2018年6月15日(金)
SIEは、PS4用ソフト『Ghost of Tsushima(ゴースト オブ ツシマ)(仮称)』のメディア向けセッションを実施しました。
『Ghost of Tsushima(仮称)』は、数々の世界的ヒット作品を手掛けた開発会社・Sucker Punch Productions(サッカーパンチプロダクションズ)の最新作。元寇によって混乱の極みにある1274年の日本・対馬を舞台にしたオープンワールドのアクション・アドベンチャーゲームです。
メディア向けセッションには、本作のクリエイティブディレクターであるNATE FOXさん、アートディレクターのJASON CONNELLさん、プロデューサーの片見龍平さんが登壇。6月11日にロサンゼルスで開催された“PlayStation E3 2018 Showcase”で公開された最新映像の日本語音声版をベースに、作品にかけるこだわりをや特徴を解説してくれました。
▲左からJASON CONNELLさん、片見龍平さん、NATE FOXさん。 |
まず語られたのは、本作では自然の表現や“雰囲気”を非常に大事にしているにとても力を入れていること。草が風になびく様子や、その中にたたずんでいる主人公・ジンの見え方などにも注意を払っているとのことです。
戦闘部分は、PV序盤にある3人(増援を含めると6人)の蒙古兵との立ち合いをベースに説明されました。“クラシックな侍の立ち合い”をいかに表現するかに気を使っているそうで、見ている側としては、特に間合いやタイミング、体さばきのスピードなどからそれをうかがうことができました。PVなどを見てもわかるように、本作の立ち合いには独特の緊張感があります。
また、斬った際の血しぶきがどう飛んで、何にどう当たるかもち密に計算しているとのことです。また生と死をかけた戦いにどう現実感を持たせるかを考え、血・泥・鉄の3つにはとりわけこだわりを持っていると説明しました。
泥は汚れやぬかるみ、鉄は武器の重みや武器がぶつかり合った際の音や反動などに現れています。ちなみにUIについては発表会やセッションでは入っていないものの、実際のゲームには入る模様です。
さらに、サッカーパンチ作品ならではのこだわりとして、プレイヤーにはマップ内のどこでも自由に行けるようにしていることを明かしていました。
そんなマップを縦横無尽に駆け巡る主人公・ジンは、侍としての技能を修めつつ、生き残るための技術も習得した男です。蒙古襲来によって、彼は、それまでとは違う戦い方を覚えなければならなかったそうです。この辺りは、蒙古兵に気付かれずに寺に侵入したくだりからうかがうことができました。
物語としては、単純な戦争の話ではなく、蒙古襲来という非常事態の中で、ジンがどう生き抜いていくかが見どころになると制作陣は語ります。本来は良心的である人も、非情にならなければ生きていけない世界であり、ジンはさまざまな事情を抱えた人たちとともに歩んでいくことになります。
ここでセッションは終了。個人的に『Ghost of Tsushima(仮称)』の映像を見ていて印象に残ったのは“光の表現”でした。PVを見てもらえばわかるように日光が当たらない森の中などでは、不自然に明るくなることはありません。
PV終盤のマサコとの立ち合いなどでもわかるように、逆光になるとキャラクターの表情はまったくうかがえず、完全にシルエットになってしまいます。ここが猛烈にかっこよく、さらにそのあと火矢によって光源が増え、マサコの表情が次第にわかるようになるあたりも含めて、とても秀逸なシーンです。
またセッションの最後には、質疑応答の時間も設けられました。そこで明らかになったことを以下に記載します。
――なぜ、日本のサムライをテーマにしようと思ったのでしょうか?
宮本武蔵の物語などを見て、田舎を巡っていろいろな人を助けるというサムライの設定は、オープンワールドにはぴったりだと感じました。
――デモの冒頭で描かれていた雲の流れは、“ダイナミック・ウェザー”を用いたものでしょうか?
そうですね。昼夜や天候のサイクルは“ダイナミック・ウェザー”で表現されています。
――タイトルの“ゴースト”に込められた意味を教えてください。
このゲームで表現したいのは、“サムライ(人間)の変化”です。従来の戦闘スタイルでは、蒙古軍に1人で対抗することはできない。そこで戦術を変え、自分自身の存在を消し、相手が恐れる“亡霊”のような存在になることで打開していく……そういう姿を描きたかったんです。
例えば、寺院で隠密行動をするシーンがありました。それは通常のサムライの動きではないですが、そうやってサムライの殻を破り変化していくわけです。
――本作には多くのバトルシーケンスがありますが、戦闘を回避することも可能なのでしょうか?
本作の世界はとても広大オープンワールドなので、たくさん戦闘することもできますし、戦闘以外の要素もたくさん盛り込まれています。プレイヤーがこの世界に没入し、自分がどこにいるのか忘れてしまうくらい、美しい自然を感じていただきたいと思います。
――史実では島民が殺戮されたとされていますが、本作ではいくつも村があります。その辺りはどのように解釈されているのでしょうか?
これはもちろんオリジナルのフィクション作品です。史実にインスピレーションを受けて作っていますが、歴史上の出来事にすべて沿っているわけではありません。
また、歴史上で蒙古軍は対馬を蹂躙したわけですが、それまで対馬には村がありました。本作で描いているのはちょうど侵攻されている時なので、村はまだ残っている状態となっています。
――ゲーム内の時間の流れの早さは、現実とどれくらい違うのでしょうか?
時間経過は現実世界とは異なりますし、昼夜だけでなく天候なども自然に変わっていきます。
また、エリアごとにテーマを持たせようと意識しました。深い森のような場所では“嵐が訪れそう”、“雨が降りそう”という感じで、ダークな雰囲気が広がります。もちろん、それとは対称的にきれいな光が差す日中のシーンもあります。
――現在明らかになっている敵は人間のみですが、“ゴースト”と名付けられた作品だけに、妖怪などが出てくるのか気になりました。
ここで言う“ゴースト”というのはリアルな人間であり、蒙古の侵攻で生き残ったサムライが、亡霊になって蒙古軍を呪うことを指しています。
これまで『inFAMOUS(インファマス)』などを作ってきた私たちなので、体内からレーザーを発射するようなゲームを期待されるのもわかりますが(笑)、モンスターや妖怪といった類のものは登場しません。
――サムライ文化のリサーチにはどれくらいの時間、および労力を費やされたのでしょうか?
私たちがこのゲームを思いついた当初は、それこそ映画や小説を見てインスピレーションを受けていました。本当の意味で勉強し始めたのは、制作を決断するタイミングになってからですね。
それからしばらくは、本気で歴史を学びました。実際に日本へ赴いて、JAPAN Studioの方と一緒に日本を巡りましたし、いろいろな博物館を見て回り……もちろん対馬にも行きました。
その中でも、刀鍛冶の現場は印象的でした。「刀がどうやって作られるのか?」「刀の鍔とは何か?」などを一から教わり、そうしてリアルな情報を集めることができたんです。そうした面では、SONYファミリーの一員になりJAPAN Studioから日本文化に対するフィードバックをもらえたことが幸運でした。
例えばモーションキャプチャー。当時のサムライの立ち回りや戦術を知っている専門家から、正しい姿勢について助言をもらいまして。実際にそれを組み込むことで、タイムマシーンで当時に遡ったような、リアルな世界を作り上げることができたんです。
――リアリティを追及される中で、困ったことや苦労されたことはありますか? 個人的な要望ですが、マサコには薙刀を振っていて欲しかったです(笑)。
当時の女性の武器といえば薙刀が定番なのですが、そこはゲーム設計などの面もありまして……。ちなみに、刀や弓矢以外にもたくさんの武器が出てきまして、その中から自由に選べる仕様です。
――マサコの名前が出ましたが、彼女はどんな人物で、ジンとはどういった関係性なのでしょうか?
マサコはひと言で表すと“いい人”、“心が美しい人”です。ただ、この事件によって道を外れかけてしまい、ジンが道を正してあげることになるかもしれません。
それにしても、デモ映像にマサコを登場させられて本当によかったです。彼女の登場シーンによって、ゲームの雰囲気をきちんと伝えられたと思います。
――戦国時代などに比べるとマイナーな“蒙古襲来(モンゴル帝国の侵攻)”にこだわった理由をお聞きかせください。
大きく分けて3つの理由があります。まず、対馬というのは島だったこと。オープンワールドゲームを作るうえで島というのは理想的だと考えています。
2つ目は、日本に対して初めて火薬が使われた象徴的な戦いだからです。ゲームメカニクスの観点からすると、爆弾が登場するのはとても魅力的なんです。
そして、敵を斬りまくるのに適したシチュエーションだったのが最後の理由です。大規模な侵攻であることに加え、ふるさとを襲う人間は斬っても構わないとシンプルに考えられますから。
もちろん、蒙古軍を単なる悪役にしているわけでは決してありません。蒙古軍にも誇りや矜持があり、それらをきちんと見せることが必要不可欠でした。
――東洋と西洋ではヒロイズムの定義が異なりますが、そのバランスはどのようにして取られたのでしょうか?
まず、忠誠心や勇気といった心理に当時との齟齬がないよう、詳しい方にストーリーを見てもらいました。それをもとに、ゲームプレイを通じて、ストーリーを進めている実感が得られるよう作りました。
とはいえ、私たちは東洋の生まれではありません。そこで、私たちが気付けない心理や感覚については、JAPAN Studioや詳しい方々を頼り、何度もフィードバックと改善を繰り返して調整しました。異なる文化のゲームを作るのは大変ですが、やはりSONYファミリーの一員であることに救われたと思います。
――戦闘でスローモーションになるシーンがありました。あれはプレイヤーが発動させられるものなのでしょうか?
スローモーションになるのは戦闘システムの1つです。プレイヤーとしての成長要素を用意してあり、剣術のスキルを磨くとそういったことができるようになります。
また、E3デモではUI(ユーザーインターフェース)を入れていませんでしたが、実際には各種UIが出てきます。ただ、この世界に没入していただくため、できるだけ最低限のものにする予定です。
――キャラクターのきめ細かい表情が印象的でしたが、新たなエンジンを構築されたのでしょうか?
コア自体は長い間利用しているもので、私たちが出すゲームにはすべてこの内部技術を適用しています。ただし、作品ごとに改善を繰り返してはいますね。『inFAMOUS Second Son』の時なども一気に改善させました。
現在では、このプロシージャル技術による空をリアルに表現できるまで改善されました。例えば、地面に3万枚くらいの落ち葉が蹴ると舞い上がったり、大量の雨が降ると地面がぬかるんだり……、長年そうした表現を目指し続けてきました。
――そうすると、デモ映像にあった山火事の影響が残り続けると?
丘から山火事が見えたところですね。あれは「あの場所に行けますよ」と示すものなので、火が広がって島が全部燃えてしまう心配はありません。
――自然の中には動物がいましたが、その中でおもしろいものはいますか?
対馬にはいろいろな動物がいるのですが、今はまだお伝えできません。ただ、なぜデモに動物を入れているかというと、やはり自然と動物は切り離せない存在です。
この世界観を表現するうえで、鹿がいて、鳥が飛んで、そこに命がある。そうした存在が現実味を増してくれているんです。目的地へ向かっている時にも「こんな場所があって、こんな動物がいたな」と、この世界のすべてを思い出に残してもらいたいと思っています。
――ジンの目的を教えてください。対馬の村を解放すること、それとも侵攻軍を全員殺すことでしょうか?
一番の目的は、蒙古軍を対馬から撤退させることですが、たった1人の人間に出来ることではありません。だからこそ、蒙古軍を脅かす“ゴースト”という存在になる。そうして、「亡霊がいるぞ」と思わせることが、島民が立ち上がることにつながるわけです。
――作中の風景や建築物は、実在したものを再現しているのでしょうか?
そのまま再現したものはありませんが、実在した場所や建物にインスパイアされているので、似たロケーションは存在しています。対馬のことをリサーチしていると、写真を見るだけで素晴らしい場所がたくさんあり、そんな素晴らしいロケーションを表現しました。
その点も、今回は私たちにとっては野心的な試みでした。息をのむような美しいシーンをゲームの中にどれだけ盛り込めるか? そして、それに合ったストーリーを作っていけるか? あらゆるシーンで挑戦の連続でした。
Copyright 2017 Sony Interactive Entertainment LLC. Ghost of Tsushima, inFAMOUS First light, inFAMOUS Second Son, inFAMOUS Festival of Blood, inFAMOUS 2, inFAMOUS, Sly 3: Honor Among Thieves, Sly 2: Band of Thieves, and Sly Cooper and the Thievius Racoonus are trademarks of Sony Interactive Entertainment LLC. Developed by Sucker Punch Productions LLC.
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