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2017年9月24日(日)

我々はeスポーツとはあえて言わない。SIEJA盛田厚プレジデントが語るPSの展望【TGS2017】

文:電撃PlayStation

 9月21日から24日まで開催されている東京ゲームショウ2017。本イベントにあわせて、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアの盛田厚プレジデントにインタビューを実施した。

『TGS2017』
▲ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアの盛田厚プレジデント。

地道な活動でしか達成できないこと

――先日のカンファレンスではPlayStation 4の世界累計実売台数が6040万台を突破したとのことでしたが、この台数に至った要因はどこにあるとお考えですか?

盛田厚氏(以下、敬称略):1つはPS4のスペックやシェア機能を含めたインターネットとの親和性というものが、総合的にユーザーに受け入れられたのが大きかったと思います。

 もう1つ、タイトルをそろえられたことも大きな要因だと捉えています。特に日本での売り上げに関しては、とにかく日本向けのタイトルをそろえる活動が徐々に実を結び、『グランツーリスモSPORT』や『モンスターハンター:ワールド』を発表することができ、『太鼓の達人』や『いただきストリート』などのバラエティに富んだ新作タイトルも登場します。

 現状、ユーザーが「これは出してほしい」と思っているタイトルはすべて出そろったと思っています。日本のゲームユーザーはゲームに常に注目してくださっている方々なので、しっかりとコンテンツを提供すれば受け取ってくださいます。

 我々は原点に戻る必要があると考えています。そもそも初代PlayStationを出した頃はその楽しさを誰も知らなかったわけです。コンソールゲームが家庭にあることによる楽しさを伝える当時の活動を思い出して、ゲームというものが遠い存在になった方々を振り向かせるにはどうしたらいいかということをずっと考えます。

 ゲームファンの人たちには『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』、『モンスターハンター』などの新作が発売したところで振り向いてくださるのですが、久しくゲームで遊ばなくなった方々はタイトルだけでは戻ってきてくれません。

 そういった方々向けに、テレビCMや、有名人のほうからがゲームを伝えてもらうことで興味を持ってもらう、そういった地道な活動をしてきました。それらが伝わり、少しずつユーザーが振り向いてきてくれる状態ができている思っています。

――『モンスターハンター:ワールド』は日本でのキラータイトルですが、かつグローバルでもPS4を活性化しうるタイトルかと思います。SIEとしてはどのような支援体制を考えていらっしゃいますか?

盛田:海外でも『FF』や『ペルソナ』などが熱狂的にユーザーに受け入れられていて、日本のタイトルが元気だというのが印象づけられていると思います。

 日本のゲームメーカーにはどんどん海外にチャレンジしてもらいたいです。そうすることでゲーム市場が元気になり、日本にもそれが戻ってくると思うので、一緒になって日本のタイトルを盛り上げていきたいですね。

 一方で、PlayStation自体がいかに広がっていくかが重要だと思うので、“みんなのPlayStation”を合言葉に、推進していかなければと考えています。そのためにはゲームの体験もゲーム以外の体験もPlayStationが中心的な役割を担うようにしたいですね。

 YouTubeやアニメチャンネルなど、PCで楽しんでいるサービスもリビングに置いてあるPS4で楽しめる。もともとはゲームをプレイしていなかったけれど違うコンテンツを楽しむためにPS4を購入し、ゲームでも遊ぶようになるという循環を促進していきたいですし、PlayStationのゲームに対する役割はそういったところだと思います。

――日本では「スマートフォンなどにゲーム市場が動いているのでは?」という意見も少なくありません。PlayStationはどのようにコンシューマ市場を活性化していこうとお考えですか?

盛田:1つはその人がやりたいゲームがPlayStationにあるというのが重要だと思っています。

 もう1つは、ゲームがいかに楽しいものかを訴求していくことです。我々が実施している“PlayStation祭”はゲーム自体の楽しさを伝えるための活動ですが、もともと家で友達同士で遊んでいるところから、チームを組んで違うクラスや学校の友達と戦うというように広がっていったのがゲーム大会だと思います。

 我々はそれを“PlayStation祭”という形で地域の人たちが集まる場を作り、全国大会的にみんながトータルで競い合える場を作る。

 最高峰のプレイヤーの戦いや、自分の知っている人が全国大会に出ているのを見ることによって興味を持ってもらい、ゲームを見て応援する楽しさや、自分の目標を達成するために練習する楽しさ、プロのスポーツを観戦する感覚で最高峰のプレイを見る楽しさなど、ゲームというものの“楽しさ”を訴求することによってその輪を広げていければと思います。

『TGS2017』

――最近ではe-Sportsが盛況かと思いますが、“PlayStation祭”などのリアルイベントとe-Sportsは融合していくのですか?

盛田:区別するものではないのですが、我々はあえてe-Sprotsと言っていないんです。アメリカや韓国、日本などそれぞれの国で言うe-Sprotsは同じものではないかもしれないじゃないですか。それをみんながe-Sprotsとひとくくりで言うと混乱するのではないかと思っています。

 名前よりも先ほど言った参加する楽しみ、見たり応援したりする楽しみを訴求したいと思っていて、それを端的に表す言葉がないので、それらのイベントのことを“PlayStation祭”と言っています。

――現在、盛田さんはSIEJAの代表として日本だけでなくアジア地域を見ていらっしゃると思います。アジア地域の市場の傾向は北米・欧州とはどのように違っていると感じてらっしゃいますか? アジア地域の今後の発展の方向をどのようにお考えでしょうか?

盛田:アジアは状況が国や地域によって違い、欧米寄りの国もあれば、日本に近い傾向のところもあります。1つ、我々SIEのなかで議論しているのは、欧米でのPS4の普及が早く進んでいるので、今後PS4の販売数を伸ばしていくことを考えると、欧米以外の地域でいかに売上を伸ばしていけるかが重要になってきます。

 我々は今後普及スピードを向上させられる地域を“オポチュニティ・マーケット”と呼んでいます。オポチュニティ(機会)のある地域はアジアにたくさんあると思っています。

 そのなかで東南アジアには、人口や年齢構成を見たときに、まだまだ伸びる余地がある国がたくさんあると思っています。東南アジアに対してはシステムソフトウェアの言語対応も実施しましたし、店頭をちゃんと整備して、来た人たちがPlayStationをちゃんと理解して楽しめる環境を作っていこうとしています。

 また、イベントを活用してPlayStationの楽しさを普及していきたいとも考えています。マレーシアで“PlayStation Experience 2017 South East Asia”を実施したり、お客様を集めたPSのイベントの開催や、国や地域で実施しているゲームイベントへの参加など継続して行ってきました。これらの努力はストレートにハードウェアとソフトウェアの販売数につながっています。

 今後は単純なアピールだけでなく、売り場としても強化していくつもりです。それから、今年の春にヒッツバンドルという、アジア向けのハードウェアと売れ筋のタイトルのセットを買いやすい価格で販売するというチャレンジをしました。さまざまな施策を用意して、東南アジア各国での売り上げ拡大を狙っていきたいですね。

 もう1つ、中国が我々にとっての大きな戦略地域なのですが、非常に難しい市場でもあります。ですが、ゲームを遊んでいる人がたくさんいるので、ここは焦らず怯まずというのが我々が思っているところです。

 すでに発表させていただいたのですが、「China Hero Project」では現地のデベロッパーの人たちを開発・サポートしてあげることによって、現地の人たちに中国向けの作品を作ってもらってそれを売っていく。また、『西遊記之大聖帰来(西遊記 ヒーロー・イズ・バック)』のような現地で強力なIPをゲーム化する。このように現地と一緒になって中国のゲーム産業を盛り上げていくというやり方が1番いいのかなと思っています。

――以前にキッズ・ファミリー向けの市場の中核として、PlayStation Vitaを大事にしていきたいというお話もしていただきましたが、その後いかがでしょうか?

盛田:今回のカンファレンスはPS4にこれだけ大型ゲームタイトルを含めて豊富なラインナップがそろったというメッセージをお伝えしたかったので、PS4のタイトルを中心に発表させていただきました。

 PS Vitaはまだ『マインクラフト』がすごく楽しまれていて、各地域のイオンさんとよくイベントをやったりしているのですが、たくさん親子連れの人たちが来てくださいます。そういう意味ではPS Vitaは元気です。

 カジュアルという意味でいくと、PS4でもちゃんとお子さんたちに遊んでほしいので、PS Vitaで『マインクラフト』をやっている人がPS4で『マインクラフト』をやるとさらに世界が広がるということも訴求していきたいです。

 逆にPS4をプレイしているときに、リモートプレイでPS Vitaも使うという両方を連携しながらやっていくのが必要かなと思っています。我々はPS Vitaもしっかりと市場に提供していこうと思っています。

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