2018年7月8日(日)
『ライフ イズ ストレンジ』をさらに楽しむキャストインタビュー。大津愛理さんの“クロエ観”とは
切なさを生むドラマチックなストーリーとゲームならではの臨場感、カメラワーク演出などの秀逸さが評判を呼び、世界的な高評価を得たアドベンチャーゲーム『ライフ イズ ストレンジ』。
その前日譚となる『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』が6月7日に配信となり、今も多くのプレイヤーが物語にのめり込んでいます。今回は、そんなプレイヤーの方々に、本作をより楽しむためのインタビュー企画をお届け。今回は、レイチェル役の大津愛理さんと、『ライフ イズ ストレンジ』シリーズローカライズディレクター・西尾勇輝さんの対談をお送りします。
“⇒キャストインタビューその1。Lynnさんの“クロエ観”に迫る”はこちら
大津愛理さん |
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▲リマックス所属。代表作は『メルヘン・メドヘン』のマリヤ・ラスプーチン役や『ハイスクールD×D HERO』のレオナルド役など。 |
西尾勇輝さん |
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▲スクウェア・エニックスのローカライズディレクター。ローカライズを手掛けた作品『ライフ イズ ストレンジ』シリーズのほか『オーバーウォッチ』、『ディアブロIII』など多数。 |
――大津さんは前作でもボルテックス・クラブの受付役・コートニーと、ドローンを飛ばしていたステラを演じられていましたが、西尾さんとのお仕事歴はけっこう長いのでしょうか?
大津愛理さん(以下、敬称略):そうですね。長いです。
西尾勇輝(以下、敬称略):はじめて現場でお会いしたのが前作『ライフ イズ ストレンジ』の収録でした。もう2年以上前ですか。
大津:はい。さらに吹き替えのゲームに出させていただくのも前作がはじめてでした。
西尾:知りませんでした(笑)。
大津:音声波形に合わせてお芝居をするというのもはじめてでしたね。
西尾:音声波形について説明すると、吹き替えのゲームは、基本的に英語ボイスの尺に合わせて日本語ボイスを録らないといけないのですが、そのとき英語ボイスの音声波形をスタジオのスクリーンに映し出して長さの目安にするんです。
大津:みなさん本当に優しくて、キャラクターの解説も丁寧にしてくれました。その結果……たしかあのときって、かなり収録を早めに終わることが出来たんですよね。
西尾:ええ、かなり巻けましたね。
大津:以降もちょくちょく吹き替えの現場にお呼びいただけるようになり……とても感謝しています。
――ほぼほぼリテイクがなかったと西尾さんからお聞きしました。キャラクターの本質をとらえるのが相当に的確なんでしょうね。
西尾:上手だと思いますよ、本当に。リテイクも少ないです。ただ、トレーラーでレイチェルが叫んでいるシーンは何度も録り直しました。
大津:はい、あれはたくさんやらせていただきました。西尾さんが演者側に近い言葉で「もっとこういう感情にしてみよう」とか「今度はこういう気持ちを乗せてみようか」とか、しっかり導いてくれるので、とても収録しやすかったです、
西尾:僕もプロの音響ディレクターではないため、知ったかぶりをしてそれっぽい指示を出してもダメだと思ったんですよ(笑)。どちらかというと「ここはこういうシーンなのでレイチェルはこういうことを考えている」ということを説明し、演技については大津さんにお任せする形にしました。
――その演技指導のスタイルのおかげで、レイチェルというキャラクターに近づけたのかもしれないですね。
西尾:どうなんでしょう?(笑)
大津:どうなんでしょう?(笑)
――(笑)。レイチェルに関しては、西尾さんからどういうキャラクターなのかレクチャーはあったのでしょうか? 大津さんは前作のゲームもプレイされているんですよね?
大津:はい! ただ、自分でプレイすると気持ちが入りすぎてしまうので、友達のプレイを見ながら、あーだこーだ隣でしゃべっていました(笑)。
レイチェルは、台本を読むまでは、キャラクターたちが話すイメージのままでとらえていました。みんなから好かれる優等生で、スクールカーストの上位にいる女の子で、ビクトリアとは違うベクトルの女王様だと思っていました。
ただ、西尾さんから、レイチェルはカーストのなかにはいない逸脱した存在で、“レイチェル”という特別なカテゴリがあるイメージだと説明を受けました。それを聞いて「これはまさか、前作で描いていた優等生のイメージだけではないんじゃないか」とあらためて気付かされました。
その後、台本を読んでいくことで「おかしいぞ」と思うようなセリフもたくさんでてきて……私は前作では、彼女の外面しか見ていなかったけど、本質は違うところにあるということがわかりました。
――収録はゲーム内のエピソード順に行われたのでしょうか?
西尾:はい。今回はあえてゲーム内の時間軸と同じように収録にしました。先に後半のセリフを教えてしまうと、その部分に演技が引っ張られてしまうと思ったんです。
その時点でレイチェルが知り得ない情報を大津さんが知ってしまうと、演技に矛盾が出てきてしまうので、あえて伝えないようにしました。とくにエピソード1を収録したときは、まだエピソード2やエピソード3の情報はお渡ししていないんですよ。
大津:はい。そうでしたね。
――ということは……エピソード1の最初とその後とで、レイチェルのイメージが変わる部分があったと思うんですが、大津さんご自身が台本を読んでキャラを掘り下げる際「どうしてレイチェルがこういう様子になるのか」という部分でかなり悩まれたりもしたのでしょうか?
大津:おっしゃるとおりで、最初は前作のイメージが強すぎて、レイチェルというキャラクターがどういう女の子かわからなかったんです。前作のイメージは捨てなければいけないとは思っていましたが、なかなかそこまで踏み切れず、収録の当日になってしまいました。
そこに西尾さんが気付いてくれて、先ほどお伝えしたとおり、「彼女はスクールカーストの外の特別なカテゴリ」という話を聞いて録り直したんです。だから、最初こそ大変でしたが、アドバイスを聞いてからはだんだん「レイチェルだったらこう考えるだろうな」とか「ここは突き放すけどここは甘えるな」と、彼女のことが理解できるようになってきました。
西尾:軌道に乗ってからは早かったですね。トレーラーの収録を終えたときに、合致した手ごたえがありました。
――そのトレーラーでの演技をへて、レイチェルというキャラクターが確立した、と?
西尾:そうですね。大津さんがトレーラーでレイチェルを理解したのと同じように、僕もトレーラーの大津さんの声を聞いたおかげで、その後の台本が書きやすくなりました。
大津:そうなんですか!? ありがとうございます!
西尾:レイチェルは、さまざまな出来事をへてああいう性格になっているため、演じるのは難しかったと思います。
大津:どうしてもレイチェルに気持ちが乗り切れていないときや、もっと上を目指せそうなときは、先に収録しているクロエのセリフを聞かせていただいたりしました。それで「Lynnさんならこう演技するよね。だったら私はこう返そう」とイメージを膨らませました。
西尾:そこは我々の確認のためでもあるんです(笑)。別録りをしている以上、日程がかなり離れることもあるので、不安になることがあるんですよ。「このシーンはLynnさんはどういう演技だったっけ?」と。
大津:お忙しいですもんね(笑)。
西尾:エンジニアの方に、会話通りに並べていただいてチェックしたりしていました。でも……クロエの声を聞くか聞かないかで、演技のしやすさもだいぶ変わったのではないでしょうか?
大津:はい。ぜんぜん違いました。
西尾:こちらのアドバイスだけでは知りえない情報がLynnさんの声に乗っていますからね。できれば、いつも両方の演技を照らし合わせながら収録したいのですが。
――ゲームの場合、やはり基本は一緒に収録することはないのでしょうか?
西尾:ゲームでも、アニメのように一緒に収録してみたいんですけどね。ただ、スケジュールの問題もありますし、ゲームの声を収録するスタジオではスペース的にも難しいんです。
あと、やはり映像がないとやりづらいと思うのですが、『ライフ イズ ストレンジ』の場合は、選択肢によってカットも口の動きも、表情すら変わってしまうので、その映像をすべて用意するのは現実的ではないんですよ。きっと日本語版の発売が3年後とかになっちゃいます(笑)。
大津:あぁ~。それは(笑)。
西尾:ただ、トレーラーや特定のシネマティックシーンであれば、複数人の同時収録も不可能ではないので、いずれチャレンジしたいと思っています。
大津:やってみたいですね!
――今回はオーソドックスに別録りでの収録になりましたが、大津さんはLynnさんのクロエの声を想像しながら演じられたのでしょうか?
大津:そうですね。Lynnさんとは吹き替えやアニメの現場でちょくちょくお会いするのですが、彼女はお芝居の組み立て方がとても繊細なんです。こちらがわかっているつもりで「Lynnさんはこう演じるだろうな」と想像しても、まったく違う感情を乗せてきたり、想像以上のお芝居だったりするんです。
今回の『ライフ イズ ストレンジ』も、前作のクロエの芝居を見ているとはいえ、3年前の話なので、どう演じてくるのか本当にわかりませんでした。ただ、トレーラーで本作のクロエの声は聞いていたので、「今回はこんな感じなんだ」と理解し、その演技を自分の中で咀嚼しながら、そのクロエに対するレイチェルを演じていました。
とはいえ、先ほどのように、収録を終えたものを組み合わせて聞かせてもらうと、やはり自分の想像を超えた演技をしているので、「すごいな」「自分も負けられないな」とちょっとした意地みたいなものが出てきますね。
――声を聞いてクロエのイメージは変わりましたか?
大津:はい。トレーラーのときは突っ張っているクロエの印象が強かったんです。つらいことはつらい、嫌なことは嫌だと全面に出してしまう女の子のイメージでした。
ただ、シナリオが進むと、クロエがレイチェルの面倒を見るんですよ。「ん? これはなんだ?」となりまして(笑)。「いや、このレイチェルは面倒くさくないか? でもクロエはそれに付き合うのか。そうか……これLynnさんどう演じるかなあ」みたいな感覚は自分のなかでありました。
そして先に進むにつれて、Lynnさんの熱の入れ方……“大事にするがゆえにそっけない感じ”、なんていったらいいかな……こちらのパーソナルスペースに踏み込んで来るものの、チョンと触ってすぐ逃げていく野良ネコのような感じがセリフで聞こえてきて……。それを聞くと「そうか、そりゃレイチェルも彼女を手なずけたくなるよな。でもたまにその“チョン”がうっとうしくなって突き放したくもなるよな。わかるわかる!」と、だんだんレイチェルの感覚にのめり込んでいくようになりました。
もしかしたらLynnさんの演技は、実際にゲームをプレイするとさらに想像を超えたものになっているかもしれませんが、私のなかのクロエの印象は、どんどんレイチェル視点に寄っていきましたね。初期のつんけんしたイメージではなく、かわいい野良ネコのイメージになっていきました。なんか、うまく表現できなくてすいません(笑)。
西尾:言い得て妙だと思いますよ。
――なるほど、演じながらお互いの役を考えているからこそ、より相手の気持ちも考えた感情のこもった演技になっていったのかもしれませんね。
大津:なって……いけていましたか?
西尾:最初はクロエほうがセリフのストックが多かったのですが、主人公は収録量が多いので、途中で追い越してレイチェルのほうが先に録り終わったんです。そのため、立場が逆転して、今度はLynnさんの収録で大津さんの声を聞いてもらって演技してもらいました。
大津:恥ずかしい(笑)。
西尾:どちらもお互いの演技を聞きつつ収録したことにはなりますね。だから、少なくともLynnさんは大津さんと同じイメージを抱きながら演技していたはずです。ただちょっと、大津さんはLynnさんのことが好きすぎて、バイアスのかかったイメージになっているような気がしますね(笑)。
大津:(笑)。いや、本当にLynnさんのことが好きなんです!
西尾:本当に好きですよね(笑)。
大津:だって彼女のお芝居、すごくないですか!?
西尾:わかりますよ。「ああこの人、天才なんだな」と思ううちの1人です。
大津:天才ですよ!
西尾:でもちょっと好きすぎて怖い(笑)。
――もともといつから知り合いだったのでしょうか?
大津:何年か前に、吹き替えの現場でご一緒したのが初でした。ただ、私はその前からLynnさんが出演している海外ドラマの大ファンだったんです。
だから、はじめて会ったときに、そのキャラクターの名前で呼んでしまったんです(笑)。「はじめまして」や「よろしくお願いします」の前に「好きです!」と言ってしまったのですが、Lynnさんはクールなので「あ、はい、どうも……」と返されてしまいました。
西尾:(笑)
――レイチェル役が決まったときの率直なご感想をお聞かせください。
大津:レイチェルは、『ライフ イズ ストレンジ』にとって大事なキャラクターなので、最初は信じられなかったです。だから、レイチェルという同名の別キャラクターかと思いました(笑)。ただ、いただいた原稿を読むとあきらかにレイチェルだったので、「これはまずいぞ」と(笑)。
レイチェルは、ユーザーさんそれぞれが自分なりのイメージを持っていて、その答えが本作で出る形になると思うんです。しかもその声を演じるのが私ということで、プレッシャーはありましたね。
ただ、不安を打ち消す以上のよろこびもありました。収録は別でしたが、アルカディア・ベイのキャラクターを演じるキャストさんたちもみんな好きだったので、またこうしてアルカディア・ベイで過ごせるのはうれしかったです。マネージャーさんにも「ありがとうございます」とお伝えしましたし、事務所のなかでも「私レイチェルなの!」と言って回ってしまいました(笑)。
――プレイヤーのなかにも大津さんのなかにもそれぞれレイチェル像はあったと思うのですが、どういう向き合い方をしたのでしょう?
大津:前作の段階では、プレイヤーさんと同じレイチェル像を共有していたと思います。西尾さんからお話を聞いて、そのレイチェル像は捨てることになり、だれも見たことがない、想像していないレイチェルも出してみたくなりました。
外面の部分に関しては、彼女自身、演技がうまい女の子なので、親や教師、学友に対しての顔は、前作をプレイしていたユーザーさんの知っているレイチェルで演じようと思いました。
では、彼女の本当の姿に関してはどうなのだろうと考えたときに、ユーザーさんをいい意味で裏切れるようなレイチェル像を意識して演技しました。とはいえ、収録のときは気持ちが先行してしまうことも多く、計算して演技できないこともありました。
――完全に役に入り込んでいたんですね。
大津:体当たりで演じさせていただきました。収録が終わっても、レイチェルを演じたときの気持ちが抜けずに情緒不安定になっていました。前作も濃かったですが、本作もとても濃かったですね。たぶん、本作をプレイしたら前作をプレイしたくなるし、前作をプレイすると本作をプレイしたくなります。本当にスルメゲームだなと思います(笑)。
――それをふまえて大津さんにとってレイチェルはどういった魅力を持つ女の子だと思いますか?
大津:ひとことで表すことができないので難しいですね。二面性とも違うし、多重人格とももちろん違うし、本当にとらえどころのない女の子なんです。
そして、そのことを自分自身でもなんとなくわかっていると思うんです。本当の自分をいつも探していて、クロエといっしょにいるときは安心しているけど、その安心すらも本当の安心なのか確信できず、いつも不安を抱えています。
――本人への光の当てかたによって、その部分が見えたり見えなかったりするんでしょうね。
大津:私のなかでも「結局どういう女の子だったんだろう」と思うときがあります。ユーザーさんにも、実際にゲームをプレイして、悩んでみてもらいたいですね。
――なるほど。相方のクロエに関しては、レイチェル視点でみるといかがでしょうか?
大津:クロエには羨望を抱いていると思います。学校とは関係のないアウトローなところとか、レイチェルには持っていないものを持っているところとか、自分もそうなりたかったというあこがれの対象になっているのかな、と。
ただ、レイチェルは、その感情を表に出す女の子ではないんです。きっと、そこで感情が出るのはビクトリアのような子で、レイチェルは違うと思います。だから、クロエを好きだけど憎らしく思っているところもあったりして、ひとことでは言い表せない複雑な感情を持っていると思います。……うーん、ちょっと難しいですね。わからないや(笑)。
西尾:レイチェルから見たクロエは、今、レイチェルが感じている苦悩を“唯一共感してもらえるかもしれない存在”なのかもしれません。
大津:他人に見せていない面を見せても大丈夫かもしれない、という希望はあったと思います。
――クロエもレイチェルもカーストの外にいる存在なので、ひかれあう面もあったのかもしれません。
西尾:どちらもカーストの外にいる人間で間違いないですが、レイチェルは、仮にカーストに当てはめると上位なんですよね。
大津:生き方がうまいですよね。
西尾:一方のクロエは、下のほうにいる人間で、本人も気にしている部分があります。クロエは、学生たちを羊に例えて「私は関係ない」と主張しますが、はたから見れば彼女もそのなかにいるでしょう。逆にレイチェルは、誰から見てもスクールカーストからは外れていると思います。
――レイチェルに比べるとビクトリアなどはわかりやすいですよね。
西尾:そうですね(笑)。素直ですよね。
大津:ビクトリアはいい子ですよ!
西尾:言動や行動を見ると、とてもいい人間とは言えないですけど、とてもわかりやすい女の子です(笑)。前作では、プレイヤーの選択しだいで彼女の本音を見ることができましたが、今回も選択しだいで物語への組み込まれかたが変わってきますね。まぁ、あいかわらずいい人間ではないと思います(笑)。でも、彼女も彼女なりの想いがあって学校生活を送っています。
大津:本当にいろんな生徒が通っていますよね。この学校。
――そういった点も『ライフ イズ ストレンジ』の魅力だと思いますが、大津さん自身はこの作品のどこに魅力を感じていますか?
大津:私自身、海外のゲームというとゾンビを撃ったり、特殊エージェントになって戦う作品が多いと思っていたので、こんなに平和そうなゲームが出ていることに驚きました。
でも台本を読んだり、実際にプレイしてみるとまったく平和じゃなくて、いろいろな事件が起きて心がどんどん疲弊していくし、どの選択肢を選んでもドツボにハマっていきますし……。
前作は時間を戻すっていう非日常的な設定はありましたけれど、すごくこちらの心をえぐってくるというか、とても共感のできるゲームだなという感覚が強かったです。いつのまにかプレイヤー自身もアルカディア・ベイの住人のような感覚にとらわれるんですよね。まったく自分とかけ離れた世界ではない、というところに共感できるのではないかと思います。とても繊細な作品です。
――本作についてはいかがでしょうか? プレイヤーにはどういった部分をみてもらいたいですか?
大津:そうですね……本作はキャラクターのほとんどが、本音をそのまま口に出さないんです。現実と同じで、建前を言ったり本音を混ぜたりして駆け引きをしながらしゃべるんです。そして、とくにレイチェルはその部分が多くて、字面通りのセリフが少ない。
1回のプレイだけでは、文字通り受け取ってしまうこともあると思いますが、裏の意味や、裏の裏の意味を込めてしゃべっている言葉も多いので、繰り返しプレイして真意を見つけてもらいたいですね。
――なるほど。西尾さんはセリフのディレクションをするときに気をつけたことはありますか?
西尾:『ライフ イズ ストレンジ』は、アニメでもなく外国映画でもない独特な雰囲気の世界なんですよね。大津さんに限らず、キャストのみなさんには演技が過剰にならないように、自然な演技になるように気をつけてもらいました。キートン先生だけは別ですが(笑)。
大津:(笑)。
――演劇的口調のキャラクターですからね(笑)。
西尾:彼のように、喜怒哀楽の感情の1つを引っ張ってきて、オーバーに演じると、むかしの映画の吹き替えみたいになってしまうんです。それを避けるため、演じている感情はそのままに、トーンを落としてもらうことが多かったです。そういう話は収録中よくしていましたね。
――感情は込めつつ、大きくなりがちな感情のトーンを落とすことによってほかの感情もうかがえて、より深みが出てくる……ということでしょうか。
西尾:すごくよく言えばそういうことです(笑)。
――一方で、本作には悪夢のなかにいるレイチェルなど、特殊な登場の仕方をするシーンなども多いですが、そういった場合はガラッと変えて演じようと思いましたか?
大津:そうですね。ただ、レイチェルであることの根っこは変わらないので、その点は迷わないようにしました。そのなかでどう芝居を変えようか試行錯誤しましたね。とにかく、自分のなかにあるレイチェルを出そうと思いました。
――レイチェルを演じることでご自身の生活や考え方に変化などはありましたか?
大津:ウジウジするようになりました(笑)。
西尾:それはだめなんじゃないですか?(笑)
大津:いや、もともと典型的なO型だったので、やることなすことおおざっぱだったのですが、外面と内に秘める部分を分けて制御できるようになり、慎重に物事を考えられるようになりました。
インタビューなども、気持ちが先行してしゃべってしまうことが多かったのですが、頭のなかで整理してからしゃべれるようになりました。あとは、レイチェルがとても複雑な役だったので、ほかの役でもセリフを深読みをするようになりましたね(笑)。
――収録中、とくに思い出深かったことはありますか?
大津:じつは収録中に誕生日を迎えたのですが、そのときに西尾さんが、わざわざ休憩中にお花屋さんに行ってくれて、「これ、プレゼント」って一輪のバラをプレゼントしてくれまして(笑)。
西尾:あらためて聞くとキザッぽい行動だとは思いますね、はい(笑)。
大津:帰り道ニヤニヤしちゃいました。
西尾:なんかすいません……(笑)。
――素敵なエピソードをありがとうございます(笑)。最後に本作を楽しみにしているプレイヤーにぜひひとことお願いします。
大津:みなさんの心の中にいろいろなレイチェルがいると思いますが、いい意味で、思い描いていた通りのレイチェルと、「こんなの聞いていないよ!」と感じられるレイチェルを表現できていればうれしいです。
ぜひ何度もプレイしてレイチェルのいろいろな魅力を見つけてください。あとは私とLynnさん……じゃなかった。レイチェルとクロエのラブラブっぷりにも注目してみてください。よろしくお願いします。
――ついでではないですが、Lynnさんへのメッセージをぜひ!
大津:最初の収録ではクロエの声に引っ張っていただいて、本当にありがとうございますという気持ちがまず一番です。途中からは、収録の進行が逆転していたということで、私の演技で大丈夫だったかなという心配がありつつ……。
作品のなかで、クロエとレイチェルの仲よし具合が出てくれたらいいなと思っていますので、これからも、クロエとレイチェルとしてももちろんですし、大津とLynnさんとしても仲良くしていただければと思っていますので……どうか見捨てないでください! 愛してるよLynnちゃん!
――本日はありがとうございました!
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データ
- ▼『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム(ダウンロード版)』
- ■メーカー:スクウェア・エニックス
- ■対応機種:PC
- ■ジャンル:ADV
- ■配信日:2018年6月7日
- ■価格:3,800円+税