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2018年12月17日(月)

『FFXIV』戦闘の根幹を築いた鬼才・横澤氏が語る、バトルコンテンツの在り方とは――?【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 先日、アメリカ・ラスベガスで開催された『ファイナルファンタジーXIV(以下、FFXIV)』の大規模イベント“ファンフェスティバル 2018 in ラスベガス”では本作の新たな展開となる拡張パッケージ『漆黒のヴィランズ』などが発表され、これまでにない大きな盛り上がりを見せました。そんな『FFXIV』の魅力をさらに拡大してお伝えすべく、そのときどきでタイムリーな話題を追いつつ展開する開発インタビュー連載企画第2弾!

 今回は、本作のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏が“天才”と評した本作のリードバトルシステムデザイナー・横澤剛志氏にインタビュー。彼の手がけたコンテンツや、仕事へのスタンス、そして今最も注目されている青魔道士など、バトルにまつわるさまざまな要素についてお伺いしました!

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

※本インタビューは“ファンフェスティバル 2018 in ラスベガス”2日目、プロデューサーレターLIVEの直前に行われたものです。

この人なしでは完成しなかった『FFXIV』のバトルシステム

――横澤さんは、『新生編』から『FFXIV』のチームに入られたとお聞きしておりますが……。

横澤剛志氏(以下、敬称略):『FFXIV』チームに異動してきたのは、『旧FFXIV』で”月下の戦い(ネール・ヴァン・ダーナスとの戦闘)”が実装されたぐらいのタイミングです。当時のバトルセクションには権代(光俊氏。本作バトルセクション:マネージャー)と松井(聡彦氏。現『FFXI』プロデューサー)しかいなかったので、そこに自分と佐藤の2人が同時に異動してきました。異動してきて、すぐに『新生FFXIV』のリミットブレイクの企画書を書いたり、各種計算式を書いたりといった作業に取り掛かりました。

――『FFXIV』は、『旧FFXIV』のシステムとはガラリと変わった仕様になっていますが、その根幹の設計からかかわっていたということでしょうか?

横澤:そうですね。我々が異動してきた時は、オートアタックでTPがたまっていくという『旧FFXIV』のシステムのまま開発が進んでいました。しかし、そのままだと今後の展開が厳しいだろうという話がチーム内で出ていたので、我々も参加して何度か調整を繰り返して今のようなシステムに変えていきました。

――そのときの吉田さんの反応はいかがでしたか?

横澤:吉田的にも、もともと大きく変えるつもりだったそうで、吉田も含めて話し合いを行いました。

――その時点で、“『FFXIV』をどうしていこう”という明確なビジョンはあったのでしょうか?

横澤:『World of Warcraft(以下、WoW)』という偉大なMMORPGがあったので、そこから学ぶべきポイントは多いだろうと考えていました。自分も佐藤も『WoW』プレイヤーだったので、これからのMMORPGというジャンルを作るうえで、プレイヤーのみなさんから何が求められているか、逆に何を外していくべきかといった部分を、プレイヤー側の感覚を含めて多くを研究・提案していきました。

――なるほど。ちなみに、横澤さんはMMORPGが大好きとお聞きしましたが、これまでどのようなMMORPGをプレイされたのでしょうか?

横澤:いろいろです。有名どころも多く触ってきましたが、初めて触れたMMORPGは『ラグナロクオンライン』です。まだMMORPG黎明期でしたから、素直に「すごいな」と思って遊んでいました。あとは、有名どころだと『TERA』や『タワー オブ アイオン』など……MMORPGが多数出ていた時代だったので、ほかにもマイナーなものもチラホラと触ってはいます。『FFXIV』の開発が始まってからは、そんなに多くの時間を取ることができなくなってきたので、勉強になりそうな重要作品を触るぐらいになりました。

――バトルの計算式を作るというところで、昔のMMORPGをプレイしてきた経験が活きていると感じることはありますか?

横澤:いろいろなゲームの計算式を見てきたので、参考にはしています。

――計算式を手がけたということは、ジョブ能力の最終的なバランスを司っていると言っても過言ではないと思います。現在でもバランス調整にかかわっているのでしょうか?

横澤:チェックはしていますが、実際に数値を決めるのは別のスタッフです。“何分間計測して、どれぐらいのダメージが出る”という目安を算出できる開発者向けのツールを作るなど、アクションの数値を決定しやすいような仕組みを作っているのが自分の役割になります。

――『旧FFXIV』から、システムや計算式といった変更されたものがあるのと同時に、“コンテンツのギミックを解いてクリアを目指す”といった部分は継承されています。そこは、意図的に残したのでしょうか?

横澤:“『旧FFXIV』のシステムを踏まえて、『新生FFXIV』はこうしよう”といった意図は、まったくありませんでした。“本来あるべきだった『FFXIV』はこういうゲームである”という専用の企画として考え直して、今のような形に提案しています。

――『FFXIV』を新生する際には、開発チーム内で多くのやりとりがあったと思います。そのなかで、とくに思い出に残っているエピソードがあれば教えてください。

横澤:新しいゲームとして新生するにあたって、旧アクションの効果をそのまま使うわけにはいきません。そのため、各ジョブをどう作り直すかということを考える必要があって、どう作り直したいかというのを自分と佐藤で練り、権代に提案をするという作業を繰り返していました。

 最初のほうは自分も作業に慣れていなかったこともあって、なるべく大きく変えずに進行できるジョブから調整していきました。例えば、タンクとしてオーソドックスな性能を持つナイトです。その作業で、「ここをこう変えたいです」というのを旧アクションリストに赤文字で書いていくのですが、はじめのうちの赤文字は、ちょっと注釈が入るぐらいの量でした。

 ですが、後半になるに連れて赤文字の量が増えていきまして、最後にモンクのアクションリストを提出したときはほぼ全部が真っ赤という状態で……(苦笑)。それを見た権代に「よくもまあここまで変えたな……」という反応をされたのは、よく印象に残っています(笑)。

――たしかに、モンクの型によるコンボの流れは、かなり洗練されていますよね。疾風迅雷も含め、ほかのジョブのコンボと比べてかなり特殊だと感じます。

横澤:「そういうジョブがあってもいいんじゃないかな」という、新たなコンセプトを出しておきたかったということが大きいです。モンクだけでなく、『FFXIV』の根底には“各ジョブがそれぞれ違う遊びを体験できる”というコンセプトがあって、それを打ち出した結果の仕組みとなります。

――そのコンセプトが礎になって、作られているわけですね。

青魔道士の設計も担当! バトルシステム班の主な仕事とは?

――バトルシステム班のメンバーは、個々で何かしらのコンテンツを請け負うスタイルが多いのでしょうか?

横澤:蛮神やダンジョン以外のコンテンツも増えてきていますので、何かしら担当していることが多いです。例えば、ディープダンジョンや初心者の館は新しい仕組みが必要なので、そういったものはバトルシステム班が引き取って仕様設計などを担当しています。

――ディープダンジョンは、これまでの仕組みが流用できないから、1から育てていく形にしよう……といったイメージですか?

横澤:そうですね。“ベテラン勢と初心者が一緒に遊べて、両方が得をするようなコンテンツを作ってくれ”という、すごくザックリとしたオーダーがきたんです。「ローグライクゲームである『不思議のダンジョン』のようなプレイ感で、コンテンツ名はディープダンジョンだ!」と言われちゃいまして(笑)。

 こういうザックリとしたオーダーのときは、「こういう感じの意図なんだろうな」ということを想像するところからスタートします。レベル1とレベル60のプレイヤーが一緒に遊べるということは、「少なくともコンテンツの中には外側のレベルを持ち込んではいけないよな」というところから、“中での成長システムがある”という発想につなげていきます。そういった流れで、外堀を埋めていくと企画の内容が自然と出来上がっていくイメージです。これで伝わるでしょうか……。

――“必要なもの”をまず考えて、そこから作っていく感じでしょうか……?

横澤:考慮しないといけないものをバーっと埋めていくと、必然的に必要なものが出てくるので、それを企画にするというのが自分の仕事のスタイルなのかもしれません。

――なるほど。ちなみに、ディープダンジョンの場合は横澤さんはどういった部分にタッチされていたのでしょうか?

横澤:ディープダンジョンの仕組みを作った上で、バランスに影響する数値設定などほぼ全ての調整を行いました。その上で、モンスターの配置や出現エリアの設定などレベルデザインは別のスタッフが担当しています。バトルシステム班、モンスター班、レベルデザイン班がこのように役割を分担して作り上げていくことも多いです。

――ディープダンジョンで、コアプレイヤー向けの部分としてはどういった部分に注力しましたか?

横澤:ソロで遊べるモードを意図的にいれて、縛りプレイのような遊び方ができるようにしておいたところです。ランキングも作って、誇示できる要素も入れました。

――実装当時は、ソロでどこまで行けると思っていましたか?

横澤:じつは、クリアは無理かもしれないな、と思っていました(笑)。その後、『紅蓮編』で赤魔道士が実装されたときに、そろそろクリアできる人が出てくるかも、と。

――死者の宮殿と比べて、アメノミハシラは難度が低かったように感じましたが、これは意図したものなのでしょうか?

横澤:はい、これは意図したものです。死者の宮殿の200階は長かったので、アメノミハシラでは100階に減らしましたが、それだけでも死者の宮殿より簡単になるだろうと考えていました。

――ちなみに、階層ごとのバランスは、どのように調整されたのでしょうか?

横澤:「この層に到達する頃には、確率的に装備の強化値はこのくらいになるだろう」という装備強化のシミュレーションデータを作成し、それに合わせて敵の強さを確認して配置を行いました。

――階層ごとに強化度にシンクがかかりますが、このシンクの値はどのように決めているのでしょうか?

横澤:敵を一撃で倒せてしまうとバランスが破綻してしまうので、例えば通常想定の3倍ぐらいを与ダメージの指標とする、といった考え方でシンクの上限を設定しています。

――ソロでも勝てる敵がどの階層にもいますが、そこは意図的でしょうか。

横澤:はい、それも意図的にそうしています。最初の印象では「ソロは無理だろ!」と感じてもらいつつ、プレイ経験を積み、しっかり状況を見てみれば、きちんとクリアできるというところを目指しています。

――しっかりと抜け道を用意しているんですね。では、逆にコンテンツを請け負っていないときは、どのような仕事をされているのでしょうか?

横澤:いろいろやっています。例えば、今回の青魔道士の企画と設計も自分が担当していますし、禁断の地エウレカの裏方の整備をしたりですね。

――コンテンツの、バトルの仕組みそのものに横澤さんが常にかかわっているという認識で合っていますか?

横澤:そうですね。リリースされているバトルコンテンツは基本的にすべてかかわっています。担当はしていないけれど、うっすらとタッチしているものもあって、そういった作業はずっと発生し続けています。ということで、要約すると“いろいろやっている”になります(笑)。

――最近では、どういったことにタッチしていますか?

横澤:パッチ4.3の絶アルテマウェポン破壊作戦が終わってからは、ずっと青魔道士の整備をしていました。

――青魔道士がレベル50までというのは驚きましたが、これは企画初期の段階で決まっていたのでしょうか?

横澤:数値データは量産できても、それに伴うグラフィックスデータや技のプログラムといったリソース量にはスケジュールによって限りがあります。それによってパッチ4.5でのリリースまでに作れる青魔法の総数が決まります。ラーニングできる青魔法の総数が決まっている状態でレベルの上限をこれ以上上げたとしても、レベリングしている最中に何もラーニングできる青魔法が無い、というレベル期間が生まれてしまいます。これでは面白くないレベル帯が出来上がってしまいます。ですので、初期リリースできる青魔法の数とコンテンツの密度などを踏まえて考えた結果、初期リリースはレベル50が適切だということで、吉田に提案してそこを区切りとしました。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

――なるほど。今後も含めて、ちゃんとした密度をキープするためにも、まずはレベル50からということですね。

横澤:初期リリースでは無理にレベルキャップを上げるよりも、レベル50で止めたほうが遊びとしての厚みが出ると考えました。

――今後、青魔道士はどういう立ち位置にしたいとお考えですか?

横澤:どちらかといえば、新ジョブというよりも、ジョブを含めた新コンテンツだと思ってもらったほうがいいと思います。その分だけ遊び方次第で、色々な可能性のあるジョブに仕上がっていますので、遊び方を探すというのも青魔道士の特徴になるかと思います。

――青魔道士というコンテンツそのものを楽しんでほしいということですね。ちなみに、調整としてはどういう部分に注力されましたか?

横澤:青魔道士に関しては、“青魔法を使った時や、それを駆使した時の見た目が面白いこと”が重要だと考えていて、それができなければそもそも青魔道士を作る意味がないと考えています。他のジョブとの比較や、数値バランスはガチガチにすることをせず、“遊んでいて楽しい”プレイ感を重視しました。  そのうえで、このジョブは“青魔道士っぽさ”が最も重要だと思っています。吉田も自分も“ラーニング”という遊びそのものが青魔道士の特徴であり、それこそが青魔道士だと考えています。青魔道士を無理やり『FFXIV』のシステムに合わせた結果、ラーニングという遊びが無く、使う青魔法が他のキャスターと実は大差がないような青魔道士というのが、一番ダメな展開だと思っています。誰もが“これは青魔道士だな”と思えるものを作ろうというところが根本の部分になります。

大迷宮バハムートはプレイヤーと開発チームの両方に向けて作っていた!?

――現在のレイドの根幹となった大迷宮バハムート:邂逅編を作ったのも横澤さんとのことですが、どういったコンセプトで開発されたのでしょうか?

横澤:邂逅編は『新生FFXIV』における最初の高難度レイドだったので、この企画を考えるにあたって2つの明確なコンセプトを決めました。1つがプレイヤーのみなさんに対するものですね。“新生FFXIVにおける高難度レイドがどういうものなのか”ということを理解してもらうために、“ギミックを1つ1つ越えていく”という達成感を得られるようにしています。ツインタニアが顕著ですが、バトルの各フェーズでやることを大きく区切り、フェーズを超えていくことで、バトル自体が進んでいるという感覚を得られるような構成にしようとしました。

 そして、もう1つが開発向けのコンセプトです。ひとつ目のレイドということで、“レイドを作るということがどういうことなのか、リソースや実装コスト感のひな型、また企画はどういうことを考えて作ればいいのか”こういったことがわからない状態の手探りでもあったので、少なくともその方向性示せるようにしようと思っていました。これらの理由から、今後のためにもきっちり資料を残し、レイドの雛形として開発していました。

――今後の土台を作るための“開発チーム向け”でもあったと。

横澤:はい、そのつもりでも作っていました。

――邂逅編は、ボスまでの道中にも多くの敵が存在するなど、今のレイドとはコンセプトが違った気がしますが、当時はレイド“ダンジョン”という位置づけだったのでしょうか?

横澤:最初はそうでしたね。吉田が元々出していたテーマが“大迷宮”だったので、レベルデザインの担当者がダンジョン自体をデザインし、“そこに登場するボスやバトル内容”という部分を自分が担当していたのです。邂逅編1層のボスまでの道のりや、ボス戦の段差とかは、じつは自分が考えたわけじゃないんです(笑)。ボスのギミックのために段差があったわけではなく、段差が先にあってそこで戦うボスを作った感じです。ですので、今のレイドとは大きく形式が違いますね。

――邂逅編1層のカドゥケウス戦などでフィールドそのものが戦闘ギミックになっていたのは、環境が先にあったからこそなんですね。

横澤:そうです。あの環境で楽しい戦いをするにはと考えて、スライムを移動させたりといったギミックを作ったということになります。

――邂逅編5層が現在のレイドにおける“基本”になっていると思いますが、あのツインタニアを作る際には開発内にどういったプレゼンをされたのでしょうか?

横澤:あの時は開発の末期で、時間的に厳しい感じだったので、「こうあるべきだ」と熱く語った記憶はないです(苦笑)。ただ、1つずつ越えていく楽しみがあるべきだという話はしました。

――いわゆる新式装備にフル禁断で挑むような最新の高難度バトルコンテンツは、本当にギリギリの戦いになります。そのバランスは毎回秀逸だと感じているのですが、あのギリギリさはどうやって出しているのでしょうか。

横澤:特定のアイテムレベルで、各ジョブに“どれぐらいのダメージが出るのか”という指標があります。バトル時間とギミック処理時間を考慮して、そこから各担当がざっくりとした敵のHPを設定します。「ボスを攻撃できる時間がこれぐらいあって、ギミック処理のみの時間がこれぐらいある。そのときのアイテムレベルがこれぐらいだと、何分くらいのバトルならこのHPだ」というのを各担当に決めてもらうわけです。

 そこから実際にバトルシステム班とモンスター班で8人プレイをしてみて、まず“クリアできる”という状態を作ります。そのうえで、“零式”だから我々でも気持ちよくクリアできるくらいにしようとか、「せっかくのオメガなんだから、ちょっとだけ盛ろうぜ!」といった微調整をしています(笑)。

――何度もプレイして調整するんですね!

横澤:少なくとも、バトルシステム班とモンスター班合同パーティで、プレイヤーの皆さんと同じ環境でクリアできるまではプレイします。……“絶”以外は(苦笑)。

――“絶”以外は、というと?

横澤:“絶”は、求められている難度的に、固定ではなく寄せ集めの我々程度が、開発と同時進行というプレイ時間でクリアできるものではダメだと考えているからです。

――実地クリアできないとなると、そこのバランスはどうやって決めているのでしょうか?

横澤:開発には、各フェーズを区切りながらプレイできるデバッグ環境があります。それを使って、繰り返し各フェーズをプレイし、話し合い、値を設定しながら、“論理的にクリアできる”と合意できれば、そのフェーズはOK、という形をとっています。そして最後にコンテンツの公開ギリギリまで、バトル開始から全フェーズの通しプレイをして、MPが足りるか、バフが回るかというチェックを行い、コンテンツとして破綻していないかの確認をして公開に至ります。

――なるほど。そう考えるとますます、新しいコンテンツが出てくるたびに新しい発想のギミックが登場することに驚きを隠せません。このようなアイデアは、どうやって生み出されているのでしょうか?

横澤:コンテンツ担当が“何をしたいか”を決めていて、できる限りそれを大切にしているからだと思います。開発チームにはたくさんのスタッフがいて、だからこそ、いろいろな発想が生まれるんだろうなと思います。1人で考えていたら、当然似通ったものになってしまいますから、新しい風というか、各コンテンツ担当がいるからこそ新しい発想が出てきています。

――ちなみに、横澤さんはどういった方向性のギミックが好きですか?

横澤:自分は、頭を使って解くギミックが好きです。開発者としては、どちらかといえば、決められた動きをすればクリアできるというギミックは、そんなに好きではないです。自分がプレイするぶんには、気にしないんですが、不思議ですね(笑)。

――解法を考える楽しみを見出すタイプなんですね。そういうタイプのコンテンツといえば、絶アルテマウェポン破壊作戦以外ですと……邂逅編2層のアラガンロットが印象的です。あれは、どういう発想で作ったギミックなのでしょうか?

横澤:先程の話に通じる部分ですが、高難度レイドの方針の1つとして、“自分以外の仲間を強く意識しなくてはいけない”というコンセプトを示したギミックを入れないといけないな、と漠然とした概念からスタートしています。そのうえで、「あの狭い部屋で受け渡しをすれば、そういう考えや達成感が得られるんじゃないか」というところからギミックを思いつきました。

――ちなみに邂逅編2層は、いわゆる時間切れ戦法が生み出されましたが、あれは想定されていたのでしょうか?

横澤:想定外でした(笑)。当時は我々も慣れてなかったので、そういうことが起きてしまったのですが、それはそれで良いんじゃないかなと。時間切れを待つのも、その分だけ時間を消費しますし、面倒でもあります。あの戦法が出来ることによって、プレイヤーのみなさんに不利益が発生するわけでもないですし、そういう事情もあって、そのままでいいかなという結論になりました。

――普通にやったほうが早いじゃないかという説もありますよね(笑)。邂逅編2も、戦う相手を選んで最終的にボスと戦うという、今にして思えば珍しいバトルでした。

横澤:「たくさんの部屋があるマップでボス戦を」というオーダーから、「必ずしも答えが1つでなくていいかな」という自分のレイドに対する考え方を踏まえて、試しに作ってみたものですね。

――ちなみに、明確なボスがいない邂逅編4層のようなコンテンツもテストケースとして作ったのでしょうか?

横澤:そういうものがあってもいいんじゃないか、という感じで作りました。大迷宮バハムート:真成編ぐらいまでは、1つのレイドを1人が担当していました。ですので、あの時のような変わり種みたいな発想ができたんですけど、最近は1つのボスを1人が担当するという形になっているので、そういう変わり種を用意することが逆に難しくなってきている気がしますね。

 邂逅編4層以外だと、機工城アレキサンダー:起動編2層は変わり種ですよね。あれは、起動編2と4を自分が担当していて、「起動編4がボスだから、起動編2は通常モンスターがフェーズで出てくるものにしてみるか」という発想があったからなんです。

――横澤さんがギミックなり、コンテンツなりを考える際に、必ず意識していることはありますか?

横澤:自分は設定から入る方の人間で、少なくとも“ボスがこのギミックをどういう意図で行っているか”を全部説明できるようなものを作るということを意識しています。

――今にして思うと、ツインタニアの拘束具は“先に壊したものを後に利用する”という、横澤さんらしいギミックだと感じました。

横澤:あれは、自分のなかでは“ツインタニアのエーテルを抑えているもの”という設定なんです。あれが壊れることで、ツインタニアがエーテルを用いた技を使ってくるようになるという裏設定があるんです。実際、序盤は物理攻撃と火を吐くぐらいしかしてきませんが、拘束具を壊すことでエーテリックプロフュージョンといったエーテルを使った攻撃をしてきます。また、だからこそエーテルを使った技に関しては、壊れた拘束具の上に乗っていれば軽減ができるわけです。そういった設定も含めて、ツインタニアを作りました。

――自分の中のストーリーに則って、作っているんですね。

横澤:そうです。それがみなさんに伝わっていたかどうかは、正直わからないですが(苦笑)。

――『FFXIV』のバトルコンテンツは、それそのものが1つのマンガやアニメになっても成り立つようなドラマを秘めていると感じます。とくに、絶バハムート討滅戦はそう感じました。

横澤:あれは須藤(賢次氏。バトルコンテンツデザイナー)の持ち味な気がしますが……(笑)。そういう背景が考えられていたほうが、コンテンツとしての厚みが出るので、間違いなくあったほうがいいと思っています。

――今後のバトルコンテンツについて、横澤さんがチャレンジしてみたいことはありますか?

横澤:それを言っちゃうと、実際に作ったときに「これかー」となっちゃうので、言わないでおきます(笑)。

――“プレイヤーにどういった体験をしてもらいたい”みたいな、フワッとした形ではいかがでしょう?(笑)

横澤:驚いたり、感心したりしてもらえるようなものを作りたいと、常に思っています。そういった意味で、新しい体験を提供していきたいです。ですので、もし次に自分がバトルコンテンツを作るときは、新しい体験が起きるときかなと思います。

――逆にバトルコンテンツ以外で、やってみたいことはありますか?

横澤:バトルにかかわっているときが一番楽しいので、ほかになにかというのはないですね。「バトルでいい!」というのが本音です(笑)。

――最後に、バトルコンテンツのなかで、作っていて一番楽しい部分は何でしょうか?

横澤:「こういうものを作れば、こういう反応をしてくれるかな」ということを想像しながら、バトルコンテンツを作るのが一番楽しいです。実際にそういう反応をしてもらえたら、作ってよかったなという気持ちになります。少しイジワルな言い方をすれば、思い通りにいってくれるとうれしいですね(笑)。

――ありがとうございました!

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)
▲こちらはあえて「イラストに似せたポーズで!」とお願いして撮らせてもらった写真。快く応じていただけました……!
『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

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