2018年5月16日(水)
5月8日より配信がスタートしている、iOS/Android用RPG『ポポロクロイス物語 ~ナルシアの涙と妖精の笛(以下、ナルシアの涙と妖精の笛)』の原作者&開発者インタビューをお届けします。
本作は、1996年に発売されたPS用ソフト『ポポロクロイス物語』からシリーズ8作目にあたる作品。大人へと成長する“ピエトロ王子”と“森の魔女ナルシア”が大きな使命に立ち向かう姿を描いた、愛と友情と思いやりの感動物語です。
今回、『ポポロクロイス物語』の原作者・田森庸介氏と、『ナルシアの涙と妖精の笛』のプロデュース/原案/構成を担当する山元哲治氏にインタビューを敢行! 事前に『ポポロ』ファンの皆さんから募集した質問を中心に、答えていただきました。(※インタビュー中は敬称略)
▲田森庸介氏(写真左)と山元哲治氏(写真右)。 |
――まず、『ポポロクロイス物語』のシリーズ最新作をスマートフォン向けにリリースすることになった経緯をお聞かせください。
山元:セガゲームスの方から「やってみない?」と持ち掛けられたのがきっかけです。なぜ『ポポロ』なのかというところは、セガさんに聞いてみてください(笑)。
――なるほど(笑)。
山元:今回の企画はテーマがピエトロとナルシアの大人になる過程を描くこと。シリーズとしてはチャレンジブルな企画ですから当然、田森先生に相談して結果、やってみようということになりました。
一番、時間がかかったのはキャラクターの頭身で、あどけなさを残しつつ、表情によっては大人に見える、でも『ポポロクロイス』らしさを失わないバランス。試行錯誤して今の5.5頭身に落ち着きました。
――開発するうえで、スマホゲームだからこそやりやすかった点や、コンシューマーゲームと比べて難しかった点などはありますか?
山元:開発というところでいうと、一長一短ですね。ここまでくるとスマホだから難しいとかそういうのはあまりないですし、スマホのスペックはすでにゲーム機を超えていますから。
だから僕たちの想定以上にできることが多くて、当初の仕様がどんどんリッチになっていったんです。
例えば、ゲームイベントは立て看板の前にバトル用のキャラクターを並べてお芝居させる予定だったんだけど、試しに3Dマップを制作してみると、思った以上に描画できる。だったら完全に3Dでやった方がカメラワークも多彩になるしドラマチックなシーンを作れる。
町や村に10~20人のNPCを配置すればリアルだ。あれ? 待てよ、背景はいいけどキャラクターは? バトルキャラクターの使い回しでいいの? もっと描き込もうか、みたいに。
田森:キャラクターたちが結構しゃべるのに驚いたよ。
山元:ビックリですよね。
田森:もうビックリビックリ。コンシューマーゲームで不可能といわれていたことも簡単にできてしまうから驚きました。
山元:コンシューマゲームと違って、あとからアプリやリソースをアップデートできるし、毎年、端末のスペックやネットワーク環境が向上するから作り手としはできることがますます増えるわけですよ。
――スマホは短い期間でスペックが上がっていきますからね。
山元:『ポポロ』シリーズはクオータービューが基本でした。クオータービューは箱庭的で可愛いんだけど、空とキャラクターの表情が見えないんですよ。だからチャンスがあればキャラクターを真横から撮りたいと思っていました。
真横から撮ると、その人物がよくわかる。表情とか、服装、装飾品、装備品など。だから、その一つひとつに設定や理由を考える。今回のカメラビューは、それぞれのキャラクターを掘り下げるのにもってこいなんです。
山元:さらにボリューム感もすごいです。田森先生もまだ知らないんだけど、すごいんですよ!
田森:僕も全貌が全然わからないの(笑)。
山元:リリース時の4章まででゲームイベントの数が900くらいありますからね。
――それはキャラごとのストーリーなども含めてですか?
山元:メイン、サイド、ブレイブのストーリーで展開されるイベントを全部合わせると900本。総尺は24時間を超えます。そのイベント、僕たちはドラマとよんでいますが、その間に最低でもバトルが600回ぐらい差し込まれますから相当なボリュームだと思います。
――本作は“ブレイブストーリー”という形で個々のキャラを掘り下げていますが、こういう要素もスマホならではですよね。
山元:そのぶん作るほうは大変なんですけどね(笑)。登場するすべてのキャラクターの生い立ちから何からを設定して、ストーリーのタイムラインに矛盾のないようにお芝居をさせてゆく。そのシーンに出ていないキャラの状況も考慮しながら。そしてそれを田森先生の世界観の中で組み立てるわけです。
こうして立体的な思考で構成を作ることによって、個々のキャラクターの行動言動思考などが矛盾なく表現され深みを作れる、そう考えています。
――そういう物語の整合性というところに、今までなかったような苦労も出てきてしまうと。
山元:そうなんですよ。そのぶん今までよりもストーリーを楽しめたり、キャラクターの個性を見たりすることができるんですけどね。
田森:1つの物語があるんですけれども、そこに登場するいろいろな人の視点から、また別の物語が語られていくんです。だから、全体をつかむことは私にもできないかも(笑)。まあ、上手くやってくれるだろうなと思っています。
山元:いやでも、量が量なので……。
田森:最終的に1つの方向にはいくんだけれども、驚くことに敵の視点からも話があって、それがまたおもしろいときているから困っちゃいますよね(笑)。敵に肩入れするとどうなるんだろうなって。いろいろと問題があるんだけれども、それも1つの物語ということで。
――敵にも物語が用意されているんですね。
山元:“デイモス”なんて名前を付けたら、いかにも悪者じゃないですか?
田森:でもね、哀しい生い立ちがあるんだよって。
山元:年が明ける頃に皆さんが悪役デイモスをどう見ているか、楽しみですね。
田森:“ポポロクロイス”という言葉は、人々が交差して紡がれる物語という意味ですから、いろいろなキャラが出てきてそれぞれの物語があって、それが交差して1つの物語を作っていくという『ポポロ』本来のゲームができたと思います。
――今回、『ポポロ』ファンから質問を募集したのですが、シリーズに登場するキャラに関しての質問などが非常に数多く寄せられました。「ガミガミ魔王の財源はどうなっているの?」という質問などは、何通もきていましたね。
山元:さきほど立ち寄った喫茶店で田森先生と、まさにその話をしていました(笑)。
田森:まあ、ガミガミ魔王は盗賊ですから、それが収入源ですね。
山元:確か、『ポポロクロニクル』(※編注:ジュニアファンタジーノベル『ポポロクロニクル 白き竜』2015年・偕成社刊)に載っていますよね。
田森:はい、『ポポロクロニクル』を読めばわかります。ガミガミ魔王やキングナイトの生い立ちもわかります。
山元:ガミガミが若い頃は、海岸に漂着するいろいろなガラクタを拾ってお城を作ったりしていましたからね。意外と見えないところで地味な努力をしていると思う。
田森:ガミガミには小さな頃から面倒を見てくれるロボットがついてますから、そのロボットがまたロボットを作って働かせているようですね。
山元:そのロボットとガミガミ魔王との関係も『ポポロクロニクル』を読んでいただければわかりますよね。
田森:なぜガミガミと呼ばれたのかもね。
山元:あれ、それ『ポポロクロニクル』じゃないですよね? 『ポポロクロニクル2』でしたっけ? すみません、まだ発売されてないです。絶賛校正中です!(笑)
田森:そうですね。本当に驚くべきことがいろいろと描いてあります。
――他には、「ガボは元気ですか?」という質問も。
田森:ああ、元気ですよ。そういえば行動をともにしていなかったね。
山元:なんかあったんでしょうね(笑)。
田森:コレも言っていいのかな? 今回、“古の勇者たち”が人間タイプで出てくるんですよ。それも『ポポロクロニクル2』でちらっと出てきます。
――ますます『ポポロクロニクル2』が気になりますね。あと「ボリスのその後はどうなったのでしょうか?」という質問も多かったです。ボリス関連の質問は、担当編集も驚くほど寄せられました。
田森:電撃を受けたときに影で角があるという、それは天空城だから鬼でしょう。そういうことを暗に含めていたんですけど。ピエトロだって電撃を浴びると竜の骨格が出ますからね。あの長い髪の毛にはなんと骨があったという(笑)。
――今回、白騎士とガミガミ魔王の出身が明らかにされましたね。
田森:白騎士とガミガミ魔王の出身については、『ポポロクロニクル2』でさらに明らかになってくると思います。いろいろとゲームと連動しているんですよ。他に大陸があるということも含めて、世界はもっと広いんだよということを言いたかったんです。
――そういった世界の広がりも、『ナルシアの涙と妖精の笛』で描かれるのでしょうか?
田森:描かれます。『ポポローグ』に出てきたいろいろなキャラクターがいるでしょ? 彼らの出身地もいずれ明らかになるはずです、たぶん(笑)。
――昨年開催された“東京ゲームショウ2017”でも話題になりましたが、ナルシアの服装がミニスカートになったのを田森先生が心配していらっしゃったとか。
山元:念のため確認を取ってお返事もいただいていたのですが、後日ちょっと心配になったようで(笑)。
田森:あれもファンの声がいろいろあってね、絶対嫌だという人もいれば、まあいいんじゃないという人もいるし。ナルシアも成長しているからなあ……。
山元:僕はね、今回の作品の1つの象徴だと思うんですよ。ちょっと個人的な話ですが、僕には娘が2人います。彼女たちが中学高校大学と大人になっていくじゃないですか。世間を見渡していろいろな格好をしている人がいることは何とも思わないんだけれど、自分の娘ということになるとドキッとするよね。あんなに丈が短くて大丈夫かなとなるわけですよ。
――もう少し落ち着いた服装にしてほしいと?
山元:そうそう。もっと地味な色がいいんじゃない、となると思うんですよ。「髪染めてるの?」みたいな。でもそれは、大人のエゴというかね。僕の娘もそうだったようにナルシアだってオシャレはしたい。
ただでさえぼーっとした王子が相手だから。「ナルシア、キレイになったね」って気づくようなタイプじゃないでしょ(笑)。
――ピエトロへのアピールなんですね。
山元:ナルシアももう19歳なんですよね。2人とも大人になる扉の前にいる物語にしたかったので、ここはもう絶対に譲れないと。サニア王妃や森の魔女ギルダがこんな格好をしたら大変だけどね(笑)。
――スカート丈にそれだけの思いが込められているんですね。
田森:ナルシアにもいろいろ考えがあるんでしょう、ということで温かく見守っていただければ。
――コンシューマーゲーム機での遊び方になれたユーザーさんの中には、サービスが終わってしまうと『ポポロ』を遊べなくなってしまうのではと心配されている方もいらっしゃるようですが。
山元:スマホのゲームって、まだまだ進化していくと思うんですよ。コンシューマーゲームだって昔ロムで遊んでいたものが、今はアーカイブスで買えたりするのと同じで、将来的にはわからないですよね。そこはもうデジタルなので劣化することもなくデータが残っているわけですから、あまり悲観的に考える必要もない気はします。
――逆に、常に持っているスマホの端末で、いつでも『ポポロ』ができるのがうれしくてたまらないという意見もありました。
山元:今回『ポポロクロイス物語 ~ナルシアの涙と妖精の笛』をセガゲームスさんに初めてスマホでトライさせてもらったことは原作『ポポロクロイス物語』にとっても意義があることと思っています。この最新作でまた世界が広がったわけですから。
一方で『ポポロクロニクル』は過去に遡った子どもの冒険物語。これらがすべて線になってつながっていく、そんなイメージで『ポポロ』の世界を見ています。
――今回、大人になったピエトロ王子たちの物語が描かれますが、外伝的な形で過去のエピソードも追加実装される可能性はあるのでしょうか?
山元:プロローグや要所要所で幼い頃のピエトロとナルシアを出したり、過去のエピソードも随所に散りばめていますが、そこがあまりにも多くなると新しいお客さまがわからなくなるかなと。隠し味程度にしています。
でも『ポポロクロニクル』を読むと、子どもの冒険物語も作りたいなと思います。ゲームシステムも含め、今の作品とは別になるでしょうけどね。
田森:『ポポロクロニクル 白き竜』は主人公が白騎士なんです。
山元:白騎士って具体名は出ていないのでは?
田森:『ポポロクロニクル2』でちらっと。『ポポロクロニクル3』でナルシアとカイの関係が明らかになります。
山元:言っちゃっていいんですか? でもまあ、そうですよね。だって、カイとナルシアの関係ってなんなのよって(笑)。
田森:謎が解けます。ちょっと思わせぶりなことを言ってしまいましたが、カイはなぜ褐色の肌をしているのでしょうかとったところも『ポポロクロニクル3』でわかりますね。
――キャラに対する疑問や質問の数々は、すべて『ポポロクロニクル』を読んでねということでしょうか。
田森:そうですね、いろいろと謎が解けると思います(笑)。
――システムに関する質問ですが、今回スマホゲームならではのポイントなどはありますでしょうか?
山元:スマホを意識したのは操作感だけですね。ゲーム的な戦略性はありながらも、あまりテクニカルな操作を求めないようなものにしなければいけないなという意識はありました。そこくらいかな。
――新要素として、いわゆるギルドバトル――複数のプレイヤーが定時開戦形式で楽しむ船団戦というものが実装されましたが、どのような狙いだったのでしょうか?
山元:スマホだから楽しめるゲーム要素が欲しかったからです。
『ポポロ』の船団戦はフレンドが集まって船団を作り、他の船団と競い合うギルドバトルです。みんなで船団戦を楽んだり、協力して船を大きくしたり。つながった人たちと盛り上がれるのはスマホならではのおもしろさだと思っています。
ファン同士が楽しんでくれればいいなと思います。実際に見られるかどうかはわかりませんが、ガミガミ魔王だけで集まる船団などもできるわけですよ。“ナルナル号”といってナルシアしかいない船団とか(笑)。そういう楽しみ方もあると思うんですよね。
――今作では、グラフィックが3Dになりましたね。
山元:カメラが動いて演技をするというところをぜひ楽しんでもらいたくて、そこが我々の売りかなと思っているんですよ。2Dで描いてきた『ポポロ』の世界を、3Dでどういう風に表現するか。
実写の演技やカメラワークを参考にしながら、どんどん改良していきました。開発当初と比べて後半のクオリティが上がってしまって、前半部分なんて3回は作り直しています(笑)。
――実際にゲームをプレイさせていただいて、3Dでも違和感がなかったです。『ポポロ』ならではの優しい世界観をまったく損なわないグラフィックですよね。
山元:そこはやはり、原作がブレないからですよ。これがすべてだと思います。原作がブレないので、不変なんです。
田森:でも、いろいろな意見があると動かされるかもしれないですよ(笑)。そういうファンとの交流も含めて『ポポロクロイス』の世界なんです。
――そんなこだわりの作品、すべてのキャラに思い入れがあるとおもいますが、数多登場するキャラのなかでお2人のお気に入りのキャラはいますか?
田森:カインですね。好きなんですよ。誰なんだろうって、みなさん気にしてみてください(笑)。
山元:僕はナルシアですね。特に言いたいのは、19歳のナルシアがイチ推し。幼い頃から知っていますけど、“おみやげ”好きな王子を支える無償の愛みたいなところがね、素晴らしいキャラだと思います。今回のサブタイトルにも、大人に成長する彼女の名前を意識的に入れました。
――それでは最後に『ポポロ』ファンの方に向けて、ひと言ずつメッセージを願いします!
田森:今回のお話はゲームでいうと『2』のあと、ピエトロとナルシアがどうなるか、そして、ピノンまでいくかどうかわからないけれどそういう長いお話で、しかもこれまで出ていなかったポポロクロイス以外の大陸もいっぱい出てくるんです。
そこには『ポポローグ』に登場した傭兵たちの故郷もあるだろうし、いろいろなことがわかるだろうということもあるし。とにかく『ポポロ』の世界が非常に広がるということで、全貌はまだつかめないでしょうけれども、ぜひ楽しみにしてください。
山元:ここまで個々のキャラクターを掘り下げたことはシリーズを通して初めてです。なかなかお披露目できなかった田森先生の世界を余すことなく表現できたことは非常によかったと思っています。
『ポポロクロイス物語』はこれからも広がり続けていきます。ファンとともにこの作品を育てられたらプロデューサー冥利に尽きる、そんな感じです。
※画面は開発中のものです。
※『ポポロクロイス』はソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標です。
(C)Yohsuke Tamori (C)SEGA
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