2018年2月23日(金)
2017年2月に発売されたアクションRPG『ニーア オートマタ(以下、オートマタ)』。全世界で200万本を突破したこの大ヒット作が、発売1周年を記念して2月23日より期間限定の大セール! PS4のダウンロード版が、なんと半額で購入可能となっている。
買うなら今がチャンス! むしろ今しかない! そこで今回は、
「去年の大ヒット作をいまさら遊ぶのも、ねえ?」
とか
「うーん、でも……来月もイベントあって石を買わないといけないし……」
とかなんとか理由をつけて購入をためらっているあなたの背中に翼を授け、ヨコオタロウ沼に向かってタイキックを入れるイメージで、『オートマタ』買って間違いなしレビューをお届けします。
※この記事は『ニーア オートマタ』のネタバレを含みます。プレイ予定の方はご注意ください。
『オートマタ』の何がすごいのかを語る際に、むしろこれだけでもいいんじゃないかな、世の多くの人々がひれ伏すんじゃないかな、と思うのが本作のデザイン面であります。
主人公である戦闘用アンドロイドのヨルハ部隊・2B(トゥービー)と9S(ナインエス)、そしてA2(エートゥー)。彼らのまとっている衣装が、黒のミニスカートだったりハーフパンツだったり、そこかしこの破れたボディースーツ的であったりと、まず視覚から攻めてきます。
そしてヨルハ部隊を象徴する、目元を隠した黒のゴーグル。敵対する機械生命体などの情報を表示するための装備品として、ヨルハ部隊が着用を義務付けられているこのアイテムも、かなり印象的で、世界観設定的にもたいへん重要なアイテムです。
▲スタイリッシュな黒を基調に、銀の髪と、何よりもフェティッシュなゴーグル姿。「誰でもかっこよくなれる」記号的なデザインで、世界中にコスプレイヤーヨルハ部隊が増殖したのも頷けます。 |
とにかくこのキャラクターが縦横無尽にアクションをしているさまを見ているだけでも、スタイリッシュで楽しいです。むしろ2Bの短いスカートが揺れて、大胆な白レオタードを身に着けたキュートなお尻を惜しげもなく披露して、フィールドを走っているのを見ているだけでも楽しい。
なんならスカートがダメージで弾けて、白レオタードのみになったりしたところでド派手な空中での必殺コンボなどキメようものなら、見て気持ちいい、遊んで気持ちいい、お尻スゴい気持ちいい……つまり、四六時中キモチイイが止まらないわけです。
とにかく全世界大ヒットの背景に“2Bのお尻”が貢献していることは誰も否定できない、いや否定させない! それくらい素晴らしいキャラデザインですので、ぜひその目で確かめてみてください。
さらに言及するならば、背景や敵キャラクター、その他のデザインとも非常にバランスが取れていて、フェティッシュがとても素敵なのに世界から“浮いていない”という点も評価したいです。
むしろ遊び進めるほどに馴染んできて、説得力があり、全体を通してスマートな統一感を持って世界観がつくられている点も『オートマタ』の優秀なポイントと言えるでしょう。
本作はエイリアンに攻め込まれ、彼らの有する機械生命体によって奪われた未来の地球が舞台です。月へと逃げた人類軍は地球を奪還するべく、戦闘用アンドロイドを開発して機械生命体との戦いを続けていました。
その最新型にして最強のアンドロイド部隊が“ヨルハ”。圧倒的な攻撃力を誇るバトラー型の2B、彼女とタッグを組んでサポートする優秀なスキャナー型の9S、そしてかつてヨルハ部隊として活躍し、隊長まで務めながらも、今は脱走兵として司令部に追われる身となったA2……3人の運命が交錯するなか、アンドロイドと機械生命体の壮絶な戦いが繰り広げられていきます。
基本的には機械生命体を相手に戦うアクションRPGとなるわけですが、そのアクションが驚くほど滑らかで誰がどうプレイしてもカッコよく見える、というのは秀逸な点だと思います。もちろんプレイヤーのスキルによってダメージをくらう、くらわない、コンボがつながる、つながらないというような差異は当然生じます。
しかし下手な人には下手なりに、上手な人はより美しく、どっちに転んでもスタイリッシュな見栄えとなり、遊んでいて誰でも気持ちよくなれるのはゲームとしてたいへん重要です。
▲開発は『ベヨネッタ』など数々のアクションゲームで高い評価を得ているプラチナゲームズ。 |
本作のディレクターであるヨコオタロウ氏は『オートマタ』以前の作品でもニッチな層に高い評価を得ていたクリエイターですが、どのタイトルにおいても「○○はいいが操作性は……」というように、シナリオや演出で高評価を得ても、ゲームとしての残念なポイントを指摘されることも多くありました。
ですがそういった欠点が、この『オートマタ』にはまったくといっていいほどありませんでした。ハードのスペックを存分に生かした、完璧とも言えるスタイリッシュで爽快なアクションと高いゲーム性がプラチナゲームズの優秀なスタッフ陣によって実現され、ヨコオテイストのシナリオと世界観に見事な推進力を与えたのです。
そして、私が最も評価しているのはほぼすべてのアクション操作を不要とする“オートモード”の搭載です。難しい操作をまったくすることなく、敵の中に突っ込んでいってボタンを押すだけで、素晴らしいコンビネーションの攻撃が繰り出されます。
圧倒的です。
武器が弱すぎたり、強化を怠りすぎていたりなど、よっぽどのことがない限りゲームオーバーにならない。いわゆる“無敵仕様”を自由に切り替えることができる……このせっかくの素晴らしいアクション性を否定するかのようなモードは、しかし私のように“物語を存分に楽しみたい”ユーザーにはうってつけでした。
アクションが得意だったら、一発当たっただけでも死んでしまうようなハードなモードで。とにかくさっさと美味しいとこだけ見ながらプレイしたい人はオートモードで。ボス戦などの難しいところだけをオートモードに任せてみたり、などなど。
このような遊び方の幅の広さも、本作のヒットに大きく寄与したといえるでしょう。それこそゲームのとても上手い人とそうでない人が、同じように本作をクリアして「あれが素晴らしかった、これがおもしろかった!」と同じ立ち位置で話ができるのですから。
▲つらくて切ないストーリーをユーザーの力量問わず存分に味わえるって、地味にうれしいのです。 |
『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』で高い評価を得た岡部啓一さん率いるMONACAの楽曲。その魅力は本作でも健在です。むしろ随所でパワーアップして、この作品の世界観を大きく下支えしています。
例によって音楽面の細かい演出がなされている点も、ヨコオタロウ氏のこだわりのディレクションを感じさせてくれます。歩いているフィールドの音楽ひとつとっても、状況によって音数が変化します。
それまではインストゥルメンタルだったのに、ある場所に近づくと歌声まで聞こえてきたり。シナリオが進んでより状況が深刻になると、音数が増したり。そのあたりの変化もプレイしていて非常に楽しい要素のひとつです。かつてのシリーズで登場した名曲がアレンジで起用されていたりするのも、ファンにはうれしい限りですね。
またテーマ曲であり、エンディング曲でもある『Weight of the world』は涙腺をダイレクトに直撃してくる名曲すぎるので、涙が出ます。聞く際には、いろいろと旅路を思い出すことになるのでどうぞお気をつけくださいませ。
▲廃墟の遊園地でかかる曲は、ファンの皆さんにもかなり人気高めだそうです。わかる。 |
本作はマルチエンディングとなっていて、物語を進める中でいろんなエンディングを集めるのも楽しみのひとつ。
ちょっと選択肢を間違うと予想もしないバッドエンディングに行き着いてゲームオーバーになったりするし、達成条件が厳しいエンディングもあったりしますが、そこでしか見られないエピソードもあるのでぜひ全26種あるエンディングのコンプリートを目指してみてください。
とはいえ、物語上でどうしても見届けるべきはA~Eエンドの5種。普通にプレイしていけばまずたどり着けると思うのですが、最後の最後に辿り着くEエンドに関してはじつにヨコオタロウらしいラスボスが待ち受けているので、覚悟して臨んでいただきたいと思います。
発売から1年も経ってるから、もう書いていいよ、と言われたので書きますけど。
よりにもよって、スタッフロールと戦う弾幕シューティングゲームがはじまります。
何を言ってるのかわからないでしょう?
ええ、私も何を言ってるのかわかってないんですよね。
未だに書いてて「なにこれ」と思ってしまいますね。1年経ってもね。攻略設定資料集で「ココのラストバトルのページ、どうしよう……?」って頭を抱えて、縦見開きにしようって決めて、それでも上がってきた黒いページを見て「なんぞこれ」って頭を抱えたあの日を思い出しますよね。
とにかく、スタッフロールと戦うんですよ。戦ってください。いいから、黙って。曲がすごくいいですから。泣きながら、戦うんです。
たくさん流れてくるスタッフの名前が弾を放ってくるので、避けながら弾を撃ち込んで名前を破壊してください。考えることは捨ててください。なんでとかどうしてとか、考えていたら死にますよ。
声優さんとかディレクターさんとか、モーションアクターさんとか歌手の方とか、とにかく本作に尽力したすべてのスタッフさんを全部撃って撃って撃ちまくって、無に帰してください。
あ、プロデューサーさんもスゴいですが、社長さんがとにかく硬い!!
エラい人ほど、すごく硬い!! ガチガチに硬くて強すぎスゴい!!
ので、全力で挑んでください。打倒すべきは、社長! 打倒すべきは、スクウェア・エニックスだ!!
▲ディレクターに弾をぶっこむ快感。とはいえ単独でのクリアは厳しい鬼畜の難度。指示に従って、オンラインで世界中のユーザーに助けを求めてみよう。 |
ま、いろいろ消えるけどシリーズ的にはお約束だから、気にしない方向で!
そんなわけで『オートマタ』の魅力を抜粋してお届けしましたが、いかがでしたでしょうか? とにかく買って損なしです。誰が遊んでも間違いなくそこそこ~それ以上の満足感が得られるというのが本作の最大の強みだと思います。“間違いがない”という作品は、存外つくるのが難しいのです。
序盤でいきなり主役の2人が爆発して死んでしまうシナリオの衝撃とか、突然シューティングゲームになっちゃうゲーム性など、驚きも豊富。だからといって世界観的に破綻していないゲームシステムに、ちゃんとなっている。そのあたりが見事なまでにバランスの整えられたアクションRPGといえます。
昔からヨコオタロウ氏のタイトルに触れてきた人間としては、ある種“言葉にできない、言葉にならない”という魅力のアンバランスさに打ちのめされてきたところがありました。
けれども、それは言葉にできない以上伝えることもままならないし、一部の人の強い共感を得たとしても、多くの人の共感までは得られるものではなかったように思います。
ですが、この『オートマタ』は違いました。
あらゆる魅力について言葉にできる確実性があり、普遍性があり、また売上の数字がそれをきっちりと証明しました。まさしく多くの人がいつかきっとと望んでいた“痒いところにちゃんと手を伸ばせるスタッフによって作られたパーフェクトなゲームとしてのヨコオタロウ・ディレクションタイトル”ということになるでしょう。
このひとつの完成形を、定価の半額で遊べるなんてうらやましい以外の言葉がありません。ちくしょう、いいないいな。これからあの世界を、イチから味わえるなんて、いいないいな。そんな感じでコンビニ帰りの夜道で小石を蹴りたい気分です。
なかなかに絶望的なSF的世界観ですが、最後は希望に満ちたエンディングが待っている『ニーア オートマタ』。
ぜひこの機会に、遊んでみてはいかがでしょうか。
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