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2017年12月21日(木)

『チェンクロ』松永ディレクターインタビュー前編。帰還篇は“ノリ”を取り戻すのに苦労した?

文:まり蔵

 iOS/Android/PC用RPG『チェインクロニクル3(以下、チェンクロ3)』の特集連載企画をお届けします。

『チェンクロ』

 12月26日に『チェンクロ3』の“帰還篇”が配信決定。これを受けて、現在ゲーム内ではさまざまイベントやガチャフェス、そして豪華8大特典がもらえるキャンペーンが展開中です。

 電撃オンラインでは、“帰還篇”の配信決定を記念して『チェンクロ3』の特集を大々的に展開! まずは、『チェインクロニクル』の総合ディレクターを務める松永純さんのインタビューを前後編でお届けします。

 前編では、“帰還篇”を中心に『チェンクロ3』の各主人公のシナリオやキャラクターなどについて語っていただきました。

『チェンクロ』
▲『チェインクロニクル』総合ディレクターの松永純さん。

『チェンクロ3』の各シナリオについて

――『チェインクロニクル3』の配信から1周年が経ちまして、ヘリオス篇、アリーチェ篇、エシャル篇、セレステ篇、アマツ篇がそれぞれ5章まで配信されました。それぞれのシナリオで、描いてきたことを改めてお聞かせください。

ヘリオス篇

――ヘリオス篇の5章、とてもおもしろかったのと同時に、非常に衝撃でした!

 ヘリオス篇の5章、驚いていただけたなら、やった甲斐がありました。これまでおだやかに進んでいたので、ようやく描けたなという印象ですね。

 ヘリオス篇だけは他の4篇とは位置づけが違っていて、『チェンクロ』の王道な展開をどうやるかがテーマとなっています。そういう意味では“主人公”の冒険を色濃く受け継ぐ、本作らしいたくさんの秘密に満ちた運命に、真っ向から挑むことで生まれる熱いストーリーラインをどう作るか一番考えました。

『チェンクロ』

 ヘリオス篇って、普通の平凡な少年と少女の物語からスタートするんですよね。ヘリオスなんて大工見習いですし。そこからいろいろな謎が増えて、少年少女たちも成長して……とまさに王道なんですが、他の4篇は最初から個性的なメンバーと、特徴的な展開がそろっているんです。主人公本人がどう見てもメカとか、火鬼と出会って珍道中始める展開とか。

 ですので、ヘリオス篇だけどうしても盛り上がる時間軸がずれてしまっていたのですが、そこがようやく追いついてきたなと。ヘリオスたちも成長して、大きな秘密が明かされて。ここからはおもしろくなる一方なので、存分に楽しんでいただければと!

アリーチェ篇

――アリーチェ篇は最初ラノベテイストということでしたので、女の子たちがたくさん出てきてにぎやかでかわいらしい感じだと思っていたのですが、シナリオは思っていた以上にシリアスでしたね。

 そうですね。当初の想定より、シリアスな部分もおもしろく展開できていますね。ちなみに第3部は、全然違う個性の物語をユーザーさんに楽しんでほしいという想いがあったので、ヘリオス篇以外は4篇それぞれにテーマをつけていて。“喜怒哀楽”の感情に従って、4つに住み分けをさせているんです。

 具体的には“喜”がエシャル、“怒”がアマツ、“哀”がセレステ、“楽”がアリーチェですね。他にも“春夏秋冬”などいくつかの4分割できる属性で、ヘリオス篇以外の4篇はテーマ分けをしています。

 アリーチェは「楽しく生きること」というテーマで学園ものの楽しさ、青春や友情といった要素を中心に置くと決めてスタートさせました。そして、生い立ちが必ずしも幸せではないからこそ、そういう時間が大切なものとして描けるのだろうなと。結果として、その生い立ちのシリアスさが濃いドラマを生んで、楽しくも激しい物語になってくれたなと思っています。

『チェンクロ』

 メインストーリーは、5人全員違う作家さんがついているんですが、変に互いの整合性に気を使うのではなく、それぞれが最高の物語になるよう全力でやるというのを大きな方針にしています。なので、テーマとして極端な4方向に振り分けてスタートさせつつも、書いている作家さんは、笑いあり涙ありの、総合力を持ったストーリーを求めるんですよね。

 テーマはあくまでテーマです。楽しいだけ、悲しいだけのストーリーじゃ、長い間読み続けるには物足りないです。だから、作家さんがよりおもしろくするために話を転がしていくのを、僕としても背中を押すようなスタンスでやらせてもらっていて、アリーチェ篇も非常におもしろく、話が展開してくれているなと思っています。

 でも、どこまでいってもアリーチェ篇のシリアスさというのは、彼女たちの友情にひもづいたシリアスさなんですよね。楽しいことも、つらいことも、全部、彼女たちがかけがえのない友人だから生まれる感情で。だから応援したくなる。そういう物語として、アリーチェ篇はこれからも展開していくと思います。

エシャル篇

――エシャル篇は、かなり“お芝居”に重きが置かれて描かれていますよね。

 そうですね。少なくともバトル要素のあるスマートフォンゲームで、なんでずっとお芝居してるのって感じですよね(笑)。そういう意味では物語の構成が一番特殊です。

 エシャルのテーマは“喜び”ですね。“喜”と“楽”って似ていますが、“楽”が「楽しく日々を生きる」ことに対して、本作では“喜び”を、一瞬の輝きのようなものを求める心として位置付けています。そして、それが舞台での自己表現、スターになろうとするエシャルの生き様として描かれることになったんです。

『チェンクロ』

――練習して努力をして舞台に立って……目標を達成していくというところが明確に描かれていますよね。そういう気持ちよさがあります。

 ライバルの劇団や、仮面の男、そして砂の薔薇の仲間たちの想いも重なって、これからも舞台で熱いドラマが展開していきます。

 とはいえここもやっぱり、さっきの「総合力を求めたくなる」やり方で作っているので、書いている作家さんも演劇だけではなく、ロマンのある冒険もさせたいよねっていうところになって。それで、湖都を取り巻くふたつの民族の宿命を軸に、もうひとつのドラマも同時に展開しているわけです。こっちの展開も、これからさらに盛り上がっていく予定です。

セレステ篇

――セレステ篇はずっと森妖精のいさかいが描かれていて、5章でもまだセレステが完全には受け入れられていない状態ですよね。

 そうですね。少しずつ、少しずつ進んでいく過程が描かれています。セレステ自身は非常にぶっとんだ設定のキャラクターで、展開もかなりぶっとんだ展開が起きたりもしますが、だからこそセレステが、この世界にいるために必要な絆は、ひとつずつ丁寧に結ばれていく必要があるんだと思います。大きな事件が起きるたびに、後退したりもしますが、それでも前に進んでいくセレステを、見守ってあげてもらえればと思います。

『チェンクロ』

――セレステがいろいろな人に諭されながら成長していく過程がとてもいいですね。厳しい人もいれば、優しい人もいて。

 セレステ篇は、“哀”がテーマとして割り当てられていて、そういう悲しみとか寂しさのある場所からスタートしながらも、“自分のいる場所を見つけていく”物語でもあります。それもあって、ものすごくたくさんのキャラが出てきます。これからもたくさんの出会いがあるはずなので、楽しみにしていてください。

アマツ篇

――アマツ篇も“シロガネ”という敵が出てきて、いよいよクライマックスになってきました。

 そうですね、クライマックスにはまだ早いですが、盛り上がってまいりました。っていうかクライマックス感あります? ああ……そういう意味ではアマツ篇ってテーマは“怒り”なんですけど、アマツが思った以上に早く、人間的に成長しちゃったなって(笑)。すげーいいやつになったなって。

『チェンクロ』

 ここは正直、想定外です。ただ、おもしろいので止めることはできないんです。アマツが、ヒトリやベニガサと合流したり、他のメンバーと出会うことで成長していって……その成長ひとつひとつにすごく価値があったなと。だから毎章すごくおもしろかったなと思います。

――アマツは5章で一番成長したキャラですよね。

 そうですね。すごくいい出会いがいっぱいあったんだなって思います。スタートした時点が完全にヤンキーだったので、成長したのがわかりやすいですよね。とはいえ、アマツの旅はまだまだ終わりません。多少アマツの性格が丸くなったくらいでは、終わりませんから(笑)。

 自分自身の不条理に怒っていたアマツが、人のために怒れるようになって。だからこそまだまだ、彼が剣を振るう理由は増えていくことになると思います。

――ちなみに春、夏、秋、冬はどういう割り振りなのでしょうか。

 夏がアマツで、冬がセレステ、春がアリーチェで、秋がエシャルですね。“喜怒哀楽”ほど具体化はさせていませんが、なんとなく根底に流れる空気感の差とかで、読んでいるとニヤリとできるかもしれません。

『チェンクロ3』の新世代のキャラや敵について

――『チェンクロ3』がスタートして約1年が経ちましたが、想定と違ったところ、反対に狙い通りにいったところはどんなところでしょうか。

 やはりさっき話した通り、アリーチェ篇が思いの外シリアスになったりとか、アマツが思いの外すぐいい奴になったりとか。そういうところは想定していたスピードやテイストとは少し違ったものになったなと思います。

 狙い通りという意味では、そうやって想像以上に変わっていってくれたことが、狙い通りだなというところではあります。どのシリーズも、キャラが動き回って、自分たちの物語を生き生きと演じてくれた結果だと思うので。

 5つのメインストーリーという形式で第3部を始めるときに、各ストーリーを、パズルのようにキレイに組み上げていく作り方にするか、それぞれ全力で走る作り方にするかというところで大きな分かれ道があったんですが、全力で走るほうにしてよかったなとすごく思いますね。

 ストーリーは最初から1から10まで作ってあるわけではないんです。最初にワクワクする設定を用意して、基本的なゴールを決めて、途中で大事なポイントになるところは目星をつけて。でも、それだけでおもしろくなるわけじゃない。1話1話がおもしろくなるかは、作家が1話1話を熱量もって書けるか次第です。だから、最初に思っていた流れと違う部分もあるし、そのぶん最初に思っていたものよりもおもしろくなっていると思います。

――5つの章のうち、難航した章はありますか?

 難航するのはヘリオス篇ですね。毎回難航しています。1章からずっとそうです。他の4人は最初に設定がバーンとあって、あとは好きに走って……なんですけど、ヘリオス篇は『チェンクロ3』の全部を受け止める役目を負っていますし、『チェンクロ』らしい王道さってなんだろうっていうことと向き合いながら作っていますのでどうしても難航しますし、時間もかかりますね。

――個人的にお気に入りのエピソードはありますか?

 今回のヘリオス篇5章は、もっとも難航しましたが、とても記憶に残る物語になりました。それと、初めて交差したアマツとエシャルのストーリーがすごく好きです。舞台で一緒になるシーンですね。あれが最初の交差だったというのもあって、作っている側としてもワクワクしましたし、すごく熱がこもりました。結果、すごくいいシーンになりましたし、双方の視点も含めて今でもすごく好きですね。

『チェンクロ』

 アマツが舞台を降りたあと、もうエシャルに会わないっていうのが、個人的にはすごく印象的です。あれ、それぞれ旅を進めなければいけないから、もう1回ゆっくり合流してちゃいけないみたいな、ふたつの物語が交わったからこその展開だったりもするんですが、あの物足りなさというか……本当はもう一度ふたりで話してほしいけど、それがなく別れていくっていう、あれが描けたのがすごくよかったなと。

 パズルみたいに作るんじゃなく、全力の物語と全力の物語が、一瞬交わるからこそ熱いものにしようって、そう話していたんですが、そうやって実際に生まれたシーンは思っていた以上の熱さで、胸にくるものがありました。

――ユーザーの反響的に、このシナリオは評判いいなというものはありますか?

 どのシリーズが人気とか、今回の配信の反響はどうっていうのは、なんとなくつかめているんですが、各話ごとの反応はあまりつかめていないですね。

 あとユーザーさんの感想を拝見させてもらっていてうれしいのは、「このシリーズが一番おもしろいです!」って言っていた方が、次に別の配信があると「こっちのほうが一番おもしろいです!」って贔屓を更新していってくれるときですね。

 今回も改めてヘリオス篇いいな! っていってくれる人が多かったですし、そういうのはうれしいですね。これが一番好き! って言いきってくれる方も、もちろんうれしいですが、いずれにせよ毎回こっちもおもしろいなって思ってもらえながら、全部のストーリーをプレイしてもらえたら、最高にありがたいです。

――各章のボス……と言いますか敵の中で、この敵がお気に入りっていうのはありますか? どの敵も個性的でおもしろいですよね。

 個人的に好きなのはアリーチェ篇のアドベルサス教授です。なんでしょう、ろくでもない奴なんですが。あいつだけ、ちょっと弱いので応援したくなっちゃうんですよ。他のボスキャラはそれなりに「こいつヤバイ」感が出ているんですが、あの教授だけちょっと変わったじいちゃんぐらいの位置づけなので、これからどう転がっていくのか、個人的にハラハラしています(笑)。

『チェンクロ』

――敵以外の新世代キャラでお気に入りのキャラはいらっしゃいますか?

 好きなのは、“シャディア”と“ベルタ”です。これはもう自分の好みなんですけど、すごい天才の横で、必死に食らいつこうと頑張る親友って熱いよなぁっていう。ツボなんです。どっちも5章のドラマはすごくよかったと思います。エシャルとシャディアの舞台のシーンは、むちゃくちゃ刺さりました。頑張れシャディア!

『チェンクロ』

“帰還篇”について

――それでは次に、12月26日に配信される“帰還篇”の話を。帰還篇の配信時期は、いつくらいに決定したのでしょうか?

 ストーリー上、主人公が帰ってくるタイミングは、第3部が始まった頃から決まっていたんですが、実際に時期が決まったのは去年の冬ですね。来年の計画を、会社の偉い人たちと相談するときに、「来年末くらいに、“自分”が帰ってくるのを盛り上げたいんです」って話をして、(「自分がかえってくる」という発言に対して)「??」っていう反応をもらったのを憶えています。

 それで、4周年のタイミングで発表をさせてもらったり、別途“帰還篇”を用意させてもらうことにしました。“主人公”が帰ってくるというのは、これまで遊んでくださったファンの皆さんにとっても特別なことだと思うので、きちんと盛り上げたいと思っています。

――配信形式としては、ひとつの章として一気に配信される形ですか?

 はい。ちょうど1章分ですね。これまでの絆の軌跡の各章と同じくらいのボリュームです。

――シナリオ作りで苦労したところはありますか?

 “主人公の物語”というノリをもう一度取り戻すのに苦労しました。あれ、こんなだったっけ? って(笑)。今回、当然ですけどいきなりクライマックスみたいな感じじゃなくて、久々の主人公とピリカたちの平常運転みたいなところからスタートするのですが、平常運転していた主人公のストーリーってかなり前なんですよね。鉄煙の大陸くらいですよね。そのあとはずっとクライマックスだったので。で、あの頃のノリってどんなだったかなーって。

――帰還篇の視点は、やはり主人公の一人称視点になるのでしょうか。

 もちろん主人公の視点です! ユーザーの皆さんの視点です。そこも逆にいうと違和感かもしれません。視点が変わりすぎて、目が回るくらいの感じになるかもしれません。でも今このときだけの、他の物語では絶対に味わえない感覚なので、ぜひ楽しんでもらえたらと思います。あの、なつかしい選択肢も出てきます。そういうのも期待してもらいたいなと思います。

――帰還篇配信後は、6章、7章と進んだときに、主人公も関わるのでしょうか?

 はい、もちろん関わってきます。なにしろ帰還篇で帰還しますから。どのタイミングでどんな形で……というのはここでは話せないんですが、近日発表予定なので、お待ちください。

――帰還後、主人公篇がルートマップに加わるわけではないんですよね?

 それはまだお話しできません。ただ、5章で見ていただいたとおり、王都に全員の物語が向かっていくので、今は各主人公の物語が、どうひとつに向かっていくかに、括目していただければと思います!

――6章以降、主人公5人がユグドの外の大陸に行く可能性はありますか?

 それは壮大なネタバレになるので言えませんが……どうでしょう。可能性だけで言うとないとは言いきれないです。なにしろ、第3部はキャラが走り出した時に、おもしろければ背中を押すスタイルで作っているので(笑)。

2017年の『チェンクロ3』を振り返る

――2017年の『チェンクロ』はいかがでしたでしょうか?

 まだ終わっていないと言いますか……。ストーリーのほうは、主人公がまだ帰ってきていないですし、いろいろ実装したアップデート内容についてはユーザーさんから反応をいただいたうえで、これから改修していこうという感じなので、あまり終わった感がないですね。

 逆に言うと、もう4年を過ぎたタイトルながら、今年もたくさんのチャレンジができたなって思います。今年は年明けのタイミングでアニメをやれたり、『チェンクロ3』が始まってすぐのタイミングだったりといい意味でドタバタしたスタートになりましたが、1年が終わっても、変に落ち着かず、走ることができているのかなと。来年も、ファンの皆さんが、これからどうなるんだろうってワクワクできるようなゲームでいられればと思います。

 って、来年の話をしちゃいましたが、今年はまだまだ終わっていません。12月26日の帰還篇で、がっつりワクワクしてもらえればと思います!

『チェンクロ』

――なるほど。それでは“帰還篇”を心待ちにしているユーザーに、最後にメッセージをお願いします。

 長らくお待たせしておりました。いよいよもって、皆さん自身が物語に帰ってきます。それは、4年以上続いてきた義勇軍の物語にとって、大切なストーリーになると思いますし、スマホRPGとして、世の中のすべてのRPGの物語としても、今までにない体験になると思います。12月26日に配信される帰還篇、そしてそこからさらに盛り上がっていく、チェンクロの新たなる物語を、存分に味わっていただければいいなと思います!

――ありがとうございました!

⇒明日公開の後編ではユーザーの皆さんから募集した質問に答えていただきます!

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