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2018年3月25日(日)

【電撃PS】MJことみうらじゅんさんの教え。山本正美氏コラム全文掲載

文:電撃PlayStation

 電撃PSで連載している山本正美氏のコラム『ナナメ上の雲』。ゲームプロデューサーならではの視点で綴られる日常を毎号掲載しています。

『ナナメ上の雲』

 この記事では、電撃PS Vol.657(2018年2月22日発売号)のコラムを全文掲載!

第126回:MJアニキの教え

 これまで、「ゲームやろうぜ!2006」と「PlayStation CAMP!」、2度のクリエイターオーディションを運営するなかで、全国を行脚し募ったクリエイターたちと十数本のゲームを作ってきました。

 「錯視」をゲームに落とし込んだ『無限回廊』、飛んでくる戦艦をバラバラにする『100万トンのバラバラ』、見えない主人公を操作し、詩的な世界を駆け巡る『rain』、人類は死に絶え、動物だけが生き残った世界でサバイバルを繰り広げる『TOKYO JUNGLE』、物理挙動と落ちゲーを組み合せた『ゴミ箱』、そしてこのページのデザインを担当してくれている小林陽明君と組んだ、『勇者のくせになまいきだ。』シリーズなどなど、ざっと書き出してみても“ヘン”なゲームのオンパレード。

 小規模タイトルの立ち上げがなかなか難しくなってきた昨今で考えれば、会社には本当に刺激的な機会を与えてもらったなあと感謝をしています。

 「やろうぜ」や「CAMP」の合格者たちは、ゲーム制作経験者もいれば、まったくの初心者もいて、持っているスキルはまちまちでした。それでも、「企画力」は全員が持っていた。企画力というよりは、「ゲームを作りたい」という強い思い、といったほうが近いでしょうか。普段話していても飲みに行っても、「こんなアイデアがあります」「こんなコト考えました」というのを聞かせてくれるわけです。

 企画だけでなく、たとえばアーティストだと、「こんな絵を描きました」と、スマホやタブレットに入っているポートフォリオを見せてくれたりもしました。チャンスがあれば企画や自分をアピールする、というマインドのヤツらばかりで、毎日が楽しかったなあ……。

 さて、話は変わって先日、川崎市民ミュージアムで開催中の、「MJ's FES みうらじゅんフェス!」に行ってきました。MJ。みうらじゅんさんです。マイケル・ジャクソンでもなければ、もちろん松本潤さんでもありません。

 そのみうらじゅんさんの生誕60周年を記念し、氏が小学生の頃から“こじらせて”きた膨大な創作物、蒐しゅうしゅう集物を堪能できる展覧会だったわけですが、これがすごかった!

 みうらじゅんさんといえば、一般的には「マイブーム」や「ゆるキャラ」という言葉の発案者、ということで有名かと思いますが、怪獣やフォークソングのオピニオンリーダーでもありますし、ちょっと嫌なみやげ物「いやげ物」の蒐集や、最近のご朱印や仏像人気も牽引する、僕ら世代からすると、なんだかよくわからないけれどとにかく面白いことを思いのままにやっている、憧れの「アニキ」なのです。

 というわけで、ウチから近いこともありオープン翌日に会場へと赴きました。

『ナナメ上の雲』

 会場では、まずは「つっこみ如来」のお出迎えが。展覧会にしては珍しく、撮影可ということでたくさん写真を撮りました。とにかく、展示物の量が凄い。氏が小学生の頃に書いていた漫画などは、原本はケースに入っているもののラミネート加工されたコピーも置いてあって、来場者が読めるようになっています。

 年代やジャンルごとに作品がカテゴライズされているなかで、ひときわ大きなスペースで展開されていたのが、「天才のスケッチブック」とご本人が銘打たれた、美大生時代に書き溜めたスケッチブックを展示したコーナーでした。

『ナナメ上の雲』

 まさに、「今この瞬間、何かを生み出したい気持ち」にまみれていて、大きな刺激を受けたのでした。

 現状にくすぶっている人と話すとき、作りたいモノが作れない、企画を提案する仕組みが組織にないなど、ある種「甘えた」嘆きを聞くことが少なくありません。じゃあ今、企画を聞かせてよというと、「機会があれば考えようと思っているんです」という。

 かつての合格者のように、その場でアイデアをぶつけてくることは、大抵の場合ありません。創作意欲とは、みうらじゅんさんのように、出口があろうがなかろうが、「その瞬間、形にしなければ気がすまないモノ」なはず。

 人がどう、仕組みがどう、という前に、呼吸するように「やってしまう」ものであるはずなのです。膨大な創作物を眺めながら、改めてアニキにそのことを教えてもらったのでした。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ
エグゼクティブプロデューサー

山本正美
『ナナメ上の雲』

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPANスタジオ 部長兼シニア・プロデューサー。PS CAMP!で『勇なま。』『TOKYO JUNGLE』、外部制作部長として『ソウル・サクリファイス』『Bloodborne』などを手掛ける。現在、『V!勇者のくせになまいきだR』を絶賛制作中。公式生放送『Jスタとあそぼう!』にも出演中。

 Twitterアカウント:山本正美(@camp_masami)

 山本氏のコラムが読める電撃PlayStationは、毎月第2・第4木曜日に発売です。Kindleをはじめとする電子書籍ストアでも配信中ですので、興味を持った方はぜひお試しください!

データ

▼『電撃PlayStaton Vol.658』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2018年3月8日
■定価:694円+税
 
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