2018年9月18日(火)
ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。今回は『Firewatch』をお届けします。
本作は、1989年のアメリカ・ワイオミング州の自然保護区を舞台にした、1人称視点のミステリーアクションアドベンチャー。森林公園内の探索とトランシーバーを使っての対話でストーリーは進んでいきます。美しい大自然や、まるで映画の主人公になったかのような没入感を味わえるストーリーが素晴らしいゲームです。
世界中の数々の著名アワードを受賞した今作品、その魅力を存分にお届けしていきます。
プロローグは、どこかへ向かう主人公“ヘンリー”の場面と、テキストと選択肢で進める回想シーンが交互に展開されます。回想シーンは、ヘンリーが妻になる女性“ジュリア”とBarで出会い、交際を経て結婚をするところから始まります。
幸せな結婚生活を送っていた2人ですが、やがて悲劇が……。ジュリアがとある病魔に侵され、悪化の一途をたどってしまいます。ヘンリーは、つらい現実から逃げ出すように、新聞の求人広告に載っていた“森林火災監視員”の仕事に応募するところで、プロローグは終了します。
プロローグは約10~20分ほどあるのですが、濃厚すぎる内容に加えて、「どちらの犬を飼うか?」から、妻に関する重大な決断といった大小様々な選択肢がこれでもかと出てきます。最初は第三者視点で選んでいた選択肢も、最後の方は自身がヘンリーになった気持ちになり、真剣に悩んでしまいました。
このように『Firewatch』は、開始10分でプレイヤーの心をがっちりと掴んできます。
プロローグが終わると、画面にミッションが表示されます。1つのミッションが終わると、また新たなミッションが表示されます。
『Firewatch』は基本的に与えられた課題をこなしていく、ミッション形式のゲームです。ミッションは自分で見つけるものもありますが、基本的には谷の向こう側の監視塔にいる上司“デリラ”から無線の指示を受けて、ミッションが始まります。
“森林火災監視員”なので、“火事を未然に防ぐ”という内容の仕事の指示が来ます。花火を打ち上げている場所を探しだして、犯人を見つけ出しましょう!
時代設定は1989年なので、スマートフォンはもちろん携帯電話もまだ普及していません。そのため、連絡手段はトランシーバーのみ! 広い森林公園でたった1人で、トランシーバー片手に探索をします。
しかも、主人公が連絡を取れるのは上司の“デリラ”だけです。他の人とコミュニケーションをとることは、ほぼありません。トランシーバーの対話は、返答が選択肢になっており、どの選択肢から選ぶかによってデリラのリアクション、関係性が変わっていきます。気になったものをデリラに報告することも可能です。
トランシーバーの対話には制限時間が設けられており、時間内に返答をしないと、会話をスルーしたとして進んでいきます。他愛もない会話から、妻の話まで多種多様な会話をするのですが、制限時間内に返答するのが結構大変! このデリラとの対話は、なんでもない移動の時にも起こるため、何もなくただただ移動する動作がなくなります。
ゲーム後半では、不思議と「そろそろ、デリラと会話したいな。」や「お! デリラから無線が来たぞ!」という気持ちが生まれてきます。没入感が高すぎて、コントローラで操作しているといつの間にかプレイヤー=ヘンリーになっているかと。
『Firewatch』には、ストーリーテラーが存在しません。ゲーム内でのテキストは、最初から最後までヘンリー視点で進行していき、ゲームの視点も一人称視点で、ヘンリーの容姿はほぼ現しません。
会話中の多岐にわたる選択で構築されていく人間関係とストーリー、ゲームの視点はつねにプレイヤー。この2つの演出のおかげで没入感はかなり高めです。
ゲーム中では、手紙や空き缶などさまざまなアイテムを取得できます。
その取得をしたらどうなるかと言えば、監視塔にあるヘンリーが住む部屋に飾られていきます。たくさんのアイテムを取得することにより、部屋が思い出の物で埋まっていくような感覚になります。
自分が見つけたもので部屋が少しずつにぎやかになっていくので、思わずニヤニヤしてしまうかと。
ゲームは、“1日目”、“2日目”と進んでいきます。初日は、上記に記載したように、花火をしている人を見つけて、火事を未然に防ぐ仕事をこなすだけで終わりかと思いきや、夜の森林公園で怪しい人影と遭遇したり、ヘンリーが住んでいる監視塔が荒らされたりと、不穏な出来事が起こります。
そして、上司のデリラですら知らなかった謎のフェンスの存在など、物語が進めば進むほど謎が増えて、ミステリー要素が濃くなっていきます。
パズル要素や謎解き要素は一切ないのですが、増えていく謎がまるでミステリーのヒントのよう。プレイヤーはいろいろな思考・妄想をするようになり、どんどん不安をかき立てられ、やがて誰もいない美しい大自然に恐怖を感じるようになります。
この恐怖感こそが『Firewatch』のおもしろさだと思います。この大自然の探索を満喫しつつ、物語はどこへ向かっていくのか? 森林公園に散りばめられた謎はなんなのか? それらを考察しながら楽しんでいけるゲームです。
(C)2018 CAMPO SANTO, IN COOPERATION WITH PANIC.
FIREWATCH IS A TRADEMARK OF CAMPO SANTO.
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