2017年11月16日(木)
『ネプテューヌ』の今後やコンパイルハートの新たな挑戦とは? 新社長・東風輪敬久氏インタビュー
『ネプテューヌ』シリーズなどを制作するコンパイルハートの新社長に東風輪敬久氏が就任。これまでもさまざまなタイトルの制作を指揮してきた東風輪氏に、コンパイルハートという会社と新たな挑戦について、お話をうかがった。
※本インタビューは11月9日発売の電撃PS Vol.650に掲載された記事をベースに加筆したものです。
▲新社長の東風輪敬久氏。 |
▲東風輪氏にお話をうかがうなかで判明した、制作中の『ネプテューヌ』LINEスタンプ。現在は『神獄塔 メアリスケルター』のLINEスタンプが発売中だ。 |
⇒『神獄塔 メアリスケルター』のLINEスタンプ情報はこちら
新社長が『ネプテューヌ』のロゴを制作!?
――取締役社長就任おめでとうございます。まずはあらためまして、東風輪さんのご経歴をおうかがいできますでしょうか?
東風輪敬久氏(以下敬称略):私がゲーム業界に入ったのは22歳の時で、アイディアファクトリーに1996年に入社しました。当時はPlayStationが発売され、TVでは『FFVII』のCMが流れていました。その頃、私はパッケージデザインなどを仕事にしていたのですが、ゲームの絵の表現がステップアップしていくのを見て、ゲーム業界を目指そうと考えました。
――なぜアイディアファクトリーに入社したのでしょうか?
東風輪:アイディアファクトリーは当時から、『厄』など、すごく尖とがった作品を作っていたんです。その尖り方を見て、自分のやりたい芸術性の高い作品を作れるんじゃないかと思い入社しました。
桑名会長やアイディアファクトリー社長の佐藤から企画やデザインなどの指導を受けて仕事をしていたのですが、今でもこの面々で毎朝、ゲームの企画会議をしています。
――会議はどのような様子なのですか?
東風輪:「どういったことをすればお客さんに喜んでもらえるか」という話が中心ですね。最近の流行や意外な方向性のアイデアを出し合ったりもしていますね。
――たくさんの作品に関わってこられたなかでの思い出をお聞かせください。
東風輪:40作品を超える『ネバーランド』シリーズやアニメ化した『まみむめ☆もがちょ』は思い出深いですね。あとは、オトメイトとコンパイルハートのブランドの立ち上げも振り返ると感慨深いです。じつは、ブランドロゴは自分がデザインしています。
――最近のタイトルのロゴも東風輪さんがデザインされているそうですが。
東風輪:コンパイルハートタイトルのロゴは、9割以上自分がデザインしています。『四女神オンライン』や『神獄塔 メアリスケルター』のロゴも自分がデザインしたものです。『ネプテューヌ』シリーズのロゴも1作目から全部自分が制作しています。
▲シリーズ最新作『新次元ゲイム ネプテューヌVIIR』のロゴ。 |
アイデアを伸ばしていくコンパイルハートスタイル
――そんなたくさんの作品を制作してからの社長就任ですが、意気込みや今後の方針をお聞かせいただけますでしょうか。
東風輪:まず、「ユーザーが欲しいと思っているものを提供する!」ということを指針にしています。弊社は作品ごとに独創的なゲームを作ってきていますが、ユーザーの予想をはるかに超える爆発力のあるタイトルを生み続けていかないといけません。今後も覚悟を持って挑んでいきます!
そのために、スタッフたちが斬新なものを生み出せる環境を整えていきたいと思います。ゲーム制作は常にチャレンジの連続です。これからもコンパイルハートらしいオリジナルタイトルを生み出していくことをお約束いたします!
――御社の奇抜なアイデアには毎回驚かされますが、会社としてアイデアを出す仕組みがあるのですか?
東風輪:スタッフがゲームの企画を立ち上げる段階で、奇抜なアイデアを考えていてくれるのが大きいですね。また、出てきたアイデアを伸ばして、磨き上げていくということを日常的にやっています。
そのあたりが“コンパイルハートスタイル”だと思います。言葉にすると簡単ですが、涙が出るくらい大変なこともあります。でも、それがユーザーの喜びにつながると思うんです。
――社内はアイデアを出しやすく、伸ばしやすい雰囲気なんでしょうか。
東風輪:自分や水野などのプロデューサー陣は、あまり否定的なことは言わず、話をくみ上げてそれをどう広げていこうか前向きに考えていくタイプの人間たちです。なので、入社1年目のスタッフがこういうことを考えてきましたって言ったら、スタッフ全員で磨き上げて採用することもあります。
一番難しいのは最初の1歩が出てこないことです。ですので、随時スタッフたちとは新しいアイデアを出し合っています。
新ハードへの素早い対応
――そんなアイデアがたくさん詰まったタイトルが今年もたくさん発売されましたが、感触はいかがでしょうか?
東風輪:今年の一番のチャレンジはやはり『新次元ゲイム ネプテューヌVIIR』のVRパートです。キャラクターが目の前に現れるだけではなくて、空間全体にまったくウソがないものを作らないといけないので、大変な作業になりました。実際に目の前でネプテューヌが笑って話しかけてきたときの感動はすさまじくて、これは本当にスタッフの努力の結晶だなと思いました。
――“キャラクター”ゲームという点ではVR化は初だと思います。
東風輪:VRに特化したゲームはいろいろ出ていますが、VR中でキャラクターとのコミュニケーションが楽しめて、このボリューム感がある作品はなかなかないと思います。
――PS4発売時も専用タイトルを出すのが早かったですよね。技術への反応が早いイメージがあります。
東風輪:早いですね。最新技術に対して興味がありますし、常に新しいチャンスを探しています。PS4初のRPGもコンパイルハートでしたし、『限界凸騎モンスターモンピース』はPS Vita登場から早い段階で挑戦したタイトルでした。今後もPS4中心で展開していきますが、モバイルアプリゲームのタイトルも含めて、ユーザーの求めるところからはブレずに展開していきたいと思います。
――今年は電パイルとして一緒に展開した『塔亰Clanpool』がありました。
東風輪:キャラクターへの愛情が深い電撃さんと一緒に取り組むことで、ユーザーが求めているものをダイレクトに発信することができるようになりました。これからはグッズの展開が活発になりますので、期待してください!
――『ネプテューヌ』や『限界凸騎』シリーズの今後の展望もお聞かせください。
東風輪:『ネプテューヌ』はコンパイルハートの看板タイトルですからね。みなさまの想像を1000%超えるプロジェクトが動いています。タイミングを見計らってきちんと発表する予定です。電撃さんとは毎年イベントなどから展開を始めているので、楽しみに待っていてください。期待は裏切りません!
――オリジナルタイトルについてはいかがですか?
東風輪:もちろん作っています! コンパイルハートのゲームを買ってくださるユーザーが求めるものでありながら、テイストが違う斬新なタイトルです。言えるのはレガシー感のあるビジュアルと切ない音楽。今までとひと味違ったRPGです。期待していてください。
――アプリ事業についても聞かせてください。今後は増えていくのでしょうか?
東風輪:まずは発表している『絵師神の絆』というフォワードワークスさん、手塚プロダクションさんとの大型プロジェクトがあります。手塚先生のキャラクターをヒロイン化して登場させるゲームで、現在はシンボルになるキャラクターを公開しています。
「手塚先生のあのキャラクターがコンパイルハートのフィルターを通すとこんな風になるのか!」と絶対に驚きます。正直早くお見せしたい気分です。じつはジャンルもまだ発表していないのですが、期待に応えられるものになっています!
――海外展開についてもお聞かせください。御社のタイトルは北米やアジアなどの海外でも高い人気を得ている印象があります。
東風輪:まず、海外に関しては社内に海外部があります。そこには、個性的なスタッフたちがいまして、コンパイルハートとアイディアファクトリーの作品を世界に向けて広めていく役割を担っています。全員が海外出身者なのですが、日本語を話せます。弊社作品が好きで集まってきたメンバーです。
海外においては、アイディアファクトリーインターナショナルという会社が現地での展開を担っています。タイトルはキャラクターがいいからそのまま売れるかというとそうではなくて、どのようにその国の言葉へ翻訳するか、現地の人のウケがいいようにローカライズができるかが肝になります。
実際に『ネプテューヌ』は海外ですごく売れています。ネプのネタやノリを維持して翻訳するのは大変だと思うのですが、ネプらしさが損なわれていない“ぶっ飛んだ翻訳”がなされているんです。そういうスタッフたちの愛情があって、海外でも人気を獲得できています。
クリエイターが集い、育つ理由とは?
――御社の作品のキャラクターは、ほぼ社内のイラストレーターさんが描かれていますが、採用や育成の仕組みはあるのでしょうか?
東風輪:弊社は通年採用制でして、才能や知識があれば未経験者でも採用しています。育成の面では、入社してすぐに実際の開発ラインの中に入り、先輩たちの仕事を見ながら勉強できる体制になっていることが大きいです。
あと、企画やイラストに関しては定期的に社内コンペを行なっています。いいものが上がったスタッフは、状況によりますが、次のタイトルの重要なポジションを担当することもありますね。
――急に抜擢されることもありますか?
東風輪:大抜擢がありますね。
――育成の仕組みもすばらしいと思いますが、そもそもつなこさんやまなみつさんのような方々が集まっていることがすごいことだと思います。
東風輪:その点で言いますと、弊社タイトルが好きな人たちが応募してくることが多いです。弊社の場合、個人でできないことをチームでできるようにするという点で、能力を伸ばしていける環境になっていることが特徴的だと思います。ディレクターとの距離も近く、常に会話をしながら制作物を磨き上げていけますしね。
――ちなみに、『ネプテューヌ』シリーズの水野尚子プロデューサーを採用されたのも東風輪さんなのでしょうか?
東風輪:採用の面接を担当したのは私ではありませんが、当初3Dデザイナーだった水野をプロデューサーとして抜擢したのは私になります。
――次は電撃PSに関連する質問です。電撃PSに対しての宿題や、こうあってほしいというのはありますか?
東風輪:電撃さんにはすごくおもしろい記事を作っていただいていてありがたく感じています。ただ、私たちにとっても宿題になるのですが、もう少し味わいという部分をテーマにしたらどうなのかなと思っています。
自分たちのゲーム制作も技術が進歩して、AIなんかも取り上げられているじゃないですか。それはそれで重視する部分ですが、手書き感のある温かいものにもこだわっていきたいですよね。電撃さんも表紙が全部手書きとかおもしろいんじゃないかと(笑)。心がこもったもの……つまりハートにこだわりたいです……コンパイルハートだけに(笑)。
――最後にコンパイルハートのファンのみなさんにメッセージをお願いします。
東風輪:自分は社長として、今まで以上にユーザーとの距離感を縮めていけるようにしていきます! ユーザーのみなさまからの声はツイッターなどで目にすることができますので、感想や要望のコメントをいただきたいと思います。
ご意見に対して自分たちが制作するゲームでしっかり応えられるようにしていきます。みなさんの心に響くゲームを制作していくことを宣言します! 今後のコンパイルハートにご期待ください。
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