2018年9月28日(金)
配信スタートから2年半――今夏の『スレイヤーズ』コラボや開催中の『進撃の巨人』コラボ、TV-CM、他タイトルでの『ヴァルキリープロファイル』コラボなど、最近話題に上あがり、ますます注目を集める『VALKYRIE ANATOMIA ‐THE ORIGIN‐(ヴァルキリーアナトミア ‐ジ・オリジン‐)』。
その歴史は古く、元をたどれば19年前にプレイステーション用ソフトとして発売されたシリーズ原点の作品『VALKYRIE PROFILE(ヴァルキリープロファイル)』までさかのぼります。当時衝撃を受けた経験をもとに、現在進行形の外伝『ヴァルキリーアナトミア』の魅力についてご紹介したいと思います。
あ、ちなみに『ヴァルキリープロファイル』は現在、リメイク版の『ヴァルキリープロファイル -レナス-』をスマホでプレイすることが可能ですよ!
まずは改めて『レナス』を振り返ってみましょう。原点たる『ヴァルキリープロファイル』とは1999年に当時のエニックスから発売された、PlayStation用のアクションRPGです。
発売当時から名作の呼び声高く、多くの熱狂的ファンを生み出しました。実写のCMがものすごくカッコよくて、15秒で「絶対買う!!」と惹き込まれた記憶があります。
2006年にはPSPにも移植され『ヴァルキリープロファイル -レナス-』として発売。さらにはPS2で続編となる『ヴァルキリープロファイル2 シルメリア』、そして3DSでは『ヴァルキリープロファイル 咎を背負う者』が発売されました。
今年2018年にはPSP版『レナス』がスマホに移植されたので、ついにスマホで『レナス』も『アナトミア』も遊べてしまうというミラクルな時代がやってきたわけです。
▲スマホ版『レナス』はお手頃価格で、Bluetoothのコントローラーを接続することも可能。相変わらずアクションと謎解きは歯応えありすぎ……! |
▲『アナトミア』は『レナス』とはまた異なる世界を舞台にした、ミステリアスな物語が展開。 |
つまり! 2年前に『アナトミア』のサービスがスタートしたことにより、長い眠りについたかと思われていた戦乙女ヴァルキリーの物語は再び目を覚ましたといえます。そして今まさにあらゆる方向性の枝葉を伸ばしながら、さらなる広がりを見せようとしているのです。
それにしてもPS版からもう19年も経っているなんて信じられない……信じたくない。攻略本と首っ引きになって徹夜した日々が懐かしいぜ。
『アナトミア』をプレイしつつ、配信されたスマホ版の『レナス』に触れてみて改めて気がついたのは、1999年製のこの作品がビデオゲームとしては異常なクオリティであり、エンタメとしての密度も高すぎて凄まじいということでした。
当時の開発チームの皆さんは、いったいどうやってこれだけのものをこうやってまとめることができたのか……舌を巻いて脱帽してお手上げして降参するしかないくらい、今プレイしても完成度が高い代物です。
とはいえ、どうしてこんなにも『レナス』が忘れがたく、印象深い作品なのか? 私自身が歳をとりスマホで再会を果たして俯瞰した視点から眺めた時、その理由をようやく見つけたような気がしました。
それは『レナス』の登場人物たちが極めて優秀な役者であり、『レナス』が演劇的な観点から見てとても質の高い“舞台的要素”を持っているからではないか、というものです。
続編になってスタッフが変わったり、キャラデザ、ゲーム性が変化したりということはよくありますが、私は物語における“演出”や“雰囲気”がどれだけ引き継がれているかを気にするタイプです。
『ヴァルキリープロファイル』シリーズの物語の魅力は、神と人間のありとあらゆる差異、隔絶にあります。
人間の死に立ち会い魂を天へ導く主人公、戦乙女たち。個々に状況差はあるものの、兵力として人の魂を刈り取るような使命を淡々とこなす彼女たちとは対照的に、魂を連れていかれる側の人間=エインフェリア達の物語はどれも感情に満ちています。
それは多種多様な人生……生と死が容赦なく描かれ、深くて魅力的なシナリオばかりです。ですが良いシナリオがいくら良かろうとも、それを演じる役者が大根役者であっては、その魅力は半減してしまうもの。しかし『レナス』にはそれがありませんでした。むしろ演技が素晴らしすぎたのです。
私にとって『レナス』は完璧な舞台を観ているかのような、とても幸福な時間をもたらしてくれたビデオゲームでした。
奥行きを感じさせる作り込まれた背景は贅沢な舞台装置。そこへ桜庭統さんの音楽が流れ、荘厳な雰囲気がさらに醸成されます。豪華な声優陣による一言一言のセリフも、独白から戦闘時の詠唱に至るまで震えるほどの格好良さ。そして極めつけがキャラ絵とキャラそのものの芝居でしょう。表情画もドット絵もふくめて、すべてが感情豊かでありました。
高いゲーム性とシステムは当然として、それ以外の部分での記憶に残る物語……つまり“演出力”も『レナス』を神ゲーたらしめている大きな要素なのです。
久しぶりのスマホ版『レナス』のプレイで、私は昨今の作品にはなかなか見られないような、長い“間”の多さに気がつきました。
もったいぶってわざとらしささえあるような仕草も、間も、セリフも、ひとつの舞台の上では様式美となり“自然体”となります。それはそのように全体が演出されて、完璧な空間を作り上げているからです。
鈴蘭の草原で慟哭するルシオも、厨二病と揶揄されることがある大魔法の詠唱も、何もかもがあの世界ではそうあるべきであり、とても正しく、美しいと感じられる。演出が油断なく細部まで行き届いて、世界が完全に“閉鎖”しているからこそ没頭し、心を奪われる……これは芝居や映画を劇場や映画館で没入して見る喜びに通ずるものと言えるでしょう。
この視点に気づいて、私は改めて『アナトミア』が『ヴァルキリープロファイル』シリーズの系譜として高く評価できるのではないかと感じるようになりました。
『アナトミア』でシナリオを担当されている藤沢文翁さんは、劇作家として活躍されています。特に朗読劇にも注力されていて、代表作には“ヴォイサリオン”や“夏目友人帳”の朗読劇など。
チケットはいつもプレミア状態で、どの舞台もじつに繊細で挑戦的。ただの本読みではなく、観客が視覚的にも音楽的にも楽しめるように作られています。
藤沢さんが手がけた朗読劇を観劇すると、私はいつも空間の深みに圧倒されます。光と闇、言葉、声、音楽。動きは決して多くないのに、客席まで丸ごと飲み込むような引力があるんです。とても濃密な時を過ごすことができる朗読劇の舞台……その味わいが『アナトミア』にはとても活かされているように感じます。
▲セリフが表示される「間」がたまらないのですよ! |
とくに「これこそヴァルキリーだ!」と実感したのは、最近追加された変態眼鏡の大人気キャラレザード・ヴァレス(狂乱の超越者レザード)や、戦女神三姉妹の長女アーリィ(終焉の裁定者アーリィ)らの語りの場面です。これには本当に震えました!
「レザードやアーリィが出てきたから『ヴァルキリー』だ」という単純なことではないのです。演じている子安武人さんや田中敦子さんの演技力が土台にあることはもちろんですが、真っ暗な画面に言葉が表示されるタイミングといい、フォントの美しさといい、たっぷりと余韻を残すような狂気の台詞といい、音が、言葉が、演技が、演出が、間が、じつに『ヴァルキリープロファイル』だと感じさせてくれる要素に溢れていました。
▲レナスのことが好きすぎて、ブレなさすぎるレザード・ヴァレス氏。レナスのためなら神々だって屠りにかかる、時空だって超越しちゃう……最高にして最悪の愛すべき狂人。 |
▲つい最近実装されたばかりのアーリィ姉さんに至っては、『アナトミア』の物語に大きく関わる重要なエピソードが展開します。 |
「これってすごく『ヴァルキリー』なんじゃない!?」と思える体感……19年前から引き継がれた遺伝子を、藤沢さん独特のセリフ回しや、演技、芝居的な間に感じて「くぅ~っ!」といつも声が出てしまうのです。
バトルについても解説をしておきましょう。『ヴァルキリープロファイル』と同様に、4人戦闘が可能。画面下のキャラクターアイコンをタッチすることで、キャラごとに独自の固有技を出して攻撃します。
装備できる武器にはアクションスキルが設定されていて、こちらは上スライドで繰り出すことができます。タッチと上スライドを組み合わせてコンボを繰り出しながら、強敵を倒していくのが楽しいんです。
▲特定のキャラに実装されている“ピュリファイアタック”は威力も演出もド派手!! |
登場する敵や武器には属性の概念が存在します。いかに相手の弱点属性を突いて、より強大なダメージを与えるかを考えるのも頭を使う部分。やっぱり考えて悩んでこそゲームであり、困難な局面を突破してこその『ヴァルキリー』シリーズでございましょう。
ちなみに初心者は他のユーザーからサポートキャラを1体だけ借りることが可能。初心者のうちは強力なサポートキャラをパーティに組み込んで挑めば一気にラクになりますよ!
RPGですので、キャラ育成も重要で楽しい要素のひとつ。ポンとガチャで当たりを引くだけで一気にパーティを強化できるようなゲームも多々ありますが、本作では地道なキャラ育成が重要になってきます。(もちろんガチャによる強化もある程度可能ではあるんですけども)
▲キャラクターのレベルアップのほか、潜在能力の覚醒や上限レベルを開放するためのアイテムを地道にコツコツ集めましょう。少しずつキャラが育っていく実感があって、主要キャラとはいえないキャラにじわじわと愛着もわいてくることも。 |
既にサービス開始から2年半が経過しているので、現状では初期キャラと最新キャラにかなりの性能差はついている部分は否めません。ですが、初期キャラに関しては今後なんらかの形での強化策も用意されているとのことなので、焦らず推しキャラを育ててその時を待つのです。
とにかく他の誰かと競うゲーム性ではなく、自分のペースで物語やキャラ育成を楽しんでいけるゲームなのがいいです。
そう! じっくりゲームと向き合えるこの感じが好き! シリーズファンにはおなじみの神界転送やセラフィックゲートなどの要素もそろっていますので「いや、懐かしいな~」って人はかつての雰囲気やシステムを思い返しながら、「なにコレ、新しい感じ!」って人はその初体験な感覚を抱きしめたまま、世界観にしっかりハマって楽しんでくださいね。
▲戦闘が苦手な人はオート頼みでも大丈夫! 超優秀なオートが本当に私のようなへっぽこにはありがたいのです。 |
あれこれと述べてきましたが、何をもってしてシリーズの続編として過不足なしと感じるかはやはり人それぞれだと思います。ゲームなんだから、ゲーム性はもちろん大切。過去作の、いわゆる“思い出補正”もある。
懐かしいキャラが出ていなくちゃダメ、スタッフが同じじゃなきゃイヤ……「続編に期待すること」の内容や許容量って人それぞれだから、評価もさまざまにわかれますよね。
とくにスマホゲームはテレビで遊ぶビデオゲームに比べると、個々にプレイ環境が異なるぶん、つくり手側が“このように遊んでほしい”という想定した演出プランを100%にしづらいという部分もあるはずです。
電車の中で消音にしてスキマ時間でゲームをするのと、家で集中してきちんと音を聞きながら自分のペースでゲームをプレイするのとでは、同じ場面を体験したとしても経験として受ける印象の濃度はまったく変わります。
『アナトミア』はオートも優秀ですが、戦闘も自分で思い通りに操作できるようになったらコンボがつながる感触がすごく楽しいです。
また本当にドラマチックなシナリオが多く、きちんと音楽、そしてボイスを聴くことによって没入感がまったく変わってくる作品でもあります。イベントシーンはぜひ! ぜひじっくりお楽しみください!!
それにここ最近のアップデートではゲームシステムにもどんどんユーザーの声が取り入れられ、サービス開始当初よりもはるかに遊びやすく進化し続けています。
キャラクターも多種多様に追加され、コラボも充実していて、武器生成(いわゆるガチャ)もステップアップ形式が取り入れられているので、キャラを入手するのにもチャレンジしやすくなっています。
▲たとえば記事を執筆しているこのタイミングでは、人気アニメ『進撃の巨人』とのコラボが実施されています。 |
スマホのソーシャルゲームはゲームそのものが日々成長していく姿を見るのも楽しみのひとつ。サービス開始時によーいドン! で初めるのももちろん楽しいのですが、一方でそこから経験を重ね、長いことサービスを応援してきた先輩ユーザーさんの恩恵に預かりつつ、土台がしっかりしてきたタイトルに飛び込むと「初心者でもわりとサクサク楽しめる!」という状況が整っています。
サービス開始から2年を経過した『アナトミア』は、はじめるには絶好のタイミングかと思いますのでみなさんぜひ遊んでみてください。そして「やっぱり『ヴァルキリープロファイル』シリーズって、いいよなあ」という思いを深めていただけたらと思います。
ありとあらゆるセリフの数々に、ぜひ耳を澄ましてみてください。
そこにきっと、シリーズならではの“空気”がギュッと閉じ込められているはずですから。
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