2018年10月8日(月)
徳島県徳島市で10月6日~10月8日に開催された“マチ★アソビ Vol.21 クライマックスラン”。ここでは10月7日に眉山林間ステージで行われた、“『ドラガリアロスト』トークイベント”の模様をお届けします。
『ドラガリアロスト』は9月27日にサービスが開始されたスマートフォン向けアクションRPGで、任天堂とCygamesが共同で開発を手がけています。
このステージには、『ドラガリアロスト』のディレクターを務めるCygamesの松浦弘樹さんと、サウンドプロデューサーを務めるCymusicのさとまんさんがゲストで登場。さらにマチ★アソビではおなじみの、ufotableの近藤光プロデューサーも登壇しました。
▲写真左よりufotable・近藤光さん、Cymusic・さとまんさん、Cygames・松浦弘樹さん。 |
なぜ近藤さんがこのステージに出演しているかというと、じつは現在放映されている『ドラガリアロスト』のTV-CMでは、ufotableがアニメーション制作を担当しているのです。
今回のステージでは、このCMの制作からCygamesとufotableの関係、そして『ドラガリアロスト』開発の舞台裏まで、さまざまなエピソードが披露されました。
『ドラガリアロスト』は、キャラクターが“竜化”によってドラゴンに変身できるアクションRPGで、最初から30種類以上のドラゴンに変身することができます。
またグラフィックや音楽にもかなり力が入れられており、CDとほぼ同じ音質で音楽が流れるといった点にもこだわっていることが紹介されました。
ちなみにディレクターの松浦さんは徳島県出身で、自身の手がけた作品でマチ★アソビのステージに立つことができて、感慨深い様子でした。
また、『ドラガリアロスト』のトークイベントは以前に台湾で一度行われただけで、このステージが日本では初とのこと。そういった意味でも貴重な機会となりました。
松浦さんによると、『ドラガリアロスト』にはかなりの制作期間がかかっており、作っては壊すというのを繰り返して、ようやくリリースすることができたそうです。
すると近藤さんから、Cygamesの人はほかのタイトルも含めて、なぜ作っては壊すというのを繰り返すのか? という質問がありました。
これに対して松浦さんは、ユーザーさんが驚いてくれるかどうかについて、スタッフのみんながなかなか納得しないから、と回答。まぁまぁおもしろいものができたとしても、ほかのゲームに比べてスゴイと思ってもらえるかどうかを基準にすると、やっぱりダメという話になるのだそうです。
まず最初のトークのお題は、“ufotableとCygamesのご縁の始まりは?”というもの。これについて近藤さんは、このマチ★アソビがきっかけだと答えていました。マチ★アソビにCygamesの社長である渡邊耕一さんがやってきてくれて仲良くなり、そのつながりから今回のCMを頼まれたのだそうです。
一方でディレクターの松浦さんは、社長の渡邊さんから突然「CMはufotableさんでどう?」と言われて、とても驚いたとこと。ufotableは人気作を多数手がけているのを知っていたので、「僕らのために作ってもらっていいんですか?」という感じだったのだとか。
じつはトークのお題としては、この後に“CM映像制作秘話”というのも用意されていたのですが、ここからひと足お先にCM制作の舞台裏が語られることになりました。
松浦さんによると、ufotableと初めてミーティングを行った際に、もうすでにCMの絵コンテができあがっていてビックリしたそうです。しかもその絵コンテを見せてもらうと、ひたすらカッコよかったとのこと。
なかでも完成したCMの冒頭に出てくる、主人公がフッと顔を上げて目の色が赤く変わるところが、すごくufotableさんらしくて、これが僕らの求めていたものだと思ったそうです。
これについてはサウンドプロデューサーのさとまんさんも、赤い目になるというのは実際のゲームにはないんだけど、そこでアニメらしさ、ufotableさんらしさを出してくれた、と語っていました。
ufotableの近藤さんとしては、『ドラガリアロスト』というプロジェクトの大きさはよく分かっていたので、これは自分たちの作品をそのまま渡すのではなく、実際にゲームを作っている人たちに、キチンと精査してもらうべきものだと思ったそうです。
そこで30秒のCMに対して2分30秒の絵コンテを用意して、しかも自分たちならこう編集するというものを2パターン用意したとのこと。
さらに、そのほかの素材も全部作って、そのなかで『ドラガリアロスト』にふさわしいものがあれば、どんどん入れ替えたりシャッフルしたりしてもらって構わないですよ、という形でまるごとすべて渡したと、近藤さんは語っていました。
このようにして作られたCMの映像を見て、本当に感動したと松浦さん。開発チームのみんなで映像を見た時は、自分たちが時間をかけて作ってきたキャラクターが動いてるのを見て、思わず泣き出したスタッフもいたそうです。
一方で近藤さんとしては、Cygames側のこだわりも印象的だったようです。CMの最後に出てくる竜化してドラゴンに変身する場面は、いかにちゃんと竜に変わったかという表現にこだわって、40~50テイクぐらいやり直したのだとか。
それに対して松浦さんは、ufotableとミーティングしている最中にも、動画がどんどん上がってくるスピード感に驚いたそうです。ufotableとCygamesは、何回もリテイクを重ねてクオリティを上げていくというスタイルがよく似ていて、シンパシーを感じたと語っていました。
ちなみに近藤さんによると、TV-CMだけでなく、ゲームのなかでも少しだけ、ufotableの制作したアニメが流れる場面があるとのこと。これについて松浦さんは、CMだけだと「ゲームにはないの?」とユーザーさんがガッカリしてしまうので、無理を言ってお願いしたと語っていました。
ufotableの制作したアニメが見られるパートは、ストーリーのかなり後半になるので、ぜひそこまでプレイしてほしいとのことでした。
また近藤さんからは、『ドラガリアロスト』のゲーム中にCygamesのほかのゲームに出てくるキャラがいるのでは? との質問がありました。
これに対して松浦さんは、もちろん社内で許可を取った上でやっていると回答。Cygamesのゲームのキャラクターは、各作品としての世界観がある一方で、ほかの作品に出張したりもしているとのことで、『ドラガリアロスト』では今後も、そういった展開はやっていきたいと答えていました。
このステージでは、『ドラガリアロスト』のサウンドについての話題も語られました。
『ドラガリアロスト』では主題歌の『終わらない世界で』をはじめ、アーティストのDAOKOさんが歌う楽曲が、既存のものと新曲を合わせて20曲以上収録されています。
さらにはゲームのBGMもすべて、DAOKOさんの楽曲の一部を抜き出してアレンジしたものが使用されており、ゲームのサウンド全体がDAOKOさんの世界観で統一されています。これはものすごく手間がかかることなのだとか。
DAOKOさんは、米津玄師さんとコラボした『打上花火』の大ヒットで一躍注目を集めているアーティストですが、サウンドプロデューサーのさとまんさんによると、『ドラガリアロスト』へのDAOKOさんの起用は、以前から決まっていたとのこと。
DAOKOさんが知る人ぞ知る存在だった頃に、その楽曲に惚れ込んで参加をお願いしたのだそうです。そして『ドラガリアロスト』と一緒にみんなでぶち上がっていこう、という話をした少し後に『打上花火』が大ヒットしたと、さとまんさんは苦笑していました。
CMでも流れている主題歌『終わらない世界で』についてさとまんさんは、アクションRPGというと疾走感のある速い曲を起用しがちだけど、90年代風のエバーグリーンな楽曲の世界観を、ファンタジーRPGと組み合わせたらおもしろいだろう、というところから入ったとのこと。
『終わらない世界で』のような新曲に加えて、DAOKOさんのアルバムにもまだ収録されていない楽曲や、まだリリースされていない曲も『ドラガリアロスト』の中で聞くことができるので、DAOKOさんのファンはぜひ注目してほしいと語っていました。
続いてのお題は“『ドラガリアロスト』ゲーム制作秘話”です。
まずはサウンドからということで、さとまんさんが語ったのは、『ドラガリアロスト』の音楽は当初、クラシック調のオーケストラだったという話でした。さとまんさんによると、オーストラリアのシドニーで、現地の交響楽団に演奏してもらって録音するということを、2回も行っているとのこと。
ディレクターの松浦さんによると、このオーケストラによる音楽も非常に良い曲だったそうなのですが、なぜそれが変更になったのかというと、それはキャラクターのイラストが変更になったというのが理由だそうです。
キャラクターのイラストは当初、もっと塗りが濃いリアルな感じになっていたとのこと。ところがこれが変更となって、現在のような柔らかいタッチのイラストになったのだそうです。
音楽としてはよくできていても、それが雰囲気に合っていなければコンテンツとしては良くないと、さとまんさん。それでオーケストラの音楽に携わった人たちには謝った上で、DAOKOさんを起用してポップな世界観を作る方向に改めて舵を切ったのだそうです。
この話を聞いたufotableの近藤さんは、オーケストラの音楽をボツにするというのは、予算的にも大変なことだと驚いていました。
じつは開発中に変更になったのは、イラストや音楽だけではありません。松浦さんによると、『ドラガリアロスト』の開発が始まったのはかなり前のことだったそうですが、じつは最初は通常のRPGだったのだとか。
その当時は目的地をタッチすると、そこに向かってキャラが歩いていくというシステムだったそうなのですが、移動のシステムを現在のようにスワイプで行う形に変えてみたところ、この操作を使ったアクションRPGが良いのでは、という話になって、そこからゲームを作り変えたとのこと。
ゲームジャンルもイラストも音楽も、いったん作ったものを壊して変えただけでなく、じつはシナリオも壊して変えている、と松浦さん。さらにはUIやゲームエンジンも途中で変えているのだそうです。今回の冒頭で語られたとおり、作っては壊すというのを繰り返して完成したのが『ドラガリアロスト』なのだとか。
それを聞いた近藤さんは、ufotableのCMは壊されなくて良かったと、しみじみと語っていました。『ドラガリアロスト』をはじめとするCygamesのゲーム作りについて、近藤さんとしては今日のトークでやっと腑に落ちたのだそうです。
さて、最後のお題は、そうした苦労の末にリリースされた“『ドラガリアロスト』の今後については?”です。
さとまんさんによると、10月4日から開始されたレイドイベントには、DAOKOさんの新曲が追加されているそうです。それを聞いた近藤さんが、ユーザーのみんなが『ドラガリアロスト』をいっぱい遊んでくれたら、DAOKOさんの新曲がどんどん流れる? と質問すると、さとまんさんは、そう思っていただいて問題ありません、と答えていました。
ゲームのほうではこれからもいろんなイベントを準備していますし、現在開催しているイベントにも、ユーザーのみなさんからいろいろな意見をいただいています、とディレクターの松浦さん。今後もゲームをどんどん改善していきますので、楽しみにしていてくださいと語っていました。
ここでトークイベントも終了の時間となりました。最後のあいさつで近藤さんは、ソーシャルゲームはサービスが始まったここからが大変なので、と語ったうえで、今後もしまたufotableに何か参加の依頼があれば、また考えますとコメントしていました。
『ドラガリアロスト』をプレイしている人はイケてるね、と言われるようにこれからもがんばっていきたいと、さとまんさん。一緒に『ドラガリアロスト』を盛り上げたい人は、Cymusicに音源を送ってください、とのことでした。
まだサービスが始まったばかりでご迷惑をおかけしたり、さまざまな意見をいただいています。と松浦さん。今後、時間をかけずにゲームを開発していって、みんなの毎日が楽しくなるものを届けていきたいと思っていますので、応援をお願いしますと語って、ステージを終えました。
『ドラガリアロスト』に対する開発スタッフや、CM映像を制作したufotableの情熱だけでなく、Cygamesのゲーム作りに対するこだわりが、非常によく伝わってくるトークイベントになっていました。このような作品作りの現場の声を知ることができるのも、マチ★アソビの大きな魅力だと言えるでしょう。
(C) Nintendo / Cygames
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