2018年1月15日(月)
『ディシディアFF NT』発売記念インタビュー。ストーリーのイメージや設定、アップデート予定に迫る
スクウェア・エニックスから発売中のPS4用ソフト『ディシディア ファイナルファンタジー NT』開発者へのインタビューを掲載します。
本作は、歴代『ファイナルファンタジー(FF)』シリーズの登場キャラクターを操作し、3vs3でバトルを楽しむ対戦型アクションゲームです。シリーズの特徴を生かしたスキルや召喚獣によって『FF』らしいバトルが実現する他、新たな神々と戦士たちの“はじまりの物語”が描かれます。
お話を伺ったのは、本作のプロデューサー・間一朗さんとディレクター・鯨岡武生さん。新たな闘争が幕を開けた本作の物語やアップデートなどについて、お聞きした。
▲左が間プロデューサーで、右が鯨岡ディレクター。 |
なお、インタビュー中は敬称略。
ストーリーのイメージはヒーロー集結映画!?
――本作の目玉の1つがオリジナルストーリーですが、シナリオはどなたが担当したのでしょうか?
鯨岡:野島一成さん(※)が原案を担当し、シナリオ全体の監修も行っています。
※野島一成さん:ステラヴィスタ所属。『FFVII』『FFVIII』『FFX』などのシナリオを担当。
間:野島さんが考えた原案をもとに、『FFXV』のシナリオプランナーを担当した板室紗織が実際にシナリオを書き進めていきました。板室は、PSP版の『ディシディアFF』にも携わっていたスタッフです。
――野島さんと板室さんがシナリオのメインスタッフなのですね。
間:はい。野島さんは主に原案担当ですが、自身でシナリオを書いている部分もあります。
鯨岡:野島さんが書き起こしたプロットをもとに、シナリオを膨らませたり必要であれば変えたりしたのが板室ですね。
間:野島さんの原案も重要でしたが、今回のストーリーを完成させるにあたっては板室の存在が不可欠でした。じつは昨年の12月18日・19日に開催した“SECRETUM -秘密-”という朗読劇のシナリオも、板室が執筆しています。それを野島さんに監修してもらい、あの朗読劇のお話ができ上がりました。
――世界観についても、野島さんの原案がベースなのでしょうか?
鯨岡:今回の世界観は、主に野島さんと僕のほうで煮詰めていきました。野島さんと話す前から、アーケード版の『ディシディアFF』がどんな世界なのかという立てつけは僕の頭のなかにあって、それが『ディシディアFF NT』とどうつながっていくのかを野島さんに伝えました。
あの世界で闘争が行われているのはなぜなのか、同じキャラが最大6人も戦場に出てきて戦えるのはなぜなのかというあたりまで設定を練ったうえで、本作の時系列や戦うべき敵の存在を野島さんに説明し、プロットを書いていただいた感じです。
――前作は“対カオス”というわかりやすい構図がありましたが、今回は戦うべき相手が誰なのかという疑問は確かにありました。
鯨岡:まあ、ファイナルトレーラーでかなり見せちゃったんですけどね(笑)。名称こそ“次元喰い”となっていますが、前作を遊んだ人なら正体にピンとくるかと。
間:鯨岡から、「PSP版でまだ解決してない問題がある」という話をわりと初期のころから聞いていました。
鯨岡:今回の敵が存在し続ける限り、あの世界で例えば『ディシディアFF』の次回作を作ろうと思ってもムリだと感じていました。なので、PSP版から残る因縁の敵と一旦決着をつけることにしたんです。そうすれば、今後『ディシディアFF』の世界が単品で成長する可能性も出てきますし、そこから例えば1本のRPGが生まれるなんてことが起こるかもしれませんから。
――となると、やはり前作ユーザーにこそ本作を遊んでほしいですね。
鯨岡:そうなります。特に前作をクリアして深いストーリー考察をしていた人にとっては、『ディシディアFF NT』でやっとしこりが取れると思います。逆に前作を遊んでいない人は難しく考えず、ひとつの巨大な敵に『FF』オールスターキャラが挑むストーリーとして見ていただければと。
――確かに前作のストーリーはかなり設定が深かった印象があります。
鯨岡:ちょっと小難しすぎたという気もしています(苦笑)。そういうところを踏まえて、今回はストーリーでナンバリング作品のような山あり谷ありの長い展開にはするべきではないと考えました。
間:登場キャラがすでに本来の世界で苦悩や葛藤を十分経験しているのに、闘争の世界に呼ばれてからもまた山あり谷ありを経験するのかと考えたら、そうではないなと。それよりも、『FF』の最強戦士たちが力を合わせて、諸悪の根源を倒すというストーリーのほうがわかりやすいと思いました。
鯨岡:ある意味、2時間くらいでまとまった映画のようなストーリーといえるかもしれません。それこそ『マーベル』シリーズのような、異作品のヒーローが集結するタイプの映画ですね。
――PSP版からつながるお話というのは、最初から決まっていたのですね。
鯨岡:はい。これはPS4版だからというわけではなく、アーケード版が稼動する前から構想していました。じつはアーケード版のOPムービーは、『ディシディアFF NT』をプレイすると筋が通る内容になっているので、クリアした人は見直してみるとおもしろいですよ。時系列としては、PSP版→PS4版→アーケード版となっています。
――それはアーケード版ユーザーにとって耳寄りな情報ですね!
鯨岡:あとはPS4版のエンディングについても考えた部分でして、仮に『ディシディアFF NT』で闘争が終わるエンディングだったら、その後のアーケード版で戦士たちが戦っている理由がなくなってしまいます。ゲームを遊んでいるユーザーさんはそこまで気にしないかもしれませんが、僕としてはそこもシナリオ的に納得のいく流れにしたかった。
『ディシディアFF NT』でお話に決着がついた後も、なぜ戦士たちは戦っているのか。アーケード版ユーザーの目線でいうなら、「なんで自分たちはこのゲームの世界で戦っているのか」という点にもちゃんと理由付けをしたかったんです。
――お話を聞けば聞くほど、そこまで設定を練りこんでいたのかとビックリします。
鯨岡:納得のいかない世界観というのが好きじゃないので。極端な話、後付けでもいいから、人に聞かれた時にしっかり説明できるくらいの設定付けはしておきたいんです。
――そういった細かい設定で、他にお話できるネタはありますか?
鯨岡:例えば、召喚獣は3人で呼ぶということにも一応理由があります。召喚獣は、前作であの世界に流れ着いた召喚石がそのまま残ったもので、長い年月をへてディシディア世界での独自の進化を遂げています。その過程で膨大な力が蓄えられたので、1人で召喚するには長い時間が必要で、3人だったらPSP版と同様に一瞬で呼べる……という感じです。
間:そうだったんだ……。初めて知ったよ。
鯨岡:いま話したレベルの設定は、誰かに聞かれた時に答えられるよう考えています。でもこんなこと公言しちゃうと、あれこれ細かい設定を聞かれて苦しむハメになりそうですね(笑)。
――イベントシーンをひととおり見ましたが、1つ1つのクオリティの高さに驚きました!
鯨岡:今回はスクリプト(簡易的なプログラムのこと)で作れるようなイベントシーンは一切なくて、全部カットシーンとして作っています。PS4というハードで、例えばキャラの立ち姿に口パクをつけただけのイベントシーンを作るのは、クオリティ的に耐えられそうになかったので。そのため、これ以上尺を増やすには工数が厳しいという話にもなって。そこで悩んだ結果、幕間のシーンはあえて描かず、プレイヤーの想像が膨らむような構成にしています。
――キャラの掛け合いは見どころですね。前作に続いてケフカとか(笑)。
鯨岡:キャラの掛け合いを魅力的に見せていくというのは、ひとつの命題でした。キャラが自己紹介をしたり、原作の決めゼリフをいうことを、前作のように繰り返してもしょうがないなと思い、なるべくキャラ同士のやり取りをを見せることに注力しています。
ケフカは相変わらず、キャストの千葉繁さんのアドリブが爆発してます(笑)。収録でいろいろなアドリブを見せられると、スタッフもそれにつられてモーションをこだわっちゃうんですよね。だから、ケフカだけイベントシーンのモーションパターンがすごいことになっています。
――前作に比べると雰囲気が変わったキャラもいて、見ていて新鮮でした。
鯨岡:一番わかりやすいのはティナじゃないでしょうか。イメージとしては、モブリズの村でフンババを倒したあとのティナが呼び出されていると思ってください。前作よりハキハキしゃべりますし、スコールをちょっとからかうような場面も見られます。
あとは、クラウドもですかね。『FFVII アドベントチルドレン』を終えて、いろいろとひきずっていたものが解消されたクラウドが呼ばれたイメージです。声優さんにもそういった設定を説明し、前作から演技を変えてもらっています。
――カイン、ラムザ、エースは参戦していますが、OPムービーにいないのはなぜでしょうか?
鯨岡:ラムザやエースなどの新規参戦キャラを加えると、単純にキャラ数が多くなりすぎてお話がこんがらがる恐れがありました。そこで野村(※)とも話し合って、ストーリーやOPムービーのキャラは一旦ナンバリングのみにしようと決めました。ただ、カインもラムザもエースもあの時系列にはちゃんと存在していて、そのことがわかるイベントシーンを後日アップデートでみなさんにお届けできたら……と考えています。
※野村哲也さん:本作のクリエイティブプロデューサー&キャラクターデザイン担当。
――もう一点確認したいのが、ストーリーのなかで極端に登場シーンが少ないキャラがいたことなのですが……。
鯨岡:それは、今後のDLCで参戦するキャラと絡みがある関係で、伏せざるをえなかったというのが理由です。シーズンパスに含まれ6人の追加キャラのなかには、今回のストーリーに深くかかわっている人物がいるんです。
――今後の追加キャラは、そういった点も含めてかなり先まで決まっているのですね。
鯨岡:そうですね。今後DLCでキャラを追加するのに合わせて、そのキャラのイベントシーンもいくつかお届けするつもりです。
アップデートはアーケード版を追う形で!
――本作はアーケード版からデータ引継ぎができるようですが、具体的にはどんな要素を引き継げますか?
間:ここからは鯨岡から説明します。
鯨岡:まず、キャラクターレベルとクラスが引き継ぎ可能です。ただしクラスはそのまま引き継ぐのではなく、アーケード版の全国対戦クラスとミッションクラスをそれぞれ参照して、適切なクラスが割り当てられます。キャラクターレベルはそのまま引き継げますが、『ディシディアFF NT』のキャラクターレベルの上限は10までとなっています。
他には称号、プレイヤーアイコン、バトルBGMが部分的に引き継げます。称号は大部分を引き継げますが、アイコンとBGMについては基本的に“神々の闘争”の報酬で入手できたものがメインとなります。
――逆に引き継げないものとは?
鯨岡:プレイヤーレベルに、キャラクターのフォームとウェポンとチャット、あとは召喚石などですね。ただ、チャットのなかで戦術的に使えるものは、キャラクターレベルにひも付けてラクに入手できるようにしています。ネタ系のチャットは、すべてトレジャーやショップで手に入れる形ですね。召喚石は欠片を集める方法ではなく、プレイヤーレベルを上げればランダムで1つずつ使えるようになっていきます。
――データ引き継ぎができるのは初回だけなのでしょうか?
鯨岡:キャラクタークラスの引き継ぎは初回だけですが、それ以外は引き継ぎに制限はありません。アーケード版のほうで更新したデータを、随時PS4版に引き継ぎできます。
――ゲームを始めたらまずは対戦でメモリアを集め、ストーリーを開放していくのが基本的な遊び方となりそうですね。
鯨岡:はい。その過程でキャラクターレベルが上がったり、トレジャーが集まったりするはずです。わりと序盤はギルがザクザク手に入るので、ストーリーを追っていくなかでお気に入りキャラのウェポンやフォームをそこそこそろえられると思います。
ある程度ゲームを進めた段階で、あまりにもギルやトレジャーが足りないようであれば、アーケード版でやっているようなキャンペーンを実施することも検討しています。
――“ラッシュバトル”はアーケード版のミッション連戦のようなイメージでしたが、高難易度のバトルの難しさが段違いでした……。
鯨岡:敵のAIをアーケード版からまるっと作り直しているので、アーケード版のミッションの敵とは動きが全然違うと思います。ブレイブ攻撃の途中止めをしてきたり、そこに攻撃を合わせてきたりといった連携もしてくるので、かなり歯ごたえがありますよ。
ちなみに、“ラッシュバトル”ではクリスタルより上の難易度で“ヘレティック”と“カオス”が出てきますが、これらはあくまで敵のCOM専用になります。
――トレジャーはいわゆるガチャ要素ですが、これは“SANCTUARIUM(アーケード版のプレイヤーズサイト)”にあるプレイヤーアイコンガチャを意識して入れたのでしょうか?
鯨岡:特にそういうわけではなく、遊びの一種ですね。今回はとにかくドンドン対戦を楽しんでほしいという考えがあり、対戦で獲得したトレジャーでいろいろなアイテムが集まっていくことで、次の対戦意欲につながればと思っています。
――ガチャの演出もちゃんと作られていましたね(笑)。
鯨岡:昨今のソーシャルゲームブームを反映しました(笑)。ただ、ガチャをするのに追加でお金が必要なわけではありません。
――PS4版ならではの要素はいろいろありますが、制作中はほかにどんな案がありましたか?
鯨岡:特別なバトルルールはいくつか考えていて、今後もし機会があれば導入するかもしれません。ほかにも2、3コくらい仕様まで考えていたアイディアがありました。
――PS4版の登場で、オンラインマッチはこれから盛り上がっていきそうです。
鯨岡:これまでアーケードゲームはちょっとハードルが高いと感じていた人も、ぜひこの機会に触れてほしいです。オンラインのルームマッチにはいろいろな機能を盛り込んでいて、1つのルームに最大24人まで入って遊べます。24人集まれば4つの対戦を同時にできますし、パーティもシャッフルにするか固定にするか選べます。あとは、ルームの方針を表示する機能もあって、同じ目的を持つ人を集めやすくなっていますね。
――ちなみに、対戦中に回線が切れてしまった場合はどうなりますか? また、意図的に回線を切った場合へのペナルティはあるのでしょうか?
鯨岡:対戦中に回線が切れたら、理由はなんであれ敗北扱いとなります。よって、クラスポイントが下がるペナルティが発生します。意図的な回線切断に対するペナルティも考えてはありますが、まだ実装はしていません。最初のうちは回線の安定状況もブレると思うので、そのあたりのチューニングをしつつ、みなさんの遊んでいる様子を見て方針を決めようと思います。
――以前のインタビューでも話していましたが、PS4版発売以降の最新アップデートはアーケード版が先行のようですね。
鯨岡:はい。PS4版発売の1月11日に、さっそくアーケード版のほうでアイテム関連のアップデートが入ります。キャラクターレベル25で手に入る新しいウェポンの追加と、キャラクターレベルを上げやすくなるキャンペーンを行います。あと、ライトニングの『ライトニング リターンズ FFXIII』用の衣装もこのタイミングで追加されます。
――PS4版のほうは後追いでアップデートが入り、追加キャラはDLCという形でしょうか。
鯨岡:そうなります。バトルのバランス調整やステージ追加、あとは先ほど話した追加キャラのイベントシーンなどは、無料アップデートの範囲になります。
――本作発売後は、以前のように2カ月に1体くらいのペースでキャラが追加されていくのでしょうか?
鯨岡:今のところ、そう考えています。2017年は8月のジェクト追加以降、12月のノクティスまで1カ月1キャラ追加のペースでしたが、さすがにもうそれは難しいですね(笑)。 今は次の新キャラを制作しつつ、PS4版発売後のどのタイミングで追加するか検討しています。
――アーケード版には“神々の闘争”というイベントが定期的にありますが、PS4版にはそういったイベントは?
鯨岡:PS4版には“神々の闘争”がないので、何かしら運営イベントをやれたらなと考えています。イベント報酬でギルやトレジャーが手に入れば、プレイヤーもうれしいと思いますし。
――PS4版発売で海外の人たちも広くプレイすることになりますから、今後の催しが楽しみです。
鯨岡:PS4版で何かしらやると、間が言ってましたよ。この前、アメリカで海外プレイヤーがPS4版をプレイする放送を見たんですけど、すでにうまい人がいるんですよ。発売後は海外の熟練プレイヤーもたくさん出てくるでしょうから、世界規模の大会とか開けたら白熱するだろうなあと妄想しています。
――最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします。
鯨岡:PSP版の『ディシディアFF』が最後に出てから6年以上がたちましたが、ついにPS4版の登場です。ゲーム性は変わっている部分もありますが、ブレイブシステムといったおなじみの部分もあるので、前作ユーザーならちょっと触ればすぐに慣れて、楽しんでもらえるんじゃないかと思います。
このグラフィックで『FF』キャラのオールスター作品を楽しめるのは本作だけだと思うので、アーケード版を未プレイの方はぜひ手にとってみてください。アーケード版も並行して盛り上げていきますので、PS4版とアーケード版の両方が活性化してくれれば、僕らにとってはうれしい限りです。
(C)2018 KOEI TECMO GAMES/SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA
ILLUSTRATION:(C)2017 YOSHITAKA AMANO
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