2018年12月7日(金)
あの名作の発売から、5年、10年、20年……。そんな名作への感謝を込めた電撃オンライン独自のお祝い企画として“周年連載”を展開中です。
第87回では、1998年12月3日にフォグからプレイステーション向けに発売された恋愛アドベンチャー『久遠の絆』を振り返っていきます。
現在はゲームアーカイブス版の他に、日本一ソフトウェアよりiOS/Android版『久遠の絆 再臨詔』も配信されています。記事を見てプレイしてみたくなったらぜひチェックしてみてください。
『久遠の絆』はノベル形式のアドベンチャーゲームで、輪廻転生を題材にした壮大なストーリーが特徴。自分は『電撃PlayStation』の読者だったころ、インタラクティブ性の低いノベルゲームにもかかわらずレビューで90点代を付けられていることが気になってプレイしました。
ストーリーは主人公のもとに謎めいた美少女・万葉(まよう)が転校してくるところから始まり、そのことをきっかけに主人公が前世の記憶を思い出していくというもの。主人公やヒロインたちの長い因果の物語が描かれていきます。
▲高原 万葉(たかはら まよう)。主人公のクラスに転校してきた不思議な少女。 |
▲斎 栞(いつき しおり)。主人公の従妹で、朗らかな性格をしている。 |
▲常磐 沙夜(ときわ さや)。主人公のクラスの担任で国語教師。 |
メインとなる現代編の他に平安編、元禄編、幕末編という3つのストーリーが存在。同じ人物でも敵だったキャラクターが味方になったり、年上だった女性が年下になったりと転生によって立場が変わるところがポイントです。
▲現代では学校の先生であった年上の女性が幕末編では負けん気の強い女の子に。 |
▲時代が違うと分かり合える関係になることも。単純に悪とは言えない人間味あふれるキャラクターも魅力。 |
また、平安編は竹取物語がモチーフになっていたり、幕末編には新選組が登場したりと史実などもうまく物語に取り入れられていて、その点も引き込まれるポイントでした。
▲新選組の沖田総司が登場する幕末編。 |
ちなみにPCで発売されている『THE ORIGIN』は幕末編が削除されて昭和編が追加。さらに物語の起点となる神代編も追加されているので気になる人はチェックしてみましょう。
追加シナリオといえばその後ドリームキャストで発売された『再臨詔』ですね。序盤からライバルと和解するルートになっていることもあり、オリジナル版のファンからは賛否両論ありました。ちなみに自分はというと……このシナリオが大好き! ライバルの杵築悠利は悪役であるものの憎めない人物だったので、どこかで救いが欲しいと思っていたので、共闘する展開には燃えました。
▲不良のキャラクターで最期まで報われなかった悠利。彼に感情移入した人はぜひ『再臨詔』のプレイを! |
クライマックスで敵と戦う前に幕を閉じるストーリーも、テーマとしては結論が出て終わっていますし、その後の展開も想像できて楽しいです。ちなみに仲間になったハズの悠利がラストシーンにいなかった理由も、洞窟の前で「俺がここの敵を食い止めるから、お前らは先にいけ!」と言ったのではないかと勝手にストーリーを妄想しているのですが、どうでしょうか?(笑)
『再臨詔』は置いておいて、話題を本編に戻すと『久遠の絆』は恋愛アドベンチャーというよりも伝奇アドベンチャーとしての側面が強かったように思います。転校初日に万葉が主人公に語りかける「あなたは、私が殺すから…」というセリフや、世間を賑わせている連続通り魔殺人事件、主人公にだけ見える半透明の“餓鬼”の姿など……。当時はPCゲームだと伝奇モノが流行していましたが、コンシューマでは少なかったと思うので新鮮でした。
また、作曲家・風水嵯峨さんによる和風の楽曲も雰囲気を盛り上げてくれました。
▲物語の最初に登場する生首はトラウマ級。ギャルゲーとは思えません。 |
▲人間の嫉妬などを描く、生々しいストーリーが魅力です。 |
輪廻転生を題材にしたことでバッドエンドが描けることも本作の利点だったと思います。志半ばで散っていくキャラクターや別れで終わる悲恋は心に残ります。また、それぞれのストーリーの伏線がラストに回収されて収束する作りも王道ではありますが、胸を打ちましたね。
▲バッドエンドを重ねるからこそ、ラストのハッピーエンドに感動します。 |
特に主人公の親友である有坂汰一が前世で主人公と激しい対立をしていながらも、最終的には主人公を救うシーンは熱くなります。
また、かなりのネタバレになってしまいますが、やはりいちばん高ぶるのはクライマックスで娘の名を呼ぶシーン。平安編でヒロインとの子供の名前を入力するシーンがあるのですが、ラストのほうでピンチになった時にその女の子の名前を呼ぶと助けに来てくれるんですよね。しかも、その娘の正体というのが……うぉ~!!!!!!!
▲自分の子どもに名前をつけることができます。変な名前にすると、あとで後悔するので気をつけましょう(笑)。 |
▲先輩~! |
また、プレイステーションのゲームにしてはアダルトな内容が多いことにも驚きましたね。直接的な描写はないものの「あ、そういうことね」とわかるシーンばかりでドキドキ(笑)。特に吉原が舞台になっている元禄編は当時のボクには刺激的すぎました。トゥルーエンドを見るためだと自分を言い聞かせてヒロインを“買う”ほうを選びました。
▲肌色の多いビジュアルも特徴。 |
▲今思えば、かなりギリギリを攻めたシナリオでした。 |
ゲームシステム自体はオーソドックスなテキストアドベンチャーでしたが、法術を描いて敵と戦うシステムも搭載されていました。制限時間もあるため、結構あせってこちらでもドキドキします(笑)。
▲五芒星を描いて敵と戦うシステムでは、陰陽師になったような気分に。 |
壮大なストーリーのため、すべてを読み終えるには15~20時間ぐらいかかりますが、それだけにラストが感動する作品になっています。美しいビジュアルやサウンド、伏線が上手なシナリオなどは20年経った今でも色褪せません。ぜひ、年末年始の休みなどを利用して、この名作をじっくりプレイしてみてはいかがでしょうか。
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