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2018年6月15日(金)

『FF14』吉田直樹氏インタビュー。絶アルテマの制作企図や『モンハンワールド』コラボにも言及【E3 2018】

文:電撃PlayStation

 “E3 2018”の会場で行った『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクター、吉田直樹氏への合同インタビューを全文掲載! 先日発表されたばかりの『モンスターハンター:ワールド』とのコラボについてもふれていますので、ぜひ最後までご覧ください。

『ファイナルファンタジーXIV』

――まずはじめに、現在一番熱いコンテンツである“絶アルテマウェポン破壊作戦”のお話を聞かせてください。ついに突破チームが複数現れましたが、そのことについての感想をお願いします。

吉田直樹氏(以下、敬称略):今回、ちょっと新しいギミックというか、バトル全体として解き方にトラップを仕掛けてみました。簡単に言うと、特定条件を満たして蛮神を覚醒させます。その状態で蛮神を倒し、とあるバフを得た状態で先に進まないと全滅するように作っています。

 当然ながら、最初は皆さん気付かずに単純に3蛮神を倒して、その先の特定フェーズに全滅してしまう。「どうすればいいんだ? そもそも攻略方法が違うのでは?」となり、最初にさかのぼってタスクを組み直すことになります。これが果たして「スゴイことを考えるな」と思ってもらえるのか、逆にストレスと感じられるのか。それは、蓋を開けてみるまでわかりませんでした。

 たまたま昨日、“絶アルテマウェポン破壊作戦”を配信している人からインタビューを受けたのですが、そのことについて彼らに聞いてみると「エキサイトだった」「あれを考えついたデザイナーは天才だ」と言ってくれまして(笑)。これは、ワールドファーストレースをしているチームにしか感じられない体験です。攻略動画が出てしまえば、あとはそれをトレースするだけですので。そこを大きく評価してもらえたのは、とてもよかった点だと思っています。

『ファイナルファンタジーXIV』

――実装から5日という前回よりも早いスピードでのクリアとなりましたが、攻略速度に関してはどう感じましたか?

吉田:前回の“絶バハムート討滅戦”は、とにかく長いというフィードバックが多かったんですね。20分弱ノーミスで戦い抜かなければいけない難易度だったので、それが精神的に辛すぎると。そのため、今回はバトル時間を16分ぐらいに収めたうえでテンポの早いバトルに切り替え、どう"解法を見つけるか"ということにフォーカスしています。

 そういう背景もあり、我々としては単純なクリアまでの期間は比較していません。今回、ワールドファーストのチームが5日ちょっとでクリアしてくれました。5日と言っても、彼らは寝てないのですが……。正直、終わってくれてよかったと思いました(笑)。僕は、「2週間以内にクリアしてくれないと、プレイヤーのモチベーションが続かない」と思っていたので、「どんなに長くなっても2週間以内にクリアしてほしい」と願っていました。

――5日という長さは、わりと想定していた範囲に収まったということですか?

吉田:いえ。あのレベルの難易度になると、どれぐらいの速度で攻略されるか我々も想定できません。想定に関しても、日数というより時間で考えますね。結局、彼らは攻略に5日で88時間かけたそうですし。人間の生活の範囲で割り算してみてくださいよ(笑)。

――攻略部分では、タイタンの“グラナイトジェイル”の対象者がツールでわかってしまうという欠点が発見されてしまいました。PLLでも少しお話されていましたが、もう少し詳しくお話してもらえますか?

吉田:要は、サーバーに送られてくるパケットをいち早く、わかりやすく表示されてしまったんですね。本当でしたら、あそこは誰にきたかをプレイヤーが判別して、考えて動くべき場所なんです。それがジョブアイコンで表示されるようになってしまっていたので、僕らが想定していたよりも判別が楽になってしまいました。

 ただ、バトル序盤の出来事なので、攻略全体への影響が大きいかと言うと、そこまでじゃないかなと思っています。ただ、それを使っている人とそうでない人で難易度差が少し出ているので、そこを今後はもう一段ケアする方法を考えていきます。正規パケットを単純に表示しているにしろ、パケットの送り方や送るタイミング、エフェクトでの感知の仕方などに手を加えて、プログラムでツール側が混乱するようなものを作る感じでしょうか。

――さきほどの“特定の手順で攻略しないと、のちに全滅する”という仕掛けですが、このような仕組みにした意図を教えてください。

吉田:『FFXIV』のコンテンツに関しては、各レイドを担当するデザイナーをまず決めます。それで決まった担当デザイナーが、“絶アルテマウェポン破壊作戦”のコンセプトを切る段階で、「今回はその場その場のギミックを対処して進むものだけにするのは避けたい」と話してきました。

 前回の“絶バハムート討滅戦”では、解法を見つけたら1フェーズ進み次で全滅する。また、その解法を見つけ……という1歩ずつ攻略していくものだったんですね。ですが、今回に関しては「その要素プラスして、全体をとおした謎解きがあるコンセプトにしたい」と。

 今回の"絶"を担当しているのは、『FFXIV』で最初のレイドである“大迷宮バハムート:邂逅編”の1、2、4、5層を1人で作った開発者です。この“大迷宮バハムート:邂逅編5”で戦うツインタニアも、「最後の最後で、序盤に拘束具をどこに落としておくのかが重要になる」という、最初のギミックが最後に影響してくる仕組みなんですよ。彼は、そういうタイプの開発者なんですね(笑)。

 もう一度、「今だからこそ、そういう作りにしたい」ということだったので、「たしかにおもしろいね」ということでデザインが始まりました。

――差し支えなければ、担当した方のお名前を教えてもらえますか?

吉田:いずれ何かのイベントで出す機会があると思いますので、それまでは伏せておきます。さすがに、本人の了承なく話してしまうのは気がひけるので(笑)。

――これまで、何かしらでお名前が出てきたことはありますか?

吉田:いえ、出てないと思います。ただ、『新生編』から、バトルのほぼ全体を設計している天才ですよ。“大迷宮バハムート:邂逅編”を作るときに、『FFXIV』で最初のレイドデザインは彼が作るべきだということで担当することになったぐらいです。

 『新生編』以降もそうですが、すべてのEXPやILデザイン、ILに対するサブパラメータの設計などを1人でこなしています。『FFXIV』開発チーム内のコア中のコアですが、バトルに関してはネガティブな意見も多くなりがちなので、表に出していないだけです。あとは、これを言うと荒れるかもしれませんが“極ラムウ討滅戦”と“極王モグル・モグXII世討滅戦”の生みの親でもあります(笑)。タンクの玉拾いやモーグリのHP調整など、これらも解法を重視するタイプですね。

――ちなみに、現在は奇数パッチごとに"絶"が追加されていますが、今後もその間隔でリリースしていくのでしょうか?

吉田:もともとは、“奇数パッチで毎回"絶"を”と思っていたのですが、コミュニティの反応では「2パッチに1回はキツすぎる」という感想が多かったので、1つの拡張パッケージに2回ぐらいでいいのかなと考えをあらためました。なので、ここで一旦お休みかなと思っています。

 ただ、今現在でも“絶バハムート討滅戦”に挑戦されている方もグローバルでもたくさんいらっしゃるので、制限解除の対象にはせずにおいておきます。あまり数を増やしすぎても、「いつになったら次に行けるんだ」という感覚をうけてしまいますしね。

パッチ4.3、メインストーリーの反響を振り返る。NPC視点で物語を体験できる“RPGモード”の可能性

『ファイナルファンタジーXIV』

――パッチ4.3についてですが、物語の反響も含めてプレイヤーの評価の高いアップデートだったと思います。配信後の感想として、どう捉えられているかを教えてください。

吉田:今回、メインストーリーに関して、公式からの情報を伏せさせていただいていました。プレイヤーのみなさんもそこを汲み取ってくださって、ボス蛮神の名前をずっと隠してくださっていて、とても感動しました。逆に隠されすぎていていつ公開すればいいのか、僕らもわからない感じになっていましたが(笑)。

 パッチ4.0のラストで、ヨツユが死なずに記憶を失って生きていたという部分に対しては、「どう落とし前をつけるつもり?」「『FFXIV』は人を殺せなくなってきているのでは?」といった批判的な声も多かったんです。ただ、それを僕らは今回の流れを決めて作っていたんですよ。

 パッチ4.3前は、「ヨツユ関係が1パッチでどうかなるとは思えないけど」という意見も拝見していましたが、フタを開けてみたら「MMOなのに、ヨツユの心情をここまで描いて終わってくれるとは思わなかった」といった感想を多くフィードバックしてもらえました。

 これらの感想を見たときに、『ファイナルファンタジー』シリーズとしてストーリーにそれだけ思い入れや感動を持ってもらえて、とてもうれしく思いました。そして、ホッとしたと同時に、真っ先にスタッフへ「よくやった」と話をしに行ったのを覚えています。

――今回のツクヨミでパッチ4.Xの物語をしめくくるというのは、どの時点で決めていたのでしょうか?

吉田:パッチ4.0のラストを決めた時点で「誰が生き残って誰が死ぬのか」というのが確定するので、その時点でそれぞれの結末は決めています。パッチ4.0の開発中には、パッチ4.3の内容は決まっていましたね。

――『蒼天編』と比べるとモノトーンと言いますか、ノワールと言いますか。物語が暗いイメージがあります。

吉田:僕がそのタイプだからというのがあるのかもしれないですが、今の世の中は勧善懲悪ではないという考えなんですよ。敵にも己の正義があって、歴史や教育によってその正義は変わっていきます。ヨツユはドマの人たちから見ると悪逆非道の行いをしていますが、彼女がそうなってしまった原因もドマにあるという。

 今回描きたかったテーマは、「罪はいつか報いを受けなければならない。だが、記憶を失っている場合の罪はどこにあるのか?」というものです。パッチ4.0のラストシーンでゴウセツが言う「天はまだ、拙者に成すべきことがあるとでも申すか?」というのは、そこからパッチ4.3の最後のシーンまでつなげてあります。開発チームは、それをよく表現してくれたと思いましたね。プレイヤーのみなさんも、そこをきちんと感じ取ってもらえてうれしかったです。

――ゴウセツといえば、パッチ4.3のトレーラーには見事にだまされました。

吉田:ヨツユの心の葛藤がバトルとして表現されているというのは、新しいゲーム体験にできたと思います。あそこは、プレイヤーがゼノスに多くのダメージを与えていればゴウセツが、足りなければゼノスが勝ちます。

 つまり、ヨツユの中にあった最後の心の拠り所がゴウセツで、その幻影がゼノスに打ち勝つことでヨツユの攻撃に迷いが出ると。そこのバトルデザインは、本当によくやってくれたと思います。あそこの負ける側のシーンをトレーラーで公開すれば、ゼノスは復活しているし、ゴウセツと鍔迫り合いしているし、ゴウセツは斬られるしで、“一体、どうなっているんだ!?”という引きになるなと(笑)。

――まさかゴウセツが生き残るとは(笑)。

吉田:あと、ラストではMMORPGでNPCを操作させるという、我々としては初めての試みを用意しました。ちなみに、僕らは"RPGモード"と呼んでいます。あれも一切情報を出していないサプライズだったのですが、あれも「よかった」という反応が多かったです。

 また、今回は海外のインタビューも受けさせていただいたのですが、海外ユーザーからも“あれにはものすごくビックリしたしすばらしいアイデアなので、今後も期待したい”と言ってもらえました。『FFXIV』はMMORPGではありますが、MMORPGだからというルールに縛られたゲームを作っているわけではありません。『FF』らしくストーリーを楽しめるための仕組みや遊びというのは、これからも新しいものを開発していきたいと思っています。

――少し話はズレますが、ツクヨミつながりで。E3会場では、バトルチャレンジ“ツクヨミ討滅戦”を用意されていましたが、クリア率は40%ほどだったとお聞きました。

吉田:実際の『FFXIV』内でもそうなのですが、"ノーマル"と"極"のギミックが大きく違うんですよ。"ノーマル"のほうは、初動で即戦闘不能攻撃が入っているので、そこがネックになったのか、そこで一気に崩れて失敗していたのかなと思っています。

 僕も実際に「極は余裕だったな」と思って、もう一回"ノーマル"に行ったら、何度も戦闘不能になってしまいました。ストーリー上で重要なボスだったので、「ノーマルでも多少難易度高くてもいいよ」とは言ってあったので、この難易度で間違いではないのですが。

 ただ、初動戦闘不能があるボスをイベントで使うには、ちょっと厳しかったのかもしれません。ILでは突破できない部分ですしね。とはいえ、せっかく並んでまでプレイしてくれているので、今日はスタッフがある程度ヒントを出して勝率を上げようという話をしています。

――パッチ4.3のラストは、次の拡張パックに続くストーリーが始まりつつ、アルフィノの戦いもあり、そこで出てくるNPCについてもディスカッションができるという、とても濃い内容でした。ここまで濃い内容にした理由は、何があるのでしょうか?

吉田:これは、「パッチ4.0で始まった『紅蓮のリベレーター』という物語が、今あるしがらみからは解放された」ということの現れですね。ヨツユに関しては、死という結末ではありますが、彼女の恨みつらみというところからゴウセツに触れることで、それらか解放されたと思っています。

 このように、いろいろ終わったがゆえに、「何もわからないけど、次何が始まるんだろうね?」よりは、「次もスゴそうだな! どうなるんだ!?」のほうがワクワクしてもらえる。そう思ったので、今回はパッチ4.3“月下の華”というメインクエストが終わったあとに、さらにまだクエストがあるという作りにしています。

 しかも、アルフィノが帝国側に行くという驚きの展開で(笑)。そこで終わってもよかったのですが、その途中でハプニングがあり……。僕らとしては、新しい提示の仕方ですよね。

――本来ならば、あれはパッチ4.4に入る内容ですよね。

吉田:そうですね。ただ、あれによって「アルフィノたちがどうなるのか?」や「解放し終わった光の戦士や暁たちがどうなっていくのか」、さらに「この2つがどうクロスオーバーするのか」というところは、今まさにいろいろ想像が膨らむところだと思います。

 僕らは、その先の話は決めてありますが……予想を裏切ってかつおもしろいというのが一番いいことだと思っているので、また新しい『FFXIV』をお見せできるんじゃないかなと。

――ラストに登場した"影の狩人"についてですが、よく調べれば人物を特定できるぐらいまで情報が出ています。その多さから「逆にミスリードを誘っているのでは?」と心配になるほどですが、なぜあそこまで情報を出したのでしょうか?

吉田:僕は、ヒントを出すときはわかりやすくあるべきかと思っていて。中途半端な情報だと、"違った予測が広まって、それがさも定番かのようになってしまう"ことがあります。そして、それが外れたときに驚きよりもガッカリ感が強くなってしまうケースも少なくありません。

 その点で言うと、ラストに登場したアラミゴ解放軍の格好をしたエレゼンに対して、「オルシュファンに見えるんだけど……」という意見がチラホラあって、「えっ、どうしてそう見えるの!?」というのがありました。正直、「もっと違う容姿にすればよかったな」と(苦笑)。

 そういうのを避けたいということもあって、わかりやすいところはわかりやすく期待感を持ってほしいんです。ただ、パッチ4.3のラストの影の狩人のラストカットが僕のところにきたときは、"衝撃のラスト→つづく"という形にもなっておらず、あまりいいものではなかったんですよ。

 白い仮面が無駄に多く映っていて、「それはダメだよ」と。「最後の最後に、白い仮面に寄って終わる」じゃないと”と、最後は僕がかなり細かく指定して作り直しました。あの白い仮面に最後フォーカスすることで、「この人物が誰なのか」というのをより強く印象付けられたと思います。なぜ、あそこにいるのか。なぜ、仮面を集めているのか。そういうところを注目してほしいですね。

――ちなみに、解放軍のエレゼンは、どこかで登場している既存キャラクターなのでしょうか?

吉田:いえ、明確に完全に、新キャラクターです。

――そのあたりでプレイヤー間の話題になっていることといえば、影の狩人のこともあり「次の新ジョブはガンブレード関係では?」という期待混じりのウワサもありますが、そのあたりはいかがでしょうか?

吉田:僕はパッチ5.0があるとも言っていないので、何をおっしゃっているのかわかりません(笑)。

――パッチ7.0ぐらいまで企画していると聞いたことがありますけど(笑)。

吉田:それは『FFXIV』が続けば、という前提ですから。

――逆に、ガンブレードはプレイヤーが使えるものになることはあるのでしょうか? 影の狩人は、ものすごく強い技を放っていましたよね。

吉田:あれは、武器性能ではなく本人性能が高いからですね。

――ちょっと気が早いですが、パッチ4.4のストーリーに関しては、どういったことを期待してよいのでしょうか?

吉田:テレビドラマで言うと、新シリーズの第一話だと思っていただければ。ただ、みなさんの予想がどこまで迫るか……『FFXIV』チームを超えるのは一筋縄ではいきませんので、その部分に注目してもらえればいいかなと。

――引き続き、アルフィノで進んでいくイメージですか?

吉田:いえ、あくまで主人公は光の戦士なので、フォーカスされるのもプレイヤーになります。ただ、光の戦士たちが進むべき方向は「ガレマール帝国なのかな?」というのが明確に見えているはずです。それを踏まえて、「そもそもガレマール帝国とは何か?」というところは、もう一段深掘りしていくつもりなので、そこは期待していてください。

――今だと、ハイデリンの世界地図では帝国周辺が雲に覆われています。あれが少しずつ晴れていくイメージでしょうか?

吉田:さあ、どうでしょう?

――では、コンテンツに関して私たちが期待していいものを、お話できる範囲で教えてください。

吉田:まだパッチ4.4情報出しをしていない状態ではありますが、多くの人が期待しされているとおり“次元の狭間オメガ”の最終章が公開されます。これはパッチ4.4のメインではないですが、かなり大きめのサプライズも用意しています。オメガが物質世界に敵を作り出して、疑似トーナメントをやらされている状態なので、「果たして次は何をぶつけてくるのか?」「いよいよオメガ本体が乗り出してくるのか」「アルファとはいったい何なのか?」というあたりは、全部キレイに大団円を迎えるつもりです。かなり大きな見どころの1つなので、ぜひ期待していてください。

――これは、パッチ4.4メジャーアップデートで実装ですか?

吉田:パッチ4.4同時の実装になります。

――パッチ4.Xでは、リセやヨツユ、フォルドラといった名キャラクターが登場しましたが、彼女たちの衣装を入手する手段の実装予定はありますか?

吉田:リクエストはいただいていますが、もうちょっと時間をおきたいかなと。まだパッチ4.3が終わったばかりですし、常に数百、数千の新規ユーザーが増えてストーリーを進めている最中です。加えて、『モンスターハンター:ワールド』とのコラボが発表されたことで、「じゃあやってみようかな」というTwitterも拝見しています。その人たちがNPCの格好をした人たちに囲まれると冷めてしまう可能性もあるというのが、少し期間を空けたい理由ですね。

 彼らは膨大にあるコンテンツをどんどん進んでいける、どんどん遊べる状態にありますよね。それは、『新生編』からの現役プレイヤーの経験以上に、すごく楽しめる状態だと思うんですよ。パッチなどでストッパーがかかるわけではないでので、ノンストップで行けるんです。"テレビドラマを一気観している"感じに近く、『ファイナルファンタジー』はストーリーあってのゲームということもあり、その邪魔は絶対にしたくないんです。

――そういう話を伺っていると、新規ユーザーに対する配慮には最大限の注意を払っているんだと感じます。

吉田:僕は、MMOは新規ユーザーの流入が止まることが終わりにつながると考えています。それが止まることが悪いとは言いませんが、それで一旦ゲーム・コミュニティとして完成してしまうので、そこはこれからも意識していきたいですね。

――ウルダハをナナモといっしょに回るシーンがありましたが、そのときに「『新生編』のときと比べると、ウルダハにいるプレイヤーの数が少ないなぁ」と感じました。これはMMOの宿命ですので必然なのですが、それはそれとして膨大な既存エリアを再活用するアイデアはあったりしますか?

吉田:じつは、僕の場合、再活用とは反対の意見を持っているんです。これは既存プレイヤーへの配慮になるのですが、やっぱり新しい冒険がしたいはずなんです。初期エリアは、基本的に「俺たちが平和にしたじゃん」という場所なんですね。「俺たちが戦うステージはここじゃないよね」と。

 それを、わざわざリワードで呼び戻して、言い方は悪いですけど、やりたくもないF.A.T.E.をまたやるのかと。そういうものは、開発の都合を現役プレイヤーに押し付けることになるので反対なんです。もちろん、賑わってほしいのでシーズナルイベントをできるだけ三都市で行うといったことは、今後もやっていこうとは思いますが、普段の三都市に人が少ない状態はそれはそれでいいのかなと思っています。

――『FFXIV』では、過去エリアの再活性化はあまり考えていないということですか?

吉田:スタートが都市1つだった場合は、やってもよかったかもしれません。ですが、『旧FFXIV』からの"ストーリーも登場人物も違う三都市から始まる"という要素を、1つにまとめ直すというのは拡張パック1つぶんを超える労力が必要なんです。

 それを既存ユーザーが喜ぶのかというところまで考えると、再開発は難しいですね。それをやるよりは、『新生編』のサイドクエストをもっと短くしてストレートに進めるようにするなど、もっとメインクエストだけで進められるように改修したいとは思っています。

『モンスターハンター:ワールド』とのコラボは7月に報酬などの詳細な続報アリ! 形態は8人用のバトルコンテンツ

――『モンスターハンター:ワールド』コラボについてですが、これはメジャーアップデートに絡める形なのか単独実装なのか、どちらなのでしょうか?

吉田:もう準備はキレイに進んでいるので、時期がきたらフラグをオンにするだけですね。

――『モンスターハンター:ワールド』のコラボとは、同時にスタートする想定でしょうか?

吉田:できるだけタイミングは近くにして、両方一気にコミュニティが盛り上げる状況にはしたいと話していて、スケジュールの最終調整をしています。そのあたりの詳細は、来月には両社からきちんと告知をさせていただきます。そこまではお待ちいただけたらと思います。

――PLLのときに、吉田さんから"8人"という発言がありましたが、バトル形態は討伐戦方式なのでしょうか?

吉田:明言はいたしませんが、期待は裏切らないと思います。まぁ、トレーラーに写っているメンバーのロール構成が2タンク、2ヒーラー、4DPSになっていると思いますので……。来月になれば、フル版のトレーラーも公開できるはずですので、ぜひお楽しみに。

――フル版というのは、どのあたりまで見せてもらえるのでしょうか?

吉田:基本的には、どういったバトルが楽しめるのか、どういうリワードが得られるのかという期待感を高める要素は、すべて盛り込んだものになる予定です。

――7月の時点で全容がわかるという感じなんですね。

吉田:そうですね。参加条件などももっと明確にしておかないと、"いつまでに準備しておかないといけないのか"という感じになってしまうので、そこはキチンと出すつもりです。

――グラフィックスエンジンについて、PLLのQ&Aのキャラクターメイキングに関連して少し言及されていました。そこで話されていたように、新たに変えていく可能性はあるのでしょうか?

吉田:PLLでお話したとおり、仮に10年続けていくことになった場合には、どこかでその時期がくるだろうなと思います。そのタイミングで、引き続きプロデューサー兼ディレクターとして僕がいるかどうかはわかりませんが。

 ただ、ここからさらに10年進むのであれば、現状のグラフィックスだと中途半端になってしまう気がしています。というのも、『FFXIV』のウリの1つに"キャラクターがカワイイ・カッコイイ"があるので、そこが失われると新規のプレイヤーに対して打ち出していく柱を失ってしまうと予想されるからですね。

 なので、「10年続けていくのであれば、膨大なコストをかけてでもやるほうが『FFXIV』のためになるだろう」という思いが僕のなかにはある、というだけです。そのときこそ、描画やキャラクターモデリングを変えると思うので、もしかするとキャラクターメイキングの幅は、そのときに再設計して広がる可能性はあるかなと。

――あるとしても、パッチ5.0とかいうタイミングではないということですね。

吉田:そんなレベルじゃないですね(笑)。また、すごい人数のプログラマーを入れて描画を作ることになるでしょうし、リソースもイチから作り直しになります。拡張パックとか、そういう単純な話ではないですね。それこそ2年がかりでの準備とかの規模になります。ただ、この先10年以上続いていくことになれば、その可能性も出てくるであろう、というレベルの話です。

――PLLでコンパニオンアプリの配信時期を発表されましたが、もう少し情報をいただけませんか?

吉田:かねてから話しているとおり、無料版は全プレイヤーに使っていただきたいと思って作りました。ゲーム内のフレンド、FC、リンクシェルのメンバーが自動的につながって、チャットでやり取りができるようになっています。

 スマートフォン側のカレンダー機能と連動させてあるので、外部ツール・サイトに頼らず自分たちが持っているスマートフォンとこのアプリがあれば、全員同じカレンダーでスケジュールの共有をすることも可能です。つまり、エオルゼアの世界にログインしていなくても、エオルゼアの仲間とつながっていられるというのが、大きなコンセプトの1つになります。

 もう1つの軸になってくるのが、アイテムの整理です。『FFXIV』は莫大なリソースのあるMMOで、みなさん莫大な数のアイテムを所持しているので、アイテム整理にものすごい時間を消費してしまいます。ヘタをすると、整理だけで一日のプレイ時間を丸々使ってしまいかねない。

 なので、『FFXIV』にログインしているときは、コンテンツを遊ぶ。そのためにログインできないタイミングで、このアプリをとおしてアイテムの整理を行ったり、リテイナーの荷物を整理したり、マーケットを見てアイテムを買ったりできるようにする。これらが基本の機能として入っています。

――タップ操作でアイテム整理ができるのでしょうか?

吉田:そうですね。それらとは別に、ログインボーナスとして毎日1つクポの実が手に入るので、これを使ってモーグリにお願いしてマーケットでの売買に使ってもらう感じです。基本的に、少しずつたまっていきますので貯めて使っていただいてもいいです。より活発に活用したいという方はゲーム内通貨が用意されていますので、そちらを購入していただいてもOKです。

――ゲーム内通貨の購入にはお金がかかるのでしょうか?

吉田:はい。相当高度な技術を使っているうえに、テクノロジー的にも新しいグーグルのクラウドプラットフォームを使うなど、かなりの投資をしているので……。ただ、何度も言いますが全プレイヤーに使ってほしいので、無料機能をとにかく充実させています。それでも足りない人のみ、ゲーム内通貨でマイクロトランザクションしてくださいという考え方です。アプリを入れていただけるだけで、無料テレポ先が増えるなどの恩恵があります。

 我々としては、とにかく使ってもらいたいので、無料でもいいからアプリをインストールしてもらえれば、ゲーム内のボーナスが得られるようになっています。僕らが儲けたいわけではなく、『FFXIV』を効率よく楽しんでもらうために作っているので、ぜひ使っていただきたいです。

 ちなみに、配信時期は7月下旬予定で、現在は最終デバックをしています。あとは、GoogleさんやAppleさんの審査を通るかどうかというところですね。この審査に手間取ると、1~2週間伸びるかもしれません。

――秋から“FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL 2018-2019(以下、ファンフェス)”がスタートします。これも『FFXIV』の新しいシーンに向けたものかと思いますが、現状の『FFXIV』において最も重要だと思っている・挑戦すべき課題は何だと感じていますか?

吉田:これまでのインタビューでも何度かお話していますが、僕はパッチ4.0リリースでピークアウトする可能性もあると思っていました。

 MMORPGという市場のサイズや、ゲーマーの時間の使い方といったものを考えたときに、"たくさんのプレイ時間を割かないとおもしろさがわからない”ジャンルのゲームということもあって、「そろそろピークアウトしてもおかしくはないな」と考えていました。

 ですが、開発チームもマーケティングPRチームも世界中で努力をして、稼働4年目にして最高課金者数を大きく更新するという大きな成果を出せました。これに関しては、僕が少し見くびっていたのかなと。それは市場としてもそうですし、僕らが積み上げてきたものに関してもそうです。これらにはもっと可能性があると感じたので、ここまできたら行けるところまで行こうという考えのもと、改めて次の大きな流れを計画し直して進んでいます。

 まずは、今年の"新生5周年"というスペシャル感を、プレイヤーのみなさまにお届けしていきます。そのうえで、次のサプライズを含めた「どこまで進化するんだろうね」というところをお見せできればなと。

――“ファンフェス”の内容について、何か話せることがあれば教えてください。

吉田:ラスベガスは、世界中のコミュニティチームが動いているので、中身に関しては固まってきています。僕はどちらかというと、そっちはマネージャーに任せて、山ほどある別件で苦労しています(苦笑)。PLLでもこぼしちゃいましたけど、もう5カ月しかないんですよね。ひと山は超えたのですが、それでもけっこうしんどいです。

――大きな変更点としては、無料配信になったことには驚きました。

吉田:前回までは、"オンライン配信ですべて見られる"というのは“ファンフェス”にきていただいた方に対して申し訳ないなという観点から、配信も有料チケットが必要という形をとっていました。

 それと同時に、“ファンフェス”に来場してくださった人にインゲームアイテムをプレゼントすると、これはこれでチケット争奪戦になってしまう。この問題は有料視聴を使ってくれれば、“ファンフェス”の空気を味わいながらインゲームアイテムももらえる、というのがもともとのコンセプトでした。

 しかし、この有料視聴には、有料視聴までの導線の悪さ、ライブの音質の悪さ、アーカイブの見にくさなどの多くの問題もありまして。2回目の“ファンフェス”で改善しようとは努力したのですが、うまくいかなかったんですよ。

 それも踏まえて大きな企業パートナーさんをあたってみていたのですが、個人情報の扱いが難しくて……。どうしても有料視聴というところを、スクエニアカウントとの紐づけがうまくいかなかったんです。であれば、いっそのこと考え方を根本から変えて、より多くの人に“ファンフェス”の空気感を味わってもらって、音楽ステージだけはチケットを購入して足を運んできてくれた人がライブで楽しむものという考え方にしました。

 つまりは、音楽ステージ以外は、全世界で楽しめるようにして、音楽ステージをある意味有料化した感じです。アイテムに関しては、チケットを購入できなかった方のためにモグステーションで販売すれば、丸く収まるんじゃないかなと。とりあえず、今回はその方式でやっていくことにしました。これでうまく回るようであれば、もし次回があった場合は似たようなシステムにしていくと思います。

――E3の終わりに、海外初のオーケストラコンサートを公演されますが、それに対する期待などがあれば教えてください。

吉田:昨年の9月に日本で行ったときに、「最初で最後かもしれないから思い切ってやろう」と祖堅(祖堅正慶氏。本作のサウンドディレクター)に話をして、1年以上の準備をへて実現しました。そのとき、みなさんの熱気や感動してくれている様に、僕らがビックリさせられたんですよ。

 東京フィルハーモニー交響楽団のみなさんも、「こんなに熱量のあるコンサートは初めてだ」と言ってくださるぐらい、僕らがエネルギーをもらったコンサートでした。そんな熱量のあるコンサートを、アメリカの方に味わってもらえるということが、何よりも楽しみですね。

 このE3の直前に“KINGDOM HEARTS Orchestra -World Tour -”の公演があって視察に入らせていただいたのですが、やはりファンの熱気というのがすばらしかった。『FFXIV』は音楽とゲーム体験がすごくリンクしているゲームだと思っているので、それをドルビー・シアターという最高の舞台で共有できるということが、何よりも楽しみですね。このインタビューの裏で、祖堅はリハで一生懸命やっていると思いますけどね(笑)。

――ちなみに、セットリストは東京から変えるのでしょうか?

吉田:いいえ、変えていません。僕らの本業はゲーム開発者なので、僕らとしてはゲーム体験が最優先なんですよ。祖堅が音楽イベントをやる条件も、「開発スケジュールに遅延が出るぐらいならやらなくていいよ」ですから。ですが、それが芯のところですよね。ゲーム体験のクオリティがそれで落ちてしまったら、本当に意味がなくなってしまいますし、祖堅も常々自分自身で言っていることです。

――最後に、メッセージをお願いします。

吉田:今回、またE3というアメリカ最大のゲームショウに『FFXIV』が元気に戻ってこれているのは、世界中の光の戦士に支えられているからだと思っています。5年たっているゲームにもかかわらず、この3日間たくさんのメディアの方にもインタビューしていただけました。その予定を入れてくれているPRチームもそうですし、それに応じてアメリカまできてくださるメディアの方も本当にありがたいと思っています。

 今回E3の場で、日本を代表するIPの『モンスターハンター:ワールド』とのコラボを発表することができました。

 『FFXIV』も『モンスターハンター:ワールド』も、"世界"という水準で見たときにもっと努力してシェアを広げられるだけの魅力を持っています。……むしろもっと努力をしてシェアを広げていかなければならないぐらいの意気込みで"世界"と戦っていくタイトルです。

 そんな2タイトルがコラボして「俺たちもっとやっていくぞ」という前向きなアピールを発信できたことが、なによりうれしいです。そして、"新生"してから5年たった今、それができる位置に来ることができたという実感も新たに得ました。

 これからも「相変わらず『FFXIV』はクレイジーなことばっかりするな」と思ってもらえるように、まるで今年新作として発売したかのように、いろいろな施策を展開して行きたいと考えています。また、5周年をみなさんといっしょにお祝いしながら、次の進化に向けて走っていきたいと思っているので、これからも宜しくお願いします。

『ファイナルファンタジーXIV』

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