2018年12月18日(火)
TVアニメ・iOS/Android向けアプリ・フィギュアなど、多彩な展開を予定している『荒野のコトブキ飛行隊』。この記事では、プロデューサー陣による対談をお届けします。
【2019年2月13日より、アプリ攻略まとめwikiが始動!】
アニメ『荒野のコトブキ飛行隊』は、監督・水島努さん、シリーズ構成・横手美智子さんによる完全オリジナルの新作TVアニメです。2019年1月よりTOKYO MX、テレビ愛知、MBS、BS11にて放送予定となっています。
『荒野のコトブキ飛行隊』イントロダクション
一面の荒野が広がる世界に空から突然、色々なものが降ってきた。
それらは、人々の生活を急激に変えた。
とりわけ飛行機がもたらした影響は大きく、以降、世界の潮流は空へと移っていった。
時は流れ――、雇われ用心棒“コトブキ飛行隊”は、厳しいが美しい女社長、頼りない現場の指揮官、職人気質の整備班長など個性的な仲間たちと、お客様の大事な積み荷を守るため、今日も隼とともに大空を翔けてゆく。
このアニメの世界を冒険できるiOS/Android向けスマートフォンアプリ『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』は、“レシプロ空戦RPG”として、2019年冬に配信予定となっています。
そこで、TVアニメのプロデューサーを務めるバンダイナムコアーツの有澤亮哉さんと、スマホゲームのプロデューサーであるバンダイナムコエンターテインメントの伊藤翔平さんに、お互いの作品の魅力について語り合っていただきました。
▲左から伊藤翔平さん、有澤亮哉さん。 |
また記事の後半では、『荒野のコトブキ飛行隊』のフィギュアを展開するBANDAI SPIRITSの林佳奈子さんも加わり、3名のプロデューサーによる鼎談となっています。そちらもフィギュア制作のスケジュールなど、興味深い話題が語られていますので、ご注目ください。
▲アニメ『荒野のコトブキ飛行隊』の第2弾キービジュアルです。 |
――有澤さんと伊藤さんのお2人はそれぞれ、『荒野のコトブキ飛行隊』でどのような役割を担当されているのでしょうか?
有澤さん:『荒野のコトブキ飛行隊』のアニメのプロデューサーで、広く言えば企画全体のプロデュースを担当しています。
伊藤さん:私は『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!(以下、テイクオフガールズ)』のプロデューサーを担当しています。僕はゲームの企画の立ち上げから、開発・運営に渡るまで、『テイクオフガールズ』を総合的に見ている立場です。
――対談に入る前にまず、『荒野のコトブキ飛行隊』の企画の経緯についてお聞きしたいのですが。この作品の根本的な部分は、どのようにして決まったのでしょうか?
有澤さん:最初は、水島監督やデジタル・フロンティアさんと一緒に「CGアニメを作ろう」という、シンプルな命題だったんです。そこから「何をテーマにしましょうか?」と考える時に、「そういえば水島監督は、レシプロ戦闘機がお好きですよね」という話になって。
戦闘機や空戦はCGにも向いているし、逆に言うと手描きの作画では難しいことだから「思い切ってやりましょう!」と。ジェット戦闘機ではなくて、あくまでレシプロ機というのは水島監督のこだわりで、今の形になったんです。
レシプロ機を本気で描いた映像作品はそれほど数が多くないですし、特に日本のアニメでは少ないので、今回はそれにチャレンジしてみましょう、ということになりました。
――戦闘機の活躍する舞台が、西部劇風のちょっとユニークな世界観になっている理由は?
有澤さん:企画を立ち上げたばかりのころに「レシプロ機が飛んでいても違和感のない世界はどんなところだろう?」というのを、ずっと話し合っていたんです。「現代社会にしてみては?」という案も出たんですけど、本作の場合はスマートフォンがあるのにレシプロ機で飛んでいることにすると、あまりにも違和感があったので。
とはいえ、あまりSFっぽくしてしまうと、それはそれでリアリティがない感じになってしまいます。いい落としどころがないかな? と考えていた時に、「西部劇はどうだろう?」という案が出てきました。
西部劇風の世界観ならレシプロ機が飛んでいても、現代を舞台にするより違和感が少ないですし、荒野が広がって町と町との距離が開いているから、そこで飛行機に乗る意味もあるだろうと。そのようにしてレシプロ機が違和感なく活躍できるフィールドを探していった結果、西部劇に行き着いた感じですね。
――あくまでレシプロ戦闘機が企画の根幹にあって、そこから世界観が出来上がってきたわけですか?
有澤さん:そのとおりです。レシプロ戦闘機をどうやって活躍させるかというところから、すべてが派生していった感じですね。
――今回こうしてお2人に対談していただいたのは、『荒野のコトブキ飛行隊』はアニメとゲームがかなり密接な関係で制作されているとお聞きしたからなのですが、そのあたりについてはいかがでしょうか?
伊藤さん:まず前提としてお話しすると、アニメの制作とゲームの開発のラインはそれぞれ別に独立して動いていて、そのこと自体は従来のアニメをゲーム化するタイトルと変わらないんです。珍しいポイントとしては、アニメ制作の初期段階でゲームを作り始めること。これは、あまり例がないですね。
しかも『荒野のコトブキ飛行隊』はオリジナルの作品で、お話や世界観やキャラクターが固まっていない状態でゲームを作ることになるわけです。これは要するに、まだこの世にないものを参考にしてゲームを作るということなので、非常に難しいことなんです。
有澤さん:なので今回はシナリオの打ち合わせの段階から、ゲームの開発陣にずっと入っていただいているんです。
伊藤さん:ゲームの開発にしっかり生かすために、アニメの脚本会議やアフレコの現場にも立ち会わせてもらっています。
有澤さん:伊藤さんが初めてシナリオの打ち合わせに来たのは……5話の途中ぐらいでしたっけ?
伊藤さん:4話の終わりぐらいですね。ですから体制としては、まず最初にアニメの制作が走っていて、そこにゲームの開発ラインが寄り添うというか、アニメで作られたものを横で併走して情報を受け取りながら、ゲームを作っていく形になっています。
有澤さん:リアルタイムで情報を共有しながら作っていく感じですね。今回はアニメがオリジナルなので、僕はおろか水島監督もシリーズ構成の横手美智子さんでさえ先のストーリーはわからない状態のころから、ずっと伊藤さんに入ってもらい、ゲームを制作していただいています。
アニメの制作では、シナリオが進んでくるにつれて設定が変わったり、新しい設定が追加されたりすることも多々ありますので、それらもリアルタイムに共有しているんです。
また、伊藤さんには打ち合わせの現場に毎回来てもらっているので、作品としてどういう意図でこうなっているのかというのを、その場の雰囲気も含めて共有していますから。おかげでキャラクターや世界観の理解・共有に関しては、非常にスムーズに進んでいると思いますね。
▲キャラ設定もリアルタイムで共有していったとのことです。 |
――ただ単に作品の概要を資料やテキストとして読むだけでは拾い上げられないものもゲームに落とし込んでいるという感じでしょうか。
伊藤さん:ええ。そういったものは確実にあると思います。また、アニメの脚本会議に参加する際に、僕の中で1つルールを決めていたんです。それは、“水島監督をはじめとするスタッフの方たちがアニメの物語を作っている時に、ゲームの開発の都合を押しつけるのはやめよう”というものです。
この作品は、水島監督をはじめとするアニメ制作スタッフが生み出しているものだと思うので、お客さんがアニメやゲームに触れた時に「これってゲームの都合で入れたんでしょ?」と思われてしまうものが目立ったり、ましてやそれがお話の結末を左右するものになったりすると、『荒野のコトブキ飛行隊』らしさが失われると思ったんです。
有澤さん:そこはすごく気を遣っていただいていると感じました。このタイミングでゲームを作っていただけるのは、すごくありがたかったんですけど、その一方で「たくさんゲーム側の要望が出てきたらどうしよう?」とも思っていたんですね(笑)。でも、それは僕の杞憂で、そういったものはありませんでした。
伊藤さん:ひとりのアニメファンとして、ゲーム都合の“ブッコミ”はしたくないなぁ、という思いがあります。ちなみに、アニメの情報が公開されたあと、「アニメのキャラクターが3Dなのは、ゲームに都合がいいからでは?」という反応も見られましたが、まったく関係ありません。
有澤さん:ゲームのルールとして“こうやったら売れる”というのは絶対にあるでしょうし、それ自体は全然悪いことではないと思うんです。でも伊藤さんには、ゲーム的な常識よりも、アニメ制作のほうを優先していただけて、非常にありがたかく思っています。
逆に、水島監督や脚本の横手さんのほうから「ゲームの要素がアニメに入ってもいいですよね」と、アイデアや提案があったりもしました。そういう意味では、すごくナチュラルにアニメを作っていく中から、ゲームが生まれていった感じがします。
――ゲームのプロデューサーから見た、『荒野のコトブキ飛行隊』のアニメの魅力はどんなところですか?
伊藤さん:アニメができていく過程で『荒野のコトブキ飛行隊』の魅力を感じている部分は、大きく2つあります。まず1つ目は、水島監督の作品ならではの、“独特なテンポの会話劇”です。
「このセリフの量は尺に収まるのかな?」って思うぐらいセリフの密度が濃くて、キャラ同士の掛け合いがすごくスピーディなんです。水島監督の作品は昔から拝見していて大好きなので、またあのテンポの会話劇が見られるというのは、純粋に楽しみなところでした。
あともう1つは“レシプロ戦闘機による空戦”ですよね。この部分は、本当に力を入れているなと思っています。CGだからこそ描ける戦闘機の無骨さというか、ディテールのこだわりもスゴいなと思いました。
レシプロ戦闘機は、ジェット戦闘機のようにミサイルがあるわけじゃなくて、機銃だけを使う戦いです。ですから後ろを取ったり取られたりといった、“戦闘機と戦闘機のガチのなぐり合い”みたいなところがあります。だから空戦パートは本当にハラハラさせられるし、これが毎週見られると思うと楽しみですよね。
――戦闘機に関しては、専門家の方が監修されているのでしょうか?
有澤さん:はい。ミリタリー監修の二宮茂幸さんに、シナリオの段階からほぼすべてのセクションに渡ってチェックしていただいています。戦闘機のCGモデルの監修はもちろんですが、音響についてもダビングの際に、二宮さんから意見をいただいたりしながら作っていますね。
――音へのこだわりは、具体的にはどのようなものでしょうか?
有澤さん:当時のレシプロ戦闘機の音って、今は聞く機会がほとんどないんです。現存している戦闘機のエンジンは新しいものなので、当時のものとはちょっと違いますし、当時の映像も同時録音じゃないので、作り物の音を後から付けていたりするんですよ。
だから、“リアル”を忠実に再現した音作りって、なかなか難しいんです。その中でいろんな資料をかき集めて、「このエンジンでこの機体の大きさなら、こういう音になるだろう」というバランスを取って、制作しています。
――リアルとは違うけれど、こだわりは深いというわけですね。
有澤さん:ええ。それに、すべてをリアルにしたらアニメとして映えるか? というのもまた難しいところです。そこはある程度、リアリティとアニメの演出のバランスを取って作っています。なので、レシプロ戦闘機にめちゃくちゃ詳しい方々も、どうかお手柔らかに……と思う部分もありますね(笑)。
音響の迫力も大きな魅力のひとつですので、ご近所迷惑にならない程度に大きめの音で聞いてもらえると、作品の世界に入りやすいんじゃないかと思います。
――続いて、アニメ制作側の視点から見た『テイクオフガールズ』の魅力は、どんなところでしょうか?
有澤さん:1クールのアニメだと、どうしても尺に限りがあって、特にキャラクターの内面などに関しては描ききれない部分も出てしまうんです。ゲームではそういうところを体験できて、キャラクターの魅力を深掘りできる要素がしっかり詰まっています。そこが一番のポイントですね。
▲こちらはアニメの第1弾キービジュアル。“空戦が日常。”というキャッチコピーが印象的ですが、アニメで描き切れない彼女たちの一面がどんなものなのか、気になるところです。 |
先ほどもお話ししたように、シナリオ会議の段階からゲーム制作陣に入ってもらっているからこそ、キャラクターに密に寄り添ったものになっていると思います。
しかも、早いだけではなく、アニメのことを内側から理解している人がゲームを作ってくれているからこそ、キャラクターやストーリーや世界観に違和感を覚えることなく入り込める作りになっています。
伊藤さん:アニメとゲームがこれだけ密接にやっている中で生まれた連動感は、きっとアニメを見てくれた人やゲームを遊んでくれた人にも伝わると思います。
有澤さん:伊藤さんを含めたゲームの開発スタッフの皆さんが、アニメ制作に対する理解が深かったんですよ。アニメとゲームはすごく近いものに見えますけど、実は結構違うんです。そんな中で今回は、「アニメだとこうしたほうがおもしろいですよね」という話ができたのが、私としてはよかったと思っています。
一方で、今までゲームを触らずにきている人も結構いるので、ゲーム的なお約束というか、ゲームを遊んだ人ならなんとなく伝わるものが伝わらなかったりもします。その点で言うと僕もゲームが好きですし、水島監督も昔からゲームをプレイされているのでご相談はしやすかったです。
ただ単に早くからコミュニケーションしたというだけでなく、お互いの認識をすり合わせながら、ちゃんとおもしろいものを作る体制にできたのが、非常に大きいですね。
伊藤さん:企画に参加した当初は期待と不安が入り交じった状態だったんですけど、かれこれ1年半ぐらい一緒にやってきて、アニメとゲームが刺激し合って、お互いにいい作品作りにつながっているなと、少なくともゲーム側からはそう思いますね。
有澤さん:それはアニメ側からしてもそうです。
――先ほどお話があった、ゲームでキャラクターの深掘りができる点について、もう少し詳しく聞かせてください。
有澤さん:今の段階で言える範囲だと、アニメのストーリーをゲームでダイジェスト的に後追いすることができます。ゲームだとテキストでしっかり読めますし、ゲームでも3DCGのキャラクターがちゃんとお芝居してくれるので。ゆっくりとキャラクターを見ていられるかなと。
あとはもちろん、ホーム画面とかでキャラクターとコミュニケーションを取れる部分があったりもします。それからこれはまだまだ先の話ですけど、アニメでは描けなかったところを、ゲームでどんどん拾っていければと、今、進めています。
――今回こうしてアニメ側と協力して作業できることで、ゲームの開発にあたって具体的にどんなメリットがありましたか?
伊藤さん:アニメをそのままゲーム化しました、というだけではなく、新しいゲームとして自信を持って世に出せるクオリティにできているのは、アニメスタッフの皆さんの協力があってこそです。それが最大のメリットだと言えます。
『テイクオフガールズ』を制作する中でわかったのが、“アニメだと設定として起こさないんだけど、ゲームには必要だというもの”が割とあるんですよ。その逆のこともあったりしますが。
有澤さん:「ゲームってキッチリしてるなぁ……」とたびたび思わされましたよ(笑)。CGアニメという時点で、手描きで作画するアニメよりは設定を細かく作らないといけないんですけど、ゲーム制作で求められるものは、さらに細かい設定なんだと知りました。
アニメはある程度同じ人たちで毎週打ち合わせをして作っているので、わざわざ設定まで起こさなくても、お互いに感覚で理解している部分もあるんです。
でもゲームはいろんな人たちが開発に携わっているので、資料がすごくしっかり作られているんですよ。キャラクターのプロフィールなどはわかりやすい例ですね。
伊藤さん:そういえば最初、コトブキ飛行隊の6人のプロフィールを、根掘り葉掘り聞きまくった記憶があります。好きなものは? 嫌いなものは? みたいに。
有澤さん:正直言って、その時点でアニメではそこまで細かく設定されていなかったんです。そういう設定は、おもに水島監督と脚本の横手さんが物語を動かしていった中で発生するものなので。お話の中で「こうしたほうがおもしろいよね」というのであれば、設定もそうなっていくし。
伊藤さん:なので、最初は驚きました。アニメでは登場キャラクターの設定を詳細に作り込んだ上で制作するのではなく、物語と一緒に作っていくんだなぁ、と。
有澤さん:初期で作り込む作品もありますけどね。今回はそういう作り方だった、ということで。
伊藤さん:あと、ゲームでは戦闘機を3Dのモデルで作っているんですけど、今回はアニメのCGスタッフにご協力いただいて、ゲームの戦闘機の制作も一部お願いしているんです。
アニメだと空中を高速で飛んでいるので、戦闘機をじっくり見るのは大変だと思うんですけど、アニメで見た戦闘機をスマホの中でグリグリ動かして、「ここはこういう形になっているんだ」といった具合でじっくり眺められるのは、ゲームとアニメが連動しているメリットであり、楽しみのひとつですね。
有澤さん:制作体制の話で言うと、CGモデルをアニメとゲームで同じところが作っているというのは、結構スゴいことですよね。
伊藤さん:そうですよね。今回はアニメのCGスタッフと、ゲームのCGスタッフが1つの会議に参加して、お互いに刺激を受けあいながら作っています。その甲斐もあって、スマートフォンで動くゲームとしては、トップクラスのクオリティになっているんじゃないかと思います。
有澤さん:その時の会議はおもしろかったですよ。「ああ、職人同士が会話をしているな」という感じが伝わってきて。
伊藤さん:お互いに刺激し合っているのが、横で見ていてわかるんですよね。
有澤さん:しかもそこにミリタリー監修の二宮さんが入って戦闘機の話になると、みんな「へぇ~」って感心したようにうなずいていましたよね。あれはすごく不思議な空間でおもしろかったですね。
伊藤さん:ああいう時間を設けられたのは、アニメ・ゲームどちらにとってもラッキーなことですよ。
有澤さん:なによりも今回、監修物の中では戦闘機の監修が大変なんです。アニメに登場する戦闘機はその監修をくぐり抜けて作られたものなので、ゲームでまた別に戦闘機を作ってそれを監修するとなると、手間が膨大になってしまいます。
そういう点では、クオリティは上がっているんだけど、工程としてはむしろラクになっているというメリットはあったと思います。当然、あまり例のないやり方ですから、現場の皆さんには別の負荷があったと思うんですけど、同時進行できてよかったと思います。
伊藤さん:ただし、ゲームではスペックの都合上でどうしてもディテールを簡略化せざるを得ないところはあったりします。そこはお手柔らかに……。今日の“お手柔らかにポイントその2”ですね(笑)。
――まだ放送前ということで、これからアニメを観る皆さんに、お2人が特に注目してほしいキャラをお聞かせいただけますか?
有澤さん:僕としては全員ですね。メインヒロインの6人以外のサブキャラクターも、アニメの中では出番が少ないキャラももちろんいるんですけど、その短い登場シーンに個性がギュッと詰まっているんです。
これは水島監督と横手さんの作品の特徴なんですけど、本当にサービス精神が旺盛で、細かいところにまで情報が詰めるだけ詰め込まれています。ですから、できる限りキャラクターそれぞれに注目して見ていただきたいです。
また、アニメでは少ししか出番のないキャラクターも、ゲームだともうちょっとゆっくり出てくることもあります。そこでまた改めてキャラクターをじっくりと見てもらえるといいなと思います。
伊藤さん:“東京ゲームショウ 2018”のステージなどでも、「おっさんも出てくるよ」とお話ししたんですけど(笑)、おっさんのキャラクターもぜひ見てほしいですね。出てくる時間は短いですけど、存在感はバリバリにありますので。
有澤さん:今の段階では美少女と戦闘機って言ってますけど、大丈夫かな?(笑)
伊藤さん:“TAMASHII NATION 2018”のトークショーで有澤さんが言っていましたけど、アフレコ現場も本当に、ダンディズムあふれるベテランの方が多いですよね。
有澤さん:ならず者のおっさんが大勢いる荒野で、強くてキリッとしているコトブキ飛行隊の6人が活躍するというお話ですからね。アフレコの現場でも若い女性6人が主役を一生懸命がんばっている脇に、実力のあるベテラン勢が顔をそろえているのが、すごくいい雰囲気ですね。
水島監督と横手さんの作品って、悪役であってもチャーミングな部分があるというか。見た目はおっさんかもしれないですけど(笑)、かわいらしい部分もたくさんあるので、そこを見てあげてほしいなと。この世界の住人を好きになってもらえると嬉しいです。
――『荒野のコトブキ飛行隊』では、ここまでお話を伺ってきたように、アニメとゲームがほぼ同時に制作されていて、さらにフィギュアなどの展開も同時進行していますが、いったいなぜこのような展開になっているのでしょうか?
有澤さん:TVアニメって今、1クールものが非常に増えていて、サイクルがめちゃくちゃ早くなっているんです。特にオリジナル作品だと、一番人気が熱い時期にゲームやグッズを展開できないという問題を、ずっと抱えていて。
アニメの放送が終わって、その反響を見てからゲームやグッズの企画に着手していくと、どうしても放送が終わってから半年後、1年後に出てくる形になってしまいます。一番ほしい時に肝心の商品がないというのは、お客さんにとっては決していいことじゃないと思うんです。
――それはたしかによくわかります。
有澤さん:『荒野のコトブキ飛行隊』は水島監督のオリジナルで、空戦もので、魅力的なキャラクターもいてという、注目を集める要素がたくさんあるので、これは企画のスタートから全力で展開したいと考えたんです。
ただ、それに乗ってくれるところを探すのは難しいんですよね……。いくら水島監督の作品といっても、『荒野のコトブキ飛行隊』自体は誰も見たことのない作品で、何の実績もありませんから。
その時に、「そういえば我々はバンダイナムコグループだよね」という話になって。それで各社にダメ元で相談してみたら、バンダイナムコエンターテインメントさんもBANDAI SPIRITS(※当時はバンダイ)さんも「やりましょう!」と言ってくださって。すごくビックリしましたね。まだ何もできあがっていない段階だったのに。
伊藤さん:ビジネスの理由というよりは、『荒野のコトブキ飛行隊』の企画の種をいろんな大人が見て、「これだ!」って思ったからじゃないでしょうか。僕はそうだと思います。
有澤さん:今はお客さんの楽しみ方自体も多様化しているので、アニメだけを繰り返して楽しむ人もいれば、フィギュアやゲームや声優さんのイベントなどに重きを置く人もいます。いろんな楽しみ方に最初から対応していけるコンテンツにするには、皆さんのお力をお借りするしかないなと。
なので本当に、ただの1クールアニメで終わらせないために、最初の段階からちゃんとやろうというのが理由ですね。みんながおもしろいと言ってくれているのに、1クールだとなかなかそこから先に展開できずもったいないというのが、今のアニメ業界全体の思いでもあるので。
――では最後に、放送開始を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。
伊藤さん:アニメを楽しみながらゲームも楽しめるというのが、このゲームの最大の魅力だと思っています。ですので、サービス開始が近づきましたら必ずお知らせします。
年が明けて1月13日からアニメが放送されますので、まずはそれを忘れずに、楽しみにしてもらえればと思います。
有澤さん:オリジナル作品なので、どんなキャラクターが登場するか、どんな戦闘機が登場するか、どんなストーリーなのか、毎回新しい驚きがあると思うので、次に何が起こるか分からないというオリジナルならではの楽しみを、最大限楽しんでいただけたらと思います。
まずは本編を見ていただいて、おもしろいと思っていただけたら、そこからゲームやフィギュアやいろんなところに入ってきてくれると嬉しいです。そのためにもまずは、1月13日から放送されるアニメをぜひ見てもらえればと思います。
ここからは延長戦として、完成品フィギュアブランド“TAMASHII NATIONS”を展開しているBANDAI SPIRITSの林佳奈子さんにも加わっていただいて、『荒野のコトブキ飛行隊』関連のプロデューサー3名による鼎談をお届けします。
ゲームと同様にフィギュアでも、アニメと並行して商品の開発を行う大変さと、その苦労を上回るメリットがあったとのことで、非常に興味深い話題が語られています。
▲左から伊藤さん、有澤さん、林佳奈子さん。 |
――まずは自己紹介からお願いします。
林さん:BANDAI SPIRITS コレクターズ事業部で、商品企画を担当しております、林と申します。『荒野のコトブキ飛行隊』では、コレクターズ事業部で扱っているハイターゲット向けの商品、主にフィギュアなどのアイテムまわりのプロデュースを行っています。
――『荒野のコトブキ飛行隊』では、どのようなアイテムが発売されるのでしょうか?
林さん:実は2019年から、“Figuarts mini(フィギュアーツミニ)”という、TAMASHII NATIONSの新しいデフォルメフィギュアのブランドを立ち上げるんです。
アニメ『荒野のコトブキ飛行隊』が放送している2019年1月から3月のタイミングで、コトブキ飛行隊6人のFiguarts miniが、毎月2体ずつ発売されます。
加えて、“フィギュアーツZERO”という固定ポーズのフィギュアのシリーズでの商品化や、Figuarts miniのサイズ・デフォルメ感に合わせた戦闘機など、いろいろな展開ができるように準備しているところです。
――放送中に発売される、Figuarts miniの注目ポイントはどこでしょうか?
林さん:デフォルメフィギュアは他社さんからもいろいろと出ているんですけど、今回新たにブランドを立ち上げるにあたって、個性を出したいと思って、顔の作り方にこだわってみました。
デフォルメだとリアル等身のフィギュアよりも顔が大きくなるんですが、その中でも目の存在感を出したいなと思って、アイラインを立体的にしてみたり、眼球を平面じゃなくて丸みをつけたりしています。目の表現は、今回のこだわりのポイントですね。
▲まつげや目の部分など、単にプリントしたものではないことがわかるでしょうか? |
――たしかに、アイラインの部分などはプリントではなく実際に立体になっているんですね!
林さん:手足は見た目よりも動きますね。ケイトは足もペタンと座るぐらいの可動はできますよ。
有澤さん:スカートが柔らかい素材なので、結構足も動かせるんですよ。
林さん:そうなんです。ケイト以外は全員スカートなので、そこが難しかったところなんですけど。スカートが実際の布だと跳ね返りも少ないんですけど、プラスチックで作るというところで、ずいぶんと試行錯誤しました。
――アニメの放送と同時期にフィギュアを発売するのは、難しいことだと思うのですが?
林さん:工場が中国にあるんですけど、そこから船に乗せて日本の店頭に並ぶまで、2~3週間はかかるんです。その前の生産に1カ月ぐらい必要なので、両方を合わせるとそれだけで約2カ月かかるのが、フィギュア商品では一般的です。さらにその前に原型製作や、金型、彩色の調整といった工程があり……なので、1クールアニメの放送期間に商品のリリースを合わせるのは、かなり難しいですね。
原型ができてから半年ぐらいで商品の形になるんですが、金型を彫ってしまうのでその後に修正を加えるのは難しく、商品が出る半年前の段階で、いろいろと決めなければいけないんです。そんな中、『荒野のコトブキ飛行隊』は早い段階からかなり具体的に、「こういうキャラクターです」という情報をいただけたので、とてもありがたかったですね。
イラストを元にして作る方法も、できなくはないんですけど、どういう性格なのかといった情報があると、表情の作り方とかそういうところで、かなりやりやすくなります。特に、今回は原作のないオリジナル作品でキャラクターの情報はいただかないとまったくわからない要素なので、これも早い段階から一緒に動くことができたメリットですね。
――林さんも、アニメの制作の打ち合わせに参加されたりしたのですか?
林さん:私はストーリーの打ち合わせには入っていないのですが、フィギュア化にあたりキャラ設定情報を早めにいただいたりしていました。
また、固定ポーズのフィギュアシリーズであるフィギュアーツZEROの検討段階では、どんなポーズや表情にしましょうか? という相談も早い段階からさせていただきました。「この子はこういう性格だからこういうポーズや表情がいいですよ」などのリアクションを早くいただけた点も、主にクオリティの面で大きなアドバンテージになったと思います。
有澤さん:シナリオや絵コンテは、かなり早い段階から共有していますよね。
林さん:そうですね。なので、この子は劇中でこういう活躍をするというのを、モノ作りの参考にさせていただいたりとか、ここでこの子がフィーチャーされる回があるから、商品を用意するタイミングを合わせたりだとか、そういったことが可能になっています。
――造形の資料については、いかがでしょうか?
林さん:作画のアニメだと後ろから見た設定画がないといったこともあるんですけど、今回はCGで作画されているので、360度をグルッと見られるんです。細かいところがどうなっているのか、非常にわかりやすかったです。
伊藤さん:それにしても、先ほどの商品を中国から船で輸送する船の話とかを聞いてもわかると思うんですけど、フィギュアってやっぱり、かなり早い段階で動かないといけないんですよね。
有澤さん:初めてキリエの原型を持ってこられたのは、かなり早かったですよね。「作っちゃいました」って(笑)。
林さん:あれは、気合いの表れです(笑)。最終的な落とし込みは立体なので、その良さをアピールするには企画書やイラストではなく、やっぱり立体でしょうと。もちろん、積極的にやりたいとも思っていたので、気合いを入れて作って持って行きました。
伊藤さん:ゲームもそうですよ。ゲームは遊んでみないとわからないですから。
林さん:Figuarts miniに関しては、デフォルメのアレンジがいろいろ出てしまうとどれがどれだかという感じになってしまうこともあって、今回は公式のデフォルメキャラクターとFiguarts miniのデザインを、フィギュアを基に最初から一緒にする形で進めさせていただきました。
有澤さん:アニメの公式HPにもいる公式のデフォルメキャラのデザインを、Figuarts miniのデザインに合わせてBANDAI SPIRITSさんと一緒に作らせていただいたんです。フィギュアそのままだとデフォルメのイラストにした時には微妙だからとか、お互いにバランスを取り合って作りました。
▲デフォルメイラスト(上)と、Figuarts mini(下)。 |
林さん:平面の絵と実在する立体って、同じように作ったつもりでも見え方が違ったりするんです。それぞれがちゃんとかわいらしく見えるように、とご相談をさせていただきながら進めました。私もフィギュアは何度も企画していますが、こんなにたくさんの絵素材を手配したのは初めてですね。
有澤さん:フィギュア化していないキャラクターのデフォルメキャラまで、BANDAI SPIRITSさんにお願いして作っているんです。それもアニメの企画の早い段階から、商品企画も一緒に動いているからできたことですね。
林さん:一般的にデフォルメフィギュアを作る場合、「デフォルメの絵素材がありますので、それを参考にしてください」というところから始まって、それに合わせて作るのか、それとも独自のアレンジで作るのかみたいな話になってくるんです。今回は公式のビジュアルの段階からご相談させていただけたので、よかったと思っています。
伊藤さん:フィギュアとゲームのコラボも、ぜひやりたいなと思っているんです。『テイクオフガールズ』では、自分の戦闘機の塗装のデザインを変えられるので、尾翼にこの子たちの姿が描かれている、みたいなものもできたら楽しそうだと思うんですよ。
有澤さん:今回は戦闘機がモチーフなので、立体造形物との相性がすごくいいでしょうしね。
林さん:隼一型のプラモデルを『荒野のコトブキ飛行隊』仕様にペイントして、そのスケールに合わせたヒロインたちの小さなフィギュアを自作して飾ったりしているファンの方もすでにいらっしゃいますからね。
伊藤さん:まだ放送前なのにすごいですね。
林さん:そういった方たちからすでに注目をいただいているぶん、立体造形物にかなり目の肥えた方が多いんじゃないかと思うので、がんばりたいと思います。
伊藤さん:個人的にも楽しみなところですね。
有澤さん:デフォルメフィギュアなので、どのスケールのプラモデルと並べても、しっくりくると思いますよ。
――では最後に、林さんからも読者の皆さんにメッセージをお願いします。
林さん:実際に手で触れて楽しめるところが、実物のあるフィギュアの魅力だと思います。Figuarts miniは、サイズ感や価格も皆さんの手に取ってもらいやすいものになっていますので、ぜひ楽しんでいただければと思います。
■TVアニメ『荒野のコトブキ飛行隊』
【放送情報】
TOKYO MX:2019年1月13日より毎週日曜22:30
テレビ愛知:2019年1月13日より毎週日曜26:05
MBS:2019年1月15日より毎週火曜27:00
BS11:2019年1月15日より毎週火曜24:00
【スタッフ】(※敬称略)
監督・音響監督:水島努
シリーズ構成:横手美智子
メインキャラクター原案:左
キャラクターデザイン:菅井翔
ミリタリー監修:二宮茂幸
ミリタリー設定:中野哲也、菊地秀行、時浜次郎
設定協力:白土晴一
副監督:神戸洋行
3D監督:江川久志
テクニカルディレクター:水橋啓太
アセットディレクター:小薬健太郎
総作画監督:中村統子
作画監督:上野翔太
美術監督:小倉一男
美術設定:須江信人、志和史織、小川さくら
色彩設計:山上愛子
撮影監督:篠崎亨
編集:吉武将人
音楽:浜口史郎
音響効果:小山恭正
サウンドミキサー:山口貴之
制作:デジタル・フロンティア
アニメーション制作:GEMBA
作画制作:ワオワールド
【出演声優】(※敬称略)
キリエ:鈴代紗弓
エンマ:幸村恵理
ケイト:仲谷明香
レオナ:瀬戸麻沙美
ザラ:山村響
チカ:富田美憂
マダム・ルゥルゥ:矢島晶子
サネアツ:藤原啓治
アンナ:吉岡美咲
マリア:岡咲美保
アディ:島袋美由利
ベティ:古賀葵
シンディ:川井田夏海
ナツオ:大久保瑠美
ジョニー:上田燿司
リリコ:東山奈央
(C)荒野のコトブキ飛行隊製作委員会
(C)BANDAINAMCO Entertainment Inc