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2018年9月22日(土)

次世代通信規格“5G”について識者が語る。ゲームに与える影響とは?【TGS2018】

文:田中尚道

 次世代の移動通信規格として近々に導入される5G。ゲームと切っても切れない関係となった通信の発展と、それに伴うゲーム環境の変化について、識者によるプレゼンテーションが“東京ゲームショウ2018(TGS2018)”で行われました。

“東京ゲームショウ2018”

 近々導入される5G規格は、通信速度が10Gbpsと速くなることだけが特徴ではありません。(4Gと比べて)低遅延、同時多接続、低電力消費、高速移動時の接続など、さまざまな面で、これまでの通信環境を凌駕するものとなります。

 研究レベルでは早くも6Gの開発が始まっているそうですが、民生に降りてくる5Gでできること、そしてゲームに与える影響について、NTTドコモ コンシューマビジネス推進部ゲームビジネス担当の森永宏二氏、スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 リードAIリサーチャー 三宅陽一郎氏、評論家、編集者 明治大学野生の森科学研究所研究員 中川大地氏をコメンテータに、ビットメディア代表取締役社長 5GMFアプリケーション委員会 利用シーンWG主査 高野雅晴氏を司会としてセッションが行われました。

 移動通信規格はアナログ時代の1G(第一世代)からおよそ10年ごとに世代交代しており、最大通信速度は30年で10,000万倍に進化しています。また4Gまでは、通信技術が先行し、通信事業者が通信サービスを各契約利用者に提供する形でしたが、5Gからは、サービス、アプリが不可分に提供される可能性が示唆されています。つまり通信速度の速さだけでなく、それによって提供されるサービスまで含めて5Gということです。

 そのサービスの中にはもちろんゲームも含まれており、5Gの発展にはゲームも少なからぬ影響力を持っていると言えます。代表的な例がe-soprtsでの取り組みです。現在テストが行われていますが、低遅延は、対戦ゲームのラグをなくし直接対戦に近い形が実現可能となります。

 また、ゲームプレイの接続のみならず、その模様のリアルタイムの配信など、マルチチャンネルでコンテンツを提供できます。手元のコンソールが5Gでつながれば、e-sportsタイトルの普及、新たな視聴体験の提供、より簡易な大会運営といったメリットがあります。

 VRゲームと5Gということだと、同時多接続にそのメリットがあります。現在のマルチプレイはクライアント側の処理とデータをサーバーが”つじつま合わせ”することで成り立っていますが、5Gによって一元管理されたデータでマルチプレイが可能になります。

 位置情報ゲームなら、実際の地図上により広範囲に展開する巨大な敵を多くのプレイヤーで攻撃する、移動していく敵をマルチプレイで迎撃するといった遊びが考えられています。一元化され、リアルタイムに送受信されるデータによってAR、VRのリアリティの部分が強化されるわけです。

“東京ゲームショウ2018”
▲移動通信技術の進化のイメージ図
“東京ゲームショウ2018”
▲NTTドコモでは、東京オリンピックに合わせて5Gを展開するべく、東京と大阪に試験検証ルームを置いて、さまざまな企業と研究開発を行っています。

 リアリティの強化に伴って、AI(人工知能)の研究も進んでいます。過去のAIは、ゲーム内のアルゴリズムを管理するためのものだったのですが、現在は、ゲームの外側にあって、ユーザーのリアクションなどを大量蓄積(ビッグデータ化)して、リアルタイムに対応するものが開発されています。

 これによって、ゲームにプレイヤーが合わせていた時代から、プレイヤーにゲームが合わせる時代へと変化しています。これからは実際の世界を含めたオープンワールドを舞台に適応型AIによる個別のユーザーに合わせたミッション作成や敵の配置が行われるより緻密なゲームプレイが低コストで提供されていくとのことです。

“東京ゲームショウ2018”

 AIのイメージです。オレンジの丸の中が過去のAIの領分で、ゲーム全体を管理するメタAI、キャラクターを動かすキャラクターAI、ゲームの進捗をサポートするナビゲーションAIなどが搭載されていました。現在は、自動生成、プレイの最適化、ユーザーのアルゴリズムに対応するものなどより快適な環境のためのAIがゲームの外側で動いています。

“東京ゲームショウ2018”

 ゲームを管理するメタAIの現在の形です。進捗や技量が一定でないプレイヤーのために、ゲームが合わせてくれることが分かります。

“東京ゲームショウ2018”

 これまではゲームシステムを変える(ロムを差し替える)ことで別のゲームを遊んでいましたが、これからは、オープンなフィールドを舞台に、メタAIを差し替えることで別のゲームを遊ぶことができます。

■東京ゲームショウ2018 開催概要
【開催期間】
 ビジネスデイ……9月20日~21日 各日10:00~17:00
 一般公開日……9月22日~23日 各日10:00~17:00
【会場】幕張メッセ
【入場料】一般(中学生以上)1,200円(税込)/前売1,000円(税込)
※小学生以下は無料

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