2018年1月29日(月)
CD PROJEKT REDより好評配信中のPS4/Xbox One/PC用オンラインカードゲーム『グウェント ウィッチャーカードゲーム』。本作をプレイするプロe-Sportsプレイヤー・Lifecoachさんへのインタビューを掲載します。
『グウェント』は基本プレイ無料のオンラインカードゲーム。2本先取の最大3ラウンド制や、すべてのカードにコストの概念がない点など、既存のカードゲームとは一線を画す独特のルールが大きな魅力となっています。
Lifecoachさんは、本作の公式大会“GWENT Challenger #1”で優勝し、その後も“GWENT Slam”や“GWENT Mania”といった大会を個人で主催。『グウェント』コミュニティを盛り上げているプロe-Sportsプレイヤーです。インタビューでは、その魅力やアップデート、攻略要素などについて語っていただきました。
▲Lifecoachさん。プロポーカープレイヤーとして800万ドル以上の賞金を獲得して成功を収めた後、プロe-Sportsプレイヤーとなって『ハースストーン』の大会で数々の実績を残した。現在は『グウェント』をメインにプロ活動を行っている。 |
――まず『グウェント』を始められたキッカケを教えて下さい。
昨年5月に“GWENT Challenger #1”が開催される際、CD PROJEKT REDから「参戦してみませんか?」とオファーされたのがキッカケです。それで実際にプレイしたら、スキルが重要で自分に向いていて。“GWENT Challenger #1”で優勝した後も、ゲームがおもしろいので継続してプレイし続けています。
▲“GWENT Challenger #1”でのLifecoachさん。 |
――『グウェント』のどんな部分に魅力を感じていますか?
運よりもスキルが結果に影響を与えるところが、自分にとっては一番魅力的ですね。
――『グウェント』をプレイするうえで、どんな部分が難しいと感じていますか?
3つあります。1つ目はデッキ構築。競技シーンにおいては、アップデートなどで頻繁に変化するメタ(流行)を踏まえてデッキを構築する必要があるので、スキルが求められます。2つ目は記憶力。公式大会などでは“Gwent Tracker(デッキに残っているカードを表示する外部ツール)”を使用できないため、自分や相手のカードをすべて記憶しなければいけません。3つ目は計算力。どのカードをプレイするのが一番高い点数になるのかを、できるだけ早く計算する力が必要です。
――私はパスするタイミングも難しいと感じています。
もちろんそれも難しいですね(笑)。
――初心者が『グウェント』で上達するためには、何を心掛けるのが良いでしょうか?
練習が必要なのは当然ですが、私は敗戦から学習することが重要だと思っています。負けた時に「今日はツイてなかった」と運のせいにするのではなく、敗因を分析して自分のプレイを改善していくことが、上達につながります。
――『グウェント』は敗因を分析しやすい気がします。
確かに、他のカードゲームと比べて『グウェント』は敗因を分析しやすいと私も考えています。例えば他のカードゲームだったら、1つの場面で選択肢が実質3つ程度しかないことが多いのに対し、『グウェント』にはたくさんの選択肢があるケースがとても多いですから。
選択肢を間違えると1、2点をロスすることあるのですが、それが5回10回と積み重なると最終的に15、20点と失って負けにつながるので、そういった部分を意識すると上達しやすいです。
――Lifecoachさんは36歳ですが、若いころと比べて年齢による記憶力や判断力の衰えを感じますか?
年齢が高くなると思考速度は遅くなる印象があります。ただそれが『グウェント』のようなe-Sportsや、メンタルを要求するゲームにおいては、必ずしもマイナスにはならないと考えています。ゆっくり考えるからこそ、複雑な思考ができるというメリットがあり、それは瞬時の判断が求められない『グウェント』のようなゲームでは有益です。だから年齢を重ねることがマイナスだとは思っていません。
――確かにLifecoachさんは、じっくり考えてプレイされていますね。
時間というのはかければかけるほどより多くの思考をもたらしてくれます。だから持ち時間を最大限に活用してプレイしています。
――昨年12月の“ミッドウィンターアップデート”に対する印象を聞かせて下さい。
少し急ぎすぎたアップデートだったと思っています。具体的な理由は私にもわかりませんが、欧米ではクリスマスシーズンは非常に重要なイベントなので、そこに間に合わせたかったのかもしれません。今回のアップデートで多くのユーザーからフィードバックを受けて、CD PROJEKT REDはたくさんのことを学んだと思うので、この経験を今後に生かしてくれることを期待しています。
――新たに追加された“入手”アビリティのことはどのようにお考えですか?
一般的な意見としては、ハイレベルな競技シーンにおいて効果が不安定な“入手”はあまり使われないと思っています。個人的に少し問題だと思うのは、“入手”を持つ一部のカードが、高確率で強力な結果をもたらす点ですね。その点に関して、1月上旬に配信されたパッチでドロー密偵ユニットが“入手”の対象外になったことは、非常によいステップだと思います。
――『グウェント』の今後に期待することを教えて下さい。
カード名の短縮や、カードアビリティのシンプル化は、より多くのプレイヤーにゲームをアピールするための変更だと思います。ただ、もともと『グウェント』は『ウィッチャー』のファンが支えているゲームだと私は思うので、カード名の短縮などで『ウィッチャー』らしさを損なうのはショックだったファンも多いでしょう。私としては今後の『グウェント』は、立ち上げ当初に近い形に戻ってほしいと思っています。
――昨年12月に開催された“GWENT Challenger #2”の感想を聞かせて下さい。
まず、開催場所のモシュナ城がとてもクールでした。スタッフもみんなフレンドリーで素晴らしい体験ができました。私の大会結果としては、準々決勝は自分でも納得できるプレイで勝利できたのですが、準決勝は明らかなミスをいくつか犯して負けてしまいました。ただ、ミスをしたら負けるのが『グウェント』だと思っているのでそれには納得しています。1カ月半しっかり準備・練習をした結果がこれなので、もっと頑張らないとさらなる高みは目指せないということでしょうね。
▲“GWENT Challenger #2”は、ポーランドの城館ホテル“モシュナ城”にて開催されました。 |
――Lifecoachさんを倒したFreddybabesが優勝しました。Lifecoachさんから見て、彼はどんなプレイヤーですか?
私は競技シーンのプレイヤーを、分析的なプレイヤーと直感的なプレイヤーに分類しているのですが、彼は直感的なプレイヤーですね。彼は『グウェント』を自分の身体の一部のように、自然にプレイしていて、そこを高く評価しています。また彼は奇抜なデッキを作ることでも知られているのですが、そういった部分でも、今後の競技シーンにおいて頭角を現していくのではないかと思っています。
▲“GWENT Challenger #2”優勝者のFreddybabesさん。 |
――他に注目しているプレイヤーはいますか?
プロ・ラダーのシーズン1と2で1位になったAdzikovですね。彼は公式大会の成績がなかなか振るわないので過小評価されていますが、実力は非常に高いと思います。これまでの大会では大きな不運に見舞われたり、緊張して普段の実力が出せなかったりしていましたが、場慣れすれば優勝するのは時間の問題でしょう。
▲Lifecoachさんが注目しているAdzikovさん。 |
――先ほど大会に向けた特別な練習を1カ月半行ったと伺いましたが、どのような練習をされましたか?
これまでの大会と同じ練習方法ですね。ゲーム内のランクマッチなどでプレイするのではなく、Superjj102などの練習相手とフレンドマッチで何度も対戦しています。大会に出てくるプレイヤーの過去のプレイを分析することで、好みや戦い方をある程度推測し、そのプレイヤーが使いそうなデッキを構築。それに対して何度も戦いながら、相性のいいデッキを組んだり作戦を立てたりしていますね。
例えばAdzikovとTailBotは密偵が好きなプレイヤーだと世の中に知られているので、彼らがニルフガードのデッキを持ってくるならそれは高確率で密偵デッキになるでしょう。だからこちらとしては作戦を立てやすいです。これをライバルプレイヤーごとに行います。この練習方法は最初の2週間くらいは楽しいのですが、それ以降はなかなかしんどいです(笑)。
――練習では1試合するたびに、試合を振り返ってミスや改善点などを話し合うのですか?
最初の2週間くらいは1試合ごとに状況の分析などをしています。しかしそれ以降は段々としんどくなっていくので、10試合くらいプレイした中で重要な瞬間があった試合だけを振り返ることにしています。
――Lifecoachさんは試合中、とても一生懸命に考えてプレイされていますが、具体的にはどのようなことを考えているのでしょうか?
1ターンは60秒ですが、操作や画面演出で15秒ほど使うとして、残りの45秒を思考時間にしています。まず最初の10秒で盤面を分析して、どのような選択肢があるのかを判断します。それで仮に4つの選択肢が出たとしたら、残りの秒数でどれが良いかを考えます。この時、自分のターンだけでの結果では判断せず、自分がプレイしたカードに対して相手がどんなカードをプレイし、さらにそれに対して自分はどう返すかまでを考えて、ベストな選択肢を選んでいます。
なおこれは1ターンにおける思考の話で、ゲーム序盤では1ゲーム全体のことも思考します。例えば相手の勢力やリーダーを見て、どのようなゲーム展開をすべきかを考えたりですね。こちらについては練習をすればするほど瞬時に判断できるようになります。また相手が予想外のプレイをしたとき、その意図を素早く判断できるメンタルを作るためにも、多くの練習が必要だと思います。
――公式大会では相手の表情を見ることができますが、ポーカーのように相手の表情から手札を予測することはありますか?
ポーカーフェイスという言葉はありますが、ポーカーで相手の表情や仕草から手札を予測するなんて都市伝説だと思っています(笑)。プロのポーカープレイヤーは純粋に数字や確率と戦っているんです。それは『グウェント』でも同じでしょう。表情や仕草から何かを予測することは、皆さんが思っているよりも遥かに難しいことだと私は思います。
例えばロシア人と日本人のプレイヤーが同じ表情をしていても、文化が異なるので同じ事を考えているとは限りません。だから私は表情などでは判断せず、純粋に盤面と手札から判断し、もっとも勝率の高い行動をするように心掛けています。
▲公式大会では、このように向き合って試合を行います。 |
――『グウェント』世界王者の座をかけた“GWENT World Masters”への出場権はすでに手にしていますが、今後も“GWENT Open”や“GWENT Challenger”への出場は目指しますか?
これからもプレイを続けたいと思っています。ただ、練習などで多くの時間が必要になるため、1、2月のプロ・ラダー第3シーズンはパスして、次から復帰しようと考えています。
――プロ・ラダーの仕組みは、上位プレイヤーを決定する方法として適切だと思いますか?
大枠としては素晴らしい仕組みだと思っていますが、大きな問題が2つあります。1つ目は2カ月ごとにスコアがリセットされる点。これにより参加者たちは2カ月で非常に多くのゲーム数をこなさなければいけません。2つ目はプロ・ラダーの参加者が多すぎる点。現在数千人が参加していますが、私が考える理想は200人くらいでスキルやスコアを競いあう形ですね。なぜなら参加者が多いと、非常に多くのゲーム数をこなさなければ適切なスコアや順位を出せません。これは参加者にとって大きな負担です。参加者を減らせば、もっと少ないゲーム数でも適切なスコアや順位を出せると考えています。
また私見ですが、最終的にトーナメントへ出場できる人数が8人に固定されているのであれば、6000人でも200人でもほとんど違いがないと思っています。なぜなら競技シーンに命がけで挑み、膨大なプレイ時間を費やして8人の枠を本気で争っているのは30人程度だからです。6000人でも200人でもそれは同じです。割合で言えば、6000人中30人なら0.5%の人しか本気でプレイしていないことになります。
これはつまりプロ・ラダーでプレイした際、99%以上の確率で本気でプレイしていない人とマッチングするということです。その中には遊び半分なデッキを使っている人もいるでしょう。それはプロ・ラダーの本来あるべき姿とはかけ離れていないでしょうか? 人数が少なくても本気のプレイヤーだけを集めて成績優秀者を決定し、そのプレイヤーたちが大会で栄誉を勝ち取れる環境を作り上げることが“プロ”という言葉の正しい意味だと思っています。
――“GWENT Slam”や“GWENT Mania”の主催をされていますが、どのようなキッカケで始められたのでしょうか?
プロ・ラダーについての考えは先ほどの通りなのですが、競技シーンには多くのプレイヤーが参加した方がいいと思っています。そのような機会を増やすために“GWENT Slam”や“GWENT Mania”を主催することにしました。オンライン大会の“GWENT Mania”は賞金が少額ですが、それでも勝ったら得られる物があることで競技シーンの雰囲気を体感することができます。これらを主催することによる私への負担はそれほど大きくないので、コミュニティを盛り上げるために率先して続けています。いろいろな地域のプレイヤーと交流するのは楽しいです。
――プロ・ラダーの参加者を増やすのではなく、それとは別に小規模な大会を増やす方が良いということですね。
そうですね。プロシーンとそれ以外のシーンは明確に分けるべきだと思います。現在は対戦するだけなら通常のランクマッチとプロ・ラダーに大きな違いはありません。ですがプロ・ラダーは通常とは異なる専用サーバーでプレイさせて、プロ・ラダーシーズンが終わるまではバランス調整を反映させないような仕様でも良いと思っています。
例えばプロ・ラダーシーズン2の終盤で“ミッドウィンターアップデート”が行われました。年末年始という家族で過ごすための期間を新たな環境となった『グウェント』に費やさなければならず、これは多くのプロプレイヤーにとって良いことではないと思いました。もしプロ・ラダー用の専用サーバーがあり、シーズン中は環境が変わらないと約束されていたならば、このようなことを避けられるでしょう。そういった意味でもプロとそれ以外は明確に分けた方がメリットがあると思います。
――先日、日本から『They Are Billions』の実況配信をされていましたね。
日本からストリーミングをやってみたいと思っていて、その時にたまたまプレイしていたのが『They Are Billions』でした。『グウェント』くらいの規模で他のゲームを配信する予定は今のところありません。配信せず、完全に遊びとしてゲームをプレイすることはもちろんありますが、『グウェント』のようにたくさんの対戦相手がいて一定期間で新たな要素が追加されるような無限に遊べるゲームは、1度に複数タイトルはできないですね。だから『グウェント』を楽しんでいる間は、『XCOM』や『They Are Billions』のような終わりがあるゲームで息抜きをしています。
――日本でも少しずつe-Sportsが浸透し始めています。プロe-Sportsプレイヤーを目指している日本人へアドバイスをお願いします。
既にe-Sportsが定着している欧州や北米の大会には、地理や移動時間の問題でなかなか参加しにくいでしょう。しかし日本人には“練習が好き”、“勝利のために他の事を犠牲にできる精神”といった特性があると思うので、e-Sportsには向いていると思います。ぜひチャレンジしてみてください。
――プロとアマチュアの違いはなんだと思いますか?
普通のプレイヤーはゲームが楽しいからプレイしていると思うのですが、プロプレイヤーとしてゲームをするなら楽しくない側面もたくさんあります。例えば試合の分析が嫌いなプレイヤーは、分析している時間に苦痛を感じてしまうでしょう。しかし分析しなければ勝つことはできません。
これからプロを目指す人は「ゲームは楽しいだけではない」と早いうちに考えを改めておいた方がいいと思います。プロになったら練習や分析など、普通に遊んでいたころにはやる必要がなかったこともやらなければいけなくなりますから。
――e-Sportsは今後、オリンピック種目になると思いますか?
2020年の東京オリンピックではないと思いますが、今後20年の間にはきっと採用されるんじゃないかな。もし私がまだ現役を続けていたら、ぜひ出場したいですね。
――いずれは御名前の通り、コーチに転向されますか?
e-Sportsに限らず、つねに人に何かをアドバイスできる立場にはありたいと考えています。
――『グウェント』がe-Sportsとしてさらに発展するためには、どのようなことが必要だと思いますか?
大きな変革でも怖がらずにやるべきだと考えています。例えば先ほど語ったプロ・ラダーの仕様変更を実行するのは大変だと思いますが、多くのプレイヤーが「今の仕様では続けられない」と辞めてしまってから仕様を変えても取り返しがつきません。ですからできるだけ早く決断した方がいいと思います。
――では最後に日本の『グウェント』プレイヤーへメッセージをお願いします。
(日本語で)やればできる!
1月13日に行われた公式生放送“Lifecoach Challenge”のアーカイブが公開中。Lifecoachさんと、精力的に活動している日本人プレイヤー5人がさまざまなルールで白熱のバトルを繰り広げました。
▲第1試合はゲラルト4枚+ローチ入りでデッキを組むというハンディキャップが与えられたLifecoachさんと、ゲームタレントえどさん”が対戦。 |
▲第2試合は互いに入手アビリティを持つカード7枚以上をデッキに入れる特殊ルールで、『グウェント』の実況配信を積極的に行っているバーゲンさんが対戦。 |
▲第3試合は互いにショープの大冒険入りデッキを使う特殊ルールで、“DEKKI White Wolf Tournament #2”優勝者兼、本インタビューの筆者である爆発が対戦。 |
▲試合の合間にはLifecoachさんへのインタビューも行われました。 |
▲第4試合は通常のルールで、“DEKKI White Wolf Tournament #3”優勝者のaclonさんが対戦。 |
▲第5試合も通常のルールで、Lifecoachさんにもその名が知られている日本人のトッププレイヤーraikou24さんが対戦。 |
▲さらに視聴者とLifecoachさんの対戦が2度行われました。 |
対戦結果が気になる方は、生放送のアーカイブをチェック! また放送で使用されたデッキの内容は、ゲームコミュニティサイト“DEKKI”のこちらの記事に掲載されています。
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