2017年5月1日(月)
日本マイクロソフトは4月25日に、『Minecraft(マインクラフト)』のプレゼンテーションを開催しました。ここでは今春からスタート予定の“マインクラフト・マーケットプレイス”をはじめとした、今後の『マインクラフト』に登場する最新要素を紹介します。
本プレゼンテーションでは、マイクロソフトで『マインクラフト』のパートナープログラムディレクターを務める、トッド・スティーブンス氏による解説が行われました。
スティーブンス氏はプレゼンの冒頭で、「日本は『マインクラフト』にとって、世界で3番目に大きな市場です」と語り、日本市場の重要さを強調していました。それだけに今回、日本で『マインクラフト』の新要素を紹介できて、うれしく思っているそうです。
▲マイクロソフト 『マインクラフト』パートナープログラムディレクターのトッド・スティーブンス氏(写真左)と、マイクロソフト 『マインクラフト』グローバル・コミュニケーションのオーブリー・ノリス氏(写真右)。 |
さて、プレゼンの詳細に入る前に重要な点をひとつ。本プレゼンで紹介された新要素はすべて、Windows 10 PC専用の『Minecraft: Windows 10 Edition』と、iOS/Androidなどのスマートフォンで動作する『Minecraft: Pocket Edition』(PE)に関するものとなっています。
それ以外の機種、つまり従来のPC版(Java版)や、Xbox Oneをはじめとする各種家庭用ゲーム機版に関しては、ここで紹介する新要素の登場予定が現時点ではない点に注意してください。ただし、紹介するコンテンツの中には、従来のPC版や家庭用ゲーム機版ですでに登場済みのものもあります。
▲『Minecraft: Windows 10 Edition』と『Minecraft: Pocket Edition』は、“The Bedrock Engine”と呼ばれる共通のゲームエンジンで開発されています。このゲームエンジンは、スライドの右側に挙げられているPCやスマートフォン、VR機器に対応しています。 |
最初にスティーブンス氏が紹介したのは、PE/Win 10版『マインクラフト』で今春に予定されている、Ver1.1“Discovery Update”で導入される新ブロックや新アイテムについてです。
まず新たなブロックとして、水に触れると固まる“コンクリート”と、カラフルで装飾に最適な“テラコッタ”が登場。また、ベッドはこれまで赤色しかありませんでしたが、今後は16色のベッドを自由に作れるようになるとのことです。
武器や防具に特別な能力を付与するエンチャントにも、新たな種類が用意されます。“氷渡り”のエンチャントをブーツに付与すれば、水の上に足を踏み出すと瞬間的に凍って、その上を歩くことができます。この能力はスティーブンス氏の特にお気に入りなのだとか。
また、“製図家”と呼ばれる新たな種類の村人と取引することで、特別な建物の位置を示した地図を入手できるようになります。
この地図を使ってたどり着くことのできる“森林の邸宅”の内部では、“邪悪な村人”と呼ばれる新たな種類のモブ(生物)が出現して、プレイヤーを攻撃してきます。
邪悪な村人を倒すことで入手できるアイテム“不死のトーテム”は、致命的なダメージを受けた瞬間に、そのダメージを無効化する効果を発揮するとのことです。
▲製図家から入手した地図には、森林の邸宅の位置が描かれています。 |
▲プレイヤーが手に持っている“不死のトーテム”の効果が発動すると、溶岩に落ちても死ぬことはありません。 |
さらに、新しい動物として“ラマ”が登場します。見た目がかわいいラマですが、プレイヤーがラマを攻撃すると、ラマも口からつばを飛ばして反撃してきます。また、一頭のラマをリードでつないで引っ張ると、周囲にいる他のラマも列を作ってついてくるという、かわいい動きを見ることもできます。
PE/Win 10版『マインクラフト』のVer.1.1では、“アドベンチャーモード”と呼ばれる新たなゲームモードも追加される予定です。
これは、クリエイターが作成して配布されたアドベンチャーマップでのプレイを楽しむために、マップ内でプレイヤーができることを意図的に制限したモードとなっています。
ボタンやレバーの操作、村人との取引などは通常どおりできるのですが、マップ上でとくに指定されている以外のブロックを置いたり、壊したりすることはできなくなっています。これにより、配布されたマップのディテールやギミックを、うっかり壊すことなく楽しむことができるのです。
もちろん、同じマップをクリエイティブモードなどで開くことにより、従来どおりのブロック操作もできるので、マップを自分なりに改造することも可能です。
バージョンアップに関する話題だけでなく、追加コンテンツについても紹介されました。スティーブンス氏によると、家庭用ゲーム機版で好評を得ている“ギリシャ神話”マッシュアップパックが、近日中にPE/Win 10版でも配信されるとのことです。
さらに新たなコラボレーションとして、トレーディングカードゲームを代表する人気作『マジック:ザ・ギャザリング』のマッシュアップパックも配信されるそうです。
スティーブンス氏によると、「『マインクラフト』のプレイヤーには『マジック』のプレイヤーも多いので、この2つはかなり親和性が高い」とのことで、今後のさらなる展開にも期待できそうです。
▲スライドの上段では“ギリシャ神話”マッシュアップパックの画面が紹介されています。一方、スライドの下段に見えるのは、『マジック:ザ・ギャザリング』のモブスキンのようですが……!? |
続いては、PE/Win 10版『マインクラフト』に導入される、新たな機能が解説されました。
“アドオン”と呼ばれる機能は、モブの外観や行動を変化させることができます。ここでスティーブンス氏は、アドオンを使用すると具体的にどんなことができるかを紹介する、デモ映像をを見せてくれました。
この映像では、モブの一種であるゾンビに対して、アドオンを使って他のモブの振る舞い(行動)を持たせるという様子が紹介されていました。
ゾンビにクモの振る舞いを持たせると、壁を登ってはい上がることができるようになります。また、ゾンビにイカの振る舞いを持たせると、ゾンビが水中を移動できるようになります。
さらにアドオンを駆使すれば、プレイヤーがウマの代わりにゾンビの背中に乗って、プレイヤー自身の操作で移動するといったことも可能です。記事の後半で紹介しますが、このアドオンをアドベンチャーマップで効果的に使うことにより、新たなゲーム性を楽しむことができるようになるのです。
▲アドオンを使ってゾンビにクモの振る舞いを付与すると、穴に落ちても壁をはい上ってきます。 |
▲ゾンビにウサギの振る舞いを付与すると、ピョンピョンと跳ね跳びながら襲いかかってきます。さすがに気持ち悪いですね……。 |
ところで、Windows 10にはこの4月から、“Windows 10 Creators Update”と呼ばれるアップデートが提供されています。これによって、Windows標準のお絵描きツールである“ペイント”が、3Dモデルのペイントや、3Dプリンターへの出力などに対応した“ペイント3D”に進化しています。
さらに“ペイント3D”では、マイクロソフトのコミュニティサイトであるRemix 3Dに、自分の作成した3Dモデルをアップロードして他の人に公開したり、他の人が公開した3Dモデルをダウンロードしたりすることも可能です。
じつは『Minecraft』も、この“Remix 3D”に対応するとのこと。ゲーム内のツールを使って、建物や地形の3Dデータを切り出して、“Remix 3D”のサイトにアップロードできるようになるのだそうです。
こうしてアップロードしたデータは、もちろん“ペイント3D”などに取り込むことができます。つまり、『Minecraft』でクリエイトした3Dモデルを、“Remix 3D”経由でWindows 10に取り込んで、“ペイント3D”で着色してから3Dプリンターで出力する、といったことが可能になるのだそうです。
『マインクラフト』のゲーム内でクリエイトしたものが、現実の立体物となるというのは、かなり驚きの機能ではないでしょうか。
さて、最後に発表されたのは、本プレゼンの目玉と言える新展開の“Minecraft マーケットプレース”についてです。
▲Minecraft マーケットプレースのプロトタイプ画面。 |
これは、PE/Win 10版ですでに実装されている“ストア”の機能をさらに拡張するもので、現在のストアでは先に紹介した“ギリシャ神話パック”のような、マイクロソフト公式のコンテンツしか購入できませんでした。
Minecraft マーケットプレースのローンチ後は、コミュニティのクリエイターが作成したさまざまなコンテン“Minecraft マーケットプレース”ツを、ここから購入できるようになるそうです。
マーケットプレースでコンテンツを購入するには、“Minecraftコイン”と呼ばれる仮想通貨を使用します。
まず最初に、Xbox Liveアカウント(無料でも可)にサインインしてMinecraftコインを購入し、コインの残高を使用してマーケットプレースのコンテンツを購入するという形です。すでに実績のあるXbox Liveのシステムを利用することで、安全な取引が可能になっているとのこと。
マーケットプレースは、Windows 10とスマートフォンのどちらからでも利用でき、同じXbox Liveのアカウントを使用すれば、コインの残高などは機種を問わず共通のものになるそうです。
Minecraft マーケットプレースは、近日中に予定されているPE/Win 10版のVer.1.1“Discovery Update”が行われた後に始動するそうですが、ローンチ時にはすでに実績のあるクリエイター9社が作成した、スキンパックやテクスチャパック、アドベンチャーパックがリリースされる予定になっています。
スティーブンス氏によると、マーケットプレースを始動するにあたってはコンテンツのクオリティをなによりも重視しており、そのためにローンチ時に参加するクリエイターを厳選したとのこと。
「クオリティ第一の姿勢は今後も変わらないですが、マーケットプレースが発展するにつれて、パートナーの数も増えていくことになるでしょう」と、スティーブンス氏は語っていました。
▲Sphaxの“PureBDcraft”は、PC版で人気のテクスチャパックです。 |
▲Blockceptionの“AnnIe: Rise of Londinium”は、ロンドンの街並みが発展する様子を疑似体験できるアドベンチャーマップです。 |
▲『マインクラフト』で芸術的なマップをクリエイトしているBlockworksからは、3種類の個性的なアドベンチャーマップが配信されます。 |
▲Eneija Silverleafの“Pastel”は、『マインクラフト』の世界をファンシーなパステルカラーに染め上げるスキンパックです。 |
▲Imagiverseの“Relics of the Privateers”は、海賊の世界をテーマにした冒険を堪能できるアドベンチャーマップです。 |
▲Polymapsの“Stone Age Texture Pack”はその名のとおり、原始時代を題材にしたテクスチャパックです。 |
▲Qwertyuiopthepieの“Space Battle Simulator”は、プレイヤー同士で宇宙船内部での戦闘を楽しめるという、マルチプレイヤー対戦マップです。 |
▲Razzleberry Foxの“Everyday Heroes”は、警官や消防士、コックや看護師など、日常生活で働く人々をテーマにしたスキンパックです。 |
本プレゼンでは、クリエイターの1社である“Noxcrew”のメンバーも、一緒に来日していました。
Noxcrewはこれまで5年間にわたって、『マインクラフト』コミュニティで創作活動を行ってきた団体です。ゲーム内でブロックを直接操作して行うクリエイトだけでなく、脚本や効果音、ボイスの声優など、さまざまなパートを手がけるクリエイターが集結しているのだそうです。
▲Noxcrew創設者のステファン・パニック氏(写真右)と、ブロックや部品の組み合わせによって、マップ上のさまざまな仕組みを構築する“レッドストーン・マスター”のジョー・アルスノー氏(写真左)。 |
NoxcrewはMinecraft マーケットプレースのローンチ時に、4種類のアドベンチャーマップをリリースする予定とのこと。本プレゼンでは、その1つである“Destractobot 5000”のゲームプレイを、実機を使用して解説してくれました。
“Destractobot 5000”は、ビルの建ち並ぶ大都市にエイリアンが侵略してきたという設定です。プレイヤーはエイリアンを撃退するために、人間よりも一回り大きいロボットに乗り込んで戦うことになります。
プレイヤーがロボットに乗り込んで操作するというのは、先に紹介したアドオンの機能を利用したもの。その他、テクスチャや効果音、エイリアンの振るまいなど、マップ上で体験できるものすべてが、Noxcrewの手で専用にカスタマイズされたものとなっています。
▲ピンク色の台座のように見えるのが、2足歩行型のロボットです。両腕はミサイルランチャーになっています。 |
▲敵となるロボット型のエイリアン。おもちゃのような愛くるしい姿をしていますが、これでも侵略者です。 |
中でもスゴいのは、ロボットからミサイルを発射してエイリアンを攻撃すると、周囲の建物や地形を爆発に巻き込んで、ガンガンと破壊できるところ。『マインクラフト』ならではの特徴を活かして、痛快なゲームプレイを生み出しているわけです。
しかも本作には、プレイヤー同士がロボットを操縦して街で対戦できるVSモードも用意されているそうですから、ド派手な破壊をよりいっそう満喫できそうです。
▲戦いの舞台となる大都市は、圧巻のスケールとディテールで作り込まれています。この都市でミサイルを乱射して、ビルや建物を破壊できるのです! |
▲“Advanturer’s Dream”も、Noxcrewがリリースするコンテンツの1つ。こちらはなんと、ファンタジー世界を舞台にしたオープンワールドのアドベンチャーマップなのだそうです。 |
最初に説明したように、今春のローンチ時にMinecraft マーケットプレースを利用できるのは、『Minecraft: Windows 10 Edition』と『Minecraft: Pocket Edition』のみとなります。
スティーブンス氏によると、本マーケットプレースをPE/Win 10版でスタートさせたのは、これらにはすでにストアの機能が存在していたからとのこと。
将来的には、マーケットプレースをコンシューマなどの他機種にも展開したいと考えているそうですが、現時点ではまだ具体的な計画はないと語っていました。
またスティーブンス氏としては、『マインクラフト』にとって世界第3位の市場である日本のクリエイターの皆さんにもぜひ、このマーケットプレースに参加してほしいと希望しているそうです。
現時点でマーケットプレースのパートナーになるためには、PE/Win 10版での開発に慣れていることに加えて、金銭のやり取りが発生するために法人化などの態勢が整っている必要があるそうですが、世界に向けて自分のコンテンツを発表できる、大きなチャンスだと言えるでしょう。
「私たちの目指しているゴールは、『マインクラフト』を単なるゲームではなく、『マインクラフト』自体をさまざまなコンテンツのプラットフォームにしていくことです」とスティーブンス氏。
実際にクリエイター活動を行っているNoxcrewのパニック氏も、「『マインクラフト』は自分のイマジネーションから新しいものを生み出して、それを世界中に発表できる場所です」と、その思いを語ってくれました。
▲Noxcrewで活動しているクリエイターの皆さん。 |
「まず自分たちがよいものを作って公開すると、それを見た優秀な人たちが“自分も参加したい”と集まってきてくれるんです。だから日本のクリエイターの皆さんも、僕らの作品を楽しんで、そしてぜひ僕らのチームに参加してください」と、パニック氏はコメントしていました。
「クリエイターの皆さんが、このマーケットプレースで自分の作品を発表することで利益を得て、ここから『マインクラフト』億万長者が誕生することが、私の目標です」と、スティーブンス氏は笑顔で語っていました。
『マインクラフト』がさらに進化していくうえで、まもなくスタートするマーケットプレースがどのような役割を果たすことになるのか、大いに注目したいところです。
Mojang (C) 2009-2017. “Minecraft”はMojang Synergies AB の登録商標です
データ