2019年4月15日(月)
コーエーテクモゲームスから発売中のPS4/Xbox One/PC(Steam)用ソフト『デッド オア アライブ 6(DOA6)』。その開発者インタビューを掲載します。
3月1日に発売を迎えたシリーズ最新作『デッド オア アライブ 6』。美麗な人物表現やわかりやすくも気持ちのいい読み合いが好評な一方で、ユーザーから不満点もあがっています。
今回のインタビューでは新堀洋平プロデューサーに、そういった不満点へと対策や今後の展開についてお聞きした。
なお、本インタビューはロビーマッチ配信前に行っています。
――発売から約1カ月、現状のユーザーの反響を聞かせてください。
大きく分けて2種類の反響があります。1つはお叱りの声で、仕様や施策について具体的な話も含めて厳しいご意見をいただいています。一方で、作品のいい部分を認めていただき、もっと頑張ってほしいという応援の声もいただいています。
――なぜこのような事態になったのでしょう。
私は15年以上『DOA』を作ってきていて、その自信もありましたのでプロデューサーとディレクターを兼任していました。それによってある面では物事ごとをスムーズに進行することができました。
一方で、兼任したことでゲーム内外を問わず、『DOA』についての話がすべて自分のところに集まってくるため、個々の要素への判断が精査できていなかった部分がありました。ベータテストを実施するなどしてユーザーの声に耳を傾けながら開発していこうとしたのですが、気持ちをくみ切れず望まないことをしてしまった点については深く反省しています。
――今、“兼任していました”とおっしゃられませんでしたか?
はい、言いました。今お話ししたような経緯を踏まえて、発売後はディレクターを信頼できるスタッフに任せ、自分はプロデューサーのみを担当しています。これによってユーザーの声を拾いやすくなりましたし、チェックの目が増えることで今まで気づかなかった部分も見えてくるようになりました。
また、開発スタッフや宣伝スタッフにはこれまで以上に、意見があれば自分やディレクターに話すようにしてもらっています。現状の課題をクリアするべく、体制の変更を含めて『DOA6』をもっといいゲームにしていこうとしています。
――ユーザーの厳しい声について、具体的に聞いていきたいと思います。まず、リリース当初のコスチューム入手方法がかなり厳しいものだった理由を聞かせてください。
本作に限らず対戦格闘は、長くプレイしていろいろな人と対戦することで上達していきます。ですから、本作を繰り返し遊んでいただくことで、読み合いだったりコンボだったり、そういった遊び方を覚えてほしいと思っています。そのために本作では、繰り返し遊ぶことでコスチュームが手に入る仕組みを用意しました。
ただ、繰り返しの回数については完全にこちらの調整ミスでした。使用したキャラクターを問わずランダムでコスチュームの設計図が手に入るという仕様も、ユーザーに過剰な負担を強いることになってしまいました。ユーザーから意見をいただき、まず、すぐに対応できるフォローとしてキャンペーンという形で設計図の入手量を増加。その後、アップデートで完全なランダムではなく使用キャラクターのコスチュームの設計図を優先して入手できるようにしたのが、これまでの経緯になります。
今では、好きなキャラクターのコスチューム設計図を手に入れるまでの繰り返しの回数については、無理ではない範囲に落ち着いたと思っています。
▲現在は、使用したキャラクターのコスチュームの設計図を入手できる。使用キャラクターのコスチュームをすべて入手していると、他のキャラクターのコスチュームの設計図がランダムで手に入る。 |
――個人的にはキャラクターのコスチュームの中から、さらに最優先の一着を指定できればと思います。
もっともな話ですね。好きなものを手に入れられるフローを作るのは今後の課題となっています。
――もう1つ聞きたいのですが、設計図を集めると手に入るコスチュームをDLCのような形で販売する予定などはないのでしょうか?
当初はゲーム内で手に入るものは遊んで手に入れるものであり販売はしないと考えていました。ただユーザーからは、購入できるのならば購入したいという声も想像以上に出てきているため、改めて検討すべきことと認識しています。
――今後、追加されるコスチュームについて何か考えていることはありますか?
まず、有償での追加コスチュームは『DOA5』から続けて好評なので、今後も用意していきます。もうひとつ考えているのは、最終的に集まりすぎて使い道がなくなるオーナーポイント(ゲームをプレイして獲得できるコイン)の用途です。何かコスチュームを用意できるのか、まったく新しい用途を追加できるのかを含めて検討しています。
――シーズンパスといえば、Vol.1には2キャラクター分の使用権が収録されていました。新しいシーズンパスがリリースされる際には、新キャラクターに期待してもよいのでしょうか?
まだ、シーズンパスVol.2をリリースするとは発表していないのですが、Vol.1と銘打っている以上皆さんも予想しますよね。……シーズンパスの予定はありますし、新しいシーズンパスではTeam NINJAのファンが期待しているキャラクターを追加する予定です。
▲2019年4月現在、使用できるキャラクターは26人。さらに『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズから不知火舞の参戦も発表されている。 |
――続いて、パッケージ版やDL版といった買い切り版の発売から2週間で、基本無料版の配信が行われた経緯を聞かせてください。
実は、『DEAD OR ALIVE 5 Ultimate(DOA5U)』や『DEAD OR ALIVE 5 Last Round(DOA5LR)』はソフト発売と同時に基本無料版をリリースしていました。同時に出すことで初心者同士の対戦を最大限に盛り上げていたわけです。そのような流れがあったので、本作も本来ならば製品版と同時に基本無料版をリリースしたかったのですが開発の遅れもあって同時リリースはできませんでした。ですが、なるべく早くリリースしないとカジュアルなユーザーが減ってしまい、初心者同士の対戦ができなくなると考えて、開発を進めた結果、発売から2週間後のリリースになりました。
――もう少し早い段階で基本無料版の発売時期の告知をしていれば、混乱も避けられたのではないでしょうか?
開発が難航したこともあって、基本無料版をいつリリースできるのかが配信直前までわかりませんでした。また、東京ゲームショウ2018で基本無料版をリリースすること自体はアナウンスしていましたし、インタビューなどでも触れていたのですが、公式サイトで改めて告知をしていなかったため、基本無料版の存在がユーザーに浸透していなかったというところも反省しています。
公式サイトに“基本無料版リリース予定”とバナーだけでも用意しておけば、あそこまでユーザーを戸惑わせることはなかったと思っています。
▲基本無料版では、かすみ、バース、ヒトミ、ディエゴの4キャラクターを自由に使用可能。 |
――そのような状況を踏まえて、パッケージ版、ダウンロード版を購入したユーザーになに新たな特典を設ける予定はありますか?
ユーザーの中には、基本無料版を遊んでいながら全キャラクターを購入している方もいらっしゃいます。そういった方は、製品版と変わりない内容を遊んでいただいていますし、製品版を買った方より多くお金を支払っていただいている。そういうユーザーにメリットはなく、製品版のユーザーにだけなにか特典をというのは正直難しいと考えています。このあたりは『DOA5U』から変わらない考え方です。
ですが、製品版なのか基本無料版なのかを問わず、使用できるキャラクター数に応じて何かボーナスを付けられないかという点は現在検討しています。例えば、所持しているキャラクターのレベルの合計によってオーナーポイント獲得量にボーナスが入るなどですね。これならばコレクターズエディションやデジタルデラックスを予約したことで女天狗やフェーズ4を含む全キャラクターを一番早く手に入れた方たち、たくさん遊んでくださっている方たちにより多くの恩恵がある仕組みになると思います。
――やはり、基本無料版のユーザーも多くいるのでしょうか?
3月には50万ダウンロードを超えて、現在もダウンロード数が伸びています。増え方は『DOA5U』のスタートに似ています。それを含めても、製品版と基本無料版どちらのユーザーさんも大事にした施策を出していきたいです。
▲基本無料版はキャラクターとストーリー以外の制限はなし。すべてのゲームモード及び、対戦後のカメラ操作などあらゆる要素が楽しめる。 |
――(予定を見て)記事が載るころには、ロビーマッチが実装されています。ただ、少し時間がかかったという印象です。
実装が遅れ、遊ばれている方には申し訳なく思っています。それと同時にようやくロビーマッチを実装できたので、正直少しほっとしている面もあります。
――ロビーマッチの実装がこのタイミングまで延びた理由は? 発売直後の不満への対応が原因でしょうか?
本来は発売時に実装できているはずでしたし、ベースはできていました。そのため発売前の生放送で3月中には出す予定だと告知し、他のプロジェクトから経験豊富なスタッフも加わって最優先で対応しいていました。ですが、結果として皆さまの期待に応えられませんでした。その他の修正や実装は別の担当者が対応していたので、ロビーマッチ実装の枷にはなっていませんでしたが、配信の順番が変わってしまったので、ユーザーの皆さんから見れば優先度を入れ替えたように映ってしまったかもしれません。
ベースは2月にできていたのにもかかわらずここまでお待たせしてしまった原因のほとんどが、不具合の修正に時間がかかったためです。完成した後は、全プラットフォームで同時にリリースするためにタイミングを合わせる必要があり時間がかかってしまいました。ご存知のようにプラットフォームごとの審査内容や期間も違いますので、すぐに出せるものがあっても、一番最後に審査が終わったプラットフォームの配信日に合わせることにしています。
また、情報の発信についても不確かな情報を避けるため、これらの審査が通った後に、ということになってしまい、それではユーザーにとって突然のお知らせになりがちです。このあたりも今後やり方を改善できるよう、公式Twitterの運用も再検討しています。
――改めてロビーマッチの仕様について聞かせてください。
ロビーマッチはフレンドなどを誘って対戦できる場になっています。1つのルームにつき最大16人が入場でき、ルームのホスト(ルーム作成者)はルーム内の試合のルールの設定などを行えます。もちろん、ホストが誘った人だけが入場できるプライベートルームも用意しています。これらは『DOA5LR』でもおなじみのシステムですが、新しい仕様としてロビーマッチではホールドを3択にするか4択かにするのかや、連勝数制限、組手で1P側2P側どちらに残るかなどを設定できるようにしています。
▲参戦者のランクや、連勝数による連戦の制限も可能。 |
――試合の観戦も可能ですか?
もちろん、ルーム内で行われている試合を見られます。ただし前作までとは違い、ルームに入った時にすでに行われている最中の試合だけは見られなくなりました。これは、前作までの仕様では観戦者がいると対戦者に通信的負荷がかかり、観戦者によって試合にラグが生じることが判明したためです。負荷のかかりにくい仕様にするために、入室時の試合のみ見られないようになっています。ちなみに見られないのは入室時に行われていた試合だけで、その後の試合は観戦できます。
――前作までにロビーマッチにはチャット機能がありましたが、そちらは?
今回は“フレンドと対戦をしたい”というユーザーの要望になるべく早くお応えするために、テキストチャット機能の開発は後回しにしました。もちろん今後のアップデートでテキストチャットができるようにする予定です。
――自由に言葉を打てるテキストチャットと定型文だけのシンボルチャット、どちらを採用するのでしょうか?
ユーザーが文字を入力できるテキストチャットです。昨今いろいろな事情からシンボルチャットを採用しているゲームがあるのは把握していますが、多くの方が『DOA』シリーズにおけるロビーマッチでのチャットといえば、テキストチャットを想像するはずです。にもかかわらず本作だけシンボルチャットにしては、「チャット機能が欲しい」と言われているユーザーの希望に応えたことにならないんです。
まさにいま開発中で、ロビー画面の下の方にいかにもチャットウィンドウが入りそうな空間がありますが、そこに入ります。ルーム名を付ける機能も実装準備中です。そういったユーザーが文字を入力できる部分は普通よりもチェックが厳しいのですが、なるべく早くお届けできるように頑張ります。
――その他の要素で、ロビーマッチのアップデートする予定のものはありますか?
いくつか考えていることがありますが、そのなかでも大きいのは“対戦台の数”を設定できるようにしようと思っています。この対戦台の数を2以上にすると、1つのルーム内で複数の対戦が同時に行えるようになり、対戦中でないプレイヤーはどの台に並ぶかや、観戦だけしたい人はどの台の試合を見るかを選べるようにしようと開発を進めています。これも、2月にベースはできてましたがロビーマッチ自体を先に入れるために後回しにした機能のひとつなので、いまは開発を再開してあらためて不具合と闘っているところです。
▲すでにロビーマッチには“選択中の対戦台にエントリー”の表記が。 |
――今後のアップデート予定についてもお聞かせください。
まずはこれまでと同様に、ユーザーの声に耳を傾けつつ不便な点の改善やキャラクターの性能の調整をしていきます。その中でも現在急務になっているのは“サイドアタックが便利すぎるんじゃないか”という声への対応です。サイドアタックについては賛否ありまして、統計的には初心者だったり欧米のユーザーに喜ばれ受け入れられているのですが、そうでないユーザーからのご意見も多数いただいていますので、どういったバランスが最適なのかを検証中です。
その他にもいろいろと予定はありますが、声があればなんでも修正するというわけではなく、広いプレイヤー層から出ている意見なのかどうかを調べたうえでの調整になります。調整の中にはいわゆる“弱体化”もあるかもしれませんがキャラクターのよさを残したり伸ばしたりしつつ、行き過ぎていた部分を調整していく予定です。“弱体化”は安易にやると、その強い部分に魅力を感じているユーザーにとってはおもしろくない調整なので、慎重にやるようにしています。
――世界大会“DOA6ワールドチャンピオンシップ”開催に至った流れを聞かせてください。
DOA6がeSports“専用”のタイトルではないことは先に強調しておきますが、それでも昨今のeSportsブームも追い風となって、本作でも何かしようと考えていました。私は学生時代から格闘ゲームの大会に参加し、時には自分で開催するほど大会が大好きで、“eSports”という単語が生まれる前からゲーム大会はスポーツだと思っていました。そのため、「ようやくここまで来たか!」という思いが強いです。世界大会自体は『DOA5』以前から行っていたのですが、今回はようやく賞金制の大会を開くことができました。
すでに他のタイトルで賞金制の大会が行われているなか、私たちもプレイヤーが輝ける場所を作っていきたい。大会は勝敗も大事ですがそれだけではなく、プレイヤーの努力、個性、生き様、価値観などを見せる舞台となりますので、奮ってご参加いただき、最高の自分を見せつけて欲しいです。それが“DOA6ワールドチャンピオンシップ2019”です。これを成功させることが目標の1つとなりますし、そこで成果が得られれば、今後もっと大きなことにチャレンジしていきたいです。
――個人的には、できれば全試合をアーカイブで見たいですね。
配信を受け持ってもらう会社との相談にもなるのですが、見られない試合ができるだけないようにしていきたいと思っています。
――賞金についてですが、プロライセンスがなければ賞金が減額されることはあるのでしょうか?
本作の大会は、プロゲーマーでなくても腕前があれば輝ける場を提供するのが目的。そのため、プロかどうかを問わず、公平に賞金をお渡しします。そのために法務部署とも協力し、時間をかけて準備しています。
――今後の本作の盛り上がりに向けて、最後にユーザーさんにメッセージをお願いします。
いつも本作を遊んでいただきありがとうございます。これまで、皆さまの願いと自分たちの狙いがずれていることがあったり、情報の発信が十分でないこともあったりして皆さまには不快な思いや不安な思いをさせてしまったと思います。皆さまからいただいた意見をしっかり受け止めて、今後本作をより面白くし、伸ばしていくための糧にしています。
アップデートや大会も含めて長く運営していくタイトルにしていきますので、ぜひたっぷり遊んでください。これからも本作を応援していただければありがたいです。
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