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2017年8月2日(水)

『アライアンス・アライブ』松浦P&Dと『アラアラ』愛がすごい新潟・COMG!中条店に行ってきた

文:まさん

 フリューから6月22日に発売された、3DS用RPG『アライアンス・アライブ』。本作のプロデューサー&ディレクターを務める松浦正尭さんと一緒に、新潟県胎内市にあるTVゲーム&携帯電話ショップ“COMG!中条店”を訪問してきました。

『アライアンス・アライブ』

 『アライアンス・アライブ(以下、アラアラ)』は、種族や性別、年齢、立場が異なる9人の主人公たちを操作し、視点を変えながら物語を進めるファンタジー群像劇RPGです。

 誰でも楽しめる戦闘バランスと個性的なキャラクターたちによる物語が魅力的で、発売されて以降、各通販サイトやゲームショップなどで多くのRPGファンから好評価を得ています。

 今回は、ゲームショップとしては異例と言えるほどの力を入れた宣伝で『アラアラ』制作陣も注目していた、新潟県胎内市にあるゲームショップ“COMG!中条店”に突撃取材!

『アライアンス・アライブ』

 本作のプロデューサー&ディレクターを務める松浦正尭さんとともに、風光明媚な新潟県を観光しながら中条店まで行ってきました!

第1章 始まりは新潟の都 天命の4人

 みなさん、こんにちは! 担当ライターのまさんです。いつもの趣味だだ漏れな『アライアンス・アライブ』企画記事とはちょっと趣向を変えて、今回は松浦さんと一緒に新潟まで取材旅行に行ってきました。

『アライアンス・アライブ』

 と言っても、何が何だかよくわからない人も多いと思うので経緯を説明しましょう。始まりは、取材旅行より1週間ほど前までさかのぼります。企画記事をひと通り終えてほっとしていたある日。フリューさんから突然「COMG!中条店さんまで応援に行きませんか?」という連絡が入りました。

 COMG!中条店……どこかで聞いたことがあるな、とTwitterを見て納得。Twitterの担当者がかなりのゲーム好きで有名なお店だったのです。特に『アラアラ』の宣伝には力を入れており、体験版を46時間プレイしたとか! これはガチだぞ。

 その熱心な活動に心を打たれた松浦さんが、ぜひ中条店の人に会いたいとのこと。なるほど。個人的にも興味があったので、そうと決まれば……というわけで急遽、6月28日の水曜日に新潟まで行くことになりました。

『アライアンス・アライブ』
▲6月28日は全国的に雨だったのですが、新潟だけは快晴でした!

 当日は松浦さんが諸事情により後から合流することになりました。なので、先にボクと担当編集、フリューの宣伝担当さんの3人が新潟駅に降り立ったのです。実は宣伝担当さんは新潟出身とのことで、ちょうどお昼の時間だったのでオススメの新潟グルメを食べに行きましょう! ということになりました。

『アライアンス・アライブ』
▲先にお昼を食べてしまうことになり松浦さんには申し訳ないですが、仕方ないね。遅くなるのがいけないとティギーちゃんも言っていますよ。
『アライアンス・アライブ』
▲新潟出身の宣伝担当さんの心強さに、ロビンスを重ねちゃいました! 初めての新潟だったボクと編集も新潟グルメにワクワクです。

 宣伝担当さんオススメのグルメは“タレかつ丼”! タレかつ丼とは、薄めのとんかつを甘辛の醤油ダレにくぐらせ、丼ぶりに乗せた新潟のご当地グルメです。前から食べたかったんですよね。『アラアラ』の話で盛り上がりつつ、到着したのは新潟駅からもほど近い“政家 新潟駅南店”さんです。

『アライアンス・アライブ』

 注文したのは、タレかつ丼に新潟の郷土料理“のっぺ”などがついた“新潟うんめもん三昧セット”。食べてみて、すぐ「うまい~~~っ!!」とグルメ漫画の流儀にのっとって言いたくなるくらいおいしかったです。

『アライアンス・アライブ』
▲タレかつ丼の奥がのっぺです。あっさりめの煮物といった感じでタレかつとの相性もバッチリでした。

 見た目からは想像できないほど食べ応えのあるカツは、染み込んだタレとよく調和していて箸が止まりません。そして、お米も間違いなくおいしい。これは、B級グルメどころか、もうA級グルメですよ! 越後みそを使った味噌汁ものっぺも、しっかりといい味が出ています。

『アライアンス・アライブ』

 デザートに、もちもちした食感がたまらない“笹団子アイス”もついてきました。優しい甘さに、笹団子の歯ごたえがよく合っていて、それを食べながらお茶を飲む。うまい……。ああ、満足、満足。

 はあ、堪能した。やっぱり、新潟の食は偉大ですね。政家さんはいろいろなお店の形態で新潟県内に展開していますので、皆さんも新潟に遊びに行く際はぜひ、おいしいタレかつ丼を食べてみてくださいね!

 では、タレかつ丼も食べたことだし、帰りましょうか……って、違う違う! 肝心の目的を達成してないじゃないですか。新潟グルメを堪能して思わず満足してしまいましたが、目的地は中条です。

 そんな感じで最初からグダグダなものの、遅れてきた松浦さんと合流した我々。なかなか幸先不安なスタートですが、果たしてどうなるやら……?

第2章 道の駅 手がかりを知る者

 新潟駅から中条までは車で約1時間。バイパスを抜け、車は快晴の新潟を走って行きます。なかなかの小旅行になりそうな感じだったので、道中でゲーム中の気になる質問を松浦さんにぶつけてみました。

 ちょうど、発売前のサンプル版と合わせると実質6周目のプレイ中だったので、聞きたかったことが山盛りだったんですよ。ここは完全に趣味です!

──あの、松浦さん。今『アライアンス・アライブ』の6周目をやっていて仲間も自力で150人以上集めたのですが、わからないことが多いんですよ。後半の散りばめられたネタについて聞いていいですか?

松浦:6周も遊んでるですか? いや、ありがとうございます。かなりやり込んでますね。

──でも、まだまだわからないことが多いんです。このゲームって、後半は情報を散りばめて、あえて直接語ってないことが多いですよね。例えば、“八卿会議”のメンバーってゲーム中に全員出てきてると思うんですけど……合ってます?

松浦:その答えがわかるように情報は置いています。最近はゲームに限らず、0から100までを起承転結で語るエンターテインメント性の高いストーリーのほうが満足度が高くなる傾向にありますが、プレイヤーが探索することで点と点を繋ぎ合わせて線にするといった、いわゆる“行間をプレイヤーが埋める遊び”ができるのはゲームならではなので、『アラアラ』ではあえて今の時代のトレンドとは真逆のシナリオ設計にしています。

──自分は古いRPGのマニアなので、自然とそういう遊び方をしちゃいますね。

松浦:世界観の謎解きもRPGの醍醐味の1つだと思いますが、やはりユーザーの皆さんはキャラクターたちの掛け合いが楽しくて、そういう方向にあまり意識がいかないみたいですね。設定はあくまでも世界観の理屈をつなげるための要素であって、表だって語るようなものではないので、意図的ではあるのですが(笑)。

──キャラクターが個性的で立ってますから、そこは仕方ないですよ。そうそう、あと、気になるのが魔族の(以下略)。

 と、こんな感じで、中条店に着くまで延々と『アラアラ』の話をし続けちゃいました。自分の考察が当たっていてニヤニヤしてしまうボク。内容は完璧なネタバレなので、今回の記事ではまったく明かせません……。

 というより下手な設定資料集を越えるレベルで聞きまくってしまったのですが、完全に答えを教えちゃうことはできませんので、世界観のヒントになるようなクリア後関連の話を、後日別の記事で紹介したいと考えています。

『アライアンス・アライブ』
▲ゲーム中に登場するNPCはただのモブではありません。彼らの会話をよく読んで、情報を繋ぎ合わせていくと隠された事実が浮かび上がってくるかもしれませんよ?

 そんな感じで話をしていると、車は途中休憩で“道の駅豊栄”に到着。ここは、なんと道の駅発祥の地だそうです。平日ということもあって人の姿はまばらでしたが、天気が快晴なので景色もよく、素晴らしい場所でした。

『アライアンス・アライブ』
『アライアンス・アライブ』
『アライアンス・アライブ』
▲松浦さんと記念碑を撮影したり、道の駅裏にあったダチョウのファームを撮影したりして和む我々。完全に観光気分。仕事しましょう。

 「あ、見てください松浦さん。ダチョウがいますよ!」「スワンソングですね」「アラアラらしい写真を撮りたいので、松浦さん試しに地面に埋まってみません?」「誰が引っこ抜くんですか」「おあーーーー!」などと、のんきな会話を繰り広げてしまいました。

第3章 潜入! COMG!中条店

 そんなこんなで、ついに新潟県胎内市にある“COMG!中条店”に到着!

『アライアンス・アライブ』

 中に入ってみると、ゲームだけでなく携帯電話などの売り場も設けられており、地方のゲームショップですが侮れないラインナップ。入ってすぐの目立つ場所に『アライアンス・アライブ』の特設売り場が設けられているのも、中条店らしさがあふれています。

『アライアンス・アライブ』
『アライアンス・アライブ』
▲中条店の人が作った『アライアンス・アライブ』の特設売り場。力の入り方に松浦さんも大興奮!

 出迎えてくれたCOMG!本部のバイヤーさんにTwitterの担当者を呼んでもらって、いよいよTwitterの中の人とご対面! ですが、お名前やお姿は秘密とのことなので、Twitterの中の人という形でご紹介させていただきます。

『アライアンス・アライブ』
▲右がTwitterの中の人(担当者)。何かあった時のために作っておいたというTwitterアイコンのお面で、松浦さんと一緒に記念撮影してくれました。何かあった時のためのお面……?

 早速、東京から持参してきた平尾リョウさん描き下ろし色紙をプレゼント。さらに、発売記念抽選会で配っていたコースターの全セットや非売品のポストカードといった関連グッズをお渡しすると、すごく喜んでくれてこちらもうれしい気持ちに。

『アライアンス・アライブ』
▲Twitterの中の人に色紙を持ってもらって、パンダ君と一緒にパシャリ。平尾さんの描き下ろし色紙は中条店に飾ってあるので、気になる人はぜひ見に行ってください!
『アライアンス・アライブ』
▲松浦さんがずっとどうやっているのか気になっていたという、パンダ君と一緒に撮影するテクニックも披露してもらいました。
『アライアンス・アライブ』
▲体験版配信開始時に作られた“大漁”と書かれたフリップ。こういった小物を自分で作ってディスプレイに利用しているそうです。

 せっかくなので中の人を交えて、いろいろと中条店について聞いてみることにしました。聞いてみることにしたのですが、松浦さんとボクと中の人がRPG全盛期ドンピシャ世代だったせいか、どんどん話題が脱線することに……。

──ものすごく気合の入ったディスプレイですが、キャラクターを切り抜いて飾っていたり、フリップなどを置いていたり、こうしたポップなどはご自分で作られたのですか?

中の人:はい。基本的にはメーカーさんからいただいた画像データなどを使っているのですが、ロビンスのようにゲーム画面から作ったものもあります。

『アライアンス・アライブ』

──もう『アライアンス・アライブ』を遊ばれていると思いますが、実際に製品版を遊んでみていかがでしたか?

中の人:まだロビンスを仲間にした辺りなのですが、本当におもしろいです! それにしても、この作品を作ってくれただけでうれしいのに、実際に松浦さんが訪ねてくれるなんて思ってもみませんでした。

松浦:中条店さんは、開発内では有名人なんですよ(笑)。とくに平尾さんが感激して、ぜひ色紙をプレゼントしたいとおっしゃっていたので、今回こちらまで来させていただきました。

 僕らとしても、無名の、まったくブランドのないタイトルをこれだけ推してくれるのは非常にありがたいです。

中の人:個人的に『レジェンド オブ レガシー』が大好きだったんです。『アライアンス・アライブ』も絶対“当たり”のゲームだと思っていたので、早い時点からアピールしないとダメだなって思っていました。

『アライアンス・アライブ』
▲松浦さんの前作にあたる『レジェンド オブ レガシー』。『アラアラ』とはまったく逆のアプローチで作られたRPGで、ハマる人は800時間以上遊ぶほどハマるとのこと。(※画像は『レジェンド オブ レガシー』のもの)

松浦:ありがとうございます。『アラアラ』が好きでも『レジェンド オブ レガシー』が合わない、もしくはその逆という人も多いので、両作を同じ“RPG”として好きでいていただけるのはうれしいです。

中の人:個人的には、どちらも大好きですね。小さいころから『サガ』シリーズが好きなので、一時期そういう尖ったRPGが出なくてガッカリしていたんです。

 でも、最近は2016年12月に河津秋敏さんの『サガ スカーレット グレイス』が発売され、小泉今日治さんがバトルデザインを手掛けた『アライアンス・アライブ』も発売されて、もう舞い上がるしかないです!

 普通のRPGよりも尖ったRPGのほうが好きですし、さらに村山吉隆さんのシナリオ! 本当に作ってくれただけで感謝の気持ちしかありません。

──自分も、たぶん似たような世代なのでまったく同感です(笑)。

松浦:『レジェンド オブ レガシー』にしろ『アラアラ』にしろ、その時々で自分が欲しいと思うRPGを作っているだけなので、ディレクターとしては評判がどうこう、売れ行きがどうこうというのは、正直なところ関心がないのですが、今回はプロデューサーも兼任することになったので“RPGに本当に必要なもの”というお題目を自分に課して、要素を作っていきました。

 ただ結局、自分が古いタイプの考え方の人間なので、DLCなし、ボイスなし、クエストなしなど、最近のトレンドとはどうしても真逆に尖ってしまうのですが、自分が出した答えは今作はこういうものだったということですね。

中の人:今はソーシャルゲーム全盛時代なので、こういうRPGが減ってしまったのが残念だとずっと思っていました。『アラアラ』のようなおもしろい作品がもっと売れてほしいです。

『アライアンス・アライブ』

松浦:でも、実は尖りすぎて結構ユーザーさんからは怒られます(笑)。たとえば、体験版を出したら「ボイスがないことだけが残念だ」と、かなり言われました。ですが、武器を固定にしたり、ボイスを固定にしたり、ストーリーやキャラクターを制限しすぎてしまうと、プレイヤーがゲームを遊ぶための多様性を奪ってしまう。

 僕にとって、ゲームにおけるストーリーやキャラクターは、ゲーム体験を楽しむうえでのモチベーションとしての要素の1つなので、“プレイヤーこそが唯一である”という前提は崩すことができないんです。ストーリーやキャラクターを全面に描きたいのであれば、ゲーム以外のメディアのほうが100%向いていると思っているので。ただ、こういう自分の考え方は、現代では圧倒的に古くなっているとも感じています。

──とはいえ、発売後の評判が高評価ですし、松浦さんの選択は間違ってないと思いますよ。

松浦:僕個人は「評判がよいから合っている、評判が悪いから間違っている」という考え方をあまりしたくないんですよね。例えば「『レジェンド オブ レガシー』はクソゲーだけど『アライアンス・アライブ』は楽しかった」という声も結構いただくのですが、総合的な内容としては、意図的にクオリティを三段階くらい上に引き上げたのでうれしく思っています。ただ、バトルのみに焦点を当てた場合、僕個人は『レジェンド オブ レガシー』のほうが面白いと思っているのも事実です。

 『アラアラ』の場合は、間口の広いRPGを作りたいと思ったので、ストーリーもバトルも忙しい現代人向けに“ゆるく遊べる”ということをテーマにしたので、目指す面白さのベクトルが違う両作の評判については、それぞれ作り手目線、遊び手目線で、かなり冷静に見ています。

──個人的に驚いたのが、ゲームデザインが小泉さんなので、バトルはシビアなバランス寄りだと思っていたんですよ。ですが、今回はすごく万人寄りのバランスになっていて、どんな遊び方も許容していますよね?

松浦:小泉さんが過去に作ったタイトルで、一番優しいバランスで作った作品を基準にバランスを取ったと聞きました。僕個人でプレイするには簡単すぎるのですが、『アラアラ』に関してはこのぐらいの優しさがベストだと思います。

 あえて、優しいゲームになっているのは次の世代への階段を作りたかったからなんですよ。これは、今までインタビューなどでも言っていないのですが、『アライアンス・アライブ』の水面下のテーマが“橋渡し”なんです。

中の人:若い人への橋渡しですか?

松浦:はい。厳密には年代は関係ないのですが、自分の考えるRPGの根源的な遊びの文化が途絶えてしまうことを危惧しているんです。ストーリーやキャラクターなど、エンターテインメントとして用意した要素だけを楽しむのではなく、その根幹となるゲームそのものを能動的に楽しむ文化というか……。

 『アラアラ』で言うと、使う武器やキャラクターだったり、方舟を手に入れた後の行動だったり、プレイヤーが自由になる部分を、わかりやすく、遊びやすく、今風に表現することで、プレイヤーに制限をかけなくても楽しんでもらいたいなと、そういう文化を次の世代に伝えたいと思って作っています。若い人でも、刺さる人には、きっと刺さるはずだと信じています。

──中条店の中の人さんも刺さるタイプの人なので、ものすごく店頭で推していますね。お客さんの反応はいかがでしたか?

中の人:予約数もかなり多く、店頭で購入してくれる方もたくさんいて、手ごたえは感じています。

松浦:COMG!中条店さんでは販売ランキングが1位になっていて、こちらが逆にビックリしましたよ(笑)。

『アライアンス・アライブ』
▲ランキング1位に堂々と輝く『アライアンス・アライブ』。うれしそうな松浦さんに、思わずボクらもニッコリ。

中の人:COMG!中条店だけではなく、今も全国的に品切れを起こしているみたいですね。中条店では比較的多めに発注をかけているので、すぐにご用意できるくらいの数を準備しています。(編集部注:それでも売り切れになることもあり、その都度再発注をかけているそうです。)

松浦:こうして、地元のゲームショップでゲームのおもしろさを伝えてくれるのは大きいですね。メーカーとしての宣伝はしますが、あくまでも宣伝でしかないので、実際にプレイしてくれた人の感想のほうが当然強いですから。

中の人:そうですね。ユーザーによる口コミは、なんだかんだ言って強いと思います。

松浦:今は、作り手とユーザーさんの距離が近いですから、ニーズに沿ったゲームが作りやすいいい時代になったと思います。

 ただ、それゆえに家庭用ゲームの作り方がビジネスとして古くなってきているのも事実で、作り手側が純粋に好きなゲームを作るチャンスが少なくなってきているのも事実だと思います。

──仕事柄似たような話を聞きますが、今はソーシャルゲームを作るか、自分で作りたい物を作れるインディーゲームに行ってしまうパターンが多いようですね。

松浦:自分と似た年代の人でバイタリティのある人を何人も知っていますが、基本的にはスマートフォンゲームの市場で台頭していますね。そういう人と自分の成功体験のレベルは天地の差があるので、専門知識や技術面での差別化に必死になっています(笑)。

 今回、中条店の方にお聞きしたかったのですが、『アライアンス・アライブ』は、ちゃんと“ロールプレイングゲーム”をしていましたか?

中の人:突然ですね(笑)。はい。すごくきちんとした“ロールプレイングゲーム”をしていましたよ。

──また、唐突にすごい質問をしてますね(笑)。

松浦:いや、一番大事なところですよ。最近は「ゲームとはなんぞや?」「ロールプレイングとはなんぞや?」みたいな禅問答のようなやりとりを、毎日のように自分の心の中でしているので。

中の人:ちゃんとしたRPGをやっている感じがしました。イベントでムービーを長々と見る感じではなくて、ゲームとしてしっかり楽しくて、ストーリーはちゃんと入ってくるのが本当によかったです。

松浦:いやあ、泣きそうですよ! そういうつもりで作っていたのでうれしいです。

 今は、僕を含めゲームユーザーの年齢層が上がって“RPGってこういうもの”という固定観念が強い時代なので、“RPGのお約束”を崩すのは、結構勇気が必要です。

 例えば、最近のRPGはとても親切に作られていて、“クエスト”という形で、最初に“目的”と“報酬”をユーザーに提示して、いつでもそれらをリストで見られるようになっていて、ミニマップに目的地をマーカーで表示してあるものが多いのですが、それがないゲームは「どこに行っていいのかわからない」「何をすればいいのか忘れてしまった」と怒られてしまうんですよ。

 『アラアラ』の場合は、目的や行き方をプレイヤーが決めて、行った先でプレイヤーが選択をするシナリオでもありますから、いわゆるクエスト制のお約束にはのっとれず、このあたりの導線を作るのは結構苦労しました。

 また、一つ一つのクエストを達成して、クエストリストをすべて埋めていく遊び方が一般的なので、1周で全てを遊び尽くさないと“損”しているように感じてしまう、という風潮も当然ありますので、だから宣伝でも「取り返しのつかない要素だらけです」と言ったりしていました(笑)。

──確かにそれはあるかもしれません。結局、実際に買って遊んでみるまではどんなゲームなのかわからないですし、遊んで損をしたくない、と思う人がものすごく増えたと思います。

中の人:確かに遊んでみないと、どういう内容なのかわからないゲームってありますね。だから、中条店では“中古ゲームどれでも無料で1日中遊べます”というサービスを行っているんですよ。実際に遊んでもらって、気に入ったら買ってもらおうという試みです。

『アライアンス・アライブ』

──それは、かなり思い切ってますね。1日中遊べてしまうと、クリアしてしまう可能性もあるのでは?

中の人:それでも、1日使って本当におもしろいゲームだったら、きっと買いたくなると思います。

 今は体験版もありますが、インターネット環境がない方や体験版が出ていないゲームは、どういうゲームなのかわからないじゃないですか。ゲーム本来のおもしろさは、自分で遊ばないとわからないと思うんです。特に、RPGはそうですよね。

松浦:その通りかもしれません。『アラアラ』も苦労したのは“宣伝”で、何をどう紹介してもネタバレそのものなので、“全要素の7割を紹介しても楽しめる内容”にする必要がありました。ストーリー展開や重要キャラクターには、一切触れずに発売を迎えるのは勇気が入りましたが、なんだかんだ言いつも、実際に手にとってもらった人に遊んでもらって、新鮮な気持ちで楽しんでもらう事が大事だと考えているので、そういう方針をとりました。

中の人:だからこそ、実際に遊んだ人たちからの評判がよくて、あちこちで売り切れているじゃないですか。きっと、皆さん、こういうゲームを待っていたのだと思います。

松浦:この手のニッチな市場を狙った企画は、今の時代はとても成立しづらいのですが、その隙間にうまく入り込めたという結果だと思います。といっても、今後こういったゲームが増えてくるかというと、自分はそうは思いません。今はゲームに対するあらゆる常識が変わってきているので、その変化に順応したゲームを作る必要があります。

──COMG!中条店さんとしても、昔と売れているゲームの傾向が違ってきていると感じますか?

中の人:RPGよりも直感的なアクションやFPSが売れている傾向がありますね。『コール オブ デューティ』シリーズや『グランド・セフト・オート』シリーズなどのシリーズ物も強いです。

 昔は、もっと『ドラクエ』や『FF』のような大作RPGが発売されたらお祭り騒ぎだったじゃないですか。そういう傾向がなくなってきている気がします。

 後は、弟がオンラインゲームを遊んでいのるですが「友だちとオンラインゲームをやっているから、他のコンシューマゲームをやる暇がない」とよく言っています。

松浦:ソーシャルゲームが流行る理由と似ていますね。オンラインゲームやソーシャルゲームは、コミュニケーションツールとしての側面が強いと思います。家庭用ゲームのキャラクターを自分なりに育てて強くするという遊び方とは、根本的に方向性が違う。今の時代は、そういうRPGらしい遊び方よりも“共通の話題”としてのゲームが望まれているのかもしれませんね。

──ソーシャルゲームだとイベントがあるので効率を求めざるをえない部分がありますよね。RPGだったら、好きなペースで自由に遊んでもいいのですが……。例えば、本作だったらビビアンに斧を持たせて戦わせても自由ですし。

松浦:そういうふうにゆるく遊んでほしいのですが、やはり最初から「オススメの武器はどれか教えてくれ」と言われてしまう時代なんですよ。最初に情報を完璧に知ったうえで遊びたいという人が根強い。

 だから、あえて『アライアンス・アライブ』はそういうプレイに対するリハビリとして作りました。強い武器をとらなくてもクリアできるし、ギルド員を全員集めなくてもクリアできます。また、攻略サイトを見るのも、見ないのも自由ですし、それも含めて自分で考えて、好き勝手にプレイして頂いた結果が“答え”という方針で作っています。

──松浦さんのゲームは、基本的に世界観が優先ですよね。『レジェンド オブ レガシー』の時も、敵が強い理由や精霊術の仕様など、世界観ありきで考えていると思っていました。

松浦:ただ、やはり世界観的な理屈よりも、懇切丁寧な解説や利便性を重視する層は多いです。この辺りは時代に合わせて考えて作る必要がある部分で、『アラアラ』ではシステムをストーリーと絡めて演出したり、キャラクターのセリフで目的を自然に説明したり、システムとシナリオが連動するように丁寧に作っています。これは完全に自分のポリシーですね。

第4章 COMG!と、本部と、中条店と

 話はどんどん盛り上がり、当初の滞在時間をオーバーして、RPG論へと発展する3人。コアなお店の中の人と、コアな開発者と、コアなインタビュアー(ボク)が合わさった結果、話題はどんどん脱線していきます。

『アライアンス・アライブ』

──話は変わりますが「COMG!中条店さんのTwitterを見て買いに来た」という方って結構来られるんですか?

中の人:Twitterを見て県外から来られた方がいました。ちょうど自分が休みをとっていたので、残念ながらお会いできていないのですが……。でも、Twitterでお店に来てくれる方もいるんだとわかりましたね。

 これからもおもしろいと思えるところをできるだけアピールしながら、続けていきたいです。それこそ『アラアラ』は、次回作に繋がってほしい気持ちがいっぱいあります。

──きっと松浦さんが次に作るのは『アライアンス・アライブ2』じゃないですよね。全然違うタイトルの作品で、全然違うアプローチの作品になるのでは?

松浦:はい。『アラアラ』の路線は、グラフィックを綺麗にしたり、ストーリーやキャラクター性を濃くしたり、単純なボリュームを増やしていくだけにしかなりませんから、そういう部分を続編として突き詰めるのではなく、『アライアンス・アライブ』とは、まったく違った体験ができる新しいゲームを作りたいと思っています。

中の人:それでも、こういうゲームを作ってくれて本当にうれしかったですよ。自分は、過去にゲームを遊ぶことを辞めていた時期がありました。自分が求めているゲームは、こういう方向性じゃないと思ってしまったんです。

松浦:そうなんですか。ちなみに、参考までに好きなゲームを教えてもらってもいいですか?

中の人:好きなゲームですか? 『幻想水滸伝』の1と2が好きでした。あとは『モンスターメーカー』シリーズの初期も好きですね。もちろん『サガ』シリーズも好きですし、『レジェンド オブ レガシー』も大好きです。

松浦:なるほど。『レジェンド オブ レガシー』が大好きだと言ってくれる人は、どこが好きになったのか気になってたんですよ。

中の人:もちろん、あのシステムですよ! ストーリーも自分で考えればいい作りなのが好きです。あの3人でこんな話をしてるんだなと、自分たちで想像できるくらいなのがいいんですよ。

 最近は、メーカーさんが叩かれることを恐れて説明しすぎている気がします。ユーザーである私たちに、媚びすぎてしまっているのではないかと思うんです。

松浦:確かにその風潮はあるかもしれませんが、時代の流れとして必然な部分だとも思います。

 自分的には、ユーザーさんに媚びる、媚びないという姿勢は特に関係なく、作品の軸となるコンセプトを見失わなければ、どういう評価を受けようが作り手側は後悔しないと思うので、それで新しいゲームが生まれるなら十分ではないでしょうか。“作り手がゲームを作りたいから作っている”という根底の部分は、昔も今も変わっていないと自分は信じています。

中の人:次回作を作ってほしいので、松浦さんにはこれからも頑張ってほしいです。自分が遊びたいゲームを作ってくれる人が現れたのが本当にうれしくて!

 それにしても、まさかわざわざ新潟まで来てもらえるとは思っていませんでした。必死になって、1年間Twitterをやってよかったです。

 どんどん盛り上がる3人でしたが、さすがに新幹線の時間もあるのでお開きに。最後にCOMG!本部から来られたバイヤーさんに、中条店について聞いてみました。

──Twitterで話題になっている中条店ですが、本部としてはどのようにとらえているのでしょうか?

バイヤー:本部としても、やる気のあるお店として予約をしっかり取れるのでありがたいです。中条店の担当者は、好きな気持ちを発信してくれている貴重なスタッフだと思っています。

──やはり、ちゃんと数字に表れるということですね。

バイヤー:はい。しっかり予約も入っていますし、Twitterを見て訪れてくれるお客様もいます。もちろん、直接「Twitterを見てきました」と言ってくるお客様は少ないのですが、見てくださっている方は多いようです。

 今後は全国に見ていただくだけではなく、近くに住むお客様に「こういうおもしろいお店があるよ」と伝えられると、地元のゲームが活性化すると考えています。

 現場で、できるだけのお客様にいい売り場を提供し、おもしろいゲームを伝えられるようにしたいというのがCOMG!全店での考え方です。

 いい売り場があると、他の店舗でも真似しようという流れになるんですよね。特に「来てみたい!」と思っていただけるような売り場ができているので、中条店は大成功だと思っています。

──他のゲームショップさんのTwitterを見ていると、基本的にはメーカーの宣伝文句をそのままつぶやいているところが多いですが、COMG!中条店さんはユーザーに近い目線のお店だと思いました。

バイヤー:そうですね。「ココがいいですよ」と、個人の好きな気持ちをどれだけ伝えられるかが重要なのだと思います。

──中条店さんは体験版を46時間もやり込んでますから、そういう部分でも好きなのが伝わりますね。おそらく、このやり込みは開発スタッフですら驚いたと思うんですよ。

バイヤー:ええ。そういうところがツイートに出ていると感じました。今回は店側としてもいい結果が出たと思うので、とても喜ばしいことだと思っています。

 狙ってしっかりヒットさせられると、店側としても売ることが楽しくなるんです。これからも、中条店には気になるゲームがあったらどんどん自信を持って発信していってほしいですね。新しい情報発信のやり方として、会社としても取り入れていきたいと考えています。

 今回フリューさんに来ていただいたことを知れば、きっと他の店舗もがんばろうという気持ちになると思います。

──ゲームのプロデューサーが直接店舗に来られることは、本当に珍しいと思います。

バイヤー:メーカーさんが直接来られること自体が珍しいですね。また、次のタイトルなどで引っ掛かるものがあれば、スタッフがどんどん発信していけるように応援していきたいです。

『アライアンス・アライブ』
『アライアンス・アライブ』
▲帰る前に「COMG!中条店さんで1本買って行こうと思っていたんですよ」と、新品の『アラアラ』を購入する松浦さん。ゲームをパッケージで買ってレシートをもらうのがうれしい、と顔をほころばせていました。

 名残は惜しいものの、COMG!中条店をあとにする我々。中条店さんの熱意に感動を覚えた1日でした。

 『アライアンス・アライブ』は、現在全国のゲームショップで好評発売中です。ダウンロード販売で購入するのもアリですが、地元のゲームショップで購入すると今時珍しい説明書付きのパッケージ版が手に入ります。まだ買っていない人は、ぜひパッケージ版を購入して遊んでみてくださいね!

第5章 “girls mignon”ランデヴー

 新潟駅近くまで車で戻ってきた我々。せっかく新潟まで来ましたので、もう1カ所寄っておきたい場所がありました。

 『アライアンス・アライブ』を発売したフリューは、コンシューマゲーム事業の他に、ゲームセンターなどでよく見かける“プリントシール機”もたくさん出しているんです。

 そんなフリューのプリントシール機専門店“girls mignon(ガールズミニョン)”が、新潟アルタ内にあるので立ち寄ってみました! “girls mignon”は新潟以外にも全国18店舗で展開しています。

『アライアンス・アライブ』
『アライアンス・アライブ』
▲最新のプリントシール機がズラリと並んだ“girls mignon 新潟アルタ店”。新潟アルタの2階にあります。
『アライアンス・アライブ』
『アライアンス・アライブ』
▲店内はとってもおしゃれな雰囲気。エリア内に椅子や鏡も用意されていて、順番待ちも苦にならなそうです。

(C)FURYU Corporation.

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