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2018年2月11日(日)

【電撃PS】2018年はソフトの話題が主体の年。山本正美氏コラム全文掲載

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 この記事では、電撃PS Vol.654(2018年1月11日発売号)のコラムを全文掲載!

第123回:イチ・ニイ・サン!

 新年明けましておめでとうございます! 1月も10日を過ぎるとめっきり正月気分は抜け、学校や会社に通う日常が舞い降りてきていると思いますが、そこはいつものごとく、まったりとお付き合いいただければと思います。

 さて、激動の2017年が終わり、やってきました2018年。ゲーム業界は今年、一体どんなトレンドが巻き起こるんでしょうね~。各社、新たなハードを投入するといったニュースもまだ聞こえてきていませんし、まずは広まった現行機でどんな収穫をするかという意味で、ソフトの話題が主体の年になるような気がします。『ファイナルファンタジー』や『ペルソナ』、『ドラゴンクエスト』や『ゼルダの伝説』といった大型IPのナンバリングは、2016年、2017年でリリース済。きっと次作を水面下で仕込む年になるのでしょうね。

 一方、なんといっても新年一発目、まずは『モンスターハンター:ワールド』がどーんと控えています。単なるヒットではなく、「現象」として今度はどんなことが起こるのか、1ユーザーとしてもとても楽しみです。

 モバイルゲームもどんな動きがあるでしょうか。2017年は、『アズールレーン』や『崩壊3rd』など、中国クリエイティブなコンテンツが話題となりました。任天堂さんの、『ファイヤーエムブレム ヒーローズ』や『どうぶつの森 ポケットキャンプ』など、自社IPを活用したスマホ展開も活発化。といったある種堅いコンテンツが堅くヒットを飛ばす一方で、『どうぶつタワーバトル』のような、ホントにカジュアルなゲームが旋風を起こすなど、モバイルというプラットフォームの可能性は留まるところを知りません。

 また、時期はまだわかりませんが、社会現象となった『ポケモンGO』の生みの親ナイアンティックが、次は「ハリー・ポッター」で新たなARゲームに挑戦するとのこと。モバイルシーンからも一層目が離せませんね。

 僕は昨年、1月に「TAIPEI GAME SHOW」、6月に「E3」、12月に「PlayStationExperience」と 3つの海外イベントに参加しましたが、相変わらずインディーゲームが元気でした。10月には、僕の古巣でもあるソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)が、インディーゲームクリエイターを支援しパブリッシュする、「UNTIES(アンティーズ)」というレーベルを発足しました。

 良いアイデアがあっても、当然お金がなければ作品を世に問うところまでは行きつけません。そこを企業が支援しよう、という発想は、さすがインディー発祥ともいえる音楽業界ならでは。カッコいいですね。しかもSMEというソニーグループの会社が、PlayStationだけでなく、Nintendo SwitchやPCなど、マルチプラットフォームでタイトルを展開することになったわけです。これ、何気にすごいことですよね。

 Nintendo Switchで良質なインディーゲームが数多く生まれているのは皆さんご存知の通り。クリエイターからすれば、可能性が広がる喜ばしい出来事だと思いますし、遊ぶ選択肢が増えることは、ユーザーの皆さんにとっても福音となるのではないでしょうか。

 コンソールゲーム機、携帯用ゲーム機、モバイル、PCなど、ゲームを遊ぶ裾野は、ハードという意味ではかなり広がってきています。しかしハードは、よく言われますがソフトがなければただの箱。いろんなタイプのクリエイターがいるからこそ多種多様なソフトができあがり、そのソフトのチカラがハードを魅力的に演出していくわけです。

 ベテランがビッグバジェットで作り上げるコンソールゲームもあれば、フレッシュな才能が数名で作り上げるモバイルゲームもある。フレッシュな人材がいきなりAAAタイトルを作ることはまずないとしても、しかし歴戦のクリエイターがインディーの世界でさらに尖ったモノを作るということはよくあります。僕は、ゲーム業界のこのカオス性こそ、ちょっと他の分野では見られない面白いパラダイムなのではないかと思っています。

 1994年12月3日、初代PlayStationは発売されました。コンテンツのみならずその宣伝手法もそれまでのゲーム機とは一線を画したこのハードの、一発目のフォーマットコピーは、「全てのゲームは、ここに集まる。」だった。これを分解して考えると、「すべてのゲーム」は、「すべてのクリエイター」だったのでは? と、ふと思います。

 実際、ずっとゲームを作ってきたクリエイターはもちろん、映像クリエイター、音楽クリエイター、作家、漫画家、キャラクターデザイナー、メディアアーティスト他、あらゆる才能が、PlayStationに集まった。経験のあるなしではなく、才能のあるなしで集まってきたのです。これを、たった1台のハードでやってのけた。今さらながらに、すげえなあ……と思うのです

  このコラムも、今回で123回目となります。イチ・ニ・サン! イチ・ニ・サン! と連呼するところから始まったPlayStation、そのコンテンツ制作に関わりながら、ソフト屋の視点で気付いたことを書き連ねてきました。2018年、ハードが広がっている今だからこそ、改めてソフトのチカラとは何か、何を与えられ、何を変えられるのかということを、しっかりと考えていきたいと思うのでした。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ 部長兼シニア・プロデューサー。PS CAMP!で『勇なま。』『TOKYO JUNGLE』、外部制作部長として『ソウル・サクリファイス』『Bloodborne』などを手掛ける。現在、『V!勇者のくせになまいきだR』を絶賛制作中。公式生放送『Jスタとあそぼう!』にも出演中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.655』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2018年2月8日
■定価:694円+税
 
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