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2017年6月9日(金)

『ID-0』終盤は子安武人さんの“これまで聞いたことがない声”が見どころ? 谷口悟朗監督&黒田洋介氏出演のイベントをレポート

文:伊藤誠之介

 TOKYO MX・KBS京都・サンテレビ・BS11・Netflixで放送・配信中のオリジナルTVアニメ『ID-0(アイディー・ゼロ)』。そのスタッフとキャストが参加するトークイベント“第9話直前!『ID-0』スペシャル掘削ナイト”の模様をレポートします。

『ID-0(アイディー・ゼロ)』
▲こちらはイベントの様子です。

 本作は、『無限のリヴァイアス』や『スクライド』を生み出した谷口悟朗監督と、脚本・黒田洋介氏が再びタッグを組んで贈る、深宇宙の彼方を舞台にしたSF作品です。

 6月3日に東京都杉並区にあるAsagaya/Loft Aで開催されたこのイベントには、谷口監督と黒田氏に加えて、白土晴一氏(リサーチャー)、平澤直氏(チーフプロデューサー)、湯川淳氏(チーフプロデューサー)たち制作陣に加えて、津田美波さん(ミクリ・マヤ役)、金元寿子さん(クレア・ホウジョウ役)という、サンジゲン取材映像でもおなじみの2人が出演しました。

 Asagaya/Loft Aは、客席だけでなくステージ上でも飲食を楽しみながらトークを繰り広げられる、カジュアルな雰囲気が魅力のイベントスペース。金元さんがこちらのステージに立つのは2回目なのだそうですが、津田さんは初めてとのことで、最前列の観客のみなさんと壇上の出演者が乾杯できるという、客席との近さやこの会場独特の空気に驚いていました。

 また会場には、イドとリックのフィギュア(テストサンプル)が展示されていたり、この日だけのコラボメニュー、コラボメニューを注文した人がもらえる特製コースターなどがあったりしました。写真は公式Twitterにアップされていたもの。

 谷口監督や黒田氏はお酒を飲みながら話していましたが、そのせいもあってか当日はオフレコの話も続出。常に笑いの絶えない楽しいイベントとなりました。ここでは当日出た話題の中から、特に興味深いと思ったものをピックアップしてお届けします。

幼なじみとの友情から『ID-0』の企画がスタート

 トークはまず、『ID-0』の企画の成り立ちの話題からスタートしました。

 そもそもの出発点となったのは、本作のプロデュースとしてクレジットされている“ワールドコスプレサミット”の代表である小栗徳丸氏。小栗徳丸氏は谷口監督の幼なじみで、「谷口監督と一緒にアニメを作りたい!」という思いがあったそうです。

 今から5年ほど前に『ID-0』の企画がスタートしたものの、その段階では谷口監督によるオリジナル企画のTVシリーズという以外、何も決まっていなかったとのこと。そのため当初は、“現代を舞台にしたコスプレ部活物”といった案もあったそうです。

 黒田氏も制作陣に加わり、“大人も鑑賞できるロボットアニメ”という方向性が定まったころから企画が急速に具体化し、「ロボットアニメならCGが生かせるはず!」と、アニメーション制作がサンジゲンに決定。

 谷口監督自身も以前からセルルックCGに関心があり、いろいろなCGアニメの制作過程を見学していたところ、サンジゲンが手がけたTVアニメ『蒼き鋼のアルペジオ-アルス・ノヴァ-』の制作システムを見て、「これなら自分もTVシリーズができる」と感じたそうです。

 内容が宇宙SFロボット物に決まってからも“崩壊した惑星のお姫様を荒くれ男たちが助け出して運ぶ”などの案をはじめ、さまざまなアイデアが検討された模様。そこから現在の『ID-0』の物語になったのは、谷口監督いわく“CGアニメならではの制限”があったからこそ生まれたのだとか。

 「キャラクターのCGモデルにお金がかかるため、使えるCGモデルは何体まで、といった制限を逆算して物語を考えた」と谷口監督が話すと、黒田氏も「キャラクターの人数や、登場する舞台の数をまず頭に入れて、それを全12話にどう配置するかを計算して、シリーズ構成を作り上げた」と語っていました。

 サンジゲンがどのように本作を制作しているかは、下記を見ていただければよくわかるんじゃないかと。

『ID-0』の魅力を掘り起こします! サンジゲン掘削取材!! 第3回

サンジゲン掘削取材はこちらから

マヤとイドの2人は、本質的には似たもの同士!?

 ここでようやく、キャストのお2人の話題となりました。津田さんと金元さんはどちらも、オーディションで役が決まったとのこと。

 オーディションの際に津田さんがもらったマヤの設定は紙1枚で、それほど詳しいものではなかったそうです。マヤ役に選ばれたものの、実際にはどういう物語になるのか疑問に思っていた時に見たのが、佐咲紗花さんの歌う「ソーラン節」が流れる本作の特報PVで、津田さんとしてはさらに謎が深まったのだとか。

 「なぜソーラン節だったんですか?」という津田さんの疑問に対して、谷口監督は「宇宙のバックにクラシックを流すような普通のPVを作っても、他の多くの作品に埋もれてしまうと思った」と回答。

 そこでエスカベイト社の設定から労働歌をイメージしてソーラン節を使ったところ、リサーチャーの白土氏に「この設定なら炭坑節でしょう!」と怒られたそうです。それが記憶に残っていたため、「第8話でファルザさんに炭坑節を歌ってもらった」と、谷口監督は語っていました。

 一方、金元さんはクレアについて「カワイくて頭の回転が速いんだけど、エスカベイト社の人たちとずっと一緒にいるので、肝っ玉が据わっている」と語っていました。

 また金元さんは、キャストが決まって設定や世界観の説明を受けた際に、仮面の男役の子安武人さんが谷口監督に呼び出されて、2人だけで話し込んでいたのが印象に残っていると明かしていました。

『ID-0(アイディー・ゼロ)』
▲第9話では、仮面の男とイドの衝撃的な因縁が明らかになりました!

 谷口監督によると、キャストの中で子安さんだけには、あらかじめ本作の秘密をすべて教えたとのこと。それに対してイド役の興津和幸氏には、記憶を失っている役のため、あえて何も教えなかったそうです。興津氏がなにか聞きたそうなそぶりを見せても、「いや、来なくていいです」と追い返したのだとか。

 谷口監督が考えていたイド役の前提条件は、「メカで表情がわからないぶん、声に正義感があること」で、それが興津氏を選んだ理由だそうです。さらに、そんな興津氏との声のバランスを考えて、マヤ役に津田さんが選ばれたと話していました。

 第1~4話で特に印象に残っている場面について聞かれた津田さんは、「第2話でイドさんから“よくやった”と言われたのが、すごく嬉しかった」と答えていました。

 脚本の黒田氏によると、マヤとイドの関係は谷口監督からのオーダーなのだそうです。マジメなところや頭の回転が早いところなど、2人は本質的には似ていて、自分自身の所在のなさを、無意識のうちに共感しているとのこと。

『ID-0(アイディー・ゼロ)』
▲話が進んでいくにつれ、マヤに対するイドの態度がだんだんと信頼を帯びたものになってきています。今後はどうなるのでしょうか?

 黒田氏自身はマヤのことを、自分が事件に巻き込まれたことに対して、もっと怒ったり悔しがったりする女の子にしようかと思っていたそうですが、実際のマヤにはあまりそうしたそぶりがありません。それは過去のマヤが、いかにアカデミーの生活になじんでいなかったかの裏返しでもあると、黒田氏は語っていました。

CGアニメならではの、谷口監督の音声演出は?

 リサーチャーの白土氏は、『ID-0』においてSF的な設定の考証や、本作オリジナルの用語の考案を担当しています。とはいえ、Iマシンやミゲルジャンプといった本作のキーとなる設定の方向性は、谷口監督と脚本の黒田氏の間であらかじめ決まっていたそうです。「黒田さんの脚本は情報の書き方が的確だったので、自分はそれをもう少し付け加えるか、掘り下げるかぐらい」と、白土氏は語っていました。

 また白土氏は、主要人物の背後で軍や管制官の人たちが会話している、いわゆる“ガヤ”のセリフの執筆も担当したそうです。

 黒田氏によると「初めて谷口監督と組んだ『無限のリヴァイアス』では、ガヤセリフも自分で書いていたけど、谷口監督から“最後にオチをつけろ”と言われて大変だった」とのこと。そのため今回は白土氏にお願いしたと冗談交じりに語っていました。

 これに対して谷口監督は、「ガヤセリフにオチが必要なのは、オチ自体が重要なのではなく、セリフを言う役者さんが、オチに向かって演技を組み立てられるから」とコメント。それを聞いた金元さんは「演者のことを考えてくれているんですね」と、感銘を受けた様子でした。

 そんな話の流れから、話題は声優陣の演技へと移っていきました。本作の音声収録は映像こそあったものの、音声に合わせてCGキャラの動きを修正できるという方式になっています。そのため、セリフの長さをあまり意識せず自由に演技できたとそうです。

 マヤやクレアは生身の身体で表情があるため、Iマシンのキャラとはまた違ったようですが、それでもCGアニメーターの方に演技を伝えるように、「よりオーバーに演じてください」という指示があったと、津田さんは語っていました。

 谷口監督によると、どのCG会社でも「映像よりも先に音声がほしい」と言われるため、プレスコ(※音声を先に収録する制作方式)の現場を見学したりしていたそうです。

 谷口監督が過去に手がけたTVアニメ『プラネテス』は、いわゆる2D作画の作品ですが、この時に監督は、ラフ原画の画像を使って音声を収録し、その声の演技に合わせてアニメーターが作画を行うシステムを採用していたそうです。

 いろいろ研究した結果、このシステムがいいと考えて昇華させたのが、『ID-0』の収録スタイルとのこと。「『プラネテス』の時は定尺(セリフの長さ)を出していたけど、今回はそれも止めた」そうです。

 これは「今の声優さんはレベルが高いから、指定した長さにキッチリ収めてくる。でもそれだと、長さの範囲に芝居をせばめてしまうことになるから、それなら尺を出さなければいい」との考えに基づくもの。「このやり方は、音響や編集の技術スタッフの協力があったからできたものなので、感謝しています」と、谷口監督は語っていました。

 ちなみに津田さんは、「第7話で死体を見つけて驚いたマヤの顔が、CGとは思えないほどデフォルメされていて大好き」なのだそうです。これについては谷口監督も、「ああいった表現がもっと増えれば、セルルックCGの幅がより広がる」とコメントしていました。

『ID-0(アイディー・ゼロ)』
▲寡黙なイドとは対照的に、いろいろな表情を見せてくれるマヤ。津田さんの言う通り、従来のCG作品とは一線を画しているように思えます。

固有名詞にスタッフの名前をつけるのには、理由がある!

 ここから話題は、第5~8話の内容へと移りました。

 この話数では、エスカベイト社の面々が移動天体ラジーブから追跡されるというドラマが描かれます。天体が敵となるというユニークな展開について、黒田氏は「先ほどお話ししたように3Dモデルの数を考慮すると、あまり複雑な構造をした敵を出せないので……」と語っていました。

 ちなみにラジーブというのは、サンジゲンのアニメーションプロデューサーで、本作にもクレジットされている実在の人物から採られています。また同様に、掘削マシンの“マッツン”という名称も、サンジゲンの代表である松浦裕暁社長の愛称なのだとか。

 作品内の固有名詞に関係者の名前や愛称を使うことについて、谷口監督は「スタッフが打ち合わせの際に思わず笑ってしまうような名称を入れることで、スタッフの緊張がほぐれて、作品にプラスアルファが出てくる」と語っていました。

 これは以前から谷口監督が行っている手法で、この日登壇していた湯川氏も、過去に『プラネテス』で“通信衛星ユーカワ”として名前を使われているのだとか。

 谷口監督によると、この手法は演出の師匠である川瀬敏文監督から学んだもので、さらに大元をたどると富野由悠季監督もやっていた、伝統のある演出スタイルなのだそうです。

 一息ついたところで、津田さんから「マヤはなぜ、下着姿で他の人の前に出ても恥ずかしがらないんですか?」という質問がありました。これについて谷口監督は、「Iマシンが普及している社会になると、男女の性差などの意識が大きく変わり羞恥心がなくなると考えて、あえてやっている」と回答。

 また、平澤氏からは「クレアのお父さんを罵倒するセリフが最高」というコメントが飛び出しました。これに対して金元さんは「クレアはパパのことを信頼しているがゆえに、甘えて罵倒している」と語っていました。

 谷口監督は、クレアが敬語を使っている時はクルー全体に向かって話していて、「~だよ」と言っている時は、グレイマンに向かって報告していると解説。さらに「金元さんの声はいい意味で硬質的なので、硬質な声の人があえて“パパ”ということで独特の味わいになる」と、クレアがパパと呼ぶ回数を増やしたのだそうです。

『ID-0(アイディー・ゼロ)』

『ID-0』は、今の日本のセルルックCGの最高峰です!

 イベントもいよいよ終盤になり、第9話以降の展開についての話題に。今後の見どころを聞かれた黒田氏は「子安さんの声が裏返るんですよ」とコメント。「子安さんがああいったお芝居をするのは今までに聞いたことがないので、ぜひ注目してください」とのことです。

 「では、今後は子安さんに注目ですか?」と聞かれた谷口監督は、「もちろん、何も知らないイドさんや、マヤさんがそこにどう巻き込まれていくかについても、注目してください」と語っていました。

 ちなみに『ID-0』は、なんと最終話放送の1カ月以上前の5月中旬に、全話が完成していたそうです。これにはチーフプロデューサーの湯川氏も「プロデューサー歴20年で、こんなことは初めて」と語っていました。

 サンジゲンの平澤氏によると、『ID-0』の制作は、4班が各3回のローテーションを組んでおり、第9話からは各班が3ローテーション目に手がけた話数になるとのこと。スタッフが経験を積んできた結果、平澤氏自身も「おおっ!」と思うようなCG作画のカットが出てきているそうです。

 「『ID-0』は、今の日本のセルルックCGの最高峰だと思っている」と谷口監督。「今はまだセルルックCGを見慣れていないから「気持ち悪い」と言われてしまうかもしれませんが、今後セルルックCGを見慣れてくれば、これが優れた表現だとわかってもらえる」と語っていました。

 そして谷口監督は、「与えられた期限と予算の枠の中で、今のセルルックCGがここまでできるということを、もっと多くの人に知ってほしい」と語って、イベントを締めくくりました。

 予定されていた出演者以外にも、アニメーションキャラクター原案の村田蓮爾氏やメカニックデザインの片貝文洋氏が飛び入りで参加した他、オープニングテーマ『ID-0』を歌っている佐咲紗花さんもプライベートで来場するなど、ファンにとってはたまらない空間となっていました。いよいよクライマックスへと向かう『ID-0』。皆さんもお見逃しないように!

(C)ID-0 Project

データ

▼『ID-0』Blu-ray BOX
■発売元:バンダイビジュアル
■品番:BCXA-1250
■発売日:2017年8月29日
■価格:36,000円+税
 
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▼『ID-0』DVD BOX
■発売元:バンダイビジュアル
■品番:BCBA-4841
■発売日:2017年8月29日
■価格:18,000円+税
 
■『ID-0』DVD BOXの購入はこちら
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