『薄桜鬼 真改』新キャラに年齢詐称疑惑? 鳥海浩輔さん、津田健次郎さんが藤澤Pに斬り込む【後編】
『津田健次郎の文化ゼミナール番外編~教授のポラロイド日記~』の連載7回目は、電撃Girl’sStyle5月号に掲載されている“特別企画・居酒屋薄桜鬼 ~藤澤プロデューサーにご用改め!~”で盛り上がりすぎて、掲載しきれなかった制作裏話を前編・後編にわけて公開。
【前編はコチラ】居酒屋で飲みながら!? 鳥海浩輔さん、津田健次郎さんが『薄桜鬼』の制作秘話に迫る【前編】
後編では、『薄桜鬼 真改』から登場する新キャラクターの設定秘話や、史実と異なる点なども語っていただきました。
『薄桜鬼 真改』の攻略対象は9人の予定だった!? キャラクター設定に迫る
鳥海:PS Vitaで2015年に発売された『薄桜鬼 真改』では、既存キャラ6名のほか、永倉、山南、山崎に加えて新キャラクターの伊庭、相馬、坂本が増え、攻略対象が12人になりました。
津田:大所帯になりましたね(笑)。
鳥海:しかし当初は9人を予定していたという情報が入ってきました。ということは、このなかの3人は攻略対象にならない可能性もあったというわけですね。……誰だ!?
藤澤:昇格キャラの3人(永倉、山南、山崎)です。
鳥海:やはり、彼らを攻略対象にするのは難しかったですか?
藤澤:今までの物語や立ち位置もあるので難しかったですね。『薄桜鬼 真改』を作ろうと思ったときに、最初考えたのは風間にちゃんとした個別ルートを作ろうということでした。風間をプラスした6人がメイン攻略となって、新キャラクターを3人ぐらい追加しようということで、話が進みました。
でも「新キャラクターが攻略対象として登場するのに、永倉たちを攻略できないのはユーザーのみなさんが納得しないのでは?」という話が出て、最終的に12人になりました。
既存キャラクターで誰のシナリオが一番難しかったですか?
藤澤:昇格キャラクターは3人とも難しかったです。まず、永倉の話からすると、先ほども言いましたが、絶対自分から羅刹になるようなタイプじゃないんですよね。ならせる必要がある。なったあと、本人がどうなっていくかということもふくめ、いろいろと打ち合わせを重ねました。もちろん、永倉も羅刹にならないという選択肢もありました。しかし、そうすると原田とかぶるので、死んでいないのに羅刹にしようということになりました。
鳥海:死んでないのに羅刹になるのって、斎藤くらいですよね。
藤澤:羅刹になったのは、史実では亡くなった人ばかりなので、じつはそうなんです。斎藤の例もあるし、永倉も羅刹の話を作ることにしたのですが……作る際はだいぶ苦しみました。
(※斎藤自身は幕末期の斎藤一は死亡したことにして、のちの人生を藤田五郎として全うし、斎藤である過去を公に出すことはありませんでした。それに対して永倉も名を変えますが、永倉新八の後年として生きていきます。)
腹暗くて裏がある山南、影の人山崎について
藤澤:あそこまで腹暗くて裏がある人をどうしようって悩みました(笑)。
鳥海:羅刹になるのは早いですけどね。
藤澤:そうなんです。でも羅刹になったあと、山南なら絶対いろいろなことを考えてそうじゃないですか。ルートによっては敵キャラになるので、かなり苦労しました。
鳥海:では、死んでしまうシーンがある山崎は?
藤澤:死ぬシーンがあるから羅刹になるのは正直簡単というか、既定路線で羅刹になって生き残ることはできたのですが、その先がまったくの白紙だったんです。
鳥海:確かに。元々影の人ですし、史実でも残っているエピソードが少ないですよね。
藤澤:はい。ゼロから作らないといけなかったので大変でした。その一方で新規の3人はベースと言いますか、伝え聞く話はたくさんあったので作りやすかったです。
新規の攻略対象は当初、別のキャラクターだった?
藤澤:新しい攻略対象は新選組隊士から……と考えていたのですが、相馬主計以外だと三木三郎が候補にあがりました。さらにもう1人を悩んでいたときに、隊士ではない伊庭八郎が攻略対象に決まったんです。この結果、隊士じゃなくてもアリだということになり、とても悩んだ末に、三木を外して坂本龍馬が選ばれました。
津田:違う組織側から物語を引っ張れるという強みもありますね。
藤澤:はい。あと三木は、新選組ではなくなってからの話がすごく濃いんです。後々、彼は赤報隊という組織に入って二番隊の隊長を務めるんですよ。一番隊の隊長(相楽総三)は切腹しているのですが、二番隊が生き残っているのはおかしいよね、ということで三木もその事件の余波で羅刹になるという設定にしました。でもそういった話を深く描こうとすると、『薄桜鬼』の路線からはちょっとズレてしまうかなと思ったんです。
違う角度から新選組を見られるキャラクターに決定!
鳥海:新選組内部にいましたけど、最初から敵みたいなやつでしたしね(笑)。
藤澤:そうですね(笑)。新選組の話と絡めるとなると厳しいなと考えたときに、1人は新選組の行く末を追いかける相馬。違う立場から新選組を追いかける伊庭。外部ではあるけれど新選組と関わり、やはり追っていく坂本。立場が違う2人を入れて、違う角度から新選組を見たらおもしろそうだと思い、最終的にこの3キャラクターに決定しました。
鳥海:時代劇好きとしては、新キャラクターが伊庭八郎と聞いたときに思わずニヤリとしました。
津田:幕末好きのチョイスですよね。
藤澤:ニヤリとしていただけてうれしいです。
伊庭と本山コンビに隠された逸話とは?
鳥海:そんな伊庭には、隠されたエピソードがあるそうじゃないですか。
藤澤:最初にあがってきたラフデザインがボツになり、そのイラストがそのまま本山小太郎になりました。
津田:何がダメだったんですか?
藤澤:あまりにも優しげな部分が強調されていたので、“伊庭八郎”っぽくないと思ってしまったんです。オーダー通りに仕上がってはいたんですけどね。伊庭と本山は幕府の旗本で、豪邸に住んでいる“山の手ボーイ”のようなイメージだったんです。
津田:確かに攻略対象としては、少し弱いかもしれませんね。
藤澤:伊庭のイラストは、もう少し王子感を出してほしいというお願いをして完成したのが、現在の形です。
子安さんの声のイメージから、武田観柳斎のキャラ設定を変更!?
武田観柳斎は当初とは設定が違うそうですが……?
藤澤:彼は絵ができる前に設定だけできていたんです。キャストも子安武人さんしか考えられないと思っていて(笑)。子安さんの声で武田を作ったときに、どうしても上から目線のキャラクターにしかならなくて、話を作っていくうちにどんどん背が高くなってしまいました。
津田:物理的にも高くなっていったんですね(笑)。
『薄桜鬼』のキャラクターのなかで一番背が高いのは?
藤澤:『薄桜鬼』のなかで一番背が高いのは天霧九寿、坂本龍馬、武田観柳斎、島田魁の4人がほぼ同じで180cmくらいを想定しています。
津田:あの当時の180cmといったら、相当巨人ですよね。今なら2m近くあっただろうし。
鳥海:一般的な武田観柳斎のイメージって、軍学オタクで眼鏡をかけてて真逆ですよね。『薄桜鬼』みたいに物理的に強そうな人のイメージってないんじゃないでしょうか。
藤澤:そうなんですよね。でも五番組の組長を務めていた人なので、世間一般で言っている眼鏡をかけたガリ勉タイプが僕のなかではしっくりこなかったんです。
津田:戦術だけではなく、実際に刀も使えただろうということですね。
じつは、武田は試衛館に出入りしていた?
藤澤:この話は、はっきりとは僕もわからないのですが、京に行く前に試衛館に出入りしていたというウワサもあるんですよ。
鳥海:じつは、古株だったのかもしれないんですね。
藤澤:そのときの伝手があって後に京で合流して、五番組組長になったという話を何かで読んだんです。
鳥海:伊東甲子太郎が来るまで、新選組は武田の戦術を使ってますしね。
藤澤:そうなんですよ。だからその説が正しいと仮定すると、一応つじつまが合うんです。……というわけで、世間一般のイメージよりも自我が強い人にしてみました。
鳥海:いろいろな意味でラスボス感が半端ないです(笑)。
津田:そうだね。なにか持ってるような感じがします(笑)。
坂本との名コンビが光る中岡の武闘派設定
『薄桜鬼 真改』の中岡慎太郎は、仲間内にはもっと柔和な性格の候補もあったそうですが、不採用になったとか?
藤澤:『薄桜鬼』のキャラクターって、史実のエピソードにあるものとないものを混ぜて作っているんですけど、中岡は作るときにかなり悩みました。というのも、史実の中岡は笑顔の写真が多い人なんです。でも彼がやったことって、かなり過激な武闘派だったりするんですよ。ずっと長州に籍を置いていて、長州がやることにほぼ参加しています。そういった史実ネタを軸に考えたときに、もう少しストイックな部分を押し出してもいいのかなと思いました。
津田:坂本は緩い感じのキャラクターですしね。
藤澤:そうなんです。どうしても坂本はおちゃらけるタイプなので、2人してくだけているのもどうかなと(笑)。あと武闘派なイメージも残したかったので、堅い雰囲気になりました。
後輩キャラはウソ!? 相馬の年齢詐称疑惑について
新攻略キャラクターの相馬ですが、彼は史実とは異なる設定があるそうですね。変えた理由を教えてください!
藤澤:史実では斎藤や藤堂より1つ歳上なのですが、どうしても後輩キャラがほしくて年下キャラにしてしまいました。
鳥海:なるほど。では、相馬は年齢詐称疑惑があるということでよろしいでしょうか(笑)。
藤澤:そうですね(笑)。
鳥海:新選組を軸にした話ではありますが、少しファンタジーも入っていますしね。
津田:そういう意味では、史実に“鬼”も出てこないですから(笑)。
こうして約1時間にわたって行われた3人の対談は、『薄桜鬼』の裏話のみならず、幕末の歴史話にまで飛び火して大盛り上がりとなりました。取材自体はここで終了となったのですが、3人はそのあとも深夜まで宴をしたそうです。
そんな藤澤経清プロデューサー、鳥海浩輔さん、津田健次郎さんの対談は4月10日に発売された電撃Girl’sStyle5月号にも掲載されています。別の話題のほか、写真も掲載されているので、ぜひチェックしてみてください♪