2018年3月7日(水)
『北斗が如く』をプレイ。突き抜けた表現に中毒性を感じる『龍が如く』と『北斗の拳』の新たな体験
199X年、世界は核の炎に包まれた!! 現実では1998年生まれの赤ん坊が今年20歳になる事実に愕然としながら、再びあのナレーションを聞く時がやって来ました。そう、3月8日にセガゲームスが発売するPS4用ソフト『北斗が如く』で! 本記事では、そのプレイレポートをお届けします。
『北斗が如く』は、『龍が如く』シリーズでおなじみの“龍が如くスタジオ”が、今年で35周年を迎える人気漫画『北斗の拳』(原作:武論尊、漫画:原哲夫)とコラボして開発したアクションアドベンチャーゲームです。昨年の8月にタイトルが発表された際は、かなりの衝撃を持って受け止めた方も多いのではないでしょうか。
実際に遊んでみると、やはり『北斗の拳』の世界観やキャラクターを題材にしているだけあって、バトルもミニゲームもいい意味でぶっ飛んでいます。現実世界をリアルに描いた『龍が如く』と打って変わって、時はまさに世紀末。
▲鉄柱で悪党を打つ世紀末版バッティングセンターである“デス・バッティング”。ジャストミートで空の彼方に悪党を吹き飛ばすと、「あ……新記録」と言いたくなります。 |
特にミニゲームは、『北斗の拳』のユーモアと通ずるような“やり過ぎ感”にあふれたものが多く、常識の枠を突き抜けた演出を見ているだけでも思わず顔がニヤニヤしてきます。PVなどを見てそのあたりに期待を持っている人は、十分に期待通りのおもしろさを体験できるはずです。
全体的には、ドラマ重視のストーリー、自由度の高いゲームプレイという部分で『龍が如く』の楽しさを継承しつつ、『北斗の拳』とコラボしたからこそのゲーム体験があるというのが率直な感想です。こんなゲームが遊べるなんて、いい時代になったものだ。
『龍が如く』と『北斗の拳』の化学反応に引かれる
本作は、主人公のケンシロウがサザンクロスにあるシンの居城に乗り込むシーンから始まり、ここでチュートリアルを兼ねたバトルを体験します。筆者が『北斗が如く』に引き込まれた瞬間がここ。
「あたぁ!」
黒田崇矢さんが演じるケンシロウの掛け声を聞き、めっちゃケンシロウだ……と思わず笑みがこぼれました。筆者はTVアニメをリアルタイムで見ていた世代なので、ケンシロウの声は神谷明さんがレジェンドでオリジナルだ、という気持ちはあるのですが、それでも『北斗が如く』をプレイしていると、黒田さんのケンシロウもすごくなじみます。
また、リアル路線を追求した『龍が如く』と異なり、ビジュアルに原作の味が出ているのを感じました。ケンシロウの髪の逆立ち具合、太い眉、眉間の皺、表情に対する影のつき方、筋肉の形、そして七つの傷。どれもケンシロウらしい見栄えと質感で、見ても動かしても気持ちがいい。もちろん、ケンシロウ以外のキャラクターも同様に、原作の味を感じる造形が素晴らしいです。
そして中谷一博さんが声を演じるシンとの対決の場面では、一気にテンションがMAXに。心の中では転龍呼吸法を使って服がビリビリに破けてましたね、もう。
なにせ『龍が如く』では黒田さんが桐生一馬、中谷さんが錦山彰を演じており、2人は同じ女性を愛して争った間柄です。『北斗の拳』におけるケンシロウとシンの関係もその点については同じで、それを思い出すと、2人の対決シーンが見ていて熱すぎる!
原作をなぞってシンはここで死にますが、その後の回想シーンではシンがケンシロウに七つの傷を付けた時のエピソードも描かれ、その場面もやはり熱いです。
▲シンの「執念だ!」というセリフには胸が揺さぶられました。 |
なお、ケンシロウとシンに限らず、『北斗が如く』のキャストは『龍が如く』の出演声優で固められています。配役は『龍が如く』における人物のキャラクター性や人間関係、『北斗の拳』におけるそれらが考慮されているので、両作を知っていると、非常にニヤニヤできること請け合いです。
ゲーム自体は『龍が如く』シリーズからは独立しているので、プレイするのにどちらの作品も知っている必要はないのですが、せっかくのコラボである以上、両方を知っていると楽しめる要素があるというのはうれしいですよね。
原作らしさと意外性を楽しめるオリジナルストーリー
ストーリーについては、シンとの対決を果たした後、『北斗が如く』のオリジナルストーリーが展開していきます。原作の第1話でケンシロウが「み、水……」と言って倒れたシーンを彷彿とさせるような展開でルカという少女と出会うのですが、彼女との会話はしっかり記憶に刻んでおくと、後々ニヤリとさせられると思います。
シンから愛するユリアの死を聞かされ、それでも諦めきれないケンシロウは、ルカの祖父からユリア生存の可能性に手がかりを得て、奇跡の街・エデンという場所を目指します。
エデンは、水を求めて人が殺し合う世紀末において、核戦争前から存在する謎の施設のおかげで水が無尽蔵にあふれ、それゆえに多くの人が集まって栄えた街です。なんと電気も使用でき、原作に登場した帝都と違って発電に奴隷の力も必要なし。まさに“奇跡の街”というわけです。
▲奥の山嶺に横たわるドームが、エデンに潤沢な水を供給する施設“スフィア・シティ”です。その手前に広がる壁に囲まれた街が、物語の舞台であるエデン。 |
果たしてユリアは本当に生きているのか? エデンにもたらされる奇跡の理由は何なのか? それらの謎が解き明かされていくとともに、漢(おとこ)たちのドラマや、エデンの住人であるオリジナルキャラクターたちのドラマが、『北斗が如く』のストーリーでは描かれます。
▲父の後を継いでエデンを統治するキサナ(左)と衛兵隊長を務めるジャグレ(右)。オリジナルの人物もしっかり背景とドラマが作り込まれ、感情移入できるキャラクターになっています。 |
また、原作でおなじみの人物らもストーリーに次々と登場してきます。原作を彷彿させるシーンでニヤリとさせられることもあれば、意外なキャラクターが思わぬ登場の仕方をすることもあり、『北斗の拳』ファンだと、なるほどと思えたりや笑えたり、それぞれのシーンをいろいろな角度から楽しめると思います。
逆に『北斗の拳』を知らなくても、本作は物語としてのまとまりがいいので、新鮮にストーリーやドラマを楽しめるはずです。この記事では世界観について細かい説明を省いていますが、ゲームをプレイすればそこもしっかり説明、もしくは描写されますし。
むしろ『北斗の拳』を好きだと、嫁の粗を探す小姑の目線のようなものがどうしても拭えないので、原作を知らないほうが純粋に個々のシーンを堪能できるような気もします(笑)。
▲ラオウ、サウザー、ジャギ、レイ……他にも原作キャラクターが登場し、ケンシロウと拳を交えます。北斗現れるところ乱あり……って、エデンに乱を呼びすぎ! |
なお余談として、『龍が如く』では、古牧という人物から桐生が技を教わるシステムがありますが、『北斗が如く』だと、兄弟子であるトキとの修行を通じて拳を教わるという形に落とし込まれています。
個人的にはケンシロウがトキから拳を学ぶというシチュエーションを体験できるのがうれしく、システムが解放されたらソッコーで通い詰めました。ちなみに、『龍が如く』ファンの人であれば、古牧についてもちょっとした楽しみを期待していいんじゃないでしょうか(笑)。
▲トキとの修行はもちろん拳を交える形。北斗有情破顔拳など、さまざまな技を学べます。 |
選べる遊びは膨大。自由なエデンの街
世紀末では力こそ正義、『龍が如く』では豊富な街遊びこそ正義! ……というのは書いてみたかっただけにせよ、本作『北斗が如く』でもすごいボリュームで街に遊びが用意されています。
例えば『龍が如く』でサブストーリーと呼ばれる小エピソードは、サイドミッションという名で80も存在し、コメディタッチの話や人情モノ、原作キャラクターがかかわる話、オリジナルキャラクターを深掘りする話など、さまざまな形のエピソードを楽しめます。
入り口についても一様ではなく、メインストーリーを進める中で自然と発生するものや、街を歩いていると発生するもの、特定のミニゲームを遊ぶと発生するものなど、さまざまなゲームプレイの過程に配置されているのがいいところ。満遍なくいろいろなコンテンツをプレイすると、自然と多くのエピソードに触れることができます。
ミニゲームも力が入っており、『北斗が如く』では、常識という枷の外れた世紀末で、いい意味での“やり過ぎ”を感じる、ゲームでしか見られないケンシロウを体験できる遊びがそろっています。
▲バーテンダー・ケンの画像。下ではコントローラを上下に振る操作のみ説明していますが、作るカクテルの種類によって3通りの操作があります。 |
個人的に一番お気に入りなのは、ケンシロウがバーテンダーとして客にカクテルをもてなす“バーテンダー・ケン”。ケンシロウが「シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ……!」と北斗百裂拳ばりの掛け声でシェイカーを振り、客に“死兆星のまたたき”や“ひでぶラッディマリー”という、とんでもない名前のカクテルを出していきます。
これはPVなどでシーンの一部をちらっと見て大いに期待していましたが、実際にプレイしてみるとあまりにもインパクト大で、ものすごい腹筋と表情筋を刺激されました(笑)。自宅でプレイしていたら爆笑必至だろうという演出で、黒田さんのノリノリな演技も最高です。
そして演出面もさることながら、ゲームプレイ的にもコントローラをシェイカーに見立てて上下に振るというおもしろさがあり、客と仲よくなることでサイドミッションが発生したり、エデンにある店の商品が増えたりする流れもいい。楽しくて何度もコントローラを振っていたら、翌日、肘が痛くなりましたね……(苦笑)。
他にも、バイクに乗って「ヒャッハー!」とやって来る悪党ども鉄柱で吹き飛ばす“デス・バッティング”、ケンシロウが秘孔を突いて病人を癒す行為がなぜか音ゲーになるすごい発想の“ケンシロウ・クリニック”、暴れる客からナイトクラブの安全と売り上げを守る“黒服ケンシロウ”など、世紀末感あふれるものから意外性の高いものまで、さまざまなミニゲームがあります。
▲“音楽療法”を勘違いした看護師のせいで、音楽を流しながら患者を治療することになったケンシロウ・クリニック。やってることは音ゲーですが、突き抜けた発想がいい! |
▲ナイトクラブというピンク色の響きとは異なり、黒服ケンシロウは、頭を使う要素もある忙しいSLGになっていて、ミニゲームとしてはかなり遊びごたえ抜群。おすすめです。 |
『北斗が如く』のミニゲームは、何かしら突き抜けたアイデアや演出が盛り込まれ、思わず笑ってしまうものばかり。原作で描かれるユーモアとは表現が異なるものの、何事も突き抜ければ笑いが生まれる、という部分には非常に共通項を感じます。
そういう意味では表現の根っこに『北斗の拳』と通じるものがあるし、インパクトのあるケンシロウの姿は、頭から離れず中毒になるおもしろさがあります。ストーリーを進めるつもりで街を歩いていたはずなのに……お前はもう寄り道している! そんなことが何度あったことか(笑)。
そして、数ある遊びの中でも最大のボリュームを持つのがバギー関連です。バイクと並んで世紀末を代表する乗り物のバギーですが、ストーリーを進めるとケンシロウもバギーを入手し、広大な荒野を探索できるようになります。
荒野にはさまざまな素材が落ちていて、この素材を使ってバギー用のカスタマイズパーツを修理したり、バトル用の補助アイテムである宿星護符を作成できたりします。また、エンカウントバトルで高評価を得た際に宝の地図がゲットできれば、荒野に出現したコンテナから貴重なアイテムを入手可能です。
遊びとしてはやはりバギーをカスタマイズできるのが楽しく、特定のパーツをセットすれば探索地域を広げることもできます。自分のバギーで参加するレースゲーム“バギーレース”が解放されれば、レースのためにカスタマイズするおもしろさも出てきて、遊びの幅はさらに広がっていきます。
バギーのカスタマイズとそれに関連した遊びは、1本のゲームとして十分に成り立つボリュームなので、聖帝十字陵に石を積みあげていくように、じっくりとやり込めるでしょう。
▲セガ・マークIII版『北斗の拳』の入手先も荒野から。筆者はまだ入手できていませんが……。 |
秘孔アクションが気持ちいいバトル
バトルは基本的に『龍が如く』シリーズの操作を踏襲していて、□ボタン連打によるラッシュ攻撃、そこから△ボタンでのフィニッシュブロウ、さらにL1でガード、×ボタンでスウェイといったアクションを使い分けて戦う部分は同じです。『龍が如く』をプレイした経験の有無にかかわらず、操作に慣れるまでの敷居はそんなに高くないと思います。
ただ本作は主人公がケンシロウなわけで、単なるケンカ拳法ではなく一子相伝の北斗神拳を使える! そのため○ボタンが“秘孔を突く”ボタンになっています。通常攻撃である程度ダメージを与えると、敵が秘孔を受け付ける状態に変化し、この時に○ボタンを押してガードされずに秘孔を突ければ、相手の動きが止まります。
この状態の敵には、さらに○ボタンを押すことで北斗神拳の奥義を放つことが可能。奥義は北斗百裂拳をはじめ、北斗残悔拳、北斗鋼裂把、岩山両斬波などおなじみの技を繰り出すことができ、食らった敵は原作さながらの死に顔をさらし、断末魔の叫びを上げて無惨に飛び散ります。
▲ケンシロウといえば北斗百裂拳! なお、原作に登場した奥義以外にも、北斗破陣擲などオリジナルの技がいくつか存在します。 |
これが気持ちいい! ○ボタンが秘孔の専用ボタンになっていることで、自分で秘孔を突いている感覚があり、単に倒した敵が破裂する演出を見るだけよりも、非常に爽快です。
また、本作では奥義を繰り出したり、敵を倒したりすることで、北斗七星を模した七星ゲージが溜まっていきます。
ゲージがMAXになるとR2ボタンでバーストが発動し、ゲージがなくなるまでの一定時間、攻撃力アップや跳躍が使用可能になるなどの恩恵を得られます。……とまあ、個人的にはシステム的な恩恵よりも、転龍呼吸法を使った時のようにケンシロウが上半身裸になるので、本気を体感できるのがうれしいんですけどね!
▲バーストを発動したケンシロウ。発動時には周囲の敵を吹き飛ばすので、これもまた爽快! |
他にも、“ジャスト秘孔”というアクションが解放されると、相手の秘孔を突いた後にタイミングよく○ボタンを押すことで、特大ダメージを与えることができます。
難易度ノーマルでプレイした限り、ジャスト秘孔が決まれば大抵の敵は一撃必殺、そのまま「あべし!」と破裂して死んでいくので、爽快感を味わえるとともにバトルのテンポもよくなります。
▲秘孔を突いた後、○ボタンアイコンの外側に表示された円が収束していくので、重なるタイミングで○ボタンを押せばジャスト秘孔になります。 |
さらにジャスト秘孔を決めた時は、敵の断末魔が吹き出しになって表示され、新しく聞いた断末魔は、メニューの“あべしコレクション”にリストアップされていく収集要素にもなっています。断末魔をコレクションできるなんてユニークで、『北斗の拳』ファンの心をくすぐる要素だなと(笑)。
それだけでなく、デブの敵をジャスト秘孔で倒した時は断末魔が実体化し、“ひで武器”として拾えるようになります。断末魔で殴れるという脅威の発想。この“やり過ぎ感”がたまりません。しかも“ひで武器”は何気に高威力で、ひと殴りで複数のザコ敵を蹴散らすこともしばしば。楽しさと実用性を兼ね備えた武器になっています。
▲ハート様のように「ひでぶっ」と叫んで死んでいくデブ。なお、デブ以外だと生命力回復や七星ゲージアップなどのアイテムを落とします。 |
▲断末魔が“ひで武器”になるので、ありがたく使わせてもらいましょう。 |
なお、使える北斗神拳の技は、能力解放という成長要素でアンロックしたり、トキとの修行で会得したりすることで増えていきます。
成長要素については、レベルアップによる基礎能力の向上と、いわゆるスキルツリーのような形で自分好みの方向性で能力アップや技を獲得していく能力解放、その2軸でケンシロウを強くできます。『龍が如く』ファン向けに一言で説明すると、『龍が如く 維新』がシステム的に近いです。
▲二指真空把を使うケンシロウ。能力解放で使えるようになります。 |
その他、バトルをサポートする要素として宿星護符というものが存在します。簡単に書けばキャラクターをアイテム化したもので、発動すると一定時間能力が上がったり、七星ゲージに関係なくバースト状態になったり、それぞれのキャラクター(の宿星)に応じた効果が発動します。
宿星護符は作成すれば何度でも使えますが、1度使うと次の発動までにクールタイムが必要。また、護符によってはバトル中ではなく、バギーに乗っている時だけ効果を得られるものもあります。
いずれにしても、一番の特徴はオリジナルキャラ以外のキャラクターイラストが原作の漫画のコマから抜粋されていることでしょう! 原作ファンは、効果を優先するか、お気に入りのキャラクターを優先するかで悩むと思います(笑)。
『龍が如く』と『北斗の拳』の新たな切り口を体験できる
本作は、シンプルに『北斗の拳』のゲーム化と書いてしまうと厳密にはニュアンスが異なると考えていて、『北斗の拳』の世界観と人物で新しい切り口の『龍が如く』を作ったというのが、一番近いニュアンスなのかなと感じています。
なので、ストーリーのまとめ方やドラマのテイストは『龍が如く』らしいものになっていて、『龍が如く』が好きで本作に入っていく人は、クリア後に余韻にひたりたいほどの満足感を得られると思います。加えて、『北斗の拳』とのコラボから生まれたミニゲームやシーンには、シリーズと異なる新しいゲーム体験があります。
そして『北斗が如く』ならではの突き抜けた表現は、むしろ原作ファンであればこそ共感して楽しめるのではないかと。『北斗の拳』は、ドラマによる感動や戦いの興奮だけでなく、“普通じゃありえない”と思える常識を超えた表現が笑いにもなる漫画だったと感じるので。
原作では生活感ゼロのケンシロウが“街で過ごす”というのも新たな体験で、それだけでも楽しいと思いますし、もちろん、最後はドラマで締めてくれます。もし本作に興味を引かれる何かがあるなら、遊んでみて「一片の悔いなし」ですよ!
(C)SEGA (C)武論尊・原哲夫/NSP 1983 版権許諾証GA-217
データ