2018年7月23日(月)
セガゲームスが運営する、オンラインゲーム『ファンタシースターオンライン2』開発者へのインタビューを掲載する。
『ファンタシースターオンライン2』は、ネットワークゲームの楽しさや驚き、冒険を再び感じられるゲームとして開発された。今年4月にはNintendo Switchでのサービス『PSO2クラウド』が開始された。
『ファンタシースターオンライン2』シリーズプロデューサー・酒井智史さんとEP5ディレクターの濱崎大輝さんには、この1年を振りかえっていただきつつ、今後の展開についてお話いただいた。
なお、インタビュー中は敬称略。濱崎さんの“崎”は正しくは異体字。
――まずはじめに、この1年を振り返っての感想をお願いいたします。
酒井:6周年の挨拶(あいさつ)“6周年によせて”にも書いたのですが、これまでで一番難儀したというか、苦労の多かった1年だと思っています。結局、自業自得と言えばその通りなんですが、EP5初期からの問題をずっと引っ張ってきてしまって、今もまだ解決しきれていないという部分に関しては反省の一言です。
若干不安にさせてしまったようで申し訳なかったのですが、『PSO2』が国内有数のオンラインRPGであることには変わりないですし、まだまだセガゲームスのなかでもトップレベルの収益を叩き出しているタイトルですので、運営の継続について不安に思っていただく必要はまったくないのでご安心いただいきたいです。
信頼を失ったぶんについては、これからのアップデートで取り戻していくというのが我々の使命であると思っていますし、10周年を目指してやっていくということに変わりはありません。
濱崎:ボク個人としては、何とか6周年を迎えることができてホッとしています。EP5に関しては、昨年の5周年の感謝祭などで事前の期待値が高かった印象があって、EP5に入ったタイミングでのアクティブ数も大きく増加しました。その期待に沿えなかった、期待を裏切る形になってしまったのは本当に申し訳ないと思っています。そこに対してどう改善していくかというところに向き合ってきた1年でした。
酒井:EP5初期に関してはかなり厳しい状態でしたが、ここ数カ月は回復傾向にあります。ようやく持ち直しの兆しは見えてきましたし、これから7周年に向けて新しい展開も考えているので、今後はそこに向けての復活の期間だと考えていただければいいですね。
濱崎:“幻惑の森”や『電撃PlayStation』さんとコラボレーションイベント“電撃!ポリタンカーニバル”など、要所要所ではご好評いただいたコンテンツを配信することができましたので、よかった点と悪かった点、両方を含めて今後の指針が形成できました。大切なところを見直す期間、エピソードになったと感じています。
――期待に沿えなかったというのはバランス面での調整が大きいところですか?
濱崎:ヒーローやダークブラストといったプレイヤー関連のコンテンツの提供方針が、ユーザーさんの期待と合致しなかったのが一番大きかったと考えています。
――ヒーロー単体で見ると、アクションの楽しさや爽快感があってよかったと思います。
酒井:そうですね。ただ、他のクラスが必要なくなってしまうほどに圧倒的に強すぎたのが問題でした。
濱崎:開発とユーザーさんの5年間に対しての考え方の違いが大きかったかなと思っています。ボクたちとしては、次の5年間への新しい指針になるような、一段違ったプレイ感といったものを重視して、“飽き”に対する改善案というか、ユーザーさんへの提案というつもりでした。
ただ、ユーザーさんは“飽き”よりも5年間付き合ってきたキャラクターやクラスへの愛着、思い入れのほうが大きかった。そこが大きなズレにつながってしまったと感じています。
酒井:伝え方も悪かったと思っています。上級クラスやバスタークエスト、ダークブラストも含めて、今後増えていくということを前提に作っていたのですが、その方針を伝えずに配信してしまったのが“画一化”と見られてネガティブな反応に直結してしまいました。
――最近は公式生放送の“PSO2 STATION!”や“アークスライブ!”で先の展開を取り上げることが多くなりましたね。
濱崎:配信が先になりそうなものに関しては「検討しています」くらいに留めていたのですが、実際に動いているものは伝えたほうがいいということがわかったので、生放送などでちゃんと取り上げて答えていくようにしました。
――その反面、装備のアップグレードなど、先を見越して動きたいというユーザーが増えてきた印象があります。
濱崎:そういった動向を推奨するわけではありませんが、他にも多くのコンテンツがあって、できるだけ時間を無駄にしたくないという気持ちはわかるので、難しいところですね。
酒井:“検討中”の使い方も難しいところがあります。生放送での発表内容が見ていない方の間で伝言ゲーム的に伝わっていって本来のものから内容が変わっていってしまうことも多いです。間違った情報に対しては否定してくれる人もいますが、間違った情報のほうだけが大きな声を持ってしまうこともあります。
――バランス調整が続く1年となりましたが、現時点での手ごたえはいかがでしょうか?
濱崎:何とか手ごたえを感じられるようになったというところです。昨年9月末の時点では、すぐに実行できるもののみの対応でしたが、その後のバランス調整やレベルキャップ解放などの中期計画でユーザーさんが満足できるものに近づいてきたんじゃないでしょうか。この後も細かく改善を実施しようと考えています。
――現在、バランス調整で心掛けているのはどんなところでしょうか?
濱崎:ユーザーの皆さんが快適にプレイできるように心掛けています。EP5の当初は、このまま長期運営を続けていくと後々大きな問題になるというところを調整していたんですけど、そこよりは不満が出ているところにどう向き合っていくか、どう調整していくかという部分に最近はシフトしています。
――全体的にオールラウンダー型になって、逆にクラスごとの特色が薄くなってきていると感じます。
濱崎:そこは悩ましいところで、クラスの特性として残しておこうという部分が不満につながったり、今のゲームのテンポに合っていなかったりする部分もあるんですよ。全体の調整としてはオールラウンダーにする流れですが、クラスごとの強みは残すようにしています。
――他のゲームではクエスト内容に合わせてクラスを変えるのが多いのですが、『PSO2』では違うのでしょうか?
濱崎:“このキャラクターはこのクラスでプレイする”と、“ロールプレイ”を重視される方がけっこういて、“このクエストにはこのクラス構成で行ってほしい”という調整は『PSO2』に関しては難しいと思っています。
他のタイトルにはない部分ですが、『PSO2』の強みでもあるので向き合っていかなければならないです。ヒーローの時にそれが顕著に表れまして、そのことを再確認しました。やりたいクラスだけで完結できるというのは、ゲームサイクルとしてはよくない部分もあるのですが、ユーザーさんにはメリットでもあるので。
――上級クラスとして実装されたヒーローですが、今のクラスバランスにおいては抜けた存在ではなく並列になってきた印象があります。今もまだ上級クラスという立ち位置なのでしょうか?
酒井:今後どこかのタイミングで“上級クラス”という名称を変えようと考えています。
濱崎:上級クラスと打ち出した部分への反発と、現状の調整方針もあって、ヒーローや今後配信するクラスに関しては扱いやすい複合クラス的な位置づけにしようと考えています。
――最近のクエストはタイムアタックを意識させる内容が多い印象と感じているのですが、その理由と狙いを教えてください
濱崎:「強い武器を作っても使うところがない」という意見がありまして、エンドコンテンツに類するものを何らかの方法で作れないかなと考えています。EP3あたりから何度かトライしているのですが、あまり定着していません。
これまでには“ソロエクストリームクエスト”などを作ったのですが、多くの人は1回クリアしたら終わりになってしまうのが現状で、そういったところに対してどうにかできないかと出したのが“エンドレスクエスト”です。
――エンドコンテンツですか。
濱崎:エンドコンテンツの類は大きくわけると、スコアアタックか、本当に倒せないような強い敵か、PvPという3つになると思うんです。PvPは多くの人がやるものではないですし、レイドボスは多くの人が参加するので強くしすぎてしまうと不満につながってしまう。
そういった参加の敷居も考えるとタイムアタックに寄ったコンテンツになります。もちろん、ゆっくり遊びたいという人もいるので、“幻惑の森”のような探索系のコンテンツも新しく配信しました。
酒井:“幻惑の森”は、EP5では一番成功したコンテンツだと思っています。
濱崎:配信のタイミングがよかった部分もあると思っています。探索系コンテンツを望む声は多いのですが、繰り返しプレイしていると飽きてしまいます。エピソードの最初に作る場合、エネミーの種類がそれほど多くないのですが、今回はある程度ストックがある状態だったのでボリューム感が大きく変わりました。
――“幻惑の森”は新年の期間限定クエストが初出でしたが、テストを兼ねていたのでしょうか?
濱崎:エネミーの耐久値だったり、戦闘感の土台作りだったりというものは、年末からのキャンペーンクエストや新春のクエストなどを参考にしました。
――過去のコンテンツのブーストイベントも多かったと思いますが、そういったことが理由だったのでしょうか?
濱崎:今までは新規のコンテンツを作ったらそこに誘導して、前のコンテンツは遊ばなくてもいいという方針でした。ただ、6年間という積み重ねもありますし、PS4版以降のユーザーさんは過去のコンテンツを遊んだことがない人も多いです。そういった方には新鮮な気持ちで遊んでいただけますし、以前からのユーザーさんには配信された当時の強さを体感できるバランスで懐かしい気持ちを味わえます。
そういったところも含めて、過去のコンテンツを生かしつつ新しいものにすることにリソースを割くようにしました。今後もそういったコンテンツは増やしていき、古いものも新しいものも楽しめるようにしたいと考えています。
――現在、4章まで配信されているストーリーですが、反響はいかがでしょうか?
濱崎:EP5のストーリーに関しては好評だと考えています。
酒井:今までもそうですが、好き嫌いがけっこう分かれるところはありますね。
濱崎:4章はいわゆる“ギャグ回”でしたが、意外とマルガレータが信念のあるキャラクターで、他の登場人物よりも王らしいとか、個々のキャラクターの個性を生かした話といったところが好評でした。
――EP5のストーリーはどれくらいが最後になるのでしょうか?
濱崎:あと2章で11月くらいに配信されるので、年末にはストーリーとしては終わっているという感じです。
酒井:これから後半に向けて一気に盛り上がっていくところで、ストーリーが終わって、そのあとのレイドボスで何が出てくるのかというのも楽しみにしてほしいですね。
――8月8日に外伝“私のヒーロー”が配信されますが、EP5では他にも外伝を予定していますか?
濱崎:今のところ予定はありません。ストラトスはオメガに行かない新キャラクターなので、フィーチャーしています。
――“バトルアリーナ”は使用武器の変更が中心のアップデートが続いていますが、新ルールの実装などのアップデートは今後予定しているのでしょうか?
濱崎:新ルールは計画していません。森林(雨)のようなアレンジマップを配信できないかと考えているのと、新しい武器種に関して配信ペースはゆっくりになると思いますが準備をしているところです。
――『とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)』コラボのように、コラボの舞台として使われる可能性は?
濱崎:可能性としてはあります。コラボの時は、レギュレーションが特殊だったことと報酬がよかったことでバトルアリーナがとても盛り上がりました。そういったところは生かしていければと思っています。現状、報酬面が弱いのでアップデートの計画を立て直しているところです。
――先日の“6周年によせて”のなかで、「ゲーム内での信頼の回復を最優先事項として、開催を取りやめることとしました」とありますが、今年はオフラインでのイベントの実施の予定はないのでしょうか?
酒井:今夏はありませんが、その後はオフラインイベントも開催していく予定です。東京ゲームショウには例年通り出展がありますし、それ以降につきましてもそこまで大きな規模ではありませんが、チョコチョコとやる予定です。
――『PSO2クラウド』について、現状はいかがですか?
酒井:率直に言って、こちらが期待していたほどの結果は出ていません。クラウドという形態自体が我々にとってもチャレンジで、いろいろとまだ試していないこと、やらなきゃいけなかったことがあるので、そのあたりを改善しながら長い目で見てやっていこうというスタンスで考えています。
――クラウドブロックブーストのような施策を今後もやっていくということでしょうか?
酒井:そういう施策もありますし、60fpsへの対応など、クラウド版自体の改善だったり、それ以前のプレイするまでの敷居などへの導線を考えたりですね。
濱崎:ただ、ダウンロード数自体はけっこう多いんですね。そこからプレイに繋がっていないのが現状です。
酒井:Switch自体にはメールアドレスがなくメールが受け取れないので、SEGA IDの登録をスマートフォンやPCで受け取ることになります。そういったところが敷居になっていると考えていますので、今後ID登録せずにすぐ遊べるように改善を行う予定です。
ユーザー層としては中高生が圧倒的に多くて、他のプラットフォームよりも一世代若いので、今後の『ファンタシースター』シリーズのためにもしっかりケアしていきたいと思っています。
――先日の『MHF-Z』配信番組にて、『PSO2』とのコラボについて発表がありました。『PSO2』側での展開について、内容や実施時期など話せる範囲で教えてください。
酒井:このインタビューでは語れないので……ただ、どこかで情報は出すと思うので、例えば“PSO2 STATION!”などをチェックしていただければと思います。
――「“PSO2 STATION!”で情報を出します」と言われているように聞こえるのですが(笑)。
酒井:そんなことは言っていませんよ(笑)。ただ、あの番組は『PSO2』の最新情報を出す生放送番組ですので。
――生放送といえば、先日の“アークスライブ!”にて、ACスクラッチアイテムの支援アイテムについての説明がありましたが、属性変化系のアイテムが出なくなることにユーザー間で不満の声が大きかったように感じました。そういった声に対して対応などは検討していますか?
濱崎:属性変化は光属性の需要が大きくて、他はそうでもなかったんです。これに関しては“支援アイテムセレクト”の機会を増やしたり、光属性を他より出やすくしたり、何らかの方法で属性変更に近いことをできるようにならないか検討しているところです。また、コスチューム系のものと支援系のものでの住み分けを考えているので、状況を見つつ対応していこうと考えています。
――8月以降のアップデートにつきまして、語れる範囲で教えてください。
濱崎:先ほどからいくつか話が出ていますが、ストーリーやレイドボス、コラボなどに加えて全クラスLv.90の解放やダークブラストの4つ目も予定しています。
――4つ目のフォームはどんな感じになるのでしょうか?
濱崎:もう皆さん予想はできていると思いますが4つ目は【双子】です。【双子】なので2人出てくるタイプになっています。
酒井:今までとは異なるカワイらしい見た目になっているかもしれませんね。
濱崎:残念ながら合わなかった人はオーラ表示を選んでいただければ。
――『ファンタシースターユニバース』でビーストを見ていたこともあって、オーラ表示は逆にしっくりこなかったです。使用状況はどれくらいでしょうか?
酒井:使用率は意外と少ないです。
濱崎:3割弱ですね。実装するのはけっこう大変だったんですが、これをきっかけにダークブラストを使い始めてくれた人もいるので対応してよかったと思っています。
――【双子】をパーティメンバー全員が使ったらすごい画面になりそうですね。
濱崎:そうですね。ただ、【巨躯】のようなサイズではなく、小さめになっているので大丈夫だと思います。アクションも特殊で、【双子】らしい玩具らしさを楽しめるものになっています。
――今後、“バスタークエスト”のアップデートはありますか?
濱崎:すでに配信されている“バスタークエスト”は変わりませんが、“不断の闘志”のように新しい緊急クエストとして出す予定です。
酒井:これまでにない新しい要素がたくさんあるので、おもしろいものになると思います。
――10周年が1つの節目かと思いますが、10周年に向けて今もっとも重要視している部分はなんでしょう?
酒井:今回のことですごく反省になったのは、変えちゃいけない部分を変えてしまうと反発の方が大きくなってしまうので、そのあたりをもっと考えなければいけないということです。
でも同時に、やはり変えていきたい部分もあるので、守るべき部分と変えるべき部分を考えて作るうえでは、何よりユーザーさんの期待を裏切らないことが重要かなと思っています。それに加えてゲームがおもしろいこと、それを重要視しています。
――『ファンタシースター』シリーズは“チャレンジ”が毎回テーマにあって、変えられない、変えてほしくない部分もあると感じます。
酒井:『ファンタシースターオンライン ブルーバースト』も『PSU』も運営期間が約6年でしたので、6年以上の運営はボクら自身も経験がありません。手探りな部分もありますが、それに萎縮しないようにやっていきたいです。
濱崎:期間もそうですが、この規模で開発を続けているのも初めてですね。
酒井:運営は段々と規模が縮小していくものですが、『PSO2』は縮小してないですからね。支えてくださっている皆さんには本当に感謝です。
――最後にユーザーへのメッセージをお願いします。
濱崎:6周年まで支えていただいて、ユーザーの皆さんには感謝の言葉しかありません。ありがとうございました。今までは改善が中心で、新しいことへのチャレンジという面ではEP5の頭以降は控えていましたが、今後は7周年に向けて新しいチャレンジも含めて、挑戦というところにも取り組んでいきたいと考えています。今後のアップデートも楽しみにしていただければと思います。これからもよろしくお願いします。
酒井:ちょっと6周年の挨拶が暗すぎて、不安になってしまった方もいると思います。冒頭にも言いましたが、『PSO2』は今でも国内有数のオンラインRPGですし、セガでもトップクラスのタイトルですので安心して遊んでください。ただ、反省しないまま前には進めないのでしっかり反省しつつ、この6周年を節目にして新しい段階へ進んでいきたいと思っているので、今後の展開にご期待ください。
上期はコラボが控えめでしたが、下期に向けて積極的にやっていきます。オフラインイベントもやりますし、7周年に向けて『PSO2』をさらに大きなものにするゲーム内外での新しい展開を考えています。また、『ファンタシースター』30周年ということでシリーズの新しい展開も控えているので、そちらのほうも期待してください。
この6年間、支えていただいた皆さんには感謝の気持ちでいっぱいですし、休止されてしまった方にも戻ってきていただけるような施策やアップデートを考えていますので、どうかこれからも『PSO2』をよろしくお願いします。
(C)SEGA
(C)KADOKAWA/Satomi Iwase
データ