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2017年5月5日(金)

『NieR:Automata』の音世界に満たされる!! “人形達ノ記憶”コンサートレポ

文:電撃オンライン

 5月4日、有楽町にあるよみうりホールでひらかれた、ニーアミュージックコンサート“人形達ノ記憶”のコンサートレポートをお届けする。

“人形達ノ記憶”

 先月行われた大阪会場に続き、待望の東京公演初日。会場となったよみうりホールでは、朝から限定グッズを手に入れようと多くのファンが駆けつけていた。商品によっては昼公演の前後で当日分が完売するものもあり、改めて『ニーア オートマタ』の爆発的な人気ぶりを感じる盛況ぶりだった。

 今回のコンサートは全5公演となっているが、各公演ごとに声優陣による朗読劇のシナリオが異なる。しかもそのシナリオは、すべてヨコオタロウ氏と菊地はな氏による書き下ろし。

 『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』の時代には設定資料集やドラマCDに集約されていた世界観の広がりや掘り下げが、『オートマタ』ではウェブメディアの生放送や限定版の書籍にトークイベント、さらにはコンサートでの朗読劇という形でエンターテイメント性とレアリティ度を高めて提供され、よりファンを楽しませている。

 今回の全公演分の台本付きチケットも入手困難で、まさしくプレミアものといえる注目度となっており、その人気のほどがうかがえた。

歌姫の競演、朗読劇の衝撃――会場はファンの墓場!?

 コンサートは休憩なしで、一気に『オートマタ』の世界を駆け抜けていった。ジュニーク・ニコールさんの歌う『遺サレタ場所』に始まり、ゲームをプレイした人には馴染み深い遊園地廃墟や砂漠の曲が次々とロマンチックに、そしてダイナミックに演奏され、聴衆を一気に魅了していく。

“人形達ノ記憶”
▲『遺サレタ場所』は廃墟都市フィールドのBGM。ジュニーク・ニコールさんの大地を感じさせる、伸びやかな歌声がすっかり染み付いている人も多いのではないだろうか。
“人形達ノ記憶”
▲『遊園廃墟』を歌い上げるエミ・エヴァンスさん。遊園地の華やかさと廃墟の寂しさに、エミさんの透き通るような歌声がとてもよくマッチしていた。
 

 コンサートでは、朗読劇と音楽が交互に展開される構成が非常に気持ちがよく、まるで新たな続編の『オートマタ』をプレイし、体感しているかのような気分になれた。

 音楽でゲームを振り返る、懐かしむというよりは、まさしく今、リアルタイムで『オートマタ』を体感しているという実感は、このコンサートの開催時期のスピーディさによっても得られたものだといえるかもしれない。『イニシエノウタ/贖罪』におけるデボルとポポルの姿も、アダムやイヴとの戦いも、まだ思い出と呼ぶには早すぎる確かな熱を持っていたように思う。

“人形達ノ記憶”

 また注目すべき一曲として『パスカル』を特筆しておきたい。会場全体が軽快な手拍子に包まれる中、河野万里奈さんと手を繋いで登場した小さな小さな歌姫のかわいらしい歌声には、観衆全体をほっこりとさせる魔法のようなチカラがあった。

“人形達ノ記憶”

 白旗を振る機械生命体たちの映像ともあいまって、ふわふわとした空気感が心地よく会場を包んだ。2Bと9S、そしてA2が翻弄された戦いに次ぐ戦いの日々にあって、ほんのひとときの憩いを得られるような……そんな一曲となった。

 コンサートも終盤にさしかかるとエミさんとジュニークさんの競演による激しいバトル曲や、物語終盤を彩った印象的な曲が次々と。これには圧倒された。カルテットもピアノもギターも、どの楽器もそれぞれに繊細な音を奏でているのに、しかしどれもパワフルで心に響き、胸を打つ。

“人形達ノ記憶”

 生の歌声と生の奏者、そして楽器とが合わさったパワーは、まさしく『オートマタ』の世界にふさわしい。ただの道具でもなくただの命でもない、複雑に絡まり合った“存在”そのものを物語るような音楽が、強く強く響きわたっていた。

 そして、いよいよ朗読劇が幕を下ろす。生じる混乱、響きわたる絶叫、結局こうなってしまうのか……という結末――。アンドロイドたちの悲劇を締めくくるように、河野さんがまるで涙を流すかのごとく熱唱する『Weight of the World』が美しくも切ない余韻を残した。

“人形達ノ記憶”

終わらない拍手、そしてよみがえる『レプリカント』の記憶――

 岡部さんの挨拶を挟んで、まだまだ物足りないといわんばかりにステージはアンコールへ。懐かしいピアノの音色とともに、エミさんの歌声が響き渡り、スクリーンに現れたのは……月の涙。

“人形達ノ記憶”
▲岡部啓一氏。

 そしてその真っ白な花飾りを身につけた、口汚い下着女ことカイネの姿が映し出される。セットリストには公表されていなかった『レプリカント/ゲシュタルト』の名曲『カイネ/救済』である。

 会場全体が驚くようにさざめき、すぐさま水を打ったようにしんと静まりかえる。そして客席のそこここから聞こえてくるのはすすり泣き――。映像ではエミールの少年期も映し出され、『オートマタ』でのエミールを思い出してぐっときてしまった人も多かったのではないだろうか。

 たたみかけるように用意されていた次なる曲は『Ashes of Dreams/English Version』。過去作からのファンにもサービスたっぷりのこの隠されたセットリストはじつに恐ろしいものであった。

 どう恐ろしいかというと、このあたりで自分だけではなく、客席の右も左も前も後ろの人も泣いている、という状況に気がついたからである。次々に映し出される『レプリカント/ゲシュタルト』の名場面とあいまって、涙腺を崩壊させる破壊力と瞬発力と広範囲攻撃のすさまじさはEMP攻撃にも匹敵と推測。

 結果としてラストの一曲『Weight of the World/the End of YoRHa』へと見事にバトンをつなぎ、最後は全員による大合唱と鳴り止まぬ拍手とで締めくくられた。

“人形達ノ記憶”

 あらゆる意味でファンが打ちのめされ、贅沢な音楽と朗読劇とで胸がいっぱいにさせられたコンサート“人形達ノ記憶”は、終演後もはや死屍累々、ニーアファンの墓場と化した感すらあった。

 最後に撮影された記念写真では、石川さんの掛け声に従って、石川「人類に栄光あれ!」客席全員「栄光あれ!」のポーズでシャッターが切られたわけだが、まさにフィールドのそこここに朽ち果てた義体よろしく、訪れたファンの多くがさながら殉教者=ヨルハ部隊員のよう。至極幸せな気持ちで「ここに墓を……私の義体を……」というくらいの心持ちで敬礼を捧げていたに違いない。

“人形達ノ記憶”

 とはいえ、まだまだ現在進行形で『オートマタ』をとりまく状況は華やいでいくだろう。アクションRPGゲームとしてのクオリティの高さはもちろんのこと、そこに音楽のチカラ、デザインのチカラ、声のチカラ、ヨコオタロウワールドのエンターテイメント性……多くの素晴らしいものが合わさって構築された『オートマタ』の世界はなお広がりを見せていく。おそらくこのコンサートは、そのはじまりの一部に過ぎないのではないか。そんな栄光に満ちた未来を感じさせてくれる、じつに力強いコンサートであった。

 5月5日の公演は、有料チケットを購入すればニコニコ生放送で中継を視聴することが可能だ。興味がある人はぜひ見てみてほしい。

セットリスト

No 曲名
1 遺サレタ場所
2 遊園施設
3 砂塵ノ記憶
朗読劇 第一幕
4 穏ヤカナ眠リ
5 美シキ歌
6 曖昧ナ希望
朗読劇 第二幕
7 イニシエノウタ/贖罪
8 パスカル
9 終ワリノ音
朗読劇 第三幕
10 顕現シタ異物
11 「塔」
12 双極ノ悪夢
13 追悼
朗読劇 第四幕
14 Weight of the World
15 カイネ/救済
16 Ashes of Dreams/English Version
17 Weight of the World/the End of YoRHa
“人形達ノ記憶” “人形達ノ記憶”
▲石川さんと安元さんは、それぞれ2B、ポッド042として開演前と終演後の場内アナウンスも担当。コミカルなかけあいが繰り広げられ、会場も笑いに包まれていた。
“人形達ノ記憶”
▲花江さんの半ズボン姿は、あくまで9Sをリスペクトしたものであり、ヨコオリスペクトではないとのことだった。

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