2018年1月18日(木)

『FF14』サウンドディレクター祖堅正慶氏に聞く“『紅蓮編』音作りの裏話”

文:電撃PlayStation

 昨年12月20日に発売され、オリコン上位を獲得するなど大好評のBlu-ray Disc”Eorzean Symphony: FINAL FANTASY XIV Orchestral Album”。その発売直前、『FF14』サウンドディレクター・祖堅正慶氏にインタビューした際、『FF14』の音作りについて、さまざまなエピソードを聞かせていただいた。

 ここでは、電撃PlayStation Vol.654(1月11日発売号)に掲載していた内容に大幅加筆した完全版を公開! コンテンツ制作時の裏話や『紅蓮編』制作時のことなど、“音作り”について多くのお話をうかがえたので、『FF14』の“音”に興味のある方はぜひぜひ読んでみてほしい。

『ファイナルファンタジーXIV』

『紅蓮編』の音作りでとくに意識したこととは

――『紅蓮編』では『蒼天編』に増してメインテーマをいろいろな場面で使う手法を多く取り入れている印象ですが、メインのフレーズを使いつつも状況に応じて表情が異なって聴こえて、個人的にだいぶ感動しました。そのあたりは意識されていたのでしょうか?

祖堅正慶氏(以下、敬称略):やっていることは『蒼天編』と変わらないのですが、『紅蓮編』はメロディが立っているので、そういった傾向を強く感じてしまうのかなと思います。

 ただ、例えばラールガーズリーチは冒険の拠点となる場所ですが、途中で不穏な空気に包まれてしまう場面があります。そのタイミングで街に入ると、BGMも不穏な感じな曲に変わります。そういったことを気にしながら調整していたりします。『紅蓮編』はシナリオがめちゃくちゃこだわっているので、それに寄り添うようにBGMを作っていったら、パターンがめちゃくちゃ増えちゃいましたね(笑)。

――より和風なテイストになるなど、アレンジの方向性の幅が広いので、印象も強いのかもしれないですね。

祖堅:『紅蓮編』では、楽器数をコンパクトにして演奏しています。なので、逆にメロディがすごく前面に出る傾向が強いのかもしれません。フィールドの曲は、とくに楽器数を絞っていて、ヤンサについては基本、ハープ2音と胡弓単音のみで構成しています。

 ちなみに、このヤンサが『紅蓮編』の曲を作っていたときに、ひんがしの国のイメージとして一番最初に作った曲になります。あの曲をチーム内で共有してから、全体の曲イメージが全体に広がっていった感じですね。”ノスタルジックでオリエンタルで和風だけど中華風”……みたいな(笑)。

――同じ東方でも、ヤンサとひんがしの国とアジムステップで、だいぶ雰囲気が違うという印象を受けました。

祖堅:『紅蓮編』は、フィールドのテーマや色付けがハッキリとしていて、それに沿った形です。もちろん、事前にそこで起こるクエストの内容とか、シナリオ全体の中でどの辺りで使われるのかとか、そのフィールドの滞在時間はどれぐらいなのかとか、綿密に聞いて作っています。

――“スサノオ討滅戦”や“ラクシュミ討滅戦”の曲は、今までにないタイプの音楽だと感じました。このような前例のない曲で音を組み立てるとき、ご自身のなかで何かしらの基準となる要素があるのでしょうか?

祖堅:“ゲームに合った音を作る”というようにしか考えていないので、あまり基準はないですね。自分が出せるアイデアの範囲内で、インスピレーションに従って作曲している感じです。

――わりとピピッと直感で作曲されるタイプなんですね

祖堅:そうですね、毎回「コレ!」というものが出てくるので、それを形にしていくだけです。そういう意味で、『紅蓮編』は各コンテンツの色味がハッキリしていたので、楽器選びで悩んだりはしなかったですね。その楽器でできるメロディや音の高低は決まっていますし、その中で「表現できるメロディはこんな感じかな」というのがスッと出てきたので、あまり悩んだ覚えはありません。……『紅蓮編』に限ってですが(笑)。

――でもそれって“この楽器を鳴らしたらこういう音が鳴る”という知識が、祖堅さんのなかに大量に蓄積されているからこそできる仕事だと思います。

祖堅:「ヤンサとかだと胡弓がいるな」というのが、まさにそれです。曲調をモンゴルチックにしたかったので、それを実現するには「馬頭琴に似せたハープと胡弓が必要かな」というのが、スッと出てきましたね。

――ちなみに、サウンドルームには、どれぐらいの数の楽器があるのでしょうか?

祖堅:基本的にはソフト音源なので、あまり多くないですね。

――それにもかかわらず、あれほど自然な音が作れるんですね。

祖堅:オーケストラだといろいろな音が鳴るので、1つ1つの音のリアルさを追求しても大枠ではあまりその細かさは気が付かなかったりします。

 ですが、『紅蓮編』のように楽器数が少ないと、楽器のテイストが全面に出るのでライブラリやサンプリング音そのままでは、「サンプリング音源の音」になっちゃうんですよ。ヤンサで流れる胡弓の音は、目の前で演奏しているような音に聴こえますが、実際はものすごい調整をかけているんですね。

 例えば、笛の吹き方のサンプリング音源は数十種類あります。そのデータをコンマ1~2秒単位で拾ってくっつけて……というのを繰り返して加工する感じです。

――アジムステップで胡弓を弾いているNPCがいて、BGMと動きが合っているように見えました。これも調整されたのでしょうか?

祖堅:じつは、アジムステップのNPCの音はサンプリング音源をエディットしても上手くいかなかったので、自分で弾きました。以前、胡弓が必要なプロジェクトがあって、1つだけたまたま手元にあったんですよ。7~8年ぶりに箱から出して演奏してみたのですが、楽器が傷みまくっていて(笑)。

 ですが、それが逆に味が出てよかったかなと思っています。とはいえ、僕も胡弓を完璧に弾けるわけではないので、1音ずつ細かく細かく弾いて、それを上手い具合につなぎ合わせて一連で弾いているようにみせています。一連で弾いているように見せるには、エディットのテクニックがいるんですよ。そうやって出来上がった楽曲に、モーション班が上手いこと合わせてくれた感じです。

『ファイナルファンタジーXIV』

――ほかの班とかかわる際、シナリオ班やバトル班からいろいろな発注がくると思いますが、発注はどういう形でくるのか、そこからどう作業に移っていくのかを教えてください。

祖堅:サウンド発注にはいろいろな形があって、作るサウンドの種類によって工程がぜんぜん違います。注目されがちなのは楽曲ですけど、楽曲は全ゲームサウンドのパーツの5分の1ぐらいでしかないんです。残りは、効果音や環境音、ボイス、それらをロジカルに動かすサウンドエンジンなどになりますね。楽曲の場合は、コンテンツやフィールドなど、わりと大きな要素に紐付いています。

 コンテンツごとに“作りたいもの”がわかった時点である程度内容を聞いて、モックアップを作ります。その後、ゲーム画面が出来上がったら音の色味や、コンテンツの滞在時間、実際にプレイした印象を把握したうえで調整していくという形です。

 効果音は楽曲の流れと全然違い、バトルのコンセプト……例えば、蛮神を作るとなると“まずどういう蛮神なのか”というのを、バトル班にプレゼンテーションしてもらいます。そのディスカッションで聞いたものを各部署が持ち帰り、”どこに音が必要か”というザックリした案を出してもらいます。

――ギミックに対して、どこにどのような音が必要かというのを出してもらうんですね。

祖堅:音の付け方も特殊で“このときの音にコレを、あのときの音にアレを、これらを組み合わせて……”や、“この音が鳴っているときはあの音を消して……”などがすごく多いんです。プログラム的な知識がないと、なかなかできない感じですね。音の重なりも含めて、パズルのように組み合わせて1コンテンツにつき100~200音くらい、音を用意しています。

 それらがどのタイミングで、どう鳴らされてもいいような組み合わせにしておくというのが、効果音の仕事です。コンテンツを把握していないと音どうしの制御ができないので、ただ音を作るのではなく”どう発音されるのか”まで想像して作っていかなければいけません。

――しかも、そこに”冒険者が発する音が重なったとき”も想定して、ということですか?

祖堅:そうです。さらに遠くにいたら距離で減衰するのか、音がギミック的に重要だからどこにいても聞こえるようにするのかでも、だいぶ変わってきます。

 例を出すと“失われた都ラバナスタ”のラスボス戦のボイスが顕著ですね。あの声はどこにいても、何をしていても聞こえないとダメじゃないですか。距離だけでなく、24人の足音でかき消されるわけにもいきません。なので”この音は足音よりも優先される”というような設定を、それぞれしなければならないんですよ。

――画像のレイヤー分けのようなイメージですね。

祖堅:まさにそれで、256個のレイヤーを組み合わせています(笑)。あと、音同士がなんらかの理由で発音のケンカをしているときにどちらが勝つかというのも1つづつ設定しています。同じレイヤーで100個ぐらい発音が集中したときに、どれが一番優先されるのかというのを決めています。

――そもそも、ボスの足音なども1から作っているんですよね? 街を歩いたり、コンテンツを遊んだりしたときに意識して聞いていると「膨大な音数だな」とあらためて感じます。

祖堅:膨大ですね! プレイヤーの足音の可聴範囲と、大きなボスが大地を踏みしめる音の可聴範囲って、やはり違うじゃないですか。それを1つずつ調整しています。また、音の聞こえる範囲は、基本的に“最大音量聞こえる範囲”と“そこからボリュームが0まで減衰していく距離”という、2段階で設定してあり、ものによっては3段階あったりもします。

 けっこう細かな設定をしなくてはいけないので、この辺りは実際にプレイして確認しながら調整していきます。1つの効果音を作っても、そのあとの調整がかなり……いや、めちゃくちゃ手間ですね。

――曲を作ることと、最終的に音を慣らしていくことでは、作業分量的にどちらの比重が重いのでしょうか?

祖堅:『蒼天編』までは、設定のほうが重かったですね。『紅蓮編』からスタッフが少し増えたので、楽曲に比重を置こうと。……と、思いきや、アレンジアルバムの仕事やファンフェス、海外出張などなど、そっち系の仕事が増えました。結局、曲を作れる時間は1日のうちの3~4分の1ぐらいですね。

世界の空気を作り上げる環境音の大切さ

――祖堅さんの仕事としては、音の元となる素材を用意するところからスタートなのでしょうか?

祖堅:曲や効果音は、そのとおりですね。どういう音を作る必要があるのかを想像し、それに必要な素材をピックアップします。それから、素材を加工していくという流れです。

――アジムステップの草原を歩くときの音などは、実際に現実の音を録音することもあるのでしょうか?

祖堅:基本的には、今までの素材を使っています。『紅蓮編』では環境音の色味を変えているので、同じ素材を使っていてもよりリアルになっている感じです。

――『紅蓮編』と言えば、水中の音や曲の聞こえ方をどうやって調整したのかも気になります。以前、専用のシンセサイザー的なものを作って表現していると伺ったのですが、具体的にはどのような調整を行っているのでしょうか?

祖堅:そもそもフィールドやダンジョンに対して、音はどう反射(残響)していくかは、各エリアごとに綿密な設定をしています。具体的にいえば、残響の仕方をシミュレートする“素”みたいなものを、フィールドに細かく仕込んであります。

 なので、そこに行けばシミュレートされた結果の音が聞こえるようになっており、絵に対して自然な音として聞こえます。ただ、水中に関しては、水は音を凄く通すので特殊な処理をしています。空気中の音は1秒間に340メートルぐらいしか進みませんが、水中だとその5倍ほど速いんですね。なので、水中ではいろいろな音が聞こえるはずなんです。

 ですが、そもそも耳の中に水が入ると音を聞くことすらできないので、「それを再現した方がいいのではないか?」という話になって、専用のシンセサイザーを用意したんです。それによって、水の中に入ったときのシミュレーションをリアルタイムで行うようになっています。陸上と同じ音を出しても、そのシンセサイザーを挟むことで、あたかも水中の音として聞こえるように変調してくれるんですよ。

――ヤンサは岩山といった障害物が多い、逆にアジムステップなどはとても拓けている……というように、場所によって音の響き方が異なるかと思います。それらの場所の音を作る場合は、響き方も意識して作っているのでしょうか?

『ファイナルファンタジーXIV』

祖堅:もちろんです。何もないからといって、何もない状態の音を流すと、とても不自然になってしまうんですよ。拓けている場所というのは、配置されている効果音が少ないがゆえに、風の強弱を感じやすいエリアになっています。何もないがゆえに風の流れをより感じられるような、フィールドの持つ空気感を表現しています。拓けた場所は、時間変化での音の移り変わりをより仕込んでいる感じですかね。

――そこに天候も加わるんですよね。

祖堅:もちろん天候の数だけ環境音を用意しています。なので、僕らは天候が増えるとガッカリするんです(笑)。モードゥナの妖夢など、特殊な天候も1つ1つ作っていますよ。僕らは、環境音を前後左右の4.0chで作っているのですが、それを単純にループすることはしていません。

 シーケンスでランダムに音が混じるパターンを何万通りも用意しておいて、24時間同じ場所にいても同じ音が鳴らないような工夫をしています。それは、どのフィールドでもそうしています。

――そもそも、効果音を作るときにバックグラウンド班やシナリオ班からの注文を受ける場合もあるんですよね?

祖堅:たくさんありますね。クエスト班やサブクエスト班からもきますよ。“そこに配置されてるザコモンスターがどういったものなのか”ということまで把握したうえで、音を作っています。

――コンテンツによっては空中だったり宇宙だったりと、特殊な場所での戦闘もありますが、通常とは別の音を用意しているのでしょうか?

『ファイナルファンタジーXIV』

祖堅:空間によって、全部変えています。“神龍討滅戦”など、エリアが変化するコンテンツの場合は、いきなりパキッと変わると違和感があるので、じんわり変わるように設定しているんですよ。また、エリア自体も単純な響き方ではないので、いろいろなフィルターが入っています。同じリソースでも、違う空間に来たということがわかるように、いろいろ工夫している感じですね。

――コンテンツといえば、“次元の狭間オメガ:デルタ編”に登場するボスたちが使う特殊技の効果音が、原作(『FFV』)のものにかなり近いと感じました。ですが、もちろん音のクオリティ自体は今のもののほうがキレイで、どうやって作ったのかが不思議に感じられたんです。これらは、どうやってこの音を作ったのでしょうか?

祖堅:昔の音は、実際のリアルな音を出しているわけではないので、記号的な要素が多いと思うんですね。ですが、プレイヤーの耳にはその音が体験として残っています。昔の曲を再現することと同じで、その当時の効果音をそのまま鳴らしても今の画とは合わないので、『FFXIV』の画面に合うように効果音もアレンジしています。

 当時の効果音を現代風にするとどうなるのかを、想像して作っている感じですね。とくに過去作品のリメイク&アレンジに関しては、その意識を強く持っています。じつは、元の音も薄っすらと混ぜたりもしているんですよ。とはいえ、その効果音は僕が作ったわけじゃないですけどね(笑)。今はとても優秀なスタッフがたくさんいるので、彼らにお願いしています。

――ギミックに関する音は、具体的に”このギミックにはこの音”というようなレギュレーションが決まっていたりするのでしょうか?

祖堅:サウンドのコンセプトとして、リアルな音を付けるというものと、「このときはこの音」という記号的な音を区分けしています。記号的な音というというのは、わかりやすい例でいうと、勝ったときの音や失敗したときの音、「これから始めますよ」の合図の音、パーティを組んだときの音といったものですね。

 要は、今何が起こったかがかわる、非リアルな音を、僕らは“記号的な音”と呼んでいます。ただ、だいたいの場合は、発注サイドに区分けする意識がないんですね。なので、僕たちが実際に遊んで「このギミックは記号的な音の方がいいな」と感じたら提案して変えていく、という塩梅ですね。

――先日、バトルコンテンツデザイナーの中川さんと須藤さんにインタビューする機会がありまして、そのときに“極セフィロト討滅戦”の“イェソドクラッシュ(※特殊技発動時にプレイヤーが立っていた場所を中心とした範囲攻撃を、一定時間後に発生させる。通称たけのこ。)”の効果音は、サウンドチームからの提案で変更したという話題がありました。そういった提案はけっこうあるのでしょうか?

祖堅:サウンド側から「ここに音が付けられるようにして」という提案はちょくちょくしますね。予兆の音というのは、かなり大事じゃないですか。僕たちが実際にデバッグプレイをしたときに、”これは音が必要なんじゃない?”と感じたことは、僕らから提案しますね。もちろん、ゲーム内容に大きく影響しない場合に限りますが(笑)。予兆の音は、けっこう大事にしています。

――よくよく考えると、初期の“大迷宮バハムート”に挑んでいた頃から、ツインタニアの“ダイブボム”の“ピピッ”という音など、音で助けられる場面は多かった印象です。ちなみに、“絶バハムート討滅戦”はボスラッシュとなっていますが、設定し直した効果音などはあるのでしょうか?

祖堅:発動タイミングとか特殊技が使われる状況が違うので、基本調整はしています。ですが、過去に“大迷宮バハムート”を攻略した人が多いので、その想い出からかけ離れないように注意してあります。

――“絶バハムート討滅戦”はギミックが非常に多いので、さきほどの”この音が鳴っているときは、あの音は鳴らさない”といった調整が大変だったと思います。

祖堅:めちゃくちゃ大変でしたよ……。“絶バハムート討滅戦”だけで、「何個発注があるんだよ!」って思いました。須藤(賢次氏)は人の話をまったく聞かないんですよ! 1コンテンツあたりに割けるリソースはわかっているはずなのに、だいたい3~4倍ぐらい投げてきて顔色をうかがいにくるんです。そして顔色をうかがいながら、「あ、できないんですか?」みたいなことを言ってくるので、「よーし、やったろうじゃねーか!」と(笑)。

 でも、それが結果的におもしろくなるから、けっきょく引き受けちゃうんですけど。悔しいことにお願いごとも攻略コンテンツも、絶妙なバランスで攻めてきますね。あの男は(笑)。

『ファイナルファンタジーXIV』

――“絶バハムート討滅戦”の最後にながれるBGMも、だいたいこれぐらいの時間戦うというのを須藤さんと打ち合わせのうえに作られたのでしょうか?

祖堅:須藤と石川(メインシナリオライターの石川夏子氏)と3人で話し合って、“どういうシチュエーションで、どういう曲が必要なのか”を教えてもらったんですね。そこで、“大迷宮バハムート”を攻略した人には思い出深い“Flames of Truth”というムービーの曲を切り出して使ってほしいと言われました。

 ただ、そんな都合のいいデータなんて残ってないんですよ(笑)。当時のセッションデータを掘り起こしたのですが、4年前のデータなんて今のPCでは開かなくて。結局、新しく作ったほうが速いので、今回は自分の曲を自分で耳コピしました……。

――ツインタニア→ネール・デウス・ダーナス→バハムート→ラストという曲の流れは、切り替わりもとても自然で違和感もありませんでした。

祖堅:最初にトライするときの想定時間に沿った形で作っていますね。慣れてサクサク進めるころになると、曲をじっくり聴くことはないと思うので、やはり印象的なときの滞在時間に合わせる感じで設定しています。あとは、“絶バハムート討滅戦”ならではの演出がいくつかあるので、そこはビシっと合わせるように作りました。

――パッチ4.0以降で、祖堅さんが気に入っている音があれば教えてください。

祖堅:あえていうなら、「家畜に神はいない!」かな(笑)。

――ボイスじゃないですか! たしかに、想い出補正もあわせて強烈なインパクトがありましたが(笑)。

祖堅:曲ならば“神龍討滅戦”の後半はいい感じにできたと思います。あそこの演出効果はバトル班の仕事でしたが、よくできてましたね。

――祖堅さんたちサウンドチームの仕事と、ほかのチームの方々の仕事がかみ合って、相乗効果でいいものに組み上がっていんだというのがよくわかります。

祖堅:そこは、本当にお互い様ですね。とはいえ、パッチごとに取捨選択はモメますよ。コンテンツを担当している人間は新しい音を欲しがるのですが、「それは記号的な要素だから、統一されたものを使おうよ」とか、「コンテンツのテーマになっている曲を、あえて新しくする必要があるのかどうか」とか、そういうところは議論になりますね。新しい曲を入れることで、逆にマイナスになるパターンもすごく多いので、そこはバッサリと切っていきます。

――“ネオエクスデスの曲を原曲のまま再現しようとして違和感があり、結局アレンジした”というお話を、以前お聞きしたのですが

祖堅:ええ。この曲はテンポが原曲より下がっているんですよ。そのままのテンポではちんどん屋さんみたいな印象になってしまったので、少しテンポを下げてプレイヤーが高揚する感じにしています。とはいえ、アレンジはしますが、「俺の曲を聞け」は今どきナシだと思っているので、ゲーム体験ありきの音を心がけています。僕らはゲーム屋なので、そこは大事にしたいですね。

『ファイナルファンタジーXIV』

――では最後に今後の展開について楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

祖堅:パッチ4.2のことは言うなと念を押されているので、ふんわりとしか言えませんが……。パッチ4.2は発注がすごく来ているんですよ。「え、また正月ないの?」と思ってしまうくらいの発注量で(汗)。

 パッチ4.2では、それぐらい大量のコンテンツが用意されています。次の“次元の狭間オメガ”も、熱い展開が待ってますよ!! 自画自賛になっちゃいますけど、次のはいいデキです(笑)。レイドなのに曲数が「なんでそんなに発注があるの?」といった量でした。でも、フタを開けたら「そりゃしょうがないかな」と。みなさんが遊ぶと、「うおおお!」となるとこと間違いなしなので、期待していてください(笑)。

――ありがとうございました!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.654』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2018年1月11日
■定価:694円+税
 
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