2017年8月24日(木)
2018年下半期に発売予定のPS4/PC用ソフト『シェンムー3』を手がける、鈴木裕さんへのインタビューを掲載する。
本作は、ドリームキャストで発売された『シェンムー』シリーズのナンバリング3作目。キックスターターという形でプロジェクトが再始動し、注目を集めた。
ドイツ・ケルンで行われているgamescom(ゲームズコム)2017の会場で、『シェンムー3』でプロデューサーとディレクターを兼任する鈴木裕さんへのインタビューを実施した。最近発表されたDeep Silverとの提携や開発進捗、新要素など、気になることを質問しているのでご覧いただきたい。
――開発状況はいかがでしょうか?
環境やステージの進捗はとてもいいですね。全体の7割くらいはいっているのではないでしょうか。
光の設定もいい具合にできてきていて、室内のライティング調整に入っています。時間の変化への対応はまだ微調整している段階ですね。
――発売の延期がアナウンスされた際に、「前作でできなかったような、新たな可能性」というワードがありました。こちら、どのようなことなのでしょうか?
Deep Silverさんとの提携を先日発表いたしました。おそらくは締結することが見えている状況で映像を公開しました。提携することで開発が安定するので、企画のボリュームを出したいと考えました。その結果として開発期間が伸びるという前向きなアナウンスでした。
PVにも出てきた2つめに訪れるエリアは、当初の想定と比べてボリュームが3倍くらいになり、オープンワールドらしくなりました。最初の予算ではオープンワールドは難しいと思っていたのですが、どうやら形にできそうですね。
――それはうれしいニュースですね。
そうですね。『シェンムー』に望むことのBest3がありまして、第1位は今後のストーリーを知りたい、第2位はオープンワールド、そして第3位がフォークリフト。なぜその2つにフォークリフトが並ぶのかなと(笑)。
――E3でタイトルが発表された前後に、フォークリフトの画像をツイッターに上げられたのが話題になったことを覚えています。
個人的にはフォークリフトに変わるような、ユンボあたりを持ってきたいと思っているんですが……まだ皆さんの中ではフォークリフトなんですよね。
――当時、ひたすら作業したインパクトが強く、忘れられないのかもしれません。
物語は続きをお見せするとしても、2番目のオープンワールドを実現するのは難しかったのですが、なんらかの形でお届けできると思います。そちらが先ほどへの答えです。
――フォークリフトを含め、ミニゲームは外せない要素だと思うのですが、どのようなものが入るのでしょうか?
具体的な内容は言えません。ただ、『1』や『2』ではミニゲームがたくさんありました。ところが、ミニゲーム同士や各要素とのつながりが弱いことが自分の中での心残りでした。
1つの完成度はそこまででもなくても、オープンワールドの中での繋がりを出していき、広げていきたいんですね。
いろいろな要素とのつながりになるのですが、アイテムは拾って入手する以外にも、お金で買うこともできます。ギャンブルで手に入れた景品を交換所に持っていき買い取ってもらったり、景品を質屋で売却してお金を手に入れることもできる。
そうすると“技書”を買えてスキルを覚えて強くなり、ボスを倒せる。このようにゲームの進行にからんでくるような構成にしています。
僕らは“シェンムーワールド”の中で経済を回せるようにしたいと考えています。そうすると前よりもオープンワールドである意味が出てくるので。
――スキルを覚えていく際にはツリーのようなものがあるのでしょうか?
スキルツリーはそこまで複雑ではないのですが、やる予定です。難しいと構えてしまうので、意識しなくてもいろいろなことをやると埋まっていくものです。ただ、ツリーを見ながら意識的に集めていったほうがより楽しめると思います。
もちろん、スキルツリーをやらなくてもゲームはちゃんと進めます。奥義を連発してカッコよく勝つのか、ギリギリで勝つのか、それくらいの違いにしたいです。
――ロゴが変わったことについて公式サイトでも説明がありましたが、改めてお話いただけますか?
実は漢字の“莎木”というロゴは書をやっていた父が書いたんですね。「愛すべき友を持て」という字は母に書いてもらいました。ただ、できれば自分で書いたほうがいいとは思っていたんですよ。
ある時に、自分がどれくらい書けるのかわからないが、やってみようと思いました。何枚か書いてみたところ、ちょっとカッコがついたので、クリエイターらしさや自分らしさが出る自分の字にしたほうがいいだろうと思い、変更しました。
――『1』や『2』を知らない、遊んでいない人にむけた施策は用意されるのでしょうか?
『1』や『2』を知らなくてもゲームを遊べるようには作ります。ただ、知っているほうがより楽しめるのは確か。『2』の時、15分程度の『1』のムービーを入れたんですが、そこまで大げさなものではなく、イメージと文章ベースで用意しようと思います。
しかし、あまりにもとってつけたようなものは野暮ったいので、主要なシリーズキャラに電話をして話せる企画を入れる予定です。
――それはリアル世界で電話をするのですか? それともゲーム内でするのでしょうか?
ゲーム内になります。例えばゴローに電話すれば「ちゃ~っす、アニキ」と言って、当時の話をしてくる。カナダに行っている望に電話すると、その様子を話してくる。電話の会話や回想によって、初めて遊んだ人が過去にあったことを適度に補っていけます。
……まあ、山奥に国際電話がつながる電話があったのかはわかりませんが、ゲームでリアルに寄せすぎてもおもしろくないので、そこは割り切りました。
――過去シリーズのバトルでは『バーチャファイター』の技が入っていましたが、本作ではどうなるのでしょうか?
『1』や『2』は『バーチャファイター』のエンジンを積んでいたので技を出せました。今回は新しいエンジンによってシステムを一新しているので、できません。ただ、八極拳の代表的な技は使えるようにしたいと考えています。
――昨年バッカーの皆さんと横浜を歩かれていましたが、どのような話しをされましたか?
せっかく日本に来ていただくので、鎌倉のような『シェンムー』らしい街を歩きたかった。また、横浜中華街はインパクトがあるので話しながらご飯を食べました。ゲームの話をする人もいれば、まったく関係のない話をされる人もいましたね。
国も人も違うので表現の仕方が違うんですよ。言葉が少なくても情熱を秘めている人がいれば、とめどなく言葉が出てくる人もいる。1日という長い時間を皆さんと過ごしたので、それぞれの方の思いは染み込んできました。とてもいい体験をさせていただきました。
――約15年ぶりに『シェンムー』を開発し、どのようなことを感じていますか?
以前にセガで開発していた時には部下が200人くらいいて、その中から必要なメンバーや一緒に仕事をしたいメンバーを集めて、それこそ全社プロジェクトとしてやれました。
今回は開発体制が違ううえに予算が限られた中で、派遣の人を中心にどのようにして最高効率を出していくのかがポイント。そこに苦労を感じています。
ただ、強みとしてはこの17年間でゲームエンジンが非常に進化したため、開発効率が高まっているところがあります。一方でブラックボックスとなり、細かいところがやりにくくなっているところもあります。『1』や『2』のようにできないことがある反面、ここまでキレイなグラフィックは以前ではできませんでした。プラスマイナスを考えると……難しいところですね(苦笑)。
そのような状況の中で、どうすればファンに満足していただけるものを作れるのか、どのようにゲームを構成していくのがいいか、それらを考えることが大事だと思っています。もう少しお時間をいただくのですが、納得いただけるものになるよう、開発メンバーと頑張っているので、よろしくお願いいたします。
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