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2019年1月30日(水)

『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』伊藤Pと吉田Dを直撃。エンタメとリアルのバランス取りが肝要

文:電撃オンライン

 バンダイナムコエンターテインメントより、2019年冬に配信予定のiOS/Android向けアプリ『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!(以下、テイクオフガールズ!)』。本作の制作を手がけているキーマン2人のインタビューをお届けします。

『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』
▲左から伊藤翔平プロデューサーと吉田将人ディレクター。こちらのお2人にいろいろなお話を伺いました。(※このインタビューは、アニメ第1話放送直前に行ったものです)

 現在放送中のアニメ『荒野のコトブキ飛行隊(以下、コトブキ)』は、監督・水島努さん、シリーズ構成・横手美智子さんによる完全オリジナルの新作アニメです。西部劇をイメージさせる世界を舞台に、“隼一型”を操縦する“コトブキ飛行隊”が活躍する本格空戦アクション。『テイクオフガールズ!』は、そんな『コトブキ』の世界を冒険できる“レシプロ空戦RPG”となっています。

 この記事では、『テイクオフガールズ!』のプロデューサーであるバンダイナムコエンターテインメントの伊藤翔平さんと、ディレクターである吉田将人さんに、ゲームについていろいろと話していただきました。

 空戦パートの内容からキャラクターやシナリオに対する取り組み方、さらには音響など細部へのこだわりなど、多彩な話題を聞くことができましたので、ゲームはもちろん『コトブキ』に興味を持っている人はぜひチェックしてみてください。

【注意!】

 この記事では、TVアニメ『荒野のコトブキ飛行隊』の第1話の内容についても言及されています。もしもまだアニメの第1話を見ていないという人は、1月19日からスタートしている配信などで先にアニメを見てから読むことをオススメします。

(※アニメのPVとスクリーンショット6枚の下からインタビューが始まります)

『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』 『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』
『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』 『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』
『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』 『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』

『コトブキ』ゲーム化は“世界地図がない”ところから始まった

――プロデューサーの伊藤さんは前回の対談で、ゲームの企画立ち上げから開発・運営に渡るまで、『テイクオフガールズ!』を総合的に見ている立場とご説明いただいたのですが、吉田さんの役割はどのようなものでしょうか?

吉田さん:僕はゲームの開発現場を率いている立場です。僕の役割としては、伊藤さんからこういうことをやりたいというのを受け取って、それをゲームに落とし込むにはどうすればいいのかを考えて実行しています。

伊藤さん:アニメに登場するキャラクターや展開される物語をゲームの企画に落とし込む時にアイデアをこの2人で話し合う形ですね。

 アニメではできるけどゲームではできない表現、逆にゲームではできるけどアニメではできない表現があるので、そこはゲームとしてのオリジナリティを利かせながら、完成されたひとつのゲームにするというのを、この1年ぐらいずっとやってきています。

 前回の対談で、アニメの制作過程では起こされない設定がある、というお話をしたんですけど、そういった開発上の課題を解決するために、頻繁に打ち合わせをいたしました。

吉田さん:開発初期にまず困ったのは、“世界地図がない”ことでした。アニメは“こういう話ならおもしろいんじゃないか”という起点から作り始めるので、終点を意識するゲーム開発とは異なりました。「アニメの設定に世界地図はありますか?」と聞いたら「今はまだありません」と回答があって、伊藤さんと「さて、どうしようか」と悩みました。

 ゲームだとやっぱり、クエストの一覧を作ったらそれを世界地図の上に置きたいじゃないですか。なので、開発チームで世界地図を作って、「こんな感じで作品のイメージと合っていますか?」と何度もやり取りさせていただきました。

伊藤さん:ゲームでは絶対に必要なんですけど、アニメではとくに作らない設定の場合は、こちらから逆提案させてもらう形も多いですね。

――もちろん、水島努監督の頭の中に設定はあるのかもしれないけれど、それが具体的な資料になっていないものもあるんですね。

伊藤さん:完結している作品をゲームにするのと、一緒に作っていくというのはまったく異なる作業です。完結している作品であれば、それを解釈できるのですが、完結していない作品は、まだ存在していない部分を想像しながら広げていかないといけないんです。

吉田さん:今回は、想像力を問われました。戦闘機のCGが最終的にどういう見た目になるのかわかったのも、開発が終盤を迎えたあたりでした。

 戦闘機の金属感とか、空戦の演出をどこまで表現するかをあらかじめ決めてから作るのが普段のゲーム開発です。本作はスマートフォンでリアルタイムに動くゲームですので、端末スペックを超えないような表現というのが決まってきます。

 でも映像の場合は、工程の最後にどういう表現にするか決まるので、進め方が真逆です。とはいえアニメの表現になんとかして近づけたいので、「ゲームのほうはこんな感じで進めていますが、イメージと合っていますか?」というものをこちらから提案し、それを監修してもらって落とし込んでいきました。

ゲームならではの体験を用意しています

――アニメの第1話をご覧になった感想は?

吉田さん:いちばん最初に衝撃を受けたのは、音でした。

伊藤さん:そうですね、音が際立っていました。

吉田さん:ゲーム開発が並走する中で、アニメの進捗をご共有いただいており、最初は文字だったものがコンテになり、映像になる。音が入るのは、最後の最後なんです。最後に音が入って「ドーン!」と来た時のインパクトは、本当に衝撃的でした。

伊藤さん:キリエが隼のエンジンを始動させる時に、コクピットでスイッチを操作する場面が、いちばんこだわりが見えているところでしたね。塗装の剥げ具合とか、そこに至る過程は僕らも断片的に聞いてはいたんですけど、最終的にこうなったという答え合わせがすごく衝撃的でした。

 あとは、隼が格納庫から外に出て行く時が、風切り音とかも含めてもう爽快すぎて、人生で初めてジェットコースターに乗った時みたいな感覚でしたね。飛び出した瞬間に一瞬ガクンと落ちるシーンは椅子からコケそうになりました(笑)

 いちアニメファンとしては喜ぶ反面、プレッシャーもそれに比例してものすごく高まりますね。「ゲームも負けられないな」と思いましたけど。目の前に超高級な食材が出てきて、これをどうゲームとして料理すればいいのかというプレッシャーは、今でも強く感じています。

吉田さん:本作の企画を伊藤さんからいただいた時は、戦闘機についてぜんぜん詳しくなかったのですが、資料をかき集めて勉強して、僕も作品をマニアな観点から楽しめるようになりました。

 たとえば、1話の戦闘機のプロペラは、前から見た色と、コクピットから見た色が違っています。アンチグレア(※反射などによるまぶしさの軽減)のために、コックピット側から見たプロペラは黒く塗られているんですけど、それが第1話のコクピットの視点でもわかるんです。

 あとはすごく細かいところだと、キリエが帰還した時に、整備班長のナツオがコクピットまで上っていって、キリエをなぐるシーンがあるんですけど、その時にナツオが格納庫の床を走る時の足音と、隼の主翼の上を走る時の足音が違うんです!よかったら見直してみてください。このあたりは本当に作品としての細部のこだわりがスゴいなと思いました。

伊藤さん:アニメのキービジュアルも、隼の羽根の上に3人乗っている時と1人乗っている時では、主脚の沈み込み方が微妙に違っていたりするんですよ。もう、こだわりの固まりだなと思っていて。

 航空機というのは無駄なものをすべて取っ払って、飛ぶことだけに特化させたシャープな機械だと思いますが、その特化させたこだわりをアニメで実現されているように感じました。

 とにかくゲームにおける戦闘機のCG制作は、アニメの制作スタッフであるGEMBAさんと一緒に取り組むことができたのが、本当に大きいです。これを違う第三者と取り組んでいたら正解にたどり着けないままよくわからなくなっていたんじゃないかと。戦闘機に関しては、特にそう思いますね。

吉田さん:今回、このゲームの開発のお話をいただいて、“ゲームだからできることをやろう”と、自分の中で決めてたんです。アニメと違ってゲームはリアルタイムレンダリングのCGなので、リアルタイムでしかできないことをちゃんと盛り込んだつもりです。

 アニメで見たカッコイイ戦闘機を、自分の指でグルグル回転させていろんな角度で眺めたり、好きなところを拡大して見たりとか、それだけでもけっこう楽しいと思うんですよね。それもゲームならではの体験だと思うので。

――たしかにそうですね。

『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』
『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』 『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』
▲こんな感じで自在に戦闘機のフォルムを楽しむことができます。

吉田さん:それから、ゲームを起動するとキリエの発進シークエンスから始まるのですが、コックピット内部からの景色をジャイロモードで見られるようにしました。これはリアルタイムならではのものです。

 ゲーム内の“物語”のところから、同じ映像をVRでも見られるようにしてありますので、ぜひ見てほしいです。

 このシークエンスについては、おもしろいエピソードがあるんですよ。戦闘機が尾輪を付けた状態で地面の上を動いている時は機体の後ろが下がっているので、その角度通りにすると、コクピットから前方の様子を見ることができないんです。

 でもそれだと臨場感がないので、ちょっとズルい方法なんですけど、機体をなるべく水平に起こしているんです。だから、3D空間を俯瞰して見ると、尾輪が浮いています(笑)。かなり苦肉の策ではあるんですけど。

『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』
▲発進シークエンスは、こんな感じでキリエ視点でながめられます。

――でもそれは、プレイヤーを楽しませるためのテクニックですよね。

伊藤さん:そうですね。この例え話は今回の開発のキモにつながっています。僕ら企画側が考える “お客さんに楽しんでもらいたいゲーム体験”と“リアリティの追求”の矛盾です。

 ゲームとしてのエンターテインメント性を確保できても、『荒野のコトブキ飛行隊』が持つ世界観からズレていないだろうか? という疑問が常にあります。いくらゲームとしておもしろくても、作品世界観から乖離してしまっては意味がありません。たまには“遊び”も必要だろうな、といった判断をしていきますが、バランスを取るのが本当に難しいです。

“戦闘機の音”に対するゲームのこだわり

伊藤さん:話の冒頭にTVアニメの音について言及しましたが、ゲームもサウンドにこだわりました。“戦闘機のサウンド制作”に関しては、開発チームも経験がありませんでしたので、こだわろうにも“こだわり方”が分からなかったんです。そこで戦闘機のサウンドについては専門家にアドバイスを貰おうと思い、バンダイナムコスタジオのサウンドチームに教えを仰ぎました。

 綿密なやり取りとレクチャーをいただいたおかげで、戦闘機の音に関してもこだわりを持つことができました。バンダイナムコスタジオのサウンドチームは、実際に零戦の生音を収録されているなど、とにかくノウハウが豊富で本当にお世話になりました。

『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』 『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』 『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』
『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』
▲実際に零戦の生音を収録している風景。株式会社バンダイナムコスタジオ様から特別に写真をお借りしました。

吉田さん:今回、アニメのほうでは音響効果はシーンごとに個別で制作していると伺いました。でもゲームの場合は、“モーションパターン×カメラパターン×機体種類×飛行隊編成”でかけ算していくと、ぼう大な組み合わせになってしまうのですべてを制作することは困難でした。

 そこでゲームでは戦闘機ごとにさまざまに分解したサウンドデータを作っていただき、戦闘に合わせてプログラムでシミュレーション再生しています。

 バンダイナムコスタジオさんにアドバイスをいただきながら、どのようにサウンドをシミュレーションするべきか、どういう機能を作るべきか、細かく指示を出していただきました。

伊藤さん:もちろんスマートフォンだとハードスペックの限界がありますので、ハードスペックに合わせたチューニングもレクチャーいただきました。コンソールゲームのサウンド制作で培われているノウハウをスマートフォンでもここまでできると噛み砕いて、落とし込んでもらっています。

吉田さん:『テイクオフガールズ!』のサウンドクオリティは、バンダイナムコスタジオさんの協力がないと、絶対に出せなかったものですね。機体ごとにサウンドを全部変えるために、エンジンの気筒数とかまで計算して音を作ってくださっています。

伊藤さん:例えば自動車のエンジンの内部構造からどう音が出るかを考えて作っていた人たちですから。こだわりがスゴイ。

吉田さん:第二次世界大戦の国産の戦闘機だと、当時のエンジンが現存する機体なんてほぼ存在しないです。でもそれを、エンジンのスペックから逆算して「たぶんこういう音がするはずだ」と作り上げられるのがスゴいなと。

伊藤さん:長年、音を研究されてきた方たちですからね。戦闘機のモデルを作る時に、アニメの制作スタッフの協力を得られてよかったという話をしましたが、サウンドに関してもバンダイナムコスタジオの協力が得られて本当によかったと思います。

吉田さん:そうですね、危うく路頭に迷うところでしたね(笑)。

――音の話で言うと、音楽も非常に気になるところですが?

伊藤さん:音楽に関しても『コトブキ』の世界観を絶対に守りたいと思っていて。TVアニメ音楽を浜口史郎さんが手がけられていますが、浜口さんのあの音楽があって、コトブキの空戦が至高のものになっていると感じました。

 ですので水島監督と浜口さんから「ゲームでもアニメの音楽を使ってほしい」というご要望をいただいことが、嬉しかったです。僕らからするとむしろ「使っていいんですか!?」という感じでした。

 しかも、今回はゲームのメインテーマ曲を浜口さんに作曲いただきました。ゲーム中、ホーム画面で流れていますので、ぜひ手を止めて音楽も聴いていただきたいです。ゲーム中のBGMすべてが浜口さんの曲ではありませんが、本作の“コトブキ色”がより濃くなったのは、間違いなく浜口さんの音楽があってこそだと思います。

 外でゲームを遊ぶ時はミュートにして遊ぶことが多いと思いますが、たまには音楽を楽しみながらゲームを遊んでもらいたいです。

シューティングゲームではなくシミュレーションゲームにした理由

吉田さん:今回のゲームでは、1日の始まりにログインした時にまず何を見せるかも、かなり議論したんです。その結果、「やっぱり飛行船じゃないか」という話になって。ログインすると飛行船が美しい空を進んできて、そこに浜口史郎さんの音楽が流れるという形になっています。

 この部分はかなりこだわっているので、ぜひ楽しんでいただきたいなと思っています。

伊藤さん:ログインする時間帯によって背景も変わりますから。

吉田さん:昼・夕方・夜と作っています。

伊藤さん:僕は夕方がいちばん好きかなぁ。

吉田さん:エモいですよね。飛行船もちゃんと夕方の空の色が映り込むように作ってあるので、かなりエモい感じに仕上がっています。

伊藤さん:飛行船のサイズを聞いた時は「マジか!?」って思いましたけどね(笑)。

吉田さん:戦闘機が同じ画面に登場すると、対比で小さすぎて米粒みたいな感じになっちゃうんですよね。

――飛行船と戦闘機のお話が出たところで、空戦パートのこだわりについてお聞かせいただけますでしょうか。

伊藤さん:本作は空戦パートがシミュレーションゲームになっているんですけど、最初にプロトタイプを見せてもらった時は、フライトシューティングゲームだったんですよ。

『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』
▲こちらは本作の戦闘画面です。プレイヤーの視点は、戦場を上から見下ろしたものとなっています。

吉田さん:そうでしたね。

伊藤さん:僕自身、『コトブキ』のゲーム化を考えた時には、まずフライトシミュレーターによるシューティングゲームを考えました。

 ただ、日常生活の合間にスマートフォンで遊ぶゲームとして本当にシューティングゲームでいいのかという悩みはありました。そして、『コトブキ』の物語や世界観を踏まえ、開発チームと議論を重ねた上でシューティングゲームではなくシミュレーションゲームというゲームジャンルにしました。

――本当にシューティングゲームでいいのか、というのは、どういうことでしょうか?

伊藤さん:スマートフォンでシューティングゲームというのは、何度も繰り返し遊ぶのにはあまり向いていないと感じました。TVとは違い画面の大きさに限りがあるスマートフォンでは、画面上の仮想コントローラーに指を置いてしまうとゲーム画面が隠れます。ボタンの数が多くなると操作も煩雑になってしまいます。

 それに『コトブキ』の空戦というのは、1対1のドッグファイトもそうですが、編隊と編隊が戦うことにも重きを置いていると感じました。もちろん、局所的には1対1の戦闘が発生しているのですが、やっぱり“飛行隊”じゃないですか。

 それならば、編隊どうしが戦うシミュレーションゲームにするほうがいいと最終的に判断しました。

吉田さん:アニメを好きな方が、毎日『コトブキ』の世界に触れられるゲームにするのなら、今のように見て楽しいシミュレーションゲームにしたほうがいいだろうというのが、最終的な結論でしたね。

伊藤さん:ただ、この部分に関しては、今でも悩んでいます。ゲームが配信された後、アップデートでシューティング要素を足すことで、シミュレーションもシューティングも両方楽しめるようにするかもしれません。

――なるほど、それは楽しみですね。それでシミュレーション部分に関してですが、今のお話だと複数の機体による編隊どうしの戦いをどう見せるかというのが、ポイントになると思いますが?

吉田さん:これは先ほどの話と同じで、戦闘機の飛び方をリアルにしすぎると、ゲームとしてすごく単調なものになってテンポが悪くなってしまうんです。ゲームとして冗長にならないように、テンポよく1ゲームが終わるように空戦を楽しんでもらうように調整するのが、いちばん大変だったポイントですね。

 そもそも第二次世界大戦期ぐらいのドッグファイトだと、1対1でお互いに相手の後ろを取り合うと、グルグル回ってるだけになっちゃうんですよ。なので、絶対に2機以上必要なんです。これはゲームでそうなったというよりは、まず何より実際の空戦がそうだったんです。

――ドッグファイトは後ろの取り合いだけど、1対1で取り合うんじゃなくて、複数であえて1機をおとりにして、もう1機で味方を狙う敵機の後ろを取る形になるんですね。

吉田さん:そうするとさっき言ったような、お互いに後ろを取り合ってグルグル回っているだけの状況から、もう1機いることでそれが打破されて、敵味方が入り乱れてドッグファイトっぽくなるんです。そこはかなり工夫して作りました。

 なのでチームの編成も基本的に、2機、2機、2機の6機になっています。前衛・後衛というのはゲームに必要な概念でもあり、実際に編隊で飛行する時にもある概念なんです。

登場する戦闘機は一長一短があるので、どの機体でも活躍できます

――続いて、戦闘機のバリエーションについてお聞きします。ゲームでは隼一型よりも強い機体も登場してくると思うのですが、それに対して、キリエたちが操縦している隼一型を使い続けたいという人もいると思うのですが、いかがでしょうか?

吉田さん:当然、スペック的に隼より強い機体も登場します。それぞれの戦闘機には開発設計に伴った個性や特徴がありますが、今回のゲームではそれを尊重しつつ、完全上位互換といった、ただ単に強い機体というものはなるべく設定しないようにしました。要は、何かしら一長一短があって、どの機体でも使い方次第で活躍できるという形です。

 それに加えて、戦闘機に搭乗するパイロットの存在があります。パイロットには“得意な機体”があって、隼一型が得意なパイロットを隼一型に乗せれば、パラメータに上方補正がかかるようになっています。もちろん、他のパイロットを乗せ換えるというゲームならではの楽しみもありますので、ぜひ、自分の好きなように飛行隊を編成してもらえればと思います。

伊藤さん:戦闘機の上位互換が生まれるのは技術の進歩ですから、ある意味、歴史どおりですよね。だからそれ自体はあってしかるべきなんですけど、そこにゲームらしさを付けるとしたら、今回はパイロットのバリエーションがありますよ、というところなんです。

吉田さん:本作では、パイロットのパラメータと戦闘機のパラメータを完全に別個のものにしていて、それを合計して戦う形になるんです。パイロットと機体の組み合わせは、自由に組み替え可能になっています。

伊藤さん:戦闘機やパイロットへの愛着は人それぞれですよね。

 なのでプレイヤーの皆さんも、自分の好きなキャラクターと好きな戦闘機の組み合わせをたくさん見つけて楽しんでほしいです

ゲームオリジナルの“ハルカゼ飛行隊”というチームが登場します

――パイロットの話題が出てきたところで、キャラクターのお話を伺います。『テイクオフガールズ!』には、ゲームオリジナルのキャラクターも登場するとか?

ハルカゼ飛行隊のメンバー

『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』 『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』 『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』
▲ユーカ(声優:本渡楓さん)▲エリカ(声優:白石晴香さん)▲アカリ(声優:七瀬彩夏さん)
『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』 『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』 『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』
▲ベル(声優:石見舞菜香さん)▲ダリア(声優:黒沢ともよさん)▲ガーベラ(声優:高野麻里佳さん)

伊藤さん:はい、有澤さん(『コトブキ』プロデューサー)との対談でも話したんですが、ゲームの都合で踏み込んではいけない作品の不可侵領域があると思っています。そこにゲームの都合を持ち込みすぎると、アニメを見ているお客さんが混乱したり、冷めてしまったりするという話をいたしました。

 アニメで描かれる部分が作品の中心としたら、ゲームはその外周にあって、作品を補完したり、拡大するのが今回のゲームの役割だと思っています。ゲームオリジナルキャラクター、特に「ハルカゼ飛行隊」の6人はその代表的な存在です。ゲームでは、『コトブキ』の世界のどこかで生活している彼女たちの物語を楽しめるようにしました。この広い世界にはこんな人たちもいるんだなぁ、という気持ちで楽しんでもらえればと思います。

 そんな“ハルカゼ飛行隊”の6人は、TVアニメと同じキャラクター原案の左さんにデザインをお願いいたしました。あどけなさが残るかわいい6人ですが、立派なパイロットでもあります。ハルカゼ6人の活躍にも注目してもらえれば、と。

――なるほど、よくわかりました。ちなみにスマートフォンのゲームだと、キャラクターをタッチで愛でたり、反応を楽しんだりといった要素もありますが、本作ではどうでしょう?

吉田さん:『コトブキ』のアニメって、キャラクターが視聴者に媚びないんですよ。独立した女性たちが自然に会話していて、その自然な生活の中で空戦もやっているという世界観なので。

 僕らも当然、作品としてのポリシーを守るべきですから、ゲームでもキャラクターは媚びないというふうにしています。なので、お触りは禁止です(笑)。

伊藤さん:『テイクオフガールズ!』では、ガールズトークを楽しんでほしいです。本作におけるプレイヤーの立ち位置は“新米船長”としていますが、ゲームオリジナルの主人公というわけではありません。

 新米船長というのは単に立ち位置だけですので、会話に参加もしないし、登場するキャラクターたちとコミュニケーションも取りません。

 その理由は、『荒野のコトブキ飛行隊』は外から来た人によって動かされる物語ではなく、コトブキ飛行隊の彼女たち自身が動かしている物語だからです。なので、アニメの世界観を守るためにも、プレイヤーが異物にならないようにあえて空気にしようと考えました。

吉田さん:なので、ゲームのなかの物語にも、主人公は一切登場しません。

伊藤さん:ひとつあり得るとしたら、ガールズトークの中でそういうコミュニケーションが発生しているのを、神の視点でプレイヤーが見ているというのはぜんぜんアリかなとは思っていますが(笑)。

戦闘機とその機体を操縦するキャラクターの両方を楽しんでもらいたい

――『荒野のコトブキ飛行隊』は、レシプロ戦闘機による空戦と、先ほども触れたようにコトブキ飛行隊の6名をはじめとするキャラクターの魅力が特徴ですが、『テイクオフガールズ!』ではキャラクターとバトルのどちらに比重を置く形になるのでしょうか?

吉田さん:それは正直、アニメが放送された後の、ファンのみなさんの反応を見てみないとわからないところですね。なのでゲームのホーム画面も、パイロットと戦闘機をほぼ並列にしています。

伊藤さん:キャラクターと戦闘機のどちらか一方に極端に偏るのは止めようとは思っています。『コトブキ』のアニメは、人物と戦闘機の間に物語が生まれているように感じましたので、それを補完するゲームとしては、両方を推すことで魅力を均等に広げていきたいと思っています。

――そこもアニメと同じ世界に違和感なく入っていけるポイントですよね。

伊藤さん:戦闘機というのは、人間が乗り込まないと動かないものです。なので戦闘機が好きな人には、その戦闘機を動かしているパイロットのバックグラウンドも一緒に楽しんでもらえればと思います。

――ちなみにアニメには、コトブキ飛行隊の女の子たち以外に「魅力的なおじさんたちも登場する」と何度か語られていますが、おじさんたちはゲームのほうにも登場するのですか?

伊藤さん:ゲームでは、おじさんたちはわりと補佐役かなと思っています。「魅力的なおじさんたちも多いよ」と東京ゲームショウで言ったのも間違いじゃなくて、おじさんたちが脇で支えているからこそ、華が際立つというところがあるので。

 アニメの第1話でも、最初は調子に乗っていた男たちが空戦でピンチになって、そこを助けに来るコトブキ飛行隊の女の子たちって、めっちゃカッコよかったですよね。それをゲームでもやりたいなと思いました。

――では最後に、ゲームのリリースを楽しみに待っているみなさんに、メッセージをお願いします。

伊藤さん:ぜひ、アニメを観てください。少しだけ先になりますが、ゲームも遊んでみてください。アニメとゲームの両方に触れて、思ったことがあったらぜひ教えて欲しいです。ここが良かった、もっとこうして欲しい等、感想をいただきたいです。また、ゲームで描かれるストーリーを一部公開していますので、こちらもぜひ見てみてください。

『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』PV

画像クリックで動画配信ページにアクセスします
『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』

吉田さん:最初にお話ししたように、本作にはリアルタイムレンダリングのゲームでしかできないことを、しっかりと盛り込んだつもりです。アニメの戦闘機がカッコいいなと思った方は、ゲームをダウンロードして、戦闘機を眺めることだけでもぜひやってもらえたらと思います。

■TVアニメ『荒野のコトブキ飛行隊』
【放送情報】
TOKYO MX:2019年1月13日より毎週日曜22:30
テレビ愛知:2019年1月13日より毎週日曜26:05
MBS:2019年1月15日より毎週火曜27:00
BS11:2019年1月15日より毎週火曜24:00

【配信情報】
<2019年1月16日23:00配信開始>
AbemaTV

<1月19日22:00以降順次配信スタート>
Amazon Prime Video、アニメ放題、GYAO!ストア、J:COMオンデマンド、MBS動画イズム、TSUTAYA TV、dアニメストア、DMM.com、Netflix、ニコニコ動画、HAPPY!動画、バンダイチャンネル、ひかりTV、ビデオパス、ビデオマーケット、Hulu、PlayStation Video、milplus、music.jp、ムービーフルPlus、U-NEXT、Rakuten TV

【スタッフ】(※敬称略)
監督・音響監督:水島努
シリーズ構成:横手美智子
メインキャラクター原案:左
キャラクターデザイン:菅井翔
ミリタリー監修:二宮茂幸
ミリタリー設定:中野哲也、菊地秀行、時浜次郎
設定協力:白土晴一
副監督:神戸洋行
3D監督:江川久志
テクニカルディレクター:水橋啓太
アセットディレクター:小薬健太郎
総作画監督:中村統子
作画監督:上野翔太
美術監督:小倉一男
美術設定:須江信人、志和史織、小川さくら
色彩設計:山上愛子
撮影監督:篠崎亨
編集:吉武将人
音楽:浜口史郎
音響効果:小山恭正
サウンドミキサー:山口貴之
制作:デジタル・フロンティア
アニメーション制作:GEMBA
作画制作:ワオワールド

【出演声優】(※敬称略)
キリエ:鈴代紗弓
エンマ:幸村恵理
ケイト:仲谷明香
レオナ:瀬戸麻沙美
ザラ:山村響
チカ:富田美憂
マダム・ルゥルゥ:矢島晶子
サネアツ:藤原啓治
アンナ:吉岡美咲
マリア:岡咲美保
アディ:島袋美由利
ベティ:古賀葵
シンディ:川井田夏海
ナツオ:大久保瑠美
ジョニー:上田燿司
リリコ:東山奈央

(C)荒野のコトブキ飛行隊製作委員会
(C)BANDAINAMCO Entertainment Inc

関連サイト