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2018年1月14日(日)

【電撃PS】M1グランプリから考えた評価の話。山本正美氏コラム全文掲載

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 この記事では、電撃PS Vol.652(2017年12月14日発売号)のコラムを全文掲載!

第121回:評価のゆくえ

 いよいよ2017年も残すところあと2週間となりました。今年は、久々の現場担当作『V!勇者のくせになまいきだR』のリリースもあり、個人的には格別な年となりました。年末年始、コタツに入りつつも友達の家に行った感覚で遊べるゲームとなっておりますので、未プレイの方はぜひ体験していただけると嬉しいです。

 さて、毎年この時期になるといくつかの風物詩に出くわします。ゲーム業界的には、SIEJAがこの一年のPlayStationタイトルを表彰する、「PlayStation Awards」がありますし、SIEアメリカがカリフォルニアで開催するPlayStationファンの祭典、Play Station Experience(通称「PSX」)もここ数年で恒例化してきました。ゲーム業界以外では、今年の流行語が発表になったり、FNS歌謡祭、ミュージックステーションスーパーライブ、そして今年で最後となる日本有線大賞など、音楽イベントも盛りだくさん。

 そしてなんといっても、漫才師の頂点を決する「M-1グランプリ」ですよね。それまでの技術の結晶、努力の結実をもって、まさに一夜にして芸人さんの人生が変わる一大イベントです。今年は、コンビ結成から15年以内という出場ルールギリギリ、ラストイヤーのとろサーモンのお二人が見事グランプリを勝ち取り、翌日のテレビではさっそく出ずっぱり。その光景は、まさに風物詩と呼ぶにふさわしい現象となっています。

 毎年このM-1グランプリを見て、少し考えることがあります。それは、「審査員の方々が何を基準として評価をしているのか?」ということです。出場者にしてみれば、審査員がつける点数によって人生が変わるわけで、そこには相応の納得性が必要なはず。

 M-1グランプリは、開催年によって微妙に調整がありますが、基本は7人の審査員が各自100点満点で出場者を審査し、その合計点数の上位3組を決める「ファーストラウンド」と、最終的に残った3組の出場者誰かに投票をする「決勝」の、二段階のフェイズに分かれています。

 特にファーストラウンドは各審査員のつける点数が出場者の運命を左右するわけですが、このときの審査員の方のコメントを聞くと、何らか基準点を設け、その基準を越えるか下回るかで点数を決めている審査員もいれば、「個人的に好みじゃないので」という理由で低い点をつけたり、「ラストチャンスなので優勝させてあげたかった」といった情実で投票する方もいて、毎回ではないのですが、どうも釈然としないこともあるのです。

 評価には、いわゆる定量評価と定性評価というものがあります。簡単に書くと、定量評価とは数字で表せるもの。売り上げが〇%アップしたとか、来場者が何人から何人に増えた、だからすごい、みたいなことですね。具体的で分かりやすい。

 一方の定性評価とは、数字では表せないもの。代表的なところでは、会社の人事評価などはまさに定性評価の権化と言っていいかもしれません。その人がどれくらい頑張ったか、それそのものは数字では表現できません。

 抽象的でわかりにくい。なので、コレができるようになろう、とか、担当タイトルをどれくらい売るか、といった「目標」を双方で決め、その達成度で判断したりするわけです。M-1グランプリのような「面白さ」という事象の評価も、それこそ数字では計れません。噛んだ回数を数えたり観客の笑い声の音量を計ったりなど定量化する方法はあっても、それが「笑い」を正しく評価しているわけでない。

 だからある程度感覚で評価することも必要なわけですが、しかし「好み」のようなあまりにも客観性に欠ける評価基準を公言してしまうことで、評価の信ぴょう性を下げてしまうの可能性もあるのでは、と思ってしまうのです。

 僕は職業柄、ゲームコンテストの審査員や企画レビューをやらせていただくことも多いのですが、漫才と同様、ゲームの面白さもまた、適性な評価は難しい。僕の場合、企画力、技術力、完成度の3点で大きくは評価するようにしていますが、そのすべてが納得度の高い評価として発案者に受け止められているかといえば、決してそうは思いません。

 ですが、できるだけ第三者にも「なるほど」と思えるような視点で評価しようと努力します。僕自身の個性は活かしつつも、「僕の好みにピッタリなので、高得点をつけました」とはやはり言えない自分がいるのです。

 そう考えた場合、定性評価における評価者には何が必要か? 納得性の高い評価基準があればベストですが、それが難しい場合でも、「この人がそう言うのならそれが正しいのだろう」と発案者や出場者が思える、評価者自身の実績。これは欠かせないのだと思います。M-1グランプリ終了後、出場者打ち上げの番組で、決勝に進めなかったジャルジャルの福徳さんが悔し泣きしている姿を見ました。本気で打ちこんできたからこその涙です。

 しかしそれでも、「松本さんが一番高い点数を付けてくれた」という事実が彼に誇りを与えているようでした。評価とは優劣をつけること。でも、決してそれだけではないということもまた、教えてもらったのでした。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ 部長兼シニア・プロデューサー。PS CAMP!で『勇なま。』『TOKYO JUNGLE』、外部制作部長として『ソウル・サクリファイス』『Bloodborne』などを手掛ける。現在、『V!勇者のくせになまいきだR』を絶賛制作中。公式生放送『Jスタとあそぼう!』にも出演中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

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