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2017年12月29日(金)

『FFXIV』バトル班に“コンテンツの作り方”を聞いてみた。中川氏&須藤氏インタビュー

文:電撃PlayStation

 PS4/PC用MMORPG『ファイナルファンタジーXIV』の“戦闘”といえば、各々の役割をこなしつつロジカルに組み立てられた仕掛けに対処するギミックバトルと、コンテンツごとにドラマを感じられる白熱の演出が大きな特徴。

 そんなバトルコンテンツは、毎回どのようにして、どんな部分に注意して作り上げられているのか? 今回は、そんな疑問を解消すべく、バトルコンテンツ班のキーマンにインタビュー!

 “Mr.オズマ”の愛称で知られる中川誠貴さんと、“須藤神”でおなじみ須藤賢次さんに細かくお話をうかがってきました。攻略はもとよりプレイヤーによる配信という面でも大いに盛り上がった“絶バハムート討滅戦”についても裏話満載でお送りしていますので、ぜひご覧ください。

※本インタビューは2017年11月末に実施したものです

『ファイナルファンタジーXIV』

中川誠貴氏(写真右):バトルコンテンツ班のリーダー。“Mr.オズマ”の相性で親しまれる。
須藤賢次氏(写真左):数々の高難度コンテンツを手掛け光の戦士を葬ってきた、通称“須藤神”。

『FFXIV』のゲームの肝、“バトルコンテンツ”はどのように生み出されるのか――

――すでに周知の部分もあるとは思いますが、あらためましてお2人がこれまでどんなコンテンツの開発にかかわってこられたのかをお聞かせください。

中川誠貴氏(以下、敬称略):“クリスタルタワー”や“シャドウ・オブ・マハ”といったアライアンスレイドと、イベントバトルが中心ですね。とくにパッチ2.0の頃はイベントバトルがとても多かったので、そちらにかかりきりでした。

――イベントバトルというのは、メインクエストなどのなかで発生する、ソロ専用のバトルのことですか?

中川:そうです。メインクエスト、ジョブクエストなどで発生するものすべて、です。今は開発スタッフの人数も増えていますので、彼らの育成や仕事の進行の管理などを中心に行う、バトルコンテンツチームのリーダーをやらせてもらっています。最近自分で手掛けたのは“機工城アレキサンダー:天動編”や、パッチ4.0以降だと“神龍討滅戦”“極神龍討滅戦”ですね。

須藤賢次氏(以下、敬称略):私はパッチ2.0から、ダンジョンと、蛮神戦などの討伐・討滅戦を中心に作っていました。古いものでいうと、“邪教排撃 古城アムダプール”や“霧中行軍 オーラムヴェイル”とか。蛮神戦だと“タイタン”などです。その後は、“大迷宮バハムート”の侵攻編・真成編などにたずさわり、パッチ3.0以降もダンジョンや8人用レイドを中心に作っています。

――たしか“強硬突入 イシュガルド教皇庁”もそうですよね。

須藤:はい、それも私です。最近のコンテンツだと、パッチ4.1の“絶バハムート討滅戦”ですね。

――お2人のメインジョブはなんでしょうか?

中川:黒魔道士です。パッチ2.0の頃はヒーラーがメインジョブでしたが、今は黒ですね。

須藤:私はナイトですね。新生前の旧『FFXIV』をプレイし始めたとき、「ファンタジーの主人公なら剣と盾だろ!」と思って剣術士を選んだんです。そしたらタンクという役割があるのを知って、イメージしていたものと少し違ったのですが(笑)。最初に選んだクラスなので思い入れもあって、今もそのまま続けている感じです。

――『FFXIV』のバトルコンテンツは “クリアできるバランス”の調整が絶妙ですよね。パッチ4.1の“絶バハムート討滅戦”をクリアしたプレイヤーからもそうした声があがっていました。これらのバトルコンテンツは、どういったプロセスで作られているのでしょうか?

中川:まず企画書を作成し、それを“セクション内プレゼンテーション”という、バトルチーム全体が集まって内容を精査する会議にかけます。

――その時点での企画書の内容は、世界観を重視したものなのでしょうか? それともシステム的にこういうことをしてみたいというものなのでしょうか?

中川:両方ですね。企画書というよりは、かなり詳細な仕様書に近いものをこの段階で作ります。どんな敵が登場してどんなアクションを使うかとか、ギミックの詳細なども書かれています。

――例えば“神龍討滅戦”では、バトルフィールドのなかに収まりきらないような巨大な龍と戦いますが、あの設定に決まった経緯を教えてください。

中川:パッチ4.0のメインクエストのラスボスが神龍であることは、かなり前から決まっていました。ただドラゴンは『蒼天のイシュガルド』で何度も戦った相手であるため、それとは差別化したいという考えがあって。そこで、“とにかくスケールのデカいドラゴンと戦う”ということを最初に決め、そこから詳細を詰めていきました。

――“絶バハムート討滅戦”に、ツインタニア、ネール・デウス・ダーナス、バハムート・プライムが登場するという案も、企画段階で決まっていたのでしょうか?

『ファイナルファンタジーXIV』

須藤:そうですね。吉田さん(プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏)からコンセプトを聞いた段階で決めていました。今まで“絶”コンテンツに興味がなかった人でも関心を持ってくれるような組み合わせは、その3体だろうと。

――そうして作られた企画書を、まずはセクション内にプレゼンするわけですね。

中川:はい。このギミックはコンテンツのコンセプトに合うのかどうか、バトルとしてのボリュームは充分かなど、かなり細かい部分までこの会議で話し合います。

『ファイナルファンタジーXIV』

 上記がバトルコンテンツ制作時の大まかな流れ。まずギミックの内容まで含めた詳細な企画書を作り、それをバトルコンテンツ班内でプレゼンテーション&ディスカッション。次に他セクションに対してプレゼンテーションし、問題がなさそうなら各所にリソースの発注を行う。

 その後はテストプレイをへて幾多の調整が行われ、最終段階になったらP/Dの吉田さんによるプレイチェックをへてさらに調整。そうしてシェイプアップされたものが、プレイアブルとしてリリースされる。ちなみに、テストプレイは開発スタッフ内でプレイヤースキルの高い方々が集って行われるとか。

――コンテンツの難易度も、この段階で決まっているのですか?

中川:もちろんです。これだけのギミックの内容と数で足りているのか、それとも盛りすぎなのかなども話し合います。ここで企画を練り直したうえで、次の“セクション外プレゼンテーション”に進み、グラフィック、サウンド、世界設定、バックグラウンド、プログラムチームなどに対してプレゼンを行います。

――セクション内プレゼンテーションの段階でかなり内容が固まっていると思うのですが、ほかのセクションとの話し合いで仕様が変わることはあるのでしょうか?

中川:大きく変わる、ということはあまりないですね。

須藤:セクション内で企画を練る段階で、ほかのセクションにも相談していますからね。あらかじめ確認をとっておかないと、他セクションの方から指摘が多くなることがあり、企画自体の練り直しが必要になる時もありますので(笑)。

――吉田さんには、最初の企画段階でお話をされるのでしょうか?

中川:企画の段階でOKかNGかは判断をしてもらいます。そのあと吉田さんに最終詳細をお伝えするのは、本当に最後の段階です。セクション外プレゼンテーションのあと、必要なリソースの発注、実装、テストプレイと調整をへて、ようやく吉田さんの最終チェックが入ります。

――なるほど、最後はほぼ完成してから見てもらうのですね。

須藤:ただ、まったく新しい企画を進めるときは、セクション外プレゼンテーション後に一度、詳細を確認していただくことがあります。“絶バハムート討滅戦”であれば、バトルの流れ、戦闘時間、ギミックなどの大枠を説明しました。

――最初のアライアンスレイドである“クリスタルタワー:古代の民の迷宮”のときもそうだったのでしょうか?

中川:初めて作るタイプのコンテンツでは、そもそもコンセプトが吉田さん発信のモノも多く、そういった場合には企画担当セクション内での打ち合わせ、その後吉田さんも加わってのディスカッションがあり、詳細まで事前に確認することが多いですね。初期のアライアンスレイドや、“ディープダンジョン:死者の宮殿”などはこのパターンです。

 “雲海探索 ディアデム諸島”は担当者からの提案型で、吉田さんのOKが出るまで、かなりやりとりをしていたはずです。開発に慣れたコンテンツタイプの企画は初期確認と最終バランスチェックのみになるケースが多く、シナリオに深くかかわるものや、最近だと、“リターン・トゥ・イヴァリース”はかなり綿密に確認したものに属します。

『ファイナルファンタジーXIV』

中川さん、須藤さんの“ギミック”の作り方とは?

――『FFXIV』のバトルコンテンツにはさまざまなギミックが登場しますが、具体的なコンテンツの企画が立ち上がる前に、チーム内で新しいギミックを考える話し合いなどは行われるのでしょうか?

須藤:あんまりしないですね。

中川:ほぼしないですね。スタッフ個人の思い付きがほとんどです。普段からそういうネタをため込んでいる人もいますし。私もそうなんですけど。

須藤:私は必要なときに考えるタイプですね。でも、プレイヤーとしてみなさんと同じように遊んでいるときに、“このギミックに少し手を入れたらおもしろいんじゃないか”と気づくこともあります。

――いわゆる“頭割りダメージ”の攻撃にも、いつからかマークがつくようになりましたよね。あれもどなたかの発想なのでしょうか?

中川:あれは、吉田さんから“頭割りや散開などは、マーカーをコンテンツ単位でバラバラにせず、きちんと整理をしてアンフェアをなくせ”というオーダーがありまして(笑)。

――視認性の向上などを行ってわかりやすくする部分と、あえてプレイヤーに謎解きをさせる部分とのバランス調整は、やはり難しいですか?

須藤:そこは難しいですね。パッチ2.0の“大迷宮バハムート”を作っていたときは、“とにかく歯ごたえのある難易度にする”という前提があったので、なぞなぞみたいなギミックをたくさん取り入れたんですけど(笑)。

 ちょっとやりすぎたということで、パッチ3.0以降からは、“頭割り”や“視線”をアイコンで示してわかりやすくする方向に調整しました。なので最近は、なぞなぞ系のギミックが減ったかな。

――パッチ4.1の“失われた都 ラバナスタ”では、新たなギミックが多かった気がしますね。例えば、冷血剣アルガスの“喪失の恐怖”の内容が、頭上に指差しマークが出て移動方向が変わるものだったり、などでしょうか。

中川:企画は別のスタッフが進めていますが、もちろんセクション内の会議には我々も参加しています。その“喪失の恐怖”についてはかなり議論しましたね(笑)。

――ギミックの難易度のさじ加減は、今まで開発されてきたなかでの経験則から決められるものなのでしょうか?

須藤:そうですね。ただパッチ2.0のときはまだ手探りの状態で、想定した結果が得られないこともありました。今は、コンテンツのターゲット層に合わせて、どういった難易度のギミックを用意すればいいか感覚的にわかるようになってきています。

中川:以前は“ダンジョンはこうなんだ”“蛮神戦はこうあるべき”という認識について、スタッフ間でズレが生じることもありましたね。

須藤:個人的には経験則以外に参考にしている部分もあります。まず、高難度以外のたくさんのプレイヤーに遊んでもらうことを想定したコンテンツでは、「このまま実装してもいいだろう」というところまで徹底的に作りこんでからテストプレイに回します。

 そのテストプレイで“ギミックの解き方がわかりにくい”“数回トライしてもクリアできない”という点が見つかったとき、調整をかけるようにしています。

――“機工城アレキサンダー”や“次元の狭間オメガ”など、ノーマルと零式の2つの難易度があるコンテンツでは、最初に零式の仕様を考えたうえでノーマル版を作る、といった決まりはあるのでしょうか?

中川:絶対というルールはなく、そこは企画者によるのですが、零式から考えるスタッフのほうが多いかな?

須藤:そうですね。私は零式から考えます。

中川:私は逆で、ノーマルのほうを土台としますね。

――ノーマルから考えて、そこから難度を上げる手法と、零式の高難度からギミックを簡易化していく手法があるということですね。

須藤:はい。ただ零式の仕様から決める場合でも、「ノーマルではこのギミックを調整しよう」と考えながら作っています。

――“このギミックは削ろう”という判断基準があるのでしょうか?

須藤:“わかりにくいもの”と“他のプレイヤーを攻撃に巻き込んでしまうもの”は、高難度コンテンツ以外では基本的に入れないようにしています。

中川:よく議論のなかで“個人で完結するギミック”と、“仲間と連携するギミック”というキーワードが出てきます。個人で完結するギミックは、失敗しても自分だけがダメージを受けたり、戦闘不能になったりするだけのもの。

 仲間との連携が必要なほうは、失敗するとそれが全滅につながりかねないものですね。後者のほうは、ノーマル難易度のコンテンツにはふさわしくないと考えています。

――コンテンツが実装されたあと、プレイヤーからの評判やプレイ状況などで注目している部分はどこでしょうか?

須藤:私の場合、とくに零式コンテンツにプレイヤーとして参加するとき、自分たちが意図した攻略方法が採用されているかどうかを気にしています。ほかのプレイヤーが最初に流す説明マクロのなかで、どんな決め事が設定されているのか、その数はどの程度なのか、といったことを開発の参考にしますね。

中川:プレイヤーの方々は本当に上手いので、想定していない攻略方法を目にすることはよくあるよね。“こんなやり方があったんだ……!”って。

須藤:それはありますね。

――“大迷宮バハムート:侵攻編4層”のいわゆる“6連スターダスト”を、皆でまとまって外周を走ることで乗り切る方法は、開発の方々の想定外だったとうかがったことがあります。

中川:あれはまさにそうですね。

須藤:プレイヤーの方々が想定外の攻略をされたとき、“そうきたか……”と反省するときと、“これはすごい!”と素直に感心するときがあって。“6連スターダスト”については後者で、とても感動しました。

中川:すごくキレイな解き方だな、と思いました。

須藤:最近は、まるで想定外の解き方というのは目にしないですね。

――プレイヤー間にもギミックの解き方のノウハウができてきて、開発の方々もそれを想定して作られているからでしょうか?

中川:“絶バハムート討滅戦”に関しては、ほぼ想定通りだったよね。

須藤:そうですね。難しいコンテンツになるほど、攻略方法を試行錯誤していくうちに1つの答えにたどりつくようにデザインしています。

中川:正解が2つ以上あるようなデザインには、基本的にはしないようにしていますね。

須藤:ゲームとしては、正解が複数あるという選択肢の多さもいいことだと思います。ですが『FFXIV』はオンラインゲームであり、レイドファインダーなどを使って毎回違うメンバーと攻略することも多く、複数の正解があると混乱を招くことにつながりかねません。

 “次元の狭間オメガ零式:デルタ編4層”でも、“ブラックホール”のとき、ボスの固定位置を中央か端にする2通りの攻略方法ができていますよね。ああいった部分は、プレイヤーに困惑させてしまっているのかなと感じます。

中川:「さっきのパーティは攻略法Aだったのに、今回のパーティはBでいくらしい。Aのほうがやりやすいのに……」ということが、ストレスになる場合もあります。それはそれでおもしろい部分でもあり、難しいところですね。すべてのコンテンツにおいて正解が1つしかないのは、つまらないですし。

――パッチ3.3でレイドファインダーが、パッチ3.5でクロスワールドパーティ募集が実装され、よりエンドコンテンツに参加しやすくなりました。それにともない、今までレイドに挑戦する機会の少なかったライトユーザー層の参加人数も増えたと思いますが、その点は意識して開発や調整をされているのでしょうか?

中川:レイドの難易度に関しては、かなり長い間議論を続けてきました。現状では、“機工城アレキサンダー:天動編”の難易度を基準にするのが最適だと考えています。“次元の狭間オメガ”も、その方針で作りました。

――タンクでコンテンツをプレイしていると、“このタイミングでこのアクションを使うのがベスト”という設計がなされている感覚を覚えることがあります。これは、アクションのリキャストなども考慮されたうえで作られているのでしょうか?

須藤:高難度コンテンツにおいては、考慮して作っています。テストプレイ時に、“最適なタイミングでアクションを使ったとき、バトルを通してリキャストが間に合うか”をチェックしていますね。

――タンク3ジョブすべてで成立させるのは大変そうですね。

須藤:以前は苦労しましたが、パッチ4.0でアクションの仕様が大きく変わり、ロールアクションができたことでかなり計算しやすくなりました。

 タンクの無敵スキルに対しての調整という点では、例えば“次元の狭間オメガ零式:デルタ編”においては、基本的に無敵系アクションを使用しなくても攻略できるように調整しています。とはいえプレイヤーのみなさんは当然、無敵系アクションの使用を前提に戦術を組み立てますよね……。

――“極神龍討滅戦”などの頭割り攻撃“アク・モーン”を、タンク1人で受けきる場面とかがそうですね。

須藤:私もよく“インビンシブル”にはお世話になります……(笑)。

中川:テストプレイ中、よく“インビンインビン!”って叫んでるよね(笑)。

須藤:ちなみに“絶バハムート討滅戦”に関しては……すみません、無敵系アクションを考慮して作りました。いつもの制約を解除して。

中川:“絶バハムート討滅戦”は、ほかのコンテンツとは考え方を変えました。薬品や調理品を含むパラメータや、アクションやLBのタイミングなど、すべて考慮して設計した、最高の難度に設定しています。

――今までにないタイプのコンテンツだと思いますが、セクション内プレゼンテーションでの反応はどうでしたか?

須藤:私が企画書を書いて、10分ほどで流れを説明し、ギミックをかいつまんで説明して終わり、という感じでした。

中川:須藤はかなり実績があり、セクション内スタッフからの信頼も厚いですからね。“コイツなら大丈夫だろう”と思っているので、“絶バハムート討滅戦”という超高難度のコンテンツでも、不安視はされていませんでした。

――中川さんが、最初に仕様を確認したときの感想はどうでしたか?

中川:“またいろいろ盛ってきたな……”という感じです(笑)。

須藤:ギミック量が膨大なので、細かく説明しても“も、もういい”と止められると思って(笑)。軽めに話しました。

中川:“絶バハムート討滅戦”の開発で時間がかかったのは、テストプレイですね。ここでかつてないほど長い議論になりました。

須藤:例えば“天地の三重奏”だと、セクション内プレゼンテーションのときは“ここでデカい剣が降ってきて、ノックバックして塔に入ります”くらいの説明だけだったんです。でも、いざプレイしてもらうと……(笑)。

――「こんなんできるかー!」となったわけですね(笑)。そこから緩和されていったのでしょうか?

中川:じつは相当緩和されていますね。

――テストプレイ時は、プレイする方にギミックの説明はされるのでしょうか?

須藤:“絶バハムート討滅戦”に関しては、事前に説明しています。説明なしではさすがに時間がかかりすぎるので、ホワイトボードを使ってフェーズごとに動き方を解説しながらプレイしてもらいました。

――その授業、ぜひ受けてみたいです(笑)!

須藤:先生側はめちゃくちゃ大変ですよ(笑)。何度も図を描いて説明して。

中川:円描くのが上手くなるよね(笑)。

――ちなみに、テストに参加したスタッフさんからはどんな指摘がありましたか?

須藤:フェーズごとにいろいろありましたが、いちばん多かったのは“ギミック対処の時間的猶予がない”という意見ですね。

中川:いわゆる“金バハ”のフェーズだと、テストプレイ時の仕様では、現在公開されているものに加えて、もっと多くのギミックがあったんです。

須藤:現在公開されているものが最初に企画した内容ではあるのですが、作っているうちに、「あ、これ足りないな」という悪いクセが出てしまいまして(笑)。テストプレイ前に「足りない気がするから、ちょっとこれ追加したい」とプログラマーに相談して。

中川:だいたいそういう思いつきは、テストプレイ時にツッコまれるんだよね(笑)。

須藤:“やめとけばいいのに……”とよく言われます(笑)。

――“モーン・アファー”“アク・モーン”“エクサフレア”のほかに、もう1つギミックがあったということですか?

須藤:1つどころじゃないですね。メガフレアの円範囲攻撃、頭割り、塔も重なっていました。それらに対応しながら“エクサフレア”にも対応しないといけなくて。あと“エクサフレア”に矢印もなかった(笑)。

中川:どこから来ているかわからない(笑)。とんでもなかったよね。

須藤:とにかく特盛りにしたくて。でも、約15分かけて最終フェーズまで来て、毎回塔を踏むのはやりすぎという意見や、最後は力の勝負が良いという意見もあり、結局最初の仕様に落ちついた感じです。まあ、よくあることですね(笑)。

――“極神龍討滅戦”の後半フェーズで神龍の尾を渡って移動した後あたりも、じつはもっとギミックがあったりしたのでしょうか?

中川:いえ、あそこはもとのままに近いですね。多少タイムテーブルは違いましたけど。

須藤:後半フェーズは、企画の段階からスッキリしていました。

――今までの極蛮神戦では、後半に入ると攻撃が激しくなり、ギミックも難しくなる傾向にありましたが、“極神龍討滅戦”においては逆のように感じました。

中川:はい。『FFXIV』のいつもの作り方は、後半になるにつれ難しくなる形なのですが、“極神龍討滅戦”に関してだけ、あえて変えたんです。今までの極蛮神戦に比べて難度が高いため、前半に山場を持ってきて、練習しやすくしたんです。

過去最高峰に“攻略”で盛り上がった絶バハムート討滅戦

『ファイナルファンタジーXIV』

――『FFXIV』のコンテンツの模様をライブ配信されているプレイヤーの方は多いですが、“絶バハムート討滅戦”においては、今までにない盛り上がりを見せています。そのことに関して、どう思われましたか?

中川:ここまで盛り上がっていただけて、作った側としては本当に嬉しいです。

須藤:「自分達が作ったものを、どうやって解いていくんだろう?」と、よく配信はチェックしています。ただ“絶バハムート討滅戦”に関しては、「視聴人数の桁が違うぞ……!?」ということにまず驚きました。ボスが次々入れ替わり、戦闘風景も大きく変化するため、視聴者に攻略の進展が伝わりやすかったことがよかったのかなと思います。配信で受けるように狙ったわけではないですけどね。

――パッチ2.0から続く“大迷宮バハムート”に挑戦してきたプレイヤーであれば、“ツイスター”がどんな攻撃かなどの知識がある点も大きいと思います。見ていてわかりやすい。

中川:視聴者がルールを理解できないと、配信は盛り上がりませんからね。

須藤:そこも今回は偶然、噛み合ったという感じですね。

――ここまで評判がよいと、今後の“絶”コンテンツのハードルが上がりますね。

中川:そうですね。それはあります。

――仲間内でも予想していたりします。順当に考えて“絶アレキサンダー”になるのか、あるいはトールダンやニーズヘッグなど総登場の“絶・竜詩戦争”みたいなものなのか、はたまた“絶リットアティン討滅戦”……とか(笑)。

中川:そこはぜひいろいろと妄想を膨らませていただければ、と(笑)。でも、そういう妄想に近い話も、スタッフ同士ですることがありますよ(笑)。

――ギミックのほかに、コンテンツごとに要求されるDPSの基準も設定しなければならないと思うのですが、なにか目安はあるのでしょうか?

中川:ダンジョン、アライアンスレイド、ノーマルの8人レイドにDPSチェック要素を入れる場合、かなり易しい設定にしています。参加条件を満たしていれば、ひっかかることはほぼない程度に。

須藤:高難度コンテンツに関しては、さまざまな要素を加味して、きっちりハードルを設けます。

――これくらいはDPSを出さないと、次の段階は超えられない、といったような決め方でしょうか?

須藤:それもありますし、各層ごとの特徴で決めることもあります。“1層はギミックが複雑なぶん、DPSチェックはゆるくしよう”など。基本的には深層へ進むほど、厳しくしていますが。

――“次元の狭間オメガ零式:デルタ編”だと、1層、2層より、3層から要求DPSの上がり方が高くなっているように思います。

中川:そこは“機工城アレキサンダー零式:天動編”を踏襲し、3層からが本番だよという調整をしたためですね。

須藤:でも3層からが本番、というのは“大迷宮バハムート”の頃からそうだったかな。そこはいつもどおりです。

――ちなみに“木人討滅戦”も、レイドコンテンツと同時に作られるのですか?

中川:コンテンツの調整を終えてからですね。“木人討滅戦”は、バトルシステムチームに作ってもらっています。

――ギミックをこなしながらDPSを出さなければならない本番と、ひたすら攻撃に集中できる“木人討滅戦”とのバランスは、どう取られているのでしょうか?

須藤:そこは我々も練習してコンテンツのテストを行い、話し合いながら……決めていくような感じですかね。詳しくは言えないのですが(笑)。

――プレイヤースキルによってDPSに大きく差が出るジョブのことを考えると、コンテンツの要求DPSの調整は難しそうですね。

中川:難しいですね。ただ“機工城アレキサンダー零式:天動編”からは、高すぎるハードルは設けないように意識しています。

須藤:ギミックは練習することができますが、DPSチェックを厳しくしすぎると、攻略自体を止めてしまいますから。そこは気をつけるようにしています。

――テストプレイ時に、装備のILを変えてプレイする、といったことはされますか?

中川:もちろんしています。基本的には適正ILでテストしますが、実装するパッチでそろえられる最高ILまで上げるとどうなるか、などもチェックします。

――『FFXIV』のバトルは、特定のタイミングでタンクのLBを使って敵の攻撃をしのぐなど、バトルマンガのようなアツい展開があるのも特徴ですが、これは企画の段階ですでに織り込まれているのでしょうか?

須藤:最初の段階で決まっていることもありますし、作っている過程で“あ! コレ入れちゃお!”みたいな思い付きで入れることもありますね。

中川:また出た(笑)。

――例えば、どのコンテンツのどのあたりの演出でしょうか?

須藤:そうですね、“絶バハムート討滅戦”でもそういう部分はあったかな?

――“第七霊災”をタンクのLBで耐えるあたりとか?

須藤:そうですね、あれは後で追加したと思います。

中川:“機工城アレキサンダー零式:天動編4層”の“聖なる審判をタンクLB3で防ぐ”演出は、最初から決まっていたよね。

須藤:はい。“起動編”から続くストーリーの最終層だったので、ここで使おうと思って。

――“機工城アレキサンダー零式:天動編4層”は、ノーマル難易度も含めて、ストーリーにかかわる要素がバトルのギミックになっていますね。そういった部分を決めるときは、別のチームとのすり合わせが行われるのでしょうか。

中川:はい。セクション外プレゼンテーションのときに、世界設定チームと話し合って決めますね。

須藤:過去改変の演出については企画段階で踏み切ろうか悩んでいましたが、最終的に織田(世界設定、シナリオを担当する織田万里氏)が“自分、そういうの嫌いじゃないっすよ”とカッコよく言ってくれて(笑)。シナリオチームにも協力してもらいました。

――いわゆる“隔離部屋”から、イベントシーンで見たキャラクターの配置や動きがちゃんと見えますよね。あれは、グラフィックスチームにイベントシーンと合わせて作ってもらったのですか?

須藤:そうですね。もちろん詳細は伝えましたが、グラフィックスチームが細かいところまで気をつかって作ってくれましたので、結果的にとても良い演出になったと思います。

――“神龍討滅戦”も、かなり演出が重視されていますよね。

中川:そこはとても意識して作りました。普通の蛮神とは違って、メインストーリーの締めになる“最後のボス”ですから。最高級の演出にしなければと思いました。

――前半と後半が切り替わる際、BGMもそれに合わせて自然に切り替わっているように感じました。あれはそうした意図をサウンドチームに伝えて調整されたものなのでしょうか?

中川:いえ、そこは発注ではないです。もちろん後半のBGMへ切り替えるタイミングは調整しましたが、フレーズまでバッチリ合っているのは、祖堅さん(サウンドディレクターの祖堅正慶氏)の努力だと思います。

――BGMを含むサウンドは、コンンテンツの製作と並行して作られるのか、ほぼ完成したものに合わせて作られるのか、どちらでしょうか?

須藤:サウンドチームもセクション外プレゼンテーションで、企画内容を伝えます。BGMなども同時期に発注しますが、実際に反映されるのはテストプレイの段階が多いです。

中川:ボスのモーションができて、そこにエフェクトが乗って、最後にSE(効果音)が乗ります。SEを細かくオーダーすることは、あまりないですね。“禁忌都市マハ”のオズマが変形するときのSEなど、細かく話し合って決めたこともありますが。

――攻略的にSEが重要になる場合においては、バトルチームからオーダーするということでしょうか?

須藤:そうですね。例えば“魔神セフィロト討滅戦”でいわゆる“タケノコ”が生えてくる直前、“フワァッ”ってSEが鳴るんですけど、“慣れれば音でわかるように、印象的なものにしてほしい”とオーダーしました。

――バトルの想定戦闘時間は、サウンドチームに伝えるのでしょうか?

中川:バトルの戦闘時間は、極蛮神戦ならこれくらい、ダンジョンのボスならこれくらいなどのルールが決まっています。秒単位で敵アクションの流れなどが企画書に盛り込まれているので、プレゼンの段階でほかのチームに伝えていますね。

須藤:サウンドチームからも、時間に関しては細かく聞かれますね。例えば“絶バハムート討滅戦”の金バハフェーズで、“ここは何分戦うんだ?”と祖堅さんに聞かれて、“だいたい3分くらいです”というやりとりがありました。

――『FFXIV』のバトルはすべて論理的に細かく計算され、ほかのゲームと比較してランダム性が少ない印象を受けます。最近では“極神龍討滅戦”の“裁きの雷”の麻痺の条件(15%で付与)が話題となりましたが、ランダム性を取り入れる際の方針についてお聞かせください。

中川:“ランダム性を入れてほしい”というご要望もいただいており、スタッフ間で議論も行っています。例えば“城塞奪回 ストーンヴィジル (Hard)”のボスは、ランダム性に挑戦したものの1つですね。ボスの行動にパターンがなく、予兆も出ない作りにしました。

須藤:“腐敗遺跡 古アムダプール市街”のディアボロス戦で出てくる扉のような“攻撃方法は決まっているけど組み合わせや順番にランダム性がある”ものと、“使ってくる攻撃自体がランダム”なものではかなり大きな違いがあります。ランダム性を入れるとしても、コンテンツによってどちらが適しているのか、よく考えるようにしています。

――“絶バハムート討滅戦”のネール・デウス・ダーナスの場合、その両方といった感じですね。技の対象がランダムなことと、そもそもどの攻撃が来るのか直前にならないと確定していないことと。

須藤:そうですね。あれはその時の判断で回避してほしいという意図と、バランスを考えて入れました。

中川:『FFXIV』のバトルにおいては、すべてランダムなのではなく、部分的に取り入れるのが合っているのではないかと考えています。“極シヴァ討滅戦”だと、剣と杖がランダムで選択されるけど、1回目が杖なら2回目は必ず剣だと判断できるような。ほどよいランダム性を取り入れるようにしています。

――ダンジョンに関してはレイドとは異なり、少しずつ攻略していくというより、何度も繰り返しクリアすることを前提に作られていると思います。パッチ2.0の頃と現在とで、方針が変わっている部分があればお聞かせください。

中川:相当変わりましたね。長い間議論があって、今のような、繰り返して遊びやすい形に落ち着きました。

――パッチ2.0の頃のダンジョンは、あらためて思い返してみると今に比べて難しかったですね(笑)。

須藤:難しかったです(笑)。ただ今の形に落ち着いたのは、本当に最近で。パッチ3.0に入ったあたりからかな。

須藤:ダンジョン攻略は日課のようなものなので、サクッと気持よく終われるようなデザインがいいと考えています。

――際限なくまとめられないよう、ある程度の区切りがある作りもヒーラーとしてはありがたいです。

須藤:白魔道士に“アサイズ”が追加された当初、ボス戦にHPが低いザコを出してしまうと“アサイズ”で一掃できてしまい、“さすがにヒーラーとしてどうだろう……”と思っていました。でも最近は“アサイズ気持ちいい!”に変わりました(笑)。プレイヤーとして遊ぶうちに心境が変化し、それが開発にも影響していますね。

――より楽しく遊べる方向にシフトしているということでしょうか?

須藤:そうですね。最近は、“うまくやれた”とか“爽快だった”とか、そういった体験をしてもらえるコンテンツになるように作っています。

――“壊神修行 星導山寺院”で、2番目のボスのアブダを倒した時間によって、NPCが“〇〇級に認定しましょう”と評価してくれますよね。あの仕掛けもおもしろいと思いました。

中川:あれも、繰り返し攻略するものだから、“こういうのを入れたい”と須藤が提案したものです。

――あれの最高評価って、“双頭クァール級”なんでしょうか? その上は……?

須藤:あることにはありますが、秘密にしておきます。最上級は半分ジョークです(笑)。

――まだ誰も出していないランクがあるということですか?

須藤:ナイショです(笑)。

メインストーリー、ジョブクエスト……イベントバトルにまつわるアレコレ

――ソロ用のイベントバトルも、パッチ4.0で大きく進化しているように感じました。

中川:イベントバトルに関してはさまざまな経緯があり、どんどんクオリティが上がっています。毎回いろんな試みをしていますが、大きな転換点となったのは、パッチ3.0のメインクエスト“ラウバーン奪還作戦”ですね。

 あれはパッチ3.0で最も力を入れたイベントバトルで、公開後の評判もよく、以降に実装された規模の大きなイベントバトルはあれをモデルケースにしています。もともとイベントバトルは量産することを前提に作っていましたが、“ラウバーン奪還作戦”を作る際に開発環境を見直し、それをきっかけにクオリティの高いものが作れるようになりました。

 また、パッチ3.0まではほぼ私1人で作っていたのですが、今はイベントバトルごとに担当を決め、時間とコストをかけて作っています。

――基本的には1回しか遊ばないコンテンツですが、プレイヤーの印象に強く残るクオリティのものが作られているのは、そのためだったのですね。

中川:イベントバトルはダンジョンのボス戦とは違い、味方のNPCと共闘し、彼らがこの世界で生きていることが感じられるような没入感が必要なんです。

 アルフィノが鎖に拘束されて、それを解いてやると“ありがとう”と礼を言ってくれるとか。そういった細かい部分を表現するのがイベントバトルですね。パッチ4.0ではそこに時間をかけることができたので、いい評価をいただけたのだと思います。

――それぞれのイベントバトル担当の方が、シナリオ担当の方と“こんなキャラクターを出したい”などと話し合われるのでしょうか?

中川:基本的に登場するキャラクターはシナリオチームが決めていて、その制約のなかからどういったバトルにするか決めていく感じですね。ちなみに、評判のよかった“終節の合戦”と、闇の戦士との戦いは、“ニーズヘッグ征竜戦”や“機工城アレキサンダー:天道編2層”などの制作を行ったプランナーが担当しています。

 たまに生放送などで話題になるのですが、彼は自分の入社歓迎会で須藤を目の前にして、「侵攻編2層を反面教師にして頑張ります!」と発言したプランナーですね(笑)

『ファイナルファンタジーXIV』

――“終節の合戦”では、それぞれのNPCに必殺技があったのが見ていて楽しかったです。ほかにも、パッチ4.1のラクシュミ戦は、蛮神戦でありながらパーティコンテンツではないという、今までにない形になっていましたね。

中川:あれも新たな挑戦でした。じつはもともと、超える力を持つためテンパード化されない光の戦士、フォルドラ、アレンヴァルドの3人だけで戦うというのが、シナリオチームからのオーダーでした。ですが、ラウバーンやリセたちが敵を目の前にして戦わないのはおかしいという意見が出て、今の形になりました。これも、“終節の合戦”と同じスタッフが担当しています。

――リセやフォルドラの見せ場もあり、ストーリーの盛り上がりと強くリンクした作りになっていました。こういった印象深いインスタンスバトルを、クリア後にもう一度プレイしたいという声もあがっているようですが、予定はあるのでしょうか?

中川:はい。以前に吉田さんからもお話が出ていたと思いますが、再度プレイして問題がないかどうか、チェックをするなど、準備は少しずつ進めています。

――パッチ4.0以降のジョブクエストの一部では、今まで攻略してきたダンジョンが舞台となっていたのが楽しかったです。

中川:膨大な数のイベントバトルがありましたが、ジョブクエストに関しても人数をかけ、それぞれの担当が集中して開発できる環境にできたため、よいものができました。ちなみに、戦士は須藤が担当でした。

――メインジョブが戦士なのですが、本当におもしろかったです。暗黒騎士のジョブクエストにも感動しました。

須藤:ありがとうございます。

中川:暗黒騎士は素晴らしかったですね。あれは、“リターン・トゥ・イヴァリース”のアルガス戦の担当者です。

――今回は本当にどのジョブクエストもボリュームがあって豪華な作りになっていましたが、これは吉田さんからのオーダーなのでしょうか?

中川:いえ、そういうわけではなく、現場のスタッフの努力です。パッチ3.0のときは、パッチ2.0のジョブクエストを超えるものを作ることを目標にしていたので、今回はさらにその上をいくものにしたかったんです。

――ちなみに、お2人がお互いの作られたコンテンツのなかでとくにお気に入りのものはなんでしょうか?まずは中川さん、須藤さん作コンテンツのお気に入りをお願いいたします。

中川:少し古いですが、“極タイタン討滅戦”ですね。ボスの使うアクションが少なくてシンプルなのに、あれだけ緊張感を演出できるのはすごい、と思いました。

――たしかにのちの蛮神戦と比べると、アクションの種類がかなり少ないですね。そう考えると、イフリート、タイタン、ガルーダの3蛮神は、その後の基礎にはなっていても、今の蛮神戦とは趣が違うような気がします。

須藤:中川が“極リヴァイアサン討滅戦”を担当したあたりから、徐々におかしくなってきた気が(笑)。だんだん盛り方が激しくなってきたというか。

中川:さらに“極シヴァ討滅戦”からグッとアクション数が増えたのかな……。

須藤:究極履行に専用の演出が加わって、みたいな。

中川:「次はもっといいものを!」というスタッフの熱い思いがそうさせたんじゃないでしょうか(笑)。

――須藤さんが、中川さんの作られたコンテンツのなかで、これはおもしろいなと思ったものはなんですか?

須藤:全体的に言えることですが、いつも新しい要素が入っているところですね。“禁忌都市マハ”のオズマや、“極女神ソフィア討滅戦”とか。中川が作る“極”コンテンツは周回しやすくて、遊びやすいと思います。あとは、絵的にもこだわりがあって楽しいですね。でもそのせいで、毎回プログラマーと揉めている気が(笑)。

中川:人聞きが悪いな! 揉めてはいない、はず……(笑)。

須藤:そうですね、切磋琢磨している、でお願いします(笑)。

――パッチ4.1で“コンテンツルーレット:アライアンスレイド”が追加されたおかげで、またオズマと戦う機会ができましたが、いまだに緊張します(笑)。

中川:まず、バトルフィールドの形が異様ですよね。

――細い、ってなかなかないですよね。初参加のとき、開始直後にうっかり落ちて驚きました。

中川:「コレ落ちるやつなのか!?」って感じですよね(笑)。

――そういえば“極神龍討滅戦”では、敵視リストを大きくして敵アクションを確認しやすくするなど、UIの調整が攻略要素になったのが印象的でした。

中川:企画段階のコンセプトでは、“使用するアクションを、翼のエフェクトから判断する”というものでした。ただ、キャストバーが見えないとやはりダメだろう、ということになり、神龍戦専用のUIを作る案もありました。

 コンセプトが巨大ボスとのバトルであり、よくオフラインゲームであるような、いろんな部位に攻撃可能なバトルをオンラインでやろうと考えて。最終的には、敵視リストにキャストバーを入れる形になりました。

――DPSにはエフェクトで判断する人もいるようですが、タンクだとボスに近すぎてエフェクトが見えにくいため、敵視リストからアクションを確認しています。

須藤:テストプレイ中にもいろいろ意見が出ていましたね。

中川:敵視リストに詠唱バーを表示するかたちではなく、翼のエフェクトをもっと見やすくすること1本に絞ってしっかり調整したほうが、もしかしたらよかったのかもしれません。

――バトルコンテンツを作っていて、やりがいや喜びを感じるのはどんなときでしょうか?

中川:やはり、プレイヤーのみなさんに“おもしろい”と言っていただけたときです。そのためにこの仕事をやっているようなものですから。

須藤:私は、プレイヤーの方々が、バタバタと……。

中川:それ言う?(笑)。

須藤:言わないほうがいいですかね(笑)。私も中川と同じで、プレイヤーのみなさんにおもしろいと言っていただけた時や、作ったコンテンツの難易度がターゲット層に適した形に落とせた時ですね。

 あとは、社内のテストプレイも好きです。めちゃくちゃ難度を上げた状態でバトル班にプレイしてもらって、罵詈雑言を浴びせられたり(笑)。もちろんプロレス的な行事のようなものなのですが、それが楽しかったりします。

――吉田さんにプレイしていただいたときの反応は、楽しみですか?

須藤:楽しみですね。たいてい怒りながら部屋から出てきますからね(笑)。“お前、前に反省してるって言ってたよな!?”って言いながら(笑)。

――ちなみにギミックって、ネタ切れの心配はないのでしょうか? 個人的には、解き方はともかく(頭割り/散開といった)ギミックそのものでまったく新しい観点のものが出ることはさすがにそろそろ少なくなるのかなと思っていたんですが……“失われた都 ラバナスタ”のハシュマリムが使う技のような新しいギミックが登場して、“すごい、まだまだ斬新なものが見られるのか”と驚きました。

『ファイナルファンタジーXIV』

須藤:じつは何度も、“新しいギミックを作るのは、もう無理なのでは”と思うことがありました。自分は“大迷宮バハムート:侵攻編”が終わって“真成編”を作るときに壁に当たりましたね。

中川:私も“極シヴァ討滅戦”のあとで、そういった経験があります。“極ラーヴァナ討滅戦”を作ったあとも、“これ以上できるのかな……”と思ったりしました。でも、最近はあまりないですね。いくらでも出るんじゃないかという気さえします。

須藤:“機工城アレキサンダー零式:天動編”からレイドの難度を下げる方針に切り替わりました。その時に、“難しいギミックにこだわらなくてもいいんだ”と、肩の荷が降りた気がします。そのボスに合った攻撃を考えれば、ネタは自然に出てくるんだなと。

中川:パッチ2.0の頃はスタッフも少なくて、1人にかかる負担が大きかったのもあるかもしれません。人数が多いと会話も増えますし、そのなかで新しいアイデアが生まれることもありますね。ちなみに、先ほど話にあがったハシュマリムの“統制の塔”のギミックも、“終節の合戦”担当者のアイデアです(笑)。

――『FFXIV』のバトルコンテンツならではの独自性はなんだとお考えでしょうか?

須藤:やはりギミックバトルでしょうか。『FFXIV』はそれに、演出の派手さが加わっているところが特徴的だと思います。ボスが行動すると玉が出てくるとか、普通に考えたらおかしいんですけど(笑)。『FFXIV』ではそれが“ああー、玉出してくるやつね”で済ませられる。

――グラフィックやモーションなどのリアルな表現と、記号を使ったゲーム的な要素が両立しているのが、『FFXIV』なのかもしれませんね。

須藤:それをプレイヤーのみなさんに受け入れてもらえているということが、他のゲームにはない独自性なのかなという気がします。

――現在は、パッチ4.2のテストプレイをされている段階でしょうか?

中川:そうですね。ちらほらテストプレイをし始めています。

――詳しいことはまだ公表できないとは思いますが、テストに参加しているスタッフの反応はいかがですか?

須藤:うーん……まだわからないですね。

中川:テストと修正を繰り返している段階なので。

須藤:ほかとのバランスもありますしね。

――楽しみです。とくに『次元の狭間オメガ』の次回以降は、どんな世界観になるのかも想像がつきません。

中川:そこはぜひお楽しみに(笑)。

――『次元の狭間オメガ』は、ノーマル難易度だけでなく、零式のテストプレイも始まっているのでしょうか?

中川:そろそろ、その段階に入ると思います。

――最後にバトルコンテンツチームとして、『FFXIV』をさらに盛り上げていくための意気込みをお聞かせください。

中川:須藤が作るコンテンツと私が作るコンテンツでは性質が違いますが、だからこそより多くの方に楽しんでいただける理由になっていると思います。

 ほかにもスタッフは大勢いますので、彼らが独自のコンテンツを生み出し、“この人の作るコンテンツが好きだ”と言っていただけるようになればと願っています。彼らの成長の助けになることが、私の今後の目標です。

『ファイナルファンタジーXIV』

須藤:『FFXIV』の開発体制のいいところは、やりたいことと理由を吉田さんにきちんと示せれば、わりと自由に作らせてもらえる環境だと思います。

 ですから、ほかのスタッフが成長して自分の企画を進めることになったとき、信念や意思を貫き通してほしいです。プレイヤーの方々も同じものを食べ続けたら飽きてしまうと思うので、新しい料理を出せるようにしたい。我々だけだと、それは難しいですから。

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中川:そうですね。美味しいものをお出しする自信はありますが、もしかしたらいつか“もう食べ飽きた”と言われる可能性はあるので……そのときのために、さらに違う味を混ぜて、よりおもしろいゲームにしていきたいです。

――ありがとうございました! 今後のコンテンツも楽しみにしています!

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