2018年11月29日(木)
11月29日に発売される、“エムツーショットトリガーズ”の PS4用ソフト『ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~』のプレイレポートを、電撃PlayStation編集部のあーやがお送りします。
エムツーショットトリガーズとは、“シューティングの復刻から創生へ”をスローガンに掲げる、有限会社M2(エムツー)が贈るシューティングゲームブランド。過去には『バトルガレッガ Rev.2016』、『弾銃フィーバロン』、『魔法大作戦』といったタイトルを送り出しており、『ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~』は第4作目となります。
さて、本作は弾幕シューティングの名門であるケイブより、2003年にアーケードゲームとしてリリースされた『ケツイ ~絆地獄たち~』を極限まで再現したものに加え、本作独自のゲームモードや充実のプレイオプションが追加されたもの。その充実ぶりは、『ケツイ』の生みの親であるIKDことケイブの池田恒基氏をもって、“全人類対応済弩推奨版”と言わしめるほどです。
また、『ケツイ』は、これまでにXbox360とPS3で移植タイトル、DSでスピンオフタイトルが発売されており、熱狂的なファンが付いているタイトルと言えます。今回は、オリジナル版『ケツイ』の魅力を振り返り、そして『ケツイ Deathtiny 』が“全人類対応済弩推奨版”である理由を語っていこうと思います。
なお、自分にとって『ケツイ』はリリース当初から現在に至るまでプレイしている、かなりお気に入りのゲームの1つなので、あらかじめ懺悔しておきます。本記事は、全盛期に表2-3で2.3億ぐらいが限界だった、“自称中級者”の視点となります。なにとぞご了承いただけますと幸いです。
これまでに何度か他ハードに移植されてきた『ケツイ ~絆地獄たち~』ですが、その魅力はズバリ、画面を埋め尽くす弾幕をかいくぐり、縦横無尽に駆け巡る“攻めの姿勢”にあるといえます。
放っておくと大量の弾を撃ち続ける戦車やヘリにあえて接近し、速攻撃破を目指すことが、安全とハイスコアに転じる。このゲームデザインは、「死ぬがよい」という名言を残し、現在も弾幕シューティングの代表作の1つとして評価されている『怒首領蜂』シリーズの基本的なコンセプトとは異なるものでした。
▲接近して敵を倒すと一定時間“5”と書かれた箱が出現するように。弾幕をくぐり抜けて強敵から大量に5箱を手に入れた時の爽快感は現在も変わりません。 |
『DARK SOULS(ダークソウル)』などでは強大な敵と戦い、それを乗り越える達成感をコンセプトにしているように、緊張とそこから解き放たれた快感はゲームを面白くするスパイスです。
本作はこの緊張と緩和のバランスが絶妙なのです。敵弾に当たると一発オシャカというルールのなか、自発的に敵に突っ込んでいく緊張、速攻撃破とともに現れる大量の5箱という快感。これが交互にハイスピードに展開されていくのだから、もう脳汁はドバドバです。
また、自機が一度敵をロックすると、攻撃をやめるか敵が破壊されるまで自機の周囲に展開したビットが全方向に追尾して攻撃し続けることができるロックオンシステムも特徴的。それまで縦シューティングといえば、画面下で降りしきる弾の雨を避けながら敵の正面に陣取り攻撃する、精細な操作を行うことがほとんどでした。
しかし本作はこのシステムのおかげで、敵のトリッキーな弾幕を縦横無尽にかいくぐって攻撃ができるため、ダイナミックにして精細な操作を行うシーンがとても多いのが特徴で、リリース後15年がたった今もあまり類を見ることがありません。
▲見た目以上に殺意のこもった弾幕です。 |
もちろん、弾幕シューティングといえば、難度の高さでも有名。しかしそれは裏を返せばトライアル&エラーのし甲斐に満ちているということ。弾幕シューティングは、大きく言えば行動パターンの構築能力、構築したパターンを精密に再現する操作能力、そしてとっさのアドリブ避けの能力が求められます。
パターン構築と精密操作によってなるべくアドリブ避けをするシーンを減らすというのがセオリーですが、個人的に本作は、他の弾幕シューティングと比べても、この3つの要素のバランスが絶妙に噛み合っていると感じています。
つまり、画面を広く動き回る(細かいことを言うならランクの概念がないのでランク管理の必要もない)ため行動パターンの幅が非常に広く、求められる精密性も(クリアを目指すだけなら)多少は緩和されるのですが、特定の敵は毎回動作が異なるためにアドリブ避けが必要なシーンをゼロにすることはできないのです。
これは最初に述べた緊張と快感のうち、緊張の要素。そしてこれを繰り返すことで、地味ですが確実にスコアに反映されていきます。たしかに自分の腕の上達を実感する、これも大きな快感ですよね。
最後に、ただでさえ難しい本作ですが、条件を満たすことで表と裏、2種類の2周目に突入できます。『ダークソウル』よろしく、2周目は1周目より難しいのですが、表2周目よりも難しい裏2周目(突入条件も厳しくなっている)については、さらに隠しボスが存在。この隠しボス、“光翼型近接支援残酷戦闘機 エヴァッカニア・ドゥーム”といいます。
このネーミング、もとは『怒首領蜂』に出てくる“最終鬼畜兵器”などが原典なのですが、これが “ふぐ刺し”や“洗濯機”といった名称がつくほどの名物弾幕を放つ『怒首領蜂』シリーズの隠しボス、ヒバチ(漢字表記は緋蜂だったり火蜂だったりさまざま)と並ぶカリスマを持っているのです。
会うまでも大変、会ったら会ったで倒せない。そんなエヴァッカニア・ドゥームに対し、「なんとかしてコイツに会いたい、倒したい!」……自分も当時、そう願った1人でした。
▲でも本作のオリジナルモード、スーパーイージーモードとDEATHTINYモードなら、簡単に会えたりします。 |
当時『ケツイ』に夢中になった人たちの中には、まさしく“強大な敵と戦い、それを乗り越える達成感”を求めた方々がいたのです。本作が15年間定期的に移植され続けている理由。それはこれらのさまざまな魅力が1つのゲームとしてパッケージングされているからだと言えるでしょう。
ここからは『ケツイ Deathtiny』がただの移植ではない、“全人類対応済弩推奨版”である理由をご紹介していきましょう。まず、オリジナル版『ケツイ』については特殊な基板を使って制作が行われていたため、「完全移植は不可能」と言われていました。実際、Xbox360版、PS3版は、わずかながらゲームテンポが速いという特徴がありました。
しかし、本作を手がけるのは数々のシューティングゲームを移植してきたエムツー。本作のプレイ後、すぐに秋葉原のゲームセンターHeyでアーケード版をプレイしてきましたが、違和感はほぼなし。今回のプレイで使用した液晶モニタやアーケードコントローラなどのことを考慮すれば、わずかに覚えた違和感が何に因るものなのかを確かめるには、時間をかけて精密な検証を行わなければならないと感じました。
というわけで、まずこれだけで本作を買う価値は大いにアリ! ゲームセンターにビデオゲームが置かれることがますます少なくなってきた昨今、まして極限までオリジナル版を再現しているのだから、Xbox360版、PS3版を現役で遊んでいる方であっても、実用として十分なものです。
もちろん、ベタ移植にとどまらないのがエムツーショットトリガーズシリーズ。これまでのシリーズで追加・拡張されたカスタマイズ要素は本作にも健在です。クイックセーブやロードはもちろん、便利機能付きのリプレイシアター、ゲームオプション、画面、音響と、本当にいい意味で細かすぎです! 自分にあった環境を作る楽しみもあり、本格的にゲームをプレイする前にアレコレいじくってしまうことは間違いないでしょう。
▲個人的には画面はブラウン管風に、音響はゲーセン風にして当時の環境をなるべく再現してプレイするのが好み。 |
ちなみに、5箱が大量に出た時の画面のチラつきの再現もされていますが、IKD氏にとっては当時のハードスペックの限界で仕方なくチラついていたのだから、今回はチラつかせなくてもよいのでは、とのことで、ゲームオプションでオン・オフが切り替えられるようになっていました(笑)。
また、いわゆるバグ技の“ケツイボム(特定の条件を満たした際にボムを撃つとボムが爆発せず画面を往復し、自機の無敵時間が解除されなくなる技)”もオン・オフ切り替えが可能です。
▲さらに、オープニングムービーも新規収録。楽曲は『ケツイ』のコンポーザー並木学氏が今回新規に制作したものです。ちなみに、ムービーにはエヴァッカニア・ドゥームが1フレームだけ写っています。 |
また、今回のエムツーガジェットもかなりのコダワリ。ひとつひとつ文字に起こして説明すると長くなってしまうので、まずは画像でご確認ください。
上級者の方にとってうれしいのは最新の累計倍率がわかるRATE COUNTERガジェットと、空ロック(スコア稼ぎに必須となるテクニックのこと)で出した5箱の総数がわかるAIR LOCK COUNTERガジェットでしょうか。上手い方は、ゲーム内に表示されている累計倍率カウンターがずっと回っても最新の数字に追いつかないくらい稼がれるので、最新の累計倍率がいくらなのかわからないんですよね。
AIR LOCK COUNTERガジェットも練習時に役立ちそうです。ちなみに、AIR LOCK COUNTERガジェットは現状5の空ロックのみカウントされるようですが、後日予定されているアップデートで、5以外の空ロックもカウントされるようになるとのことです。
また、背景がループする箇所は“最大回し”の%なのかが表示されるのもうれしいですね。しかも、こちらも後日のアップデートで、何%の時点で撃破したのか、その結果どうなったのか、というのがわかりやすく表示されるようになるそうです。
▲縦画面だとこんな感じでガジェットが表示されます。 |
中級者にとってうれしいのは2ND ROUNDガジェット、敵の素点リスト、CHIP RADERガジェットあたりでしょうか。2ND ROUNDガジェットについては今回Heyでプレイした際、ボムの使用回数を間違えて2周目に行き損なったばかりなので、ありがたみを実感しますね……。
もちろん、アーケードモード以外にも多彩なモードが収録されています。まずはエムツーショットトリガーズではおなじみスーパーイージーモード。1周エンドでエヴァッカニア・ドゥームにも会えます。
▲ここで弾幕の基本的な構造を理解すれば、攻略は大いにラクになるでしょう。 |
続いては本作オリジナルとなるDEATHTINYモード。
ものすごく簡単にいうと、ボムがオミットされ、代わりに弾消し要素が追加されています。プレイフィールとしては、『怒首領蜂』シリーズで言うところのハイパーモードが実装されているような感じ。
▲いわゆる“ハイパー”中は爆風に触れた弾は金箱に変わるので、道中の難所もラクラク。初心者の方はスーパーイージーモードの次に遊んでみると良いでしょう。 |
ちなみに、このモードでは2つの条件を満たすとDIE-DEATHモードという裏モードに突入できます。
こちらはIKD氏も“稼ぐとエグい”と言っていましたが、実際稼ぎ続けるとなると、弾消しシステムが実装されているのにやっぱりエグい(笑)。上級者の方々のリプレイを見るのが楽しみです。
具体的な条件についてはネタバレになるのでお伝えできないのですが、私が確認した条件のヒントをいうと、DEATHTINYモードでスコア稼ぎを意識し始めた方なら、何度かやっていると1つ目の条件に気がつきやすいかもしれません。2つ目の条件については、画面をよーく見ていろいろ試してみよう、という感じでしょうか……。
カスタムモードもエムツーショットトリガーズなのでもちろん入っています。自機の基礎攻撃力を上げたり、いきなり裏2周目からスタートできたりと、さまざまな遊び方で新たな『ケツイ』の魅力を発掘できそうですね。
▲ちなみに、カスタムモードにも隠しモードが入っています。 |
更に本作ではアーケードチャレンジと絆育成モードという2つのモードが追加に。
いずれもトレーニングを主眼においたモード。アーケードチャレンジはいわゆるプラクティスモードに弱点克服要素を追加したもので、1ステージを区分けしたエリア練習もできます。
▲最初は1周目1面AREA.1しか選択できませんが、解禁条件は1つ前のエリアを遊ぶことなので、すべてのエリアを解禁するのはカンタン。 |
絆育成モードはアーケードモードでミスした地点の弱点克服ができ、さらにミスした地点を克服することでポイントが加算。オンラインでポイント数を競うこともできます。
実際遊んでみて実感したのですが、どちらも練習において本当に便利です! どちらもミスした地点の直前からスタートするので、新しいパターン構築とアドリブ避けを短期集中して練習できます。クイックセーブ&ロードとあわせれば、練習は自由自在。この環境なら、上達速度はかなり上がるのではないかと思われます。この機能、今後のエムツーショットトリガーズシリーズでの標準装備にしていただけませんでしょうか(笑)。
本作の発売とともに2種類のDLCが配信されますが、こちらも往年のファンにとっては大きな見どころになっています。なんといっても大きいのは『IKD 2007 SPECIAL』モードでしょう。これは2007年のイベント“ケイブ祭りだヨ!全員集合”だけで公開された幻の『ケツイ』。IKD氏自らの手によって絶妙な調整が施されています。
▲“HEY”の文字がアツい。 |
内容としては、一部の敵が2周目相当の弾幕を展開したり、5箱を出現させるための敵との距離がさらに近くなっていたり、初期ボムの数が1つの代わりに毎ステージでエクステンドのチャンスがあったり、といった感じ。けっこう、別ゲーになっています。ガチで稼ぐなら新しいパターンは必須かなと思いました。
▲エムツーガジェットも変化しているので見比べてみてください。 |
もう1種のDLCは、『シャンティ』シリーズや『ショベルナイト』のBGMを手掛けたJake “virt” Kaufman氏によるアレンジ楽曲。この楽曲は過去にXbox360用ソフト『怒首領蜂大復活ブラックレーベル』のアレンジモードにて使用されたもの。
アレンジモードは『大復活』のステージを使いながら、10箱が出たり、ロックオンシステムが実装されていたりと、『ケツイ』をベースにしたゲームシステムになっているのが特徴で、隠しボスもエヴァッカニア・ドゥームに変更されています。
『怒首領蜂大復活ブラックレーベル』は発売から7年が経過しており、こちらも久しぶりかつ、レアモノ。かなり印象が変わるので、昔からのケイブファンの方はぜひ試してみてください。
それにしても、稼働開始から15年を経て、ついに初心者、中級者、上級者、あらゆる方に向けた、超クオリティの決定版『ケツイ』の登場です。まずはファンとして、素直に「ありがとう……!」と言いたいです。
オリジナル版『ケツイ』は、現代にも通用する“ゲームの本質的なおもしろさ”を十分に持っているタイトルだと思うのですが、ただ同時にピーキーなタイトルであることもまた間違いなく、かなり人を選ぶタイトルでもあったとも思います。
こう言っては何ですが、シューティングゲームって“自分との対話”的なところがあるじゃないですか? プレッシャーに負けて自機を落とすのも、強大なボスを気合避け(まぐれ避け)で倒すのも、当然安定してボスを倒すのも、すべて自分の力。それがシンプルで、一度ハマると抜け出せない理由なのかなと思っています。
今回、エムツーによって、“自分の力を磨く”ということについて、オリジナル版の魅力を損なうことなく、至れり尽くせりすぎるほどに、さまざまな要素が追加されたのですからIKD氏から“全人類対応済弩推奨版”とお墨付きをうけたのも頷けます。ゲーム内容的には死んで覚える、いわゆる “死にゲー”なので、高難度アクションゲームが好きな方も、もし気になるようでしたらぜひチャレンジしてみてくださいね。
『ケツイ』が初めて家庭用ゲームハードに移植されたときもかなり感動しましたが、今回はその“初体験”に劣らない感動を今、味わっています。自分は10代の頃に『ケツイ』をプレイし始め、30代のおっさんになった今もときどきプレイしているのですが、とことんコンセプトを煮詰めておもしろさを追求したタイトルは、古びることがないんだな、と思います。
今回の記事制作のついでに、ムキになってゲーセンで連コインしまくったことまで思い出して恥ずかしくなってきましたが、それは置いておきましょう(苦笑)。
今度こそ、今度こそゲームセンターでエヴァッカニア・ドゥームに会い、倒す! それを目指して『ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~』、家でじっくりやり込んでみようと思います。これが3,700円(+税)なんですから、元手なんて一日で回収できちゃうくらい、個人的には安い。
そしてエムツーさん、『エスプレイド』『フィーバロン学園』『もののけ忍法帖』『ウブスナ UBUSUNA』と、その他のシューティングタイトルも待ってます! よろしくお願いいたします!
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