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2019年3月24日(日)

『FFXIV』東京ファンフェス初日の吉田直樹P/Dインタビュー! 新種族のキャラクリについてなど【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 新ジョブ“踊り子”やロスガル族、第一世界という新たな冒険の舞台が公開された『ファイナルファンタジーXIV(以下、『FFXIV』)』日本ファンフェスティバル1日目。そのラストに日本の複数メディア合同で行われたプロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏インタビューをお届けいたします。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

――まずはファンフェス1日目お疲れ様でした! 初日の全行程を終えて、いかがでしたか?

吉田直樹氏(以下、敬称略):この規模なので、導線や人員の待機列などで多少不備があったようですが、なんとか大きなミスもなく初日を終えられたので、ほっとしています。僕としてはファンフェスワールドツアーとして『漆黒のヴィランズ』リリース後に中国と韓国のファンフェスもあるんですが……グローバル版の拡張発売前の基調講演を無事に終えられたので、「僕の仕事としては50%くらいは終わったかな」と、少し気が楽になりました。あとは、会場を埋め尽くしてくれる光の戦士の皆さまにはとくに感謝したいです。夜遅くまで、最後のピアノライブを見てくれた方もたくさんいらっしゃって、本当に嬉しく思っています。

――クリスタリウムの街と外観が公開されましたが、2005年のE3で、次世代MMOのテックデモとして公開された映像と非常に類似しているポイントを感じて……『FFXIV』をずっと追っている身からすると感慨深いものがありました。吉田さんは『旧FFXIV』のものをいろいろな意味で回収していくとおっしゃっていましたが、これもその一環なのでしょうか?

吉田:これ、そこまで早く気づかれるとは思ってなかったですよね……。ぜひ明日の開発パネルをご覧いただきたいんですが、おかしいなぁ、開発パネルで「そうだったのかー!」ってなることを予定していたんですけど……。明日の開発パネルでは、『新生FFXIV』での冒険の舞台を作ってきた2人が、かなりおもしろい開発のセッションをやりますので、その中でクリスタリウムというのが“どんな街で、どのように作られていったのか”とか、“『FFXIV』の世界がどうやって彩られていくのか”といったところにフォーカスしてお話していこうと思っているので、その辺りの『旧FFXIV』についての謎とシンクロした方は、ぜひご覧いただきたいですね。これ以上言うと開発パネルのオチが全部でてしまうので……(笑)!

――踊り子が発表されましたが、主要ステータスは何になるのでしょうか?

吉田:遠隔DPSですから、DEXになってくるんじゃないですかね。

――そうなると忍者も含め、DEX職が4つになりますが、例えば今後忍者の主要ステータスがSTRになるという予定はありませんか?

吉田:ん~、まあ、これ以上は5月中旬にならないと言えないですね(笑)。バトルシステムに関する変更というのは、1つの変更点についてだけお話してもおそらく理解がしにくいと思います。新生してから丸6年運営してきていると、いろいろなシステムが連鎖してつながっているので、例えば一部を変えるにしても、バトルシステムに詳しい方には“別の場所に対する影響はどうなるんだ”と考えられてしまいます。現段階で一部だけをピンポイントでお話ししてしまうと、今のネット社会では雰囲気での判断や誤解が定着してしまって、あとからいくらほかの理由を説明しても、なかなか書き換わらないということが多いので、5月のPLLでバトルシステムに関わる箇所と、各ジョブのイメージやロールのイメージがどうなっていくのかをまとめて説明していこうかなと思っています。メディアの皆さんにも実機に触れてもらう機会や、インタビューの機会は設けますので、その時までお待ちください。

――“踊り子”自体は予想できた方もいるとは思いますが、遠隔DPSというのには驚きました。ガンブレイカーがタンクということで、次にくるのはヒーラーだろうと考えていた方も多いようでしたが、今回の拡張でタンクと遠隔DPSを追加するに至った理由をあらためてお聞かせください。

吉田:ヒーラー案がなかったわけではありません。それは踊り子をヒーラーにするという意味ではなく、僕らは『FFXIV』を拡張するときに、プレイヤーのゲーム体験を最優先で考えるので、そもそもどのロールにジョブを足すのかというところから考えます。タンクを足すことは早い段階から決めていて、3ジョブはちょっとバランスが悪いなと。2つの役割、STとMTというのがあるのに対して、タンクロールの数が奇数なのが……。仮にですが……これは本当に仮の話ですよ? MT2ジョブ、ST2ジョブという分け方をするにしても、3ジョブだとSTかMTのどちらかが固定になってしまうし、どのジョブがどちらもできるというバランスをとるにしても、ちょっとした有利不利の違いでST向き、MT向きとなってしまう。そんなときに、やっぱり奇数だと2対1のような関係性が生まれやすいので、“いっそ4ジョブにしてしまったほうがバランスが取りやすいだろう”というところと、“『ファイナルファンタジー』シリーズのなかでも象徴的なガンブレードという武器を足すことにより、今までオンラインの『ファイナルファンタジー』に食指が動かなかった人たちにも訴求しやすい”ということで、こちらはわりとすぐに決まりました。

 ですがもう1ロールどこに足そうかとなったときに最後まで残っていたのが、シンプルに詩人と機工士の2種しかない遠隔DPSと、ヒーラーでした。みなさんご存知の通り、ヒーラー3ジョブというのは最後まで調整に苦労をしているところで、やっぱりフェアリーのぶんだけ学者が飛び抜けるということがあって、今苦慮している段階です。5.0に向けてまたバランスを調整するにしても、この状況で4ジョブ目を足したときに、はたしてバランスを取り切れるのか。バリアヒーラーとピュアヒーラーというくくりはあるにせよ、MTとSTのような明確な役割分担がない以上、3ジョブでのバランス調整に集中するより、まだ2ジョブしかない遠隔DPSに枠を足して、キレイに各ロール複数ジョブの数を揃えるほうがいいだろうということになりました。「だとしたらどのジョブにするのがいいだろうね」と、だんだんジョブの候補を絞っていって、最終的に踊り子になりました。

――イメージ的には『FFXI』の踊り子に近いスタイルなのでしょうか? それとも別設計ですか?

吉田:まったく別です。

――ということは、『FFXI』プレイヤーが見た時に、『FFXI』の踊り子を連想するような要素はとくにない形でしょうか?

吉田:技名やエフェクトに関しては、『FFXI』に限らず歴代の『ファイナルファンタジー』のテイストを感じてもらえるように作るのが『FFXIV』流でもあります。何かしら過去の踊り子の印象を感じてもらえるものを導入しつつ、『FFXIV』独自の体験を作るというのが我々の理想なので、“似ているようで似ていない”というのが正しいですかね。例えば侍がそうだったと思うんですよ。『FFXI』の武者のイメージから、着流し浪人のイメージを作って、侍としてはイメージもデザインも確立できたと思っているので、そんな感じで『FFXIV』らしい踊り子を作りつつ、どこかで懐かしさは感じてもらおうかなと思っています。

――踊り子は男女で同じモーションだとおっしゃっていましたが、男女別のモーションで作る考えは当初からなかったのでしょうか?

吉田:一度それをやってしまうと、他のジョブでも「俺達も男女で分けてくれ」と始まってしまうので……。あとはメモリの配分を考えた時に、当然ですがジョブアクションに関してはオンメモリで読み込まれた状態で、即時再生が必須なんです。それを考えると、特定のジョブに複数のモーションが常駐してしまった場合、すべてのジョブに対して複数モーションが使ってもいないのに用意されるということになってしまうため、システムが破綻してしまうんですよ。

――男性の踊り子でも色っぽい踊りを踊るということもあると。

吉田:いえ、今はジェンダー問題が非常に難しいんです。“踊りを踊ったらセクシー”っていう固定観念自体がもうマズイと思っていて。これはジョブクエストに絡んでいるんですが、“なぜ彼らは踊りを踊るのか”というのを世界観に根ざして作られていて、世界の民話を参考にして今回作っているんですが……彼らが躍らなければいけない理由と言うのは、性別とは関係がないんです。それによって味方を鼓舞し、敵を倒すという考え方をしているので、鼓舞するものがセクシーかどうかは関係ないという考えです。現実に存在している踊りというものは、すごい歴史を持っているがゆえに、ジェンダー的に“男性はこうであるべき”“女性はこうであるべき”という状況から生まれているダンスが当然たくさんあります。「それを参考にしすぎると、性別の色が出すぎたモーションになってしまうのでやめなさい」という話は、最初のサンプルを見た時に言いました。それは設定とも違うし、「大変だけどオリジナルでちゃんと考えていこうね」と。「ほのかに一部のステップを取り入れるのはいいと思うけど、動きそのものを踏襲するのは、やっぱりプレイしたときにジェンダー差が出てしまうのでやめて」というのは、けっこう大変ではありました。

――高難度レイドのボスが野村哲也さんデザインと発表されましたが、今回野村さんにお願いした理由と、会場の反応を見た率直な感想をお聞かせください。

吉田:そもそも僕は、野村さんの描くキャラが持っている魅力とか、キャラを通して考える設定とか世界観というものを、本当に天才的だと思っているので、なかなかオンラインの『ファイナルファンタジー』にそのエッセンスが入ってこないというのが、いちファンとして忸怩たる思いがあったんです。当然ですがものすごくお忙しい方なので、“どこまでやってもらえるかな”という気持ちもありましたが、3周年のときに記念イラストを描いてもらったりとか、ちょこちょこお願いしていたりはするんです。今回、本格的に“エデン”というレイドを作っていくときに、キーとなるキャラは何人かいるんですが、そのうちの1人、主軸となる人物をぜひ描いてもらいたいという話を昨年の夏頃にお願いしました。その頃は「たぶん大丈夫だよ」とおっしゃっていたんですが、大変だったみたいですね(笑)。とはいえ見事描き切ってくださいましたし、野村さんならではの色気があって素晴らしかった。

 ……装備もそうなんですが、あれを『FFXIV』で再現するためにモデリングを調整していくというのは我々にとっても刺激になりました。あとはプレイヤーさんから見た時に、若い世代の『ファイナルファンタジー』ファンというのは野村さんの絵に馴染みが深いので、そういった人たちにも興味を持ってもらって、引き続き『ファイナルファンタジー』のテーマパークとして楽しんでもらえたらなと。『FFXI』のときはスタート時に野村さんが描いてるんですよね。『FFXIV』にはまだ野村さんの絵がなかったので、「お願いしますよ」って言って、描いてもらいました(笑)。快く受けてもらえましたし、今作画されているモンスターもすごいものが来ると思いますので、僕自身もすごく楽しみにしています。

――“エデン”は、具体的にどう展開するものなのか、物語的な詳細が一切語られていませんが、『漆黒のヴィランズ』の物語と密接に関係していると考えてもよろしいでしょうか?

吉田:そうですね。少なくとも第一世界で起こるレイドだと思ってもらってかまいません。原初世界ではなく、第一世界へ行った先で、さらに大きな問題に取り組んでいくというのがレイドの根幹になっています。今まで、“大迷宮バハムート”、“機工城アレキサンダー”、“次元の狭間オメガ”とやってきて、今回はまた『ファイナルファンタジー』のすごくベーシックなところに戻ろうかと話していたりしますので、『ファイナルファンタジー』らしいレイドになるかなと思います。今現在4層まで組み上がってはいますが、ギミックもまた「ハァ!?」っていってもらえるようなものを用意していますので、驚いてもらえるんじゃないかなと。スタッフがニヤニヤしながら、自慢げに僕まで見せに来たくらいのものなので(笑)。

――“夜を、属性を、天候を取り戻す”というフレーズが印象的でしたが、これは蛮神戦やレイドなどとは別のコンテンツになるのでしょうか?

吉田:いえ、既存のメインストーリーを追いかけていく過程で、エリア攻略型というか“このエリアを解放し、夜を取り戻した”みたいな感じで、光の勢力に押しつぶされそうにしているところを、“クリスタリウムのあるレイクランドから、闇の戦士が闇に塗り替えていく”みたいなイメージで思っていただけるとありがたいです。シナリオの進行度が異なるプレイヤー同士では、同じエリアにいるのにエリアの見え方がそれぞれ違う……ということを今回やっています。

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

――個人のシナリオの進行度合いによって変化すると。

吉田:そうです。メインシナリオの進み具合と密接に絡んでいます。けっこう無茶なシステムをまた作っています。

――第一世界が舞台となるとのことですが、これまでの世界と自由に行き来できるのでしょうか?

吉田:光の戦士は“超える力”によって行き来が可能です。“超える力”がありますので、次元の狭間も越え、並行世界も越えられる……非常に便利な設定を考えたものだなと思います(笑)。

 ただ、思い出していただきたいのが、パッチ3.4のときに闇の戦士編をやっているときに、第一世界側から来た“元・光の戦士たちは、命を捨てることで原初世界へ旅立つことができた”というフックがあったと思うのですが、それをしなくて済むものが1つ存在しています。それもメインシナリオに密接に絡んでいるので、単純に“超える力”で越えるのではなく、その力をさらに増幅させる何かがあると考えておいてください。なので、「光の戦士、1回死ぬんだ……!」みたいなことはとりあえずありませんので、安心していただければと。一度行けば、ちゃんとテレポも使えるようになりますので(笑)。

 とはいえ、転送網というのを維持するための“ギル”は、第一世界でも流通しているのかとか、いろいろあると思うんですね。アラガントームストーンも“アラグ帝国がない世界って言っているのにどうなるの”とか、いろんな疑問が沸いてくると思います。“そもそもロウェナがいないんじゃないか”とか。そこはぜひご覧いただきたいですね! 我々も徹底的に設定を作り込み、ちゃんと納得のいく形でご用意していますので、ついにアラガンじゃないトームストーンが出てくるのか、はたしてどうなるのか。そこはうまく作ってあります。それくらいちゃんと“異世界に行く”ということと、原初世界というものを、ちゃんと体験としてつなげるようにしているつもりなので。開発は大騒ぎでしたけどね。「リテイナーはどうすんだよ!」とか(笑)。

――新種族のロスガルについて、基調講演中に「獣人をどうしても入れておきたかった」とおっしゃっていましたが、それはなぜでしょうか?

吉田:世界的に、さまざまな価値観の方に遊んでもらうっていうのがMMORPGの本質だと思っていまして。『ファイナルファンタジー』って美男美女が登場するゲームではあるんですけど、『FFX』にあったように、ルックスとしてもっと強い種族……よく引き合いに出すのは『グインサーガ』ですが……ファンタジーを作っていくうえで、そこにもスポットを当てたいという思いがどうしてもありました。“これ以上イケメンを追加してもなぁ。仮にイケメンだと、それって耳の形が違うだけなんだよなぁ”という気持ちがすごくあって。今回のきっかけになったのが、“ベーシックなウルフマン”という落書きのようなアートをもとに、4.0で人狼族が公開されたとき、プレイヤーキャラとして望む声が、グローバルでけっこう多かったことです。そして、今のアップデート頻度であれだけの装備のデータをコンテンツの報酬として出していくと考えると、1つの装備を作るのでも、種族差を考えるとものすごい掛け算コストになるので……。今のコスト感だと、足せる種族はあと1つだろうと。そう考えた時に、悩みに悩んだすえ、(“美女”と“ルックスとしての印象の強いもの”)両方を取りに行こうと思ったのが今回なんです。想いとしてはそこが強いですね。

――それで今日はそのTシャツなんですね。

吉田:そうです。ライオン出すぞーっていう(笑)。今日さくっと基調講演で情報が出ちゃうので、ストレートでいいかなって。今日はライオンの気分でした。

――2種族とも頭部が特徴的ですが、頭装備はどうなるんでしょうか?

吉田:頭装備は表示されません。ヴィエラやロスガルの顔のパーツは、今までの『FFXIV』のルールだとNGなんですね。ヘルメットをかぶせる以上、“これに合わせたものは絶対に作れない”という理屈で。例えばヴィエラの耳にしても、もっと横に倒してミコッテと同じ耳の位置にしないと『FFXIV』の仕様にははまらないんですけど、今回は思い切った見た目の新種族を作らないと意味がないから、“ヘルムは被れなくていい”ということを僕が最初に決めました。ですので、どのヘルメットを装備したとしても、装備はもちろん可能なんですが、グラフィックには反映されません。ただ、被り物だけは対応してあげようということで、首すげ替えで変わるようになっていますので、でぶチョコボヘッドなどはかぶれます。メガネやサークレットなどは反映されません。これがよくてこれがダメと個別にやっていると、ものすごいアイテム数なので、基本はグラフィック反映はなし。すげ替えるものだけは許可ということにしました。

――NPCで出てくるヴィエラがメガネをかけているといったことは、可能性としてあり得ますか?

吉田:う~ん、それをやろうとしたら僕が止める気がします。「NPCが付けられるのに、なんで俺達はつけられないんだよ」ってなってしまうので。もうちょっと開発に余裕が出てきて、経験と工数が短縮された結果何かしらの対応が将来的に可能になるということはあるかもしれませんが、初期段階では難しいですね。そもそも新種族の実装自体が不可能になってしまうので、少しずつ対応していけたらなと思います。目元に小さい眼鏡とか置きたいですよね。わかりますわかります。

――ヴィエラとロスガルの実装は、どのタイミングで決めていたのでしょうか?

吉田:決めたの自体は4.0がリリースされて3カ月目くらいじゃないですかね。ヴィエラはそこで確定させていて。それがあったからこそ、リターン・トゥ・イヴァリースで「松野さん、フランを出すなら出せます」って話をしました。ロスガルもその時点ですね。ロスガルの女性を作るかヴィエラの女性を作るか考えた結果、ヴィエラの女性にしました。なのでそのくらいから作り始めています。さっきもお話したようにパーツの設計が結構特殊なので、顔の形状変形がかなり大きいんですね。ロスガルは特に。ライオン顔、ヒョウ系の顔……という感じでタイプをがらっと変えられるんです。まずはとにかくそのテストから初めて、FIXモデルに仕上がったのは……ヴィエラはファンフェスパリ直前くらい、ロスガルはつい最近です。

――今回、ララフェル……もといドワーフが蛮族であるという衝撃の事実が発覚しましたが、“蛮族”って、ガルマール帝国が「あいつら蛮族だ」っていうところから“蛮族”って定義されていたはずです。しかし、第一世界にはガレマール帝国はありませんよね?

吉田:存在しないですね。でも、我々の日本人のなかにも“蛮族”っていう言葉は存在しますよね。それと同じで、第一世界の標準言語の中に、あいつらは人というより蛮族だよね、野蛮な種族だよねっていう呼称があるので、そういった意味合いだと思ってください。ガルマール帝国がつけた蛮族の定義ではなくて、“第一世界では外れ者と思われている”という事ですね。

 世界設定本にも微妙に伏線を張ってあるんですけど、“時代や政治層によってどの種族が蛮族と呼ばれるかが変わる”みたいなところがあります。まあ時代や世界が違えば、同じエーテルから発生しているものたちであっても、時には蛮族と呼ばれていたり、逆に自分たちの種族以外を蛮族と呼ぶこともあると。例えばですけれど、ガレマール帝国が原初世界の全てを制圧した場合、ガレアン族以外を全て蛮族と呼ぶ可能性があるのと同じです。その時の制圧者や政治層で変わると思っていただければ。

――第一世界の蛮族は蛮神を呼んだりするんでしょうか?

吉田:さあどうでしょう。いずれにせよ、鏡像世界に分裂してしまったことで、ある意味壊れているともいえる世界ですので、他の平行世界でも、クリスタルの力・エーテルの力を使って強く願うと、それが“神降ろし”となって蛮神が顕現してしまう事象が起きている可能性は高いかなと思います。それと5.0に蛮神っていうものが出るかどうかはまた別問題ですが、設定としてはそういう感じです。

――ふくよかなミコッテの姿がありましたが、プレイヤーにあの体型が解放される可能性はありますか? また、ドワーフ族は「ラリホー」と言うのでしょうか?

吉田:さっきの美男美女という話ではないですが、世界中には当然色んな体型の人がいて然るべきです。ですが、どうしてもコストの都合であまりそういうバリエーションを作れていないのは事実なので、今回思い切ってコストを少しかけて、もうちょっと“同じ種族内でも体型の違うキャラを作っていけないか”という検証の1つ目として始めています。設定的には、けっこういいキャラクター達になったかなと。メインストーリーに絡んでくる人物もいるので、そこは見ていただいて、ストレートに感想をいただきたいなと思います。ラリホーについては、言わぬが華な気がします(笑)。

――ドワーフについて、“ヘルムとヒゲ”というのは歴代のFFシリーズに出てきたドワーフをイメージしてのデザインなのでしょうか?

吉田:そうです。みなさんがドワーフから仲間だと認めてもらえればいつかドワーフヘルムをかぶれる日が来ると思うんですけど、あれを被ると誰でもああなると思います。

――ということはララフェル……もというドワーフが蛮族クエストになる可能性も?

吉田:なる可能性は十分有ります。蛮族デイリーで毎日ドワーフに会いに行き……。ドワーフたちって、いくつかの派閥に分かれて他の蛮族と同じように小競り合いをしているみたいで、それは僕らから見ると子供の喧嘩みたいなものかもしれないですけど、そういった派閥間の仲を取り持ってあげたり……とかはいずれ出てくるかもしれないですね。結構そこはこだわって作りました。ちなみに、「第一世界から来た白魔導士のラミミちゃんは兜もヒゲも付けてないじゃん」みたいな言葉を休憩中にSNSで見かけたんですけど、それにもちゃんと理由がありますので(笑)。色々と回収しています。

――自分がララフェルだった場合、その村に訪れた時点から友好的に迎えられる……などはありますか?

吉田:ただ……みなさんは、ヘルメットもヒゲもつけてないですよね(笑)? 「お前らはドワーフの掟を捨てたドワーフだな」なんて言われる可能性は十分あるかと。……そのように、5.0は本当に新しい世界というか、新しいファンタジーを作っていこうかみたいなところもポイントかなと思っています。

――家のサイズがララフェルサイズというのも、新しい世界を作ることの一環でしょうか?

吉田:4.0の時はアジムステップで様々なアウラの部族の生活を描いたところ、当然ですけど「ミコッテも欲しい」「エルゼンも」っていうフィードバックをいただいたので、「今回は世界的に人気のあるララフェル=ドワーフにスポットをあててみようか」という話からです。一番インパクトありそうなものから(笑)。

――クエストの進行とかには影響はないのでしょうか?

吉田:それは大丈夫です。もし影響があったらみんな「吉田、“メインクエストのために幻想薬買え”ってか」となってしまうし、「どんな強制拝金主義だ」と言われてしまうので、それはいくらなんでもさすがに考えていません(笑)。

――ロスガルとヴィエラのサイズ感についてお伺いしたいんですが……ロスガルはルガディンより大きいのでしょうか?

吉田:何をもってして大きいというのかによりますね。彼らは猫背なんですよ。背筋をピンとしたらルガディンより背が高いと思うんですが、猫背なんですよね基本が。筋骨って意味ですとルガディンより一段たくましいので、甲冑系なども似合いますし、今までにない強いヒーロー感も出しやすいと思います。キャラメイクも人によってバリエーションが全然違ってくるので、僕らも“デフォルト”って呼んでいる“キャラメイクをしようとした時の初期表示キャラ”をどれにするんだ、ってちょっとした喧嘩になりましたもの(笑)。「これはロスガルっぽくないだろ!」「いやいやいや」みたいに。

――映像を見た印象ですと、獣人ぽいというわりに肌がツルツルだなと思ったんですが、あれはキャラクリ次第ではフサフサにできたりもするのでしょうか?

吉田:それは難しいですね。描画エンジンを進化させない限り、あれにファーの処理を入れたらたぶんゲームが動かなくなります。

――モフモフエンジンが必要になる、と(笑)。

吉田:モフモフエンジン自体は第五ビジネスディビジョンに存在しているんですが、モフモフエンジンを使うと、キャラを3体表示した時点でゲームが動かなくなっちゃうので……そこはさすがに難しいですね。ただ、よく人から見られがちなバストアップ部分に関しては、ギリギリ限界までテクスチャを切り詰めたりなど可能な限りやったつもりなので、そこは実機でご覧いただくと「思ったよりちゃんと作れる」って感じていただけるはずですので、大丈夫だと思います。

――新たな舞台の広さについてお聞きしたいです。光の氾濫によって失われつつ世界という設定ですが、これまでの、例えば『紅蓮編』で追加されたエリアなどと比べてどのくらいのスケール感と考えればいいでしょうか?

吉田:ゲーム全体の合計ボリュームとしては、『紅蓮編』を下回るということは絶対にないですね。むしろ『紅蓮編』よりちょっとでかいんじゃないでしょうか。密度もかなり濃いです。ノルグラントって呼ばれている舞台は、原初世界でいうエオルゼアでして、三国エオルゼアの地域とほぼ対になるのがノルグラントです。だからエオルゼア地域=ノルグラント地域だと思っていただきたい。なので単純に原初世界ではエオルゼアと呼ばれているエリアぶんくらいの規模で、第一世界でのノルグラント地域があり、そのノルグラント以外の場所は光の氾濫によって消し飛んでしまい、そこに“無の大地”と呼ばれる真っ白な大地が広がっているという状態です。

 無の大地の画も、実際にフィールドで見ていただけます。ちょっとだけお答えすると……アム・アレーンというマップをラスベガスファンフェスの基調公演で紹介していまして、そのアートに、めくれあがったような壁が描かれていました。……あれが、“外から押し寄せてきた光の氾濫があそこでギリギリ止まった”という境界なんです。あの壁がノルグラント地域を円状に包んでおり、あれの外は全ての属性が失われた白い大地になってしまっています。

――ということは、“エデン”のイラストは無の大地なのでしょうか?

吉田:さあどうでしょう? ボスの葉っぱかもしれない(笑)。

――エキスパンションでは、例えば空を飛ぶですとか海中に潜るですとか移動が進化するものがあったと思うんですが、今回はそういったものはないのでしょうか?

吉田:今回はありません。その代わりとして、“世界を自分達で闇に塗り替えていく”という体験を盛り込んでいます。移動の新体験を考えたとき、あとは単純にもう無重力くらいしかないというのが……。これ以上移動方式を増やすよりは、例えばジョブ要素にあまり関係せずに全員が飛行しながら攻略するコンテンツとか、そういう方向へ伸ばしていきたいなとは……漠然とですけど思っていますね。まあ、無重力は月に行く時でいいんじゃないかなと。……しかも無重力って「それ飛んでいるのと何が違うの」って聞かれたら……。「水中と一緒だよね」って言われたら「まあそうだよね」って感じなんですよね。宇宙だと音も聞こえないし。

――それでは『漆黒のヴィランズ』で冒険してもらいたい要素の一番核となる部分は、“世界を作り変えていく”という要素となるのでしょうか?

吉田:まあいつも通りで、全てがメインシナリオに根ざしています。フェイスシステムについてもそうですし。これはいつも拡張のタイミングで話していることの繰り返しになってしまうんですけれど、“新作RPG1本分のゲーム体験”というのを、さらに広げていきたいんです。とくにRPGとしてこだわるところ、普通のMMORPGではなかなか実装しないような、1人で遊んで世界にどっぷりシナリオにどっぷりはまれるという所を、今回全力で作っているという言い方が近いかなと思います。

――ありがとうございました!

『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)

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