2017年7月22日(土)
『プリンセス・プリンシパル』の目標は“何度でも見られる作品”。橘正紀監督、梶浦由記さん、湯川淳CPインタビュー後編
TOKYO MX・KBS京都・サンテレビ・BS11・AT-X・ニコニコ動画・バンダイチャンネルなどで放送&配信中のアニメ『プリンセス・プリンシパル』。前編に引き続き、監督の橘正紀さん。音楽の梶浦由記さん。バンダイビジュアルの湯川淳チーフプロデューサーのインタビューをお届けします。
『プリンセス・プリンシパル』は、19世紀末の架空のロンドンを舞台に5人の少女たちがスパイ活動を繰り広げる、完全オリジナルのガールズスパイアクションアニメです。放送を見て、作り込まれた世界設定やスパイアクションに驚いた人も多いのではないでしょうか。
インタビューの後編では、第2話までの放送を踏まえた音楽制作の話やお気に入りのキャラクター。今後の展開など、気になる部分を伺ってみました。
──スパイアクションをアニメとして描くうえで気をつけたことや、見てほしいところについて教えてください。
橘:スパイアクションなので、前編でもお話ししたように、脚本の時から「リテラシーを高めていこう」というやり取りがありました。特に、何度も繰り返し見ることでわかる仕掛けを入れていくことを意識しています。また、演出の際にキャラクターの感情のラインなどにも気を配っていて、刺激的に見せていけるようにも気を使いました。音響の岩浪さん(岩浪美和氏)も「これはハードボイルド作品です」といつも心がけてくださっていますが、私もそうした雰囲気を大事に作っています。
──梶浦さんは、本作でどれくらいの楽曲を作成されたのでしょうか? また、橘監督や湯川さんが特にお気に入りだという曲はありますか?
梶浦:40曲くらいですね。思ったよりは少なかったです。
橘:全部すばらしいので難しいですね(笑)。梶浦さんに発注した時に、一番楽しみにしていたのがこれから先のエピソードで流れる“歌”なんですよ。これは、とあるキャラクターが歌ってくれるのですが、それがすごく気に入っています。
湯川:あれは素晴らしいですね!
梶浦:そう言っていただけてよかったです(笑)。
橘:ついこの間も、編集が終わってからずっと流していたのですが、これはしんみりくるなと感じました。物語的に「えっ、ここで使うの!?」という感じで流れるのですが、見た人の心にすごくグサっとくると思います。
梶浦:その曲が流れる話は、私もすごく好きなエピソードですね。
湯川:担当話数のコンテがアップした時にも、「これはイイよ」と話題になっていました。詳しくは言えないのですが、“歌”ということだけ頭の片隅に置いておいていただければ。
梶浦:そのエピソードの重要な場面で流れる曲なので「これはいい曲を書かないといけない!」って意気込んで作りました。あまり大げさにしてもダメですし、大げさなオケをつけてもダメな曲なんです。だから、逆にオモチャっぽいオケを作ってみたのですが、それがうまくハマったと思っています。
──橘監督も湯川さんも、本当にその曲を大絶賛していますね。
湯川:私は関係者用のCDをもらって曲を聴いているのですが、毎日ヘビーローテーションしているくらいです(笑)。メインテーマも好きですし、特にメロディアスな曲が本当に好きなんです。「この絶妙なほろ苦さは、どうやったら出せるのだろう?」と思いながら、気付いたら何度も聞いてしまう。もう、不思議で本当に素晴らしかったです。
──実際に流れるエピソードが楽しみです。このインタビューが掲載されるころには第2話の放送・配信が終わっているかと思いますが、今後、皆さんが考える注目ポイントや注目のキャラクター。音楽面での聞きどころなどを教えていただけますか?
橘:第2話を見ると、皆さん「アレっ?」と思うかもしれません。実は、本作では時系列をちょっといじっているんですよ。この話数はどの子が活躍した話数なのかという部分や、それぞれのキャラが合流してくる部分などもミックスして、話数の順番を入れ替えています。
サブタイトルを見ると“case13”、“case1”のように少し情報が出ていますが、話を見る時は、いったんそういったことを忘れて楽しんでいただければと思っています。時系列が気になった人は「このタイミングでこういうことがあったのかな?」といった部分にも注目してもらえると、よりおもしろくなるのではないでしょうか。音楽に関しては、梶浦さんに作っていただいたので全編カッコイイですよ。
湯川:私も、音楽に関しては全編素晴らしいと思います。実際にヘビーローテーションして聞いてしまうくらいなので、すべてです(笑)。
橘:絵作りに関しても、自分がこれまで作ってきた作品や、付き合ってきた人たちとの集大成みたいな形で、持てる技術を全部つぎ込んでいます。そうしたところも、楽しんでいただけたら嬉しいですね。もっとも、スタジオはやりすぎてヒイヒイ言っているのですが……(笑)。スチームパンクを作る時点で大変なのはわかっていたのですが、ほとんどのスタッフが完璧を求めるので予想以上に大変でした。
梶浦:本当にすごいこだわっていますよ。レンガの積み方をイギリス積みにしようとか、細かい背景まで全部こだわって作られているんです。
橘:背景も細かく作っていて、美術監修を池信孝さん。美術監督を杉浦美穂さんという女性の方に入っていただいています。背景はギリギリまで決まらなかったのですが、結果的に最高のスタッフがそろったので、本当にうれしかったです。
湯川:多くのスタッフから「この仕事はかなりカロリーが高いですね」と言われていたのですが、それでも引き受けていただいて、本当にありがたかったです。
梶浦:見ている場面をどのシーンで止めても、本当に背景がキレイなんですよ。学園の中も美しいですし、あの学校に通いたいと思っちゃいました(笑)。
──学校と言えば、本作は学園でのシーンとスパイとして活動するシーンがあります。そうした異なる場面での絵作りや音作りで、注意したポイントはありますか?
梶浦:“クセをつけるのはアクションシーンだけにしよう”と考えていました。アクションシーンの音楽は、軽くジャズを取り入れてクールな方に持って行ったのですが、全部そうしてしまうとクールすぎてしまうので、あえてアクションシーンだけにしています。
と言っても、そのテイストが入った曲はそこまで多くないんですよ。全部で5曲くらいです。逆に世界観に関する曲は、あまりクセがあると話から浮いてしまうので、割と後ろに沈むようにクセをなくしています。世界観を演出する音楽って、実は聞こえないほうがいいと思っているんですよ。重厚な物はきちんと重厚に、キラキラした物はキラキラした物として作る、というコンセプトで作っていますね。
──そこは意識して分けていると。
梶浦:ええ。結構はっきりと分かれていますね。世界観寄りの音楽と学園の軽い音楽と、彼女たちのアクションのちょっとコケティッシュなクールさを出す音楽と、完全に分けました。同じようなメロディーが入っている曲もありますが、なるべく沈めたい音楽と、ちょっと前に出したい音楽で作り分けています。
橘:“女子高生がスパイをやっている”という部分でギャップを狙っていこうという話があったのですが、作ってみたら学校を根城にしているけど、あまり女子高生をやっているシーンがないんですよ(笑)。第2話で少し出ましたが、周りに生徒がいないと仲間うちではスパイモードに入ってしまうので、今後は生徒の中でどうやって正体を隠しているのかを描いていこうと考えています。
──確かに、言われてみると女子高生がスパイをやっているというよりも、“スパイが女子高生を演じている”感じですね。
湯川:ええ。PVなどでも触れているとおり、彼女たちは職業がスパイで、任務として女子高校生をしています。
橘:彼女たちの中では、ドロシーが若干年上なんですよね。一応、ドロシーも学校に友だちがいて第2話にも出てきていますが、二十歳なのに女子高生のフリをしている女性が、どうやって友だちの間で女子高生と言い張りながら正体を隠して生活しているんだろう、と考えました。
彼女の友人たちの性格はこんな感じなのかな、という設定を自分の中で作っています。たとえば、周囲の人たちにはあまり迎合しないような連中とつるんでいるのではないかと考え、アフレコの時に「他のキャピキャピした人たちよりも、若干精神年齢高めで大人っぽいドロシーに釣り合う友だちとして演じてください」とお願いしていたりします。彼女たちの人間関係はそれなりに考えているので、そういった部分も楽しみながら学園生活を描けていければと思っています。
湯川:学生パートは、基本的に息抜きだと思っています。だから、学生のシーンは色味も明るくなってると思うんですよ。そこでホッと一息入れていただいて、あとに控えているアクションシーンに集中してもらえれば、という考えで作っています。
──なるほど。キャラクターの話が出たのでお聞きしたいのですが、これまで制作してきて、皆さんが一番お気に入りになったキャラクターを教えていただけますか?
梶浦:これはアンジェの物語なので、どうしてもアンジェに対する思い入れが強くなってしまいますね。皆さんもそうだと思いますが、私はお気に入りの話数に出てきた“あるキャラクター”がすごく好きなので、なかなか難しいですね。プリンセスもすごくいいキャラですよ。
基本的に、この作品は女の子たちが自立していてカッコいいので、みんな好きです。アニメを見ている女性の方は、あまり賢くない女の子が好きじゃない人もいると思うんですよ。ですが、本作に登場する女の子たちは、ちゃんと考えて動いている賢い女の子たちなので、女性の方もハマって好きになれるのではないでしょうか?
橘:私は監督として作品を作っているので、誰か1人というのは決められないですね。とは言え、本作はアンジェの物語なので、一番彼女を気にして作っているところはあります。アンジェは本当のことを言わないでウソをつくし、仲間にも心に壁を作ってるキャラクターなんですよ。
この子が何を思って最終的にどこへ向かうのかを考えて掘り下げながら作っているので、バックボーンなどを考えながら「アンジェはいったいどういう子なんだろう?」と常に気にしています。アンジェはつかみどころがないけれど、監督である自分が一番知っていないといけないキャラクターなので、そういう意味では、アンジェが一番気になって考えなければいけないキャラクターだと思っています。
湯川:自分もプロデューサーなのでキャラクター全員と言いたいところなのですが……ドロシー推しですね。ドロシーが自分の娘だったらよかったのに、と思うくらいです(笑)。
橘:ドロシーは、スタッフの中でもすごく人気が高いキャラクターなんですよ。
梶浦:私も、ドロシーはもともと好きだったのですが、色っぽくていいですね。すごく大人な感じで素敵です。
──それでは最後に、本作を見てくれているファンにひと言お願いいたします。
梶浦:音楽も作品にマッチしているといいな、と思いながらカッコいい曲を作ったつもりですので、そこも合わせてお楽しみいただけると嬉しいです。本当におもしろい作品なので、私もドキドキしながら見ていますし、絶対最後まで生で見ようと思っています。
湯川:先ほど監督がおっしゃったように、本作は橘監督の集大成的な作品で、今のところその言葉に恥じない作品になっていると思います。最後まできちんと走りきることができれば、本当にスゴイ作品になると思うので、厳しいスケジュールをプロデューサーとしてドキドキしながら見守っています(笑)。作り手側もすごい達成感のある作品になっていると思いますし、最後まで見ていただいた人も、きっと達成感のある作品になると思います。
橘:スチームパンクは、いつかやりたいと思っていました。プロデューサーから「スチームパンクはどうですか?」と言われた時に、このチャンスを逃してはいけないと思ったので、本気で取り掛かっています。自分が見たかったスチームパンクアニメというものを本作にすべて突っ込んでいて、とにかくお話も映像も音楽も、全力投球でスタッフがかかわってくれていて、何度でも見られるスルメのようなアニメになるべく、がんばって作っています。1回見たあとも何回も見返せるように見どころをいっぱい詰めて作っているので、楽しんでいただけたら幸いです。
『プリンセス・プリンシパル』をより深く理解するには……?
2回にわたってインタビューをお届けしてきましたが、正直まだ第2話放送・配信後の時点でお話しいただけることしか掲載できていないため、まだまだわからないところもたくさん。
インタビューでも橘監督が言っているとおり、何度か見ないと物語を理解できないところもありますが、そんな本作をより深く理解する2つのコンテンツがあります。せっかくなので、ここでその2つを紹介しましょう。
まず1つめは、Webラジオ『プリプリ秘密レポート』。アンジェ役・今村彩夏さんとドロシー役・大地葉さんがパーソナリティを担当するこのラジオでは、次回予告の他に、作中で皆さんが気になるであろう疑問質問をフォローしてくれます。何より、2人のトークそのものがおもしろいので、ぜひ聞いてみてくださいね。
そして2つめは、『プリンセス・プリンシパル』公式Twitter。こちらでは、本作の最新情報に加えて、インタビューにも参加していただいた湯川CPがさまざまなウラ話を披露してくれています。
最初にナレーションを入れるかどうかは、脚本会議で議論になりました。結果、世界観に関しては分かりやす方が良いだろう、ということでナレーションを入れました。話の途中で入れるよりも最初に世界観を説明して、キャラクターの話に専念しようとした訳です。BV湯川 #pripri
TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』 (@pripri_anime) 2017年7月16日
コントロールの会議室にいる、軍服を着ている大佐は軍部から配属された人間で、Lたちと違う所属の人間です。このことから共和国内も一枚岩でないことを表しています。BV湯川 #pripri
TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』 (@pripri_anime) 2017年7月16日
Webラジオと公式Twitterなどで情報をフォローすれば、本作をより楽しめること間違いなし! ぜひぜひ本作をすみずみまで味わいつくしてくださいね。
TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』
【放送・配信情報】
TOKYO MX:7月9日より毎週日曜 23:00
KBS京都:7月9日より毎週日曜 23:30
サンテレビ:7月9日より毎週日曜 25:00
BS11:7月11日より毎週火曜 24:30
AT-X:7月14日より毎週金曜 20:00
※リピート放送 毎週月曜 12:00/毎週水曜日28:00
ニコニコ生放送:7月16日より毎週日曜日 22:30に見逃し配信
ニコニコ動画、バンダイチャンネル他:7月12日より毎週水曜正午に最新エピソードを配信
ラジオ『プリプリ秘密レポート』:毎週日曜日 23:30に更新
【スタッフ】(※敬称略)
監督:橘正紀
シリーズ構成・脚本:大河内一楼
キャラクター原案:黒星紅白
キャラクターデザイン・総作画監督:秋谷有紀恵
総作画監督:西尾公伯
コンセプトアート:六七質
メカニカルデザイン:片貝文洋
リサーチャー:白土晴一
設定協力:速水螺旋人
プロップデザイン:あきづきりょう
音楽:梶浦由記
音響監督:岩波美和
美術監督:杉浦美穂
美術監修:池信孝
美術設定:大原盛仁、谷内優穂
色彩設計:津守裕子
HOA(Head of 3D Animation):トライスラッシュ
グラフィックアート:荒木宏文
撮影監督:若林優(T2 studio)
編集:定松剛(サテライト)
アニメーション制作:Studio 3Hz、アクタス
【出演声優】(※敬称略)
アンジェ:今村彩夏
プリンセス:関根明良
ドロシー:大地葉
ベアトリス:影山灯
ちせ:古木のぞみ
スマートフォンアプリゲーム同時展開決定
『プリンセス・プリンシパル』のスマートフォンアプリゲームの事前登録を実施中。登録者数が増えていくことによって、ゲームスタート時にもらえる特典が豪華になるのでお見逃しないように!
【ご報告】事前登録数が1万人を突破いたしました!これで「★5 ちせ+ダイヤ250個」プレゼントが確定です。皆様ありがとうございます!
『プリンセス・プリンシパル GOM』公式 (@pripri_game) 2017年7月20日
次の目標は2万人突破!引き続き皆様のご登録をお待ちしております!!https://t.co/GtV8rXfw6F#pripri #prigom pic.twitter.com/benSRs0lpP
(C)Princess Principal Project
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