2018年8月10日(金)
『ワールドエンド・シンドローム』をプレイ。恋愛ADVの果てに切なさと心温かな余韻を感じる“死”の物語
アークシステムワークスとトイボックスのタッグで生まれたPS4/PS Vita/Nintendo Switch用の完全新作『ワールドエンド・シンドローム』が8月30日に発売! 事前にプレイする機会を得たので、その感想をお届けします。
なお、感想は序章のネタバレを含むため、真っさらな状態でゲームを楽しみたい人は、ページを閉じて発売日をお待ちください。
『ワールドエンド・シンドローム』は、魅果町(みはてちょう)という田舎の海町を舞台に、死者がよみがえる伝承“黄泉人伝説”をテーマにした物語が展開するテキストアドベンチャーです。
リプレイ性に富んだ作品で、よみがえった死者は誰なのかというミステリー性と、高校生の主人公となって恋愛を楽しむラブコメ要素により、何度も周回したくなるゲームになっています。
そして、未海ちゃんのメイド服姿は何度見てもキュンとします。って、ああ! 未海ちゃんの「……変態」というセリフが聞こえそう!!
▲ヒロインの1人、甘奈未海のメイド服姿。彼女の魅力は後ほど語ります。 |
ワーストエンドから始まる物語とゲーム体験
100年に1度、死者がよみがえって人々の中に紛れ、町に災いをもたらす……。
物語と世界観の根底にある“黄泉人伝説”。その伝承で語られる100年目の年に、主人公は魅果町へ引っ越してきます。
魅果町は、伝承とかかわり深い名家の存在、住宅地や駅前に飾られた黄泉人避けの風ぐるま、人を間引くと言い伝えられる川など、さまざまな人やモノが黄泉人伝説とつながり、不思議な雰囲気が漂う町です。
▲黄泉人を避ける風ぐるまが、暮らしの中で消えずに残っています。なお、背景は静止画だと1枚絵に見えますが、さまざまなものがアニメーションしていて、生きた世界を感じることができます。 |
作中に登場する小説ワールドエンドでは、魅果町が黄泉と現世の堺に位置する“世界の果て”だと表現され、そこから生まれたラジオ番組や映画も、世界観や物語の中で大きな存在となっています。
▲魅果町では、ワールドエンド・シンドロームというローカルラジオ番組が流行中です。耳元でささやくような声が、ちょっぴりホラー。 |
魅果町の不思議な世界へさらに深く引き込んでくれるのが、主人公が通う魅果高校の教師であり、小説ワールドエンドの作者でもある山城香織です。
胸の谷間をちらつかせながら死生観を語るという、本人のミステリアスな魅力と相まって、そのセリフの数々は魅果町に漂う“死と生の狭間”という雰囲気を引き立ててくれます。
▲カオリンこと山城香織は、セリフも容姿も色気たっぷり。ある一点から目が離せず、出会ってもなかなか顔に視線が行きません(笑)。 |
▲なお、小説ワールドエンドは人気アイドルの主演で映画化するほどの人気ぶり。撮影は舞台である魅果町で行われることになっています。 |
そして、香織が立ち上げた民俗学研究会、通称“ミス研”の活動を軸に、黄泉人伝説にまつわる事件やドラマ、ヒロインたちとの恋愛といった物語を体験していくことになります。
序章を終えた後の本編では、ヒロインたちの水着姿や唇に、2人の時だけ見せる女の子らしさに、ドキドキする夏を楽しめるはず!
……と最初は思ってプレイしていたんですよね。
……序章を終えたらイチャイチャタイムだぞ、と。
……けれど、死者は町に紛れていたのです。
……夏の終わりに、黄泉人は――。
ギャー! なんということでしょう。黄泉人の引き起こす惨劇によって、本編をプレイすることすら叶わず。黄泉人がどんな存在か、まざまざと見せつけられます。
衝撃のシーンに口を開けて呆けたまま、頭の片隅で思いましたね。「俺の夏を、俺のワクワクを返せ!」と。
▲水着のヒロインと仲よく過ごす夏が待っていたはずなのに……。 |
けれども、思えばここが主人公に対する共感のスタート地点、ある意味で本当の物語の始まりでした。
主人公は、姉を交通事故で亡くしており、その原因は自分にあると自責の念に駆られて生への執着をなくしています。精神的なドン底にある彼は、比喩的な意味で生ける屍と言え、黄泉人と対照的な存在でしょう。
▲生きることに後ろ向きな言葉や態度がたびたび見られ、その危うさを周囲から指摘される主人公。彼の苦悩と心の成長が、ドラマのポイントになっています。 |
そしてプレイヤーも最悪の展開“ワーストエンド”を経験して、ある意味で主人公と同じドン底に並びます。
最悪から始まって真のエンディングを目指し周回するゲームプレイは、主人公の心の成長とリンクして、ゲーム体験とストーリーの一体感を味わえました。正直、最初は主人公がネガティブすぎて共感しづらかったのですが、ラストはすっかり彼の目線になっていましたね!
▲プレイを重ねることで、生命力の源である気(オーラ)が累積していく要素も存在します。最初は微々たるものですが、真相に近いシナリオをプレイするころには、かなりの量に。 |
▲なお、主人公のオーラをためると、ご褒美(?)として、ちょっぴりエッチな妄想を夢で見ることもできます。 |
ヒロインのどこにグッとくる? 5人それぞれの魅力
再び序章をプレイすると、今度は8月を舞台にした本編へ進むことができ、恋愛アドベンチャーとしての側面を含めた魅果町の夏を体験できます。
本編のプレイ方法は、さまざまなスポットから行き先を選んでイベントを発生させ、必要なフラグを立てて物語を進めるオーソドックスな形です。
▲折り目まで描かれた地図から行き先を選択。1度訪れた場所は、次のプレイ以降に誰と会ったかが記載されます。ただし、イベントの発生条件によっては会えないことも。 |
攻略対象となるヒロインは、主人公と同じくミス研に所属するメンバー5名。彼女たちがどんな魅力を備えているのか、客観的なプロフィールは公式サイトに記載されているので、ここでは筆者の主観と色眼鏡に基づいて紹介したいと思います!
楠瀬舞美(くすのせまいみ)
声優:東城日沙子
主人公が同棲することになる従兄妹。ガサツな性格だけれども、それこそが彼女の魅力と言えるでしょう! 日常会話ではアグレッシブなツッコミに笑い、時折見せる女の子らしさには、そのギャップにドキドキしてしまうキャラクターです。
5人の中では比較的普通の女の子に近く、家で見せるだらしない姿のおかげもあって、おそらく一番身近に感じられるヒロインでしょう。
▲後輩の神代沙也からは“姐さん”と慕われる舞美。姉御肌と言うより男っぽい性格で、たまに甘えると「らしくない」と言われてしまうほど。 |
音無雪乃(おとなしゆきの)
声優:伊藤静
舞美と意気投合し、一緒に暮らすことになる週刊誌の新人ライター。ミス研には山城香織の計らいで特別に参加し、メンバーの中では20歳と最年長です。同じ大人でも魔性の魅力を持つ香織に対し、雪乃は底抜けの明るさと前向きな性格が、おねーさん的な魅力を引き立てています。
ちなみに、彼女はお風呂が大好きなのですが、覗き見のシーンはなし。残念!
▲思っていることをハッキリと口にしてもトゲがなく、いろいろな人とすぐ仲よくなれる人柄に、コミュニケーション能力の高さをうかがえる人物でもあります。 |
甘奈未海(あまなみう)
声優:井澤詩織
寡黙でクールなミス研の部長。「……クズ」「……ゲス」「……変態」など、ボソッとつぶやく鋭いツッコミが快感になるキャラクターです。彼女から「変態」と10回言われると、“ど変態”というトロフィーをもらえますよ!(笑)
また、兄の経営するカフェでメイド服を着ていたり、意外と無防備なところがあったり、クールな性格とのギャップがたまらないキャラクターでもあります。
▲兄の間違った英才教育によって、自然とメイド服を着こなしてしまう未海。そのかわいさゆえ、カフェは正式な店名で呼ばれず“ミウカフェ”の愛称で親しまれています。 |
神代沙也(かみしろさや)
声優:中恵光城
魅果町を実質的に支配する名家のお嬢様。かなりの努力家で、その家柄と努力に見合ったプライドを持っています。ですが、どこか背伸びしているような部分もあり、そこに妹チックなかわいさを感じるヒロインです。
また、王道的なツンデレ気質の持ち主なので、さまざまなイベントを通じて、思う存分にツンからのデレを堪能できると思います。
▲庶民の生活には疎く、牛丼にツンデレを発揮してしまうシーンも! ラブコメらしいラブコメを楽しめるヒロインかも? |
山田花子(やまだはなこ)
声優:木戸衣吹
主人公の悪友・麻木健介から“逆キラキラネーム”と言われる名前の彼女。分厚いレンズのメガネが素顔を隠していて、ある意味で“お約束”に準じた、ギャップと二面性に魅力を感じるキャラクターです。
自分の居場所がほしい、ありのままの自分を受け入れてほしい、といった誰しもが少なからず抱く思いを持っていて、共感できるところが多いヒロインだと思います。なお、彼女にだけパンチラのイベントCGがありますよ!
▲映画版ワールドエンドで主演を務める人気アイドルの物まねをする花子。その完成度は、ファンの健介が感激するほどのクオリティ……!! |
物語が心に残す余韻を味わえるゲーム
各ヒロインとの恋愛を通じて、登場人物たちが実はどのような人間関係にあるのか、魅果町の裏でどんなことが起きているのか、さまざまな思惑と謎の絡んだ物語の全体像が少しずつ見えてきます。
▲こちらは序章のワンシーン。序章には数多くの伏線や物語のヒントがあるので、じっくりプレイしてみてください。 |
そして、黄泉人は一体誰なのか――?
頭から離れないその疑問。真相を追い求めて、新たなヒロインを攻略する……。クリアを重ねることで攻略できるヒロインは増え、最終的には黄泉人伝説をめぐる物語として、それまでのゲームプレイすべてが1本の線でつながります。
本作は、『名探偵ポワロ』シリーズの最終作から「それは良き日々だった。そう、それは良き日々として今も続いている」という一節が引用されています。
この世を去った主人公のポアロが、相棒のヘイスティングスに遺した手紙の最後に記している言葉で、読者に深い余韻を与える名句です。ミステリーが好きな人であれば、きっとこの説明もいらないでしょう。
物語の結末は、“『ワールドエンド・シンドローム』はきっとこのシーンを描きたかったのだろう”と思える内容で、死んだ人間と生きる人間、それぞれの思いを描いたドラマに心打たれました。
真相までの道のりは、黄泉人をめぐる謎とヒロインとの恋愛でドキドキする展開を楽しめ、最後は切なくも心温かな余韻を噛みしめてゲームを終えられる作品だと思います。夏の終わりにピッタリの物語なので、ぜひプレイしてみてください。
メーカーからのお知らせ
『ワールドエンド・シンドローム』公式サイトでは、魅果高校の制服姿の女性声優さんによるPR番組やコミックを公開しているので、発売まで待ちきれない人はぜひチェックしてください!
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(C) ARC SYSTEM WORKS/TOYBOX lnc.
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