しかし、パスは“このラウンドでは私はもうカードを出しません”と宣言するのと同じ。つまり、その気になれば相手は2枚、3枚と続けてカードを出すことができるというワケだ。

 例えば、自分のポイントが20、相手が10で自分がリードしていたとする。これだけ差が付けば勝利は間違いなしと思ってパスを選択すると、相手は5と6のカードを続けざまに出し、20対21で負けてしまう、という展開もあり得るということ。

 ただ、これは必ずしも損な状況というわけでもない。“相手に2枚のカードを使わせた”というのは、次のラウンドでは自分が有利を得られることにもつながるからだ。“枚数が多いほうが有利”という原則を思い出してみてほしい。1つめでも述べたが、パスを選択する際は、相手の手札をなるべく多く削げる展開にするのが望ましい。

 カードを出すべきか残すべきか、相手の手札や場の状況を考えて判断する……そんなプレイヤー同士の駆け引きが、『グウェント』の醍醐味と言っていいだろう。

『ウィッチャー3』からグウェントはどうパワーアップしたの?

 さて、ここでは『ウィッチャー3』のグウェントを遊んだことがある人向けの、ちょっとマイナーなお話。グウェントがミニゲームのひとつから『グウェント ウィッチャーカード』という単体の作品になることで変更された点などを少しピックアップしていこう。

 まず、冒頭でも述べたように、基本の根幹部分は変わりない。ただし手札の補充についてのルールが変わっている。例えば、マリガン(カードの引きなおし)できる枚数が、2枚から3枚に増加。加えて、2ラウンド目開始時にデッキから2枚、3ラウンド開始時にデッキから1枚引くことができるようになった。これにより、ゲーム後半の戦略の幅が広がるだけでなく、わずかなランダム性も加わり、ゲームがより緊張感あふれるものとなっている。

『グウェント ウィッチャーカードゲーム』

 そして、『ウィッチャー3』のグウェントで猛威を振るっていた密偵カード。これは、使用したカードが相手の場に置かれるというデメリットを持つものの、デッキからカードを引けるという強力な効果を持つものだった。だが本作では、相手の手札を盗み見るなど多様な能力が発動するような形式に変更され、密偵によってデッキをガンガン回すことはできなくなっている。また、同じ列に配置されているカードのポイントを倍にする角笛も、より効果がマイルドに。選択した数枚のカードのポイントを上昇させるようになった。

 こういった変更により、強力すぎる効果を持つカードが改良され、よりデッキ構築の幅が広がった。対戦ツールとして、より完成度が高まったと思っていいだろう。

 実際に遊んでみて、確実に『ウィッチャー3』の『グウェント』よりもおもしろく、白熱したものになっていると感じた。『ウィッチャー』シリーズのファンはもちろん、少し変わったルールのカードゲームを遊んでみたい人は、ぜひ本日公開された公式サイトをチェックしてみてほしい。

ディレクター・Jakub Kowalski氏&ローカライズ・本間覚氏にインタビュー! 『グウェント ウィッチャーカードゲーム』に込めた、CD PROJEKT REDの新たな挑戦

『グウェント ウィッチャーカードゲーム』

――まず、『ウィッチャー』内のミニゲームの1つだった『グウェント』がどのような経緯で単体の作品として発売されるにいたったのか、あらためてお聞かせください。

Jakub:『ウィッチャー』の世界に入った時、例えば皆が酒場で集まって遊んでいるような、共通のテーマを持った作品を作りたかったんです。年齢や性別、人種や立場などは関係なく、共通して話せるテーマとしてのゲームですね。例えるなら、現実世界で居酒屋で野球の話に花を咲かせるような感じです。仮に野球に詳しくなかったとしても、今日はどのチームが勝ったとか最低限のインタラクションができるでしょう?

――多彩なカードゲームがあるなかで、本作ならではの特徴と魅力というのは何でしょうか?

Jakub:4つありまして、1つは3ラウンド制で、1回のみで勝負が決まらないという点。2つ目が、カードにコストという概念がない点。3つ目は、クラシカルなカードゲームだと、リソースがある限りは1ターンのうちに何枚もカードを出せますが、本作では1ターンに出せるのは1枚のみという点。4つ目は、カードを出さずにターンを終えるという選択肢がない点。出さないとそのラウンドをパスしたのと同じ扱いになるので、必ず1枚何かを出さなければいけません。

 この4つの要素がゲームをより戦略的にしていると思います。もちろん多少ランダム性は残っていますが、本作においては、本当に頭の回転が早い人が勝利をつかむケースが多いのではないでしょうか。

本間:昨今はやりの、よりシンプルにという流れに比べるとハードコアだと思うんですが、そこがある意味で明確な差別化になっているかなと思います。あくまでも自分のイメージですが、ひとまず『ウィッチャー』のファンや、ファンタジーが好きな方、あるいはすでにカードゲームをプレイしているんだけど、コストの概念がある一般的なものとはちょっと違うものをやりたいという人には引っかかるものになっているのではと思いますね。

 個人的にはそこをプロモーションで推していきたいんですよ。バリバリハードコアでピンポイントなタイトルかなと思っているので。正直、絵柄も大人向けで、大衆向けじゃない側面もあります。なので、そこは明確に区切ったうえで、コアな人たちに遊んでもらいたいと思っています。

――ゲームプレイにおいて、『ウィッチャー3』内のグウェントから変わった部分、変わらなかった部分があると思いますが、単体の作品として作り直した際に、最も手を入れた部分というのはどこでしょうか?

Jakub:もともとシングルプレイ用のミニゲームだったものを、マルチプレイ用のゲームとして作り直さなければならなかったことが、もっとも難しかった点ですね。まず『ウィッチャー3』のグウェントを、そのままマルチプレイで遊べるプロトタイプを作ったのですが、最終的にみんな密偵を使ったデッキや、強いヒーローカードを多用したデッキに行き着いてしまい、デッキにバラエティが生まれなかったんです。やはりミニゲームを単純にマルチプレイできるようにしただけでは、魅力的な対戦ゲームにはできないなという認識にいたりました。

 友だちとちょっと遊ぶくらいであればよかったんですが、我々が作りたかったのは、競技性の高いゲームでしたので。そのためには、いろいろと手を加える必要があったんです。それゆえ、各デッキタイプ(勢力)ごとに特色を持たせなければいけませんでしたし、例えば1枚のカードを場に出した時に、それが他のカードにも連動して更なる効果を引き起こしたりだとか、そういったカードの多様性を追加しなければいけませんでした。いろいろとゲームの内容を変更しなければなりませんでしたが、グウェントの根幹の部分は変えてはいけないとも思っています。

 グウェントの基本とは何かというと、まずは3ラウンド制のシステムであるということ。2本先取で勝ちとなるので、1回はわざと負けられるという仕組みは残したかった。それと、カードがすべてだというシステム。カードを場に出す際に必要となるコストや、プレイヤー自身の体力という概念はグウェントにはありません。ガードだけがそのゲームの勝敗を決めるという仕組みも、変えたくなかったんですよ。

 とはいえ、細かい調整は必要でした。やはり最初の10枚だけで3ラウンドを戦うのは厳しいので、第2ラウンドの開始時に2枚、第3ラウンドの開始時に1枚が引けるようになっています。少しでも戦術のバリエーションを持たせるための変更点ですね。そういった変更を加えたものを世界のユーザーにテストプレイしてもらったわけですが、幸いそういったコミュニティからも「ちゃんとグウェントだ」という認識をしてもらえているようで、安心しています。オリジナルのグウェントの雰囲気を保ったうえで、競技性の高いゲームを実現できたと思っています。

――海外でのテストプレイがきっかけとなり調整したものや、フィードバックの意見で取り入れたものなどはありますか?

Jakub:タル(カードパック)を開けた際に、3枚から1枚好きなものを選んでピックすることができるんですが、もともとは、そのカードを何枚持っているかがわからなかった。選びたいんだけど、「これ持っていたかな?」と悩むことが多々あるという報告を受けたので、そこはユーザーからの指摘をきっかけに改善しました。

 もうひとつが、“角笛”というカードがありまして、これは『ウィッチャー3』では一列すべてのカードの数字を倍にするという効果でした。この効果はマルチプレイ環境ではかなり強力なカードで、誰もがデッキに入れるようなカードとなってしまったんです。実際、プレイヤーのデッキデータを集めてみると、ほぼすべてのユーザーがデッキに入れているほどでした。ユーザーからデッキの多様性を失わせているのではという指摘もあり、この効果も調整しています。

――本作は基本的に対戦することを前提とした調整を施されているということですね。

Jakub:そうですね。腕を競うランクマッチもあります。もちろん、カジュアルモードもありますし、チュートリアルも充実させています。今後はソロプレイを楽しめるキャンペーンモードにも力を入れていく予定です。

――カードの絵柄や能力を一新しているとのことですが、モチーフとしては『3』だけでなく、過去作のキャラクターなどからも取り入れているのですか?

Jakub:そうですね。『ウィッチャー3』だけでなく、『ウィッチャー』の世界すべてに基づいているので、小説はもちろんゲーム、コミックブックにしか出てこないキャラクターなども登場します。また、『ウィッチャー』世界で神話として語り継がれるもの……例えばスケリッジの言い伝えで、世界の終わりを意味する“ラグ・ナ・ログ”という言葉が『ウィッチャー3』でも出ていたと思いますが、それをモチーフにしたカードがあったり、そういうゲームのなかの知識や神話に基づいたカードも登場します。

 牛を出して、それが死ぬとチョルトという強力なユニットになる(※)のですが、いわゆるメタなネタというか……ゲームの世界観とは直接関係ないものもあります。『ウィッチャー3』のプレイヤーだとニヤリとするモチーフですね。そういうネタ的なカードも入れていきたいと思っています。

『ウィッチャー3』で、村の牛を殺して金策する方法が流行した際、牛を多く殺すとチョルトという怪物が現れてゲラルトに襲い掛かる、という要素がアップデートで追加。本作の“受賞牛”はその出来事をモチーフにしたカード。

『グウェント ウィッチャーカードゲーム』

――そういったシリーズ経験者だからこそ楽しめる要素というのを、シリーズをプレイしたことがない人に向けて簡単に紹介するようなサポート的なシステムはあったりしますか?

Jakub:チョルトの例は極端なものなのですが、大前提として本作は『ウィッチャー』の世界を知らなくても楽しめるようにはしています。この世界を知らないからといって路頭に迷うようなことはないでしょう。

 逆に、今後実装されるシングルキャンペーンなどで手に入ったカードは、シングルプレイでのプレイヤーの体験がカードへの愛着につながっていくと思いますし、『ウィッチャー』の世界を知らないと楽しめない、というようには作っていませんのでご安心ください。初めから実装されているカードについては、原作を知っているほうが愛着が沸きやすいかもしれませんが。

――シングルキャンペーンというと、NPCとカードで戦って物語を進めるような形なのでしょうか?

Jakub:普通のオープンワールドゲームのように、自由に移動して探索して、という感じで進みます。『ウィッチャー3』とは異なり、上からの見下ろし視点ですけどね。

――カードゲームのシングルプレイでそのようなタイプは珍しいと思うのですが、その形式に至ったのはなぜでしょうか?

Jakub:我々、CD PROJEKT REDという会社は、物語をユーザーに提供することについて高い評価を得ている、ということで、まずストーリーは絶対に入れようということになりました。入れるからには、ただ一本道で話を追うだけのものには絶対にしたくないですから、『ウィッチャー』シリーズで認められてきた“プレイヤー自身の選択と、その結果”をゲームに反映させるという試みは今回も入れたいと思ったんです。

 確かに、ここまで作りこまれたシングルコンテンツを持つデジタルカードゲームは数少ないと思いますが、そこは我々のスタジオの特色をうまく生かせたところなのではと考えています。

――ちなみに、シングルキャンペーンでしか入手できないカードなどもあるのでしょうか?

Jakub:シングルキャンペーンを通じて入手できるカードというのはあります。ですがシングルキャンペーンはある種独立したコンテンツとなっており、デッキは最初から用意されたものを強化しながら戦っていくものになります。普段マルチプレイで使っているデッキを持ち込めるわけではありません。

 なぜかというと、我々はシングルプレイはあくまでも物語を提供する場だと考えているからです。このデッキを組まないと倒せない、というように試行錯誤してデッキを作るというよりは、ベースとなるデッキがあって、スムーズに物語を楽しめるような作りをしています。とはいえ、その過程で手に入れたカードのいくつかはマルチプレイで使えるようになるので、マルチプレイとまったく接点がないというわけでもないですね。

――シングルキャンペーンはゲラルト視点で描かれるのですか? それとも各勢力ごとに用意されていたりするのでしょうか?

Jakub:本作のシナリオを書いているのは、『ウィッチャー3』のシナリオを担当したチームなのですが、彼らの命題として挙げられているのは“未だ語られていない物語を描く”ということです。ですので、ゲラルトではなく、他のキャラクターを中心としたものを考えています。

 既存のキャラクターも出てくることはあると思いますが、あくまでも主役は新しいキャラクターたちとなるでしょう。今までまったく出たことのないキャラクターなどではなく、小説のキャラクターだったりする可能性もありますが、過去作に出てこなかったキャラクターで新しい物語を紡ぐ方向で進めています。

――『ウィッチャー3』同様、デッキタイプ(勢力)ごとに使用できるカードが異なるようですが、各デッキタイプの特徴を簡単に教えてください

Jakub:まず“北方諸国”ですが、味方のユニットを強化できるのが特徴です。“モンスター”は、他のユニットを破壊したり、共食いしたりしてカードを強化することに重点が置かれたデッキになっています。“スケリッジ”は、祖先の霊に力を借りるという、ネクロマンサーやシャーマン的な思想が強い部族ですので、一度倒れても復活してくるなど、墓地のカードをうまく使うデッキとなっています。

 “ニルフガード”は密偵が特徴ですね。相手のカードを公開して手を読みながら戦っていくスタイルです。“スコイア=テル”はステルスプレイというか、全勢力で唯一、伏せた状態で出せるカードがあります。例えば、敵がカードを出したら罠が発動してそのカードの数を減らし、さらに自分の場に別カードを置く……というものがあり、ゲリラ戦法を得意としていますね。

――スコイア=テルのカードが裏面から表面になる条件というのは、カードの種類によって異なるのでしょうか?

Jakub:はい。例えば同じ列にユニットが出てきたときとか、3ターン経過したらとか、カードによって違います。相手からは公開されるまでカードの正体はわかりません。表になって初めてポイントなども加算されます。例えばラウンド終了時に表になるカードなどもあるので、最後までポイントが読みにくいのが特徴ですね。

――ゴウンター・オーディム(『ウィッチャー3』に登場したキャラクター)なども、いずれかの勢力に組み込まれているんでしょうか?

Jakub:オーディムはモンスターです。彼は、試合中にプレイヤーにちょっとした“ゲーム”をプレイさせるという、とてもユニークな能力を有しています。各勢力とは別に“ニュートラル”というくくりもあって、ゲラルトやシリなどが該当します。どの勢力にも入れられるユニットですね。本作のデッキ制作は、ニュートラルといずれかの勢力のカードを組み合わせてデッキを作っていくという考え方になっています。

――今後デッキタイプの追加などの予定はあるのでしょうか?

Jakub:カードの追加はもちろん定期的に行う予定です。『ウィッチャー』の世界は広大で、勢力もたくさんあるので、デッキタイプを追加することも可能なんですが、今はどちらかというと機能やカードの追加を集中してやっていく予定ですね。

――ちなみに、どの程度の間隔で拡張を入れていく予定でしょうか?

Jakub:すべてが大規模エキスパンションというわけにはいきませんが、最低でも3カ月おきには何らかの追加コンテンツを用意したいと思っています。カードだけでなく、例えば追加ゲームモードなどの可能性もありますけどね。

 重要なのは、定期的に更新を行うことだと考えています。例えば、1カ月間なにも変更を行わないと、カードのメタ(戦術)というものが固まってしまい、プレイヤーが同じデッキを使い続けてしまうようになるでしょうし。それを避けるために、それを揺さぶるような変更だとか、新しいカードだとかを、少なくとも1カ月に1回くらいは出していかないと、ユーザーが飽きてしまうのではと思いますね。

――ランクマッチでは、シーズンのような、一定期間の区切りでのランキングを運営していく形なのでしょうか?

Jakub:はい。シーズンの間隔としては、これまでやってきたテストを顧みると2カ月がいいんじゃないかと思っていますが、まだ検討段階ですね。

――例えば1週間くらいの短い期間で、オンライン大会などを企画したりする予定はありますか?

Jakub:ゲームの中に、いわゆるオンライントーナメント運営システムのようなものを入れたいと考えているのですが、まだ具体的な実装の目処は立っていません。もともと『グウェント』は『ウィッチャー』世界では、各町ごとにトーナメントが運営されているような身近なもの、ということで、似たような感じでユーザーが独自でトーナメントなどを運営できるといいなと思っています。

――観戦モードのようなものは実装されているのでしょうか?

Jakub:海外で“グウェントチャレンジャー”というe-sportsの大会が行われる予定で、今それ用に観戦機能がついた特別なクライアントを開発中です。e-sportsで観戦機能がないとユーザーが非常に見にくくなってしまうので、それが終わったあとで、そこで得た情報をベースにゲーム実装用に調整したものを用意するつもりです。

――ゲーム画面で“カード職人”など、プレイヤー名の近くにユニークな称号のようなものが表示されていましたが、プレイを進めたり、特殊な条件を満たすことで取得できるのでしょうか?

Jakub:現在クローズドベータ中なのですが、その終了時にその時点のランクに応じた称号のようなものを与える予定で、とくに上位プレイヤーには特別なものを用意する予定です。ランクでどれだけ実績を残したかというのがわかるようになるでしょう。そういったリワードのひとつとしてユーザーに提供していくものになります。

 将来的には、ゲームの中で達成した実績に応じてアンロックされるようなものも追加していく予定です。ユーザーが自分で使いたいタイトルを選べるようにもしていくので、ぜひお気に入りのものを見つけてもらえればと思います。

――“分解”や“生成”という表示があったのですが、これは余ったカードを素材にして別のカードにできるということでしょうか?

Jakub:“紙片”という貨幣のようなものがありまして、いらないカードを分解して、集めた紙片で欲しいカードを生成する仕組みを導入しています。生成するカードのレアリティによって必要な紙片の数は異なりますが、すべてのカードをこの方法で手に入れることが可能ですよ。

――カードパックを販売しているトロールのグラフィックが、『ウィッチャー3』に比べてトゥーンレンダリングのようなビジュアルになっていたと思うんですが、キャンペーンモードもこのようなテイストのグラフィックで作られているのでしょうか?

Jakub:基本的にはそうですね。『ウィッチャー3』のオープニングで、同じようなトゥーンレンダリングのムービーがあったと思うんですが、同じような方向性で作っています。カードアートはまた別の方法で作っていますけどね。

――ちなみに、ショップのトロールには名前はあるんでしょうか?

Jakub:シュープといいます。ショップをちょっと文字って付けられています。待機中とかにしょうもないギャグを連発したり、歌を歌ったりするんですが、ちょっとうるさいのでもう少し静かに(しゃべる間隔を長めに)してもらう予定です(笑)。

――他に、プレイヤーがカスタマイズできる要素にはどんなものがあるのでしょうか?

Jakub:ボイス付きのアバターやタイトル……先ほど話に出た称号ですね。あとはカードの裏面やゲームボードのデザインなどがあります。アバターを変更すると、そのキャラクターで対戦中に一言セリフを喋ったりできます。また、他のカードに対してリアクションできる仕組みも導入する予定です。例えばゲラルトがシリのカードに対してリアクションすることができたりします。キャラクターごとにリアクションできるカードが決まっているので、『ウィッチャー』の世界に詳しい人なら想像がつくかもしれませんね。

 ユーザー同士のフリーチャットができると、どうしてもケンカに発展してしまうこともるので、『ウィッチャー』のキャラクターとして、こういった機能を使ってコミュニケーションしてほしいと思います。

『グウェント ウィッチャーカードゲーム』

――スマートフォンやタブレットPCでの展開などは考えていますか?

Jakub:今のところは家庭用ゲーム機とPCに注力しています。安定性やバランスなどの目処が付いたら、ぜひモバイル版も検討していきたいですね。

――最後に、楽しみにしている日本のファンに向けてメッセージをお願いします

Jakub:まず、『ウィッチャー3』を本当にたくさんの方々が遊んでくれて嬉しく思います。ぜひ、この『グウェント』も、同じように愛していただければと思います!

『グウェント ウィッチャーカードゲーム』

――ローカライズについて、本間さんにお聞きします。本間さんがCD PROJEKT REDに入社した経緯をお聞かせください

本間:私がゲーム業界に入って約9年が経ちました。前職のスパイク・チュンソフトでは本当にたくさんのことを学び、多くの海外パブリッシャーやデベロッパーと仕事をすることができました。非常に有意義な日々を送らせてもらっていたのですが、ゲーム業界での経験がスパイク・チュンソフト(旧スパイク含む)のみということもあり、「異なる環境で仕事をしてみたい、自分の力を試してみたい」と漠然とした思いを巡らせていました。

 そんな中、退職するとなるととりあえず取引先にその旨を伝えねばと思い、お世話になった方々に連絡したところ、CD PROJEKT REDさんから「それなら一緒に仕事をしないか」と声をかけていただいたんです。彼らとしても『ウィッチャー3』の日本での成功を受け、日本に本格的に進出したいと考えていたようで、それならば微力ながらお手伝いをしてみようと思ったわけです。

――本間さんは現在どういうお仕事を担当されているのでしょうか? これまでと仕事内容に大きな変化はありましたか?

本間:前職でもゲーム内テキストの翻訳から、小売店様での体験会アテンドまで何でもやっていましたが、いまは日本でCD PROJEKT REDのために働いているのが私しかいないということもあり、より一層“何でも”やっています。『グウェント』のローカライズはもちろんのこと、日本でのプロモーションの立案と実行などすべてやっている状況です。こうやって日本版の告知をできたことで、ようやく人の募集も開始できるので、早く一緒に仕事ができる人が欲しいですね(笑)。

――日本に対する足がかりができたということで、今後CD PROJEKT REDが発売するゲームは、すべて日本語版が出ると期待していいのでしょうか?

本間:まだCD PROJEKT REDの“日本支社”ができたわけではなく、現時点では私が業務委託契約を結んで、個人として彼らのタイトルの日本での展開をお手伝いしている段階です。今回の『グウェント』については、デジタル版だけですので、日本も含めた全世界的なパブリッシングが比較的容易に行えています。

 今後パッケージ版も含むタイトルの日本でのリリースとなった場合、パブリッシャーとして日本に法人が必要となるのですが、弊社が日本法人を作って自社でパブリッシングをしていくか、ライセンスという形で代理店様と一緒にお仕事をしていくかは、今後決めていきたいと考えています。

 ただ、どういった形であれ、日本語版を積極的にリリースしていくという姿勢に変わりはありません。タイトルを出す頻度も他社大手様と比べると少ないわけですから、これを出さないとなると自分の存在意義もなくなりますしね。

――RPGだった『ウィッチャー3』とカードゲームの『グウェント』とでは、ローカライズに必要な要素などが変わると思いますが、そういった意味で大変だったことなどはありますか?

本間:カードテキストの翻訳というのは自分でも初体験で、昔から有名なカードゲームをプレイしていた経験はあるんですが、改めてどう翻訳しているのかを見てみると、かなりスマートにやっているなという印象を受けました。やはり文字数が多くなると複雑になってしまうので、限界までカットしていかないといけないんです。

 カードゲームって同じような構文がいっぱいあって、『グウェント』の場合、形容詞がたくさん並ぶんです。ゴールドでもなくて、これでもなくて、あれでもないユニット、みたいな。その点で世に出ている先駆者のカードゲームは全力で参考にしています。ただ、今回は日本語版もベータでできるので、ユーザーといっしょに考えていけるところだと思っていますし、ユーザーの意見を取り入れながらできそうなので、そこも視野に入れてやっていきたいなと思っています。

――いま注目しているゲームはございますか?

本間:つい先日『Horizon Zero Dawn』をクリアし、いまは『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』をプレイしています。『ゼルダの伝説』は、間違いなくオープンワールドの概念を1つ次のレベルにまで持っていっていますね。素直に感動しています。

――最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします

本間:CD PROJEKT REDのメンバーとして、彼らの評判を穢さないよう最大限に努力していきますので、温かい目で見守っていただけると幸いです(笑)。

(C) 2017 CD PROJEKT S.A. ALL RIGHTS RESERVED. CD PROJEKT(R), The Witcher(R), GWENT(R) are registered trademarks of CD PROJEKT Capital Group. GWENT game (C) CD PROJEKT S.A. All rights reserved. Developed by CD PROJEKT S.A. GWENT game is set in the universe created by Andrzej Sapkowski. All other copyrights and trademarks are the property of their respective owners.

データ

▼『グウェント ウィッチャーカードゲーム』
■メーカー:CD PROJEKT RED
■対応機種:PS4/Xbox One/PC
■ジャンル:カード
■発売日:2017年5月24日(パブリックベータ)価格
■価格:基本無料/アイテム課金
▼『グウェント ウィッチャーカードゲーム』
■メーカー:CD PROJEKT RED
■対応機種:Xbox One
■ジャンル:カード
■発売日:2017年5月24日(パブリックベータ)価格
■価格:基本無料/アイテム課金
▼『グウェント ウィッチャーカードゲーム』
■メーカー:CD PROJEKT RED
■対応機種:PC
■ジャンル:カード
■発売日:2017年5月24日(パブリックベータ)価格
■価格:基本無料/アイテム課金

関連サイト