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2019年5月3日(金)

“セガはやっぱりおもしろい!”そんな声を目指して進むセガゲームスの社長インタビューを公開【電撃PS】

文:電撃PlayStation

 3月30日、31日に開催された“セガフェス2019”。制作決定のアナウンスから約1年、ついにゲームの詳細が明らかになった今冬発売予定のPS4用ソフト『新サクラ大戦』の最新情報をはじめ、メガドライブミニなどセガゲームスを支える人気コンテンツの新情報が公開され、2019年のセガゲームに期待を寄せたファンも多いはずです。

松原社長インタビュー
▲会場での発表後、Twitterトレンド入りもしたほど注目を集めた『新サクラ大戦』の新情報。

 そこで今回は“セガフェス2019”開催後に行った、セガゲームスの代表取締役社長・松原健二氏のインタビューで、『新サクラ大戦』の進捗や“龍が如くスタジオ”の動きなど、2019年のセガゲームスの展望をお伝えしていきます。(インタビューは4月5日に実施)

松原社長インタビュー
▲セガゲームス代表取締役社長COO 松原健二氏。コーエー(現コーエーテクモゲームス)の代表取締役社長を経て、2014年10月に株式会社セガネットワークスの取締役CTO(最高技術責任者)に就任。2017年4月より現職を務める。

パッケージ作品の販売に手ごたえを感じた2018年

――まずは2018年度のセガゲームスを振り返っての感想をお願いします。

松原健二氏(以下、敬称略):昨年のパッケージゲームについては、既存のタイトルが国内外で堅調に推移して、収益を支えました。一方でモバイルゲームでは、タイトルの遅延や、サービスを開始したタイトルが期待した収益を得ることができないといったことがありました。

 また、PC・オンラインゲームに関しては、まだまだ『ファンタシースターオンライン2(以下、PSO2)』が中心ですが、『EPISODE5』リリース以降、それまでの勢いを挽回するには至らなかったなと思います。総合すると、パッケージはまずまず、モバイルとPC・オンラインは、「もう少しがんばりましょう」と、そういう採点ですね。

――パッケージ作品には手ごたえを感じているとのことですが、その代表作はやはり『JUDGE EYES:死神の遺言』でしょうか?

松原社長インタビュー
▲木村拓哉氏が主演し、脚本の完成度の高さでも話題をさらった『JUDGE EYES』。

松原:そうですね、正直もっと売上を伸ばしたいところもありますが、発売後の評価を聞く限りでは、ある程度狙った層のお客さまに遊んでいただけて、うまく響いたのかなと思います。そういう点では、かなりの手ごたえを感じました。

――北米版はこれから発売されますが、アジアでは同時発売でした。やはり海外版は、アジア圏の比重が大きくなっているのでしょうか?

松原:アジアの比重は、タイトルにもよりますが、かなり大きくなっています。10年前は日本を100とすると、アジアは10あるかないかという感じでしたが、今は平均で30~40、場合によっては半数を越えるものも出てきています。さらに、アジア市場は今でも伸び続けています。日本のパッケージ市場は、Nintendo Switchによってある程度活性化しているとはいえ、正直頭打ちなところも出てきているかと思います。そのなかでこのアジアの力強さは、ありがたいですね。

――欧米よりも、ヒット作の傾向が似ている面もありますね。

松原:はい、日本とアジアはプロモーション、マーケティング、売れるジャンルというのが似通っているんです。パッケージではいずれ、1つの市場としてとらえていけるようになる感触はあります。PlayStation Awardsも、昔は日本だけでしたが、今では日本を含むアジア全体の販売本数が対象になっていますし。

――2018年はセガグループ全体として拠点を大崎に移されましたが、グループが1カ所に集まることで、何か変わったことはありますか?

松原:製品やサービスなど、外から見える形としては表れにくいかもしれませんが、内部的にはかなり変わりました。なにより、あちこち移動しなくても打ち合わせができるようになったことが大きいです(笑)。それだけ時間が効率的に使えますし、すぐ近くにいることで、グループ全体で連携をとりやすくなりました。例えば研修など、グループ全体で何かをするという機会も多くあり、非常に活性化してきたと思います。

松原社長インタビュー

――社内イベントのようなものも増えているのでしょうか?

松原:大きな食堂ができたので、正月にマグロの解体ショーが開かれ、非常に好評でしたね。僕は食べられなかったのですが(笑)。そういうことができるのも、グループ全体が1つのビルに入って、さまざまな共同スペースができたおかげですね。そこでグループ全体がまとまるようなイベントをすることで、仕事においてもポジティブなことが生まれるかなと思っています。

――公式Twitterでは、社内ハロウィンイベントの模様も公開されていましたね。

松原:昨年のハロウィン期間中、仮装で仕事をしてもいい日を設けたんです。そのとき、経営陣全員が集まる会議があったのですが、そこで仮装していたのは、私と会長の里見(里見治紀氏 セガホールディングス代表取締役会長CEO)だけでした(笑)。私はハリーポッターの仮装をしていたのですが、夜のパーティーでは同じ仮装をしている人も多くて、たくさん写真を撮りました。このとき、若手の社員がすごく盛り上げてくれまして、あとは経営陣だなと。なので、次は経営陣にもしっかり仮装してもらおうと思っています(笑)。

――コンシューマとアプリ、そしてセガ・インタラクティブ(アミューズメントゲーム・アーケードゲーム機器の開発・製造・販売)が一緒になったことも、相乗効果につながりそうですね。

松原:セガ・インタラクティブが今年の2月に同じビルに入って、グループ約6500人が1つの場所に集まりました。これからもさまざまな取り組みを行って、一体感を作っていこうと思っています。そういう意味では、集まってまだ1年経っていないので、まだまだこれから成果が出てくるのではないでしょうか。

――こちらとしても、1つの場所に集まっていると、取材もラクになります(笑)。

松原:以前は、何曜日は品川、何曜日は羽田といった具合に、ひんぱんに各事業所を移動しなければいけなかったのですが、今は移動が本当にスムーズになりましたね。アトラスも同じビルに入りましたし。

14年間、大切に準備してきた『サクラ大戦』というIP

――2019年度のセガゲームス、そしてゲームタイトル(コンシューマ、オンライン、スマートフォンアプリ)の展望をお聞かせください。

松原:先日の“セガフェス2019”でも発表しましたが、今年中心になるのは、やはりオリンピックタイトルだと思います。独占ライセンスを取得して、数年にわたって温めてきたので、今年の発売から来年のオリンピック本番にかけて、しっかりリリースしていきたいと思います。あと、発表したなかで反響が大きかったのが『新サクラ大戦』でしたね。

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▲メインキャラクターデザインを久保帯人氏が手掛ける『新サクラ大戦』。

――たしかに思った以上の情報が発表され、反響はかなり高かったです。

松原:ある程度は反響があると思っていましたが、これほどとは思いませんでした。Twitterでは世界的なトレンドにもなって、これは本当にすごいなと。

――タイトルとしては『サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~』が2005年なので、14年の時間が経っているというのもあったと思います。

松原:14年間寝かしていました、とは言いませんが、そのあいだ完全新作をお届けすることができなかったことは事実です。でも、なんとか世に出したいという思いも強かったので、今年、具体的な映像を含めての発表ができたのは、本当によかったです。あとは、しっかりと作って発売するだけですね。

――14年ぶりの開発になりますが、どのような体制で開発を行っているのですか?

松原:製作総指揮を里見(治紀)会長が自ら行い、開発はエンタテインメントコンテンツ事業本部の第2事業部が行っています。そこにしっかり『新サクラ大戦』を作るチームを立ち上げて、今、あれこれと仕込んでいるところです。

 続報についてはまだ詳細をお伝えできる段階ではなく、みなさんさまざまな想像をしていただいていると思いますが、それに応えられる、もしくは、その期待を超えるものを考えています。セガとしては非常に大切にしているタイトルですし、十分力を入れていますので、もうしばらくお待ちください。

――メインキャラクターデザインの久保帯人さんもそうですが、田中公平さんの音楽も好評で、とくに新しい主題歌の『檄!帝国華撃団<新章>』が話題になりました。

松原:以前の主題歌である『檄!帝国華撃団』を踏まえたものになっていますよね。今回、わざわざタイトルに“新”をつけたのですが、完全なスクラッチからのビルドではなく、やはりこれまでのよいところを残し、そこに新しさを組み合わせていこうという意図を込めています。

 サウンド面では「やはり、田中公平さんだよね」と、意見は一致していましたね。田中さんにも今回の企画にご賛同いただき、精力的に取り組んでいただきました。ゲーム開発はまだまだこれからなのに、作曲はもうすでに仕上がっているんですよ(笑)。本当に感謝しかありません。

――“セガフェス2019”では、田中さんご本人も思い入れのあるタイトルと語られていました。

松原:じつは『檄!帝国華撃団』は、グループ全体にとっても、自分たちのアイデンティティを発揮する曲となっています。セガサミーグループには社会人野球のチーム(セガサミー野球部)があるのですが、点を取ったときに流れる応援歌がこの曲です(笑)。点が入るたびにみんなで歌うので、私たちグループ全体にとっても、従業員を1つにまとめる力を持った曲になっています。

――率直な疑問なのですが、14年間新作が発売されなかった理由はなんだったのでしょうか?

松原:いい質問ですね(笑)。まず1つは、『サクラ大戦』シリーズをナンバリングで5作品出したなかで、ある程度シリーズ全体の見直しをしなければならない段階に入っていたことです。この先さらに進化するため、乗り越えていくべきことがありましたが、それに時間がかかってしまいました。

 もう1つに、セガのIPとしてリブートしようという理由があったことも事実です。ただ、やはり会社としては『サクラ大戦』を出したいという思いはずっとありましたし、私がセガに入る前から、ずっと準備をしていました。ようやくその準備が整い、実際に始めることができたという感じです。

――こうした人気タイトルの場合、古いファンに寄るのか、新しいファンの獲得に舵を切るのか、選択肢は多いと思いますが、今回の『新サクラ大戦』ではいかがですか?

松原:今までのシリーズから切り離すのではなく、舞台の時代を太正二十九年に進めるかたちをとって太正浪漫というこれまでの雰囲気を維持しつつ、新しいおもしろさを伝えていくという方向になっています。あとは、新旧の組み合わせですね。グラフィックは完全に3Dで作っていますし、戦闘シーンは昔とは相当違っています。そうした技術的に進化した部分も取り入れつつ、これまでの『サクラ大戦』シリーズで楽しんでいただけた、ストーリー性やキャラクター性といった要素はしっかり表現していきます。

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▲3Dで再現された帝都・東京の街並。ここで新たな華撃団がどんなドラマを紡ぐのか、期待がかかる!

――まだまだ情報として出ていない部分も多いと思いますが、従来のファンが喜ぶような情報もあるのですか?

松原:もちろん、発売まで多くの情報を出していきます。まだお見せできていないキャラクターについても、「おお!」という反応をいただくものもあると思います。"セガフェス2019"では、最初にある程度の情報を出さないとインパクトがないと思いたくさんお出しましたけど、まだ言えない情報がもっとありますよ。今後はストーリーや戦闘システムなど、さまざまな情報を提供していく予定ですので、発売するまでの間も『新サクラ大戦』を楽しんでもらえればと思います。

――先ほどアジアが力強いとのお話をされましたが、『新サクラ大戦』のアジア展開についてはどうなのでしょうか?

松原:『新サクラ大戦』については、基本的にアジアは同発、欧米についてもできるだけ早くという対応で臨みたいと考えています。今は『龍が如く』シリーズのタイトルもそうなっていて、基本的に同じやり方ですね。

――“セガフェス2019”ではステージや展示コーナーもありましたが、来場者の反応、手応えはいかがでしたか?

松原:思った以上に熱い反応で驚きました。壇上で田中公平さんにアピールしていただいて、それをみたファンの方が反応されるなど、非常にいい流れができていたのかなと。広井王子さん(原作)やイシイジロウさん(ストーリー構成)もそうですが、開発に参加している人と、楽しみにしてくださっているファンが一緒に盛り上げていこうという雰囲気が感じられて、とてもよかったです。

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▲会場で登壇した田中公平氏。「すでに作曲の仕事は終えている」と語るなど、熱い想いで作品に取り組んだことを報告すると、来場したファンからは大きな拍手も!

 それと、今年は会場の2階で“サクラ大戦博覧会”と“大アトラス展”を行ったのですが、初日朝に開催したメインステージでの“SEGA Fan Meet-Up 2019”で初披露した『新サクラ大戦』の映像を公開したり、“大アトラス展”では実際に参拝できる大きな“メガテン神社”を作ったりなど、お客さまに楽しんでいただく要素が盛りだくさんで、非常に盛り上がっていただけたかなと思います。

――“サクラ大戦博覧会”も拝見したのですが、昔のパッケージが並んでいるのを見ると感慨深いものがありました。

松原:昔からのファンの方に楽しんでいただくと同時に、こういう作品があったのかと、新しい方にも『サクラ大戦』を知ってほしいという思いもありました。これまでの『サクラ大戦』を知らない若い方たちにしっかり認知してもらうことも大事ですから、そこは大きな課題として、意識して取り組んでいます。

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▲『サクラ大戦』シリーズの関連資料や、舞台で使われた衣装など貴重な資料が多数展示されていた“サクラ大戦博覧会”。

独占展開するオリンピックタイトル

――“セガフェス2019”で発表されたトピックの1つとして、オリンピック関連タイトルがあります。そのなかでは、『東京2020オリンピック The Official Video GameTM』がとくに注目されていますが、こちらの注目ポイントはどのようなところですか?

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▲会場では複数のタイトルが発表され、公式マスコットたちも応援に駆け付けた。

松原:本作では、自分の分身のアバターのカスタマイズ要素がかなり楽しめると思います。そこは日本だけでなくて、欧米からの意見も取り込んで、カスタマイズして競技を楽しむという要素に注力しました。今までにないタイプのカジュアルスポーツゲームになると思います。

――オリンピックゲームは過去にもありましたが、アバターをカスタマイズできて、オンラインにもつながるものはなかったですね。

松原:リオオリンピックのときも、そういうタイプのゲームは提供してなかったので、今回東京オリンピックで提供できるのは非常に楽しみです。オンラインというとことで、もちろんほかのユーザーさんと競うことになるのですが、オリンピックのスタジアムで自分のアバターが走るというのは、ワクワクできると思います。

――発売の時期はどれくらいになりそうですか?

松原:オリンピック関連タイトルは複数ありますが、それぞれ別々の時期にローンチしますし、マーケット的にはグローバルですので、欧米での発売についても、最新の情勢を考えながら発売していきたいと思います。オリンピックが近くなると日本だけでなく海外でも盛り上がってくると思うので、それに向けてちゃんと世界中の人に楽しんでいただけるよう、いろいろとプロモーションを考えています。

多くのファンに刺さったメガドライブミニ

――収録タイトルが発表されたメガドライブミニについても、かなりの反響がありました。

松原:本当は昨年中にお届けしなくてはならなかったのですが、昨年発表したところ、予想よりかなり多くの数を用意しないとならないということになり、今年になってしまいました。今年、ようやく発売することができて安心していますが、その反響の大きさには正直驚いています。

――セガフェスで発表されたのは10タイトルですが、全部で40タイトルという収録数には驚きました。

松原:“メガドライブの時代”というテーマで、バラエティ豊かなラインナップをそろえました。日本はメガドライブミニ、アメリカはジェネシスミニ、ヨーロッパはメガドライブミニ欧州版と、ハードも別になっているので、それぞれの地域で楽しんでいただいたゲームが選出されています。日本での収録タイトルはまだ20タイトルしか発表されていませんので、残りの20タイトルの発表もお楽しみにお待ちください。

――その予想だけでもファンは盛り上がると思います。現在プレイする手段がないタイトルもありますし、あと20タイトルというのは夢が広がります(笑)。

松原:私もフェイスブックで友人から、さまざまなご意見をいただいています。「これが入っているから買う」など、ポジティブな反応をしてくれる方が多いので、ありがたいです。1年かけて用意してきた甲斐があります(笑)。

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 採用タイトルについては技術的な可否を含め、検討に検討を重ねてきました。今は最後の仕上げ中ですね。発売する9月まで残り5か月ありますが、E3までには全ラインナップを発表予定です。5月16日放送の“電撃PlayStation Live”でもタイトル発表を予定しています。

――タイトルの数に驚かされましたが、この仕様で値段が比較的リーズナブルなのもすごいですね。コントローラも、日本では1つ付くバージョンと、2つ付くバージョンを選べますし。

松原:そう言っていただけるとうれしいですね。以前に任天堂さんもSIEさんもこのようなハードを発売されているので、どうすれば遊んでいただけるか、昔の感動体験をもう一度体験いただくにはどうすればいいのか、しっかり研究しました。コントローラについてもかなり考えたんです。やはり2つで遊びたいというお客さんもいるということで、今の形になりました。

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▲こちらはコントローラを2個同梱した“メガドライブミニ W”。

――すでに一部では予約が終了しているということですが、できなかった人に次のチャンスはあったりしますか?

松原:私も一部ネット店舗が1日で終わるとは思っていなくて、「なんとかなりませんか」というお声をいただいているのですが、ものがハードだけに、「じゃあ、明日追加で」とはなかなかいきません。でも、やはりお客さまにはできるだけお届けしたいので、努力したいと思います。なにせ、ひさびさにハードを発売しますので(笑)。

――たしかにセガのハードとしては、ドリームキャスト(1998年)以来になりますね(笑)。

松原:メガドライブミニについては、かつてメガドライブの開発にかかわっていた社員が担当者のところにフラッとやってきて、「ここがこうで」など、仕様のアイデアを出してくれたりしていました。製造に関しても、昔ハード製造にかかわった者が出てきてアドバイスをくれるので、ひさしぶりといいながら、そういう人間がまだ社内にいる間に発売できてよかったなと思います(笑)。

――セガがひさびさにハード出すというだけで、ファンもそうですが、社員でもグっとくる人が多いのではないですか?

松原:社内も活性化していますね。ハード製造での注意すべき点や、仕事の進め方など、かつての経験者ならではの知識が役立つことは多いですから。ここ10年くらいで入った人にはそういう経験がないので、昔の経験を持った人間がまだ大勢残ってくれていたのは、本当にありがたかったですね。

eスポーツ普及のカギは“健全性”

――第74回国民体育大会“いきいき茨城ゆめ国体”の文化プログラムにて行われる“全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI”では、『ぷよぷよeスポーツ』が競技タイトルに選ばれました。こちらはこれから都道府県代表決定戦が行われると思いますが、参加の経緯とその狙いについてお聞かせください。

松原:大会の実行委員会と、日本eスポーツ連合(Japan esports Union)の協議で選んでいただいた形になります。これまでの取り組みが評価していただけたことについては、感謝しかありません。セガとしては以前からeスポーツの振興には積極的に取り組んでおりますし、日本eスポーツ連合と今後も緊密に話をしながら、全力で取り組んでいきたいと思います。

――eスポーツでは『ぷよぷよeスポーツ』以外、例えば格闘ゲームでいえば『バーチャファイター』といったタイトルを今後アピールするような可能性もあるのでしょうか。

松原:「このタイトルをeスポーツで」というのは、内部では常に話をしています。『バーチャファイター』なり、対戦するスポーツゲームなりですね。ただ、正直なところeスポーツがどう世の中で発展していくのに合わせてのことなので、具体的にこのタイトルがというのは、今はまだお伝えできる段階にはありません。

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 eスポーツに取り組みだしてから、まだ1年しか経っていません。その間、プレイヤーさんも非常に熱心に臨んでいただいていますし、我々も運営のやり方を学んでいるところです。ただし、eスポーツを事業として見たときどうなのか、次にセガとしてどう取り組んでいくのかについては、まだまだこれからかなと。そのあたりもしっかり考えて、お届けしていければと考えています。

――eスポーツの魅力は何だとお考えですか?

松原:今までゲームをスポーツとして見ていなかった人にも、競技として捉えてもらえることだと思います。実際、マスメディアに取り上げられるようになり、地方の行政の方々に興味を持っていただいて、eスポーツのイベントをやりたいという話も増えています。ゲームの裾野が広がってきているんです。

 ともすればネガティブな見られ方もあるなかで、eスポーツがそのイメージを払拭してくれれば、ゲーム産業にとっていいことですし、ゲームを楽しむことが、生活が豊かになることにつながれば、日本のためにもなりますよね。そういう意味では、eスポーツはかなりの価値があると信じています。

――eスポーツがこの先市民権を握るための鍵は何だとお考えですか?

松原:例えば「体を動かさないでスポーツと呼べるのか」という意見に、「ゲームは反射神経や集中力が必要です」と反論しても、実際にプレイしていないと想像ができないですよね。こういったいろいろな“理解を得る”ことが必要だと思います。そのためにも、競技としての健全性を、これから作っていく必要があるのではないでしょうか。

 顔となるプロフェッショナルなプレイヤーも必要ですね。競技を代表して、誰かに見られているという意識を持ってプレイするプロのプレイヤーが出てくることも、今後eスポーツが定着していく鍵なのではと思います。

――ゲームのアダルト表現の規制強化をはじめ、業界全体の健全化の動きは、最近とくに進んでいるように思えます。

松原:そうですね、一方で、健全性とは逆の話になりますが、最近は“ゲーム障害(オンラインゲームなどへの依存により、日常生活に支障をきたすこと)”という言葉も出てきていますよね。ゲーム業界としては、ちゃんと向き合って対応していかなければならないと思っています。もし障害が発生する可能性があるならば、どうすればそれを防ぐことができるのか。必要であれば、ゲーム業界としていつでも行政と一緒に取り組んでいきたいという考えはあります。

――ちなみにゲームの作り方として、「これはeスポーツ向けにしよう」といった意識はあったりするのでしょうか?

松原:『ぷよぷよeスポーツ』では、ある程度それを考えて、対戦のしやすさを目指しています。ただ先ほども申しましたとおり、eスポーツでは、対戦を楽しむだけでなく、それを“観戦して楽しむ”という要素も重要になるんです。

 問題はスーパープレイを出したときの興奮を、プレイヤーと観客がどう“共有”するかですね。その部分はまだ『ぷよぷよeスポーツ』では十分ではないと感じています。オンラインでは互いの思いが伝わりづらい。せっかくデジタルとしての強みを持っているのに、もったいないですよね。

――格闘ゲームの大会では、現場の熱狂はものすごいですよね。

松原:格闘ゲームに関しては観客がいることが前提でしょうけど、やはりもっと広めようとすると、ゲーム実況や中継のサービスを通じ、見ている人とプレイしている人と実況者自身が、一体感を作って盛り上げていく必要があると思います。私から見てもまだ十分ではなくて、そこはまだいろいろ挑戦できる要素があるのではないでしょうか。

――先日Googleさんが発表したSTADIA(ステイディア)は、そういった部分を密接にしようとしている印象はあります。

松原:あれはさすがWebサービスを考える会社から生まれたものだな、と思いました。自分たちがゲームというメディアに対して、どんな新サービスを提供できるかを考え、生み出してきたものだと思います。

ゲームのビジネスモデルはどう変わる?

――この先、ゲームのビジネスモデルはどう変わっていくと思いますか?

松原:今年は多くのプラットフォーマーの発表が続きましたが、流れからすると、やはりクラウドゲーミングが広まってくるのではという感じがします。日本のスマホではFree-to-playモデル (基本無料プレイで、課金要素あり)が中心で、それは当面変わらないと思いますけど、ビジネスモデルとしては、サブスクリプションモデル(定額を払って、期間内で楽しむ)というのも出てくるかと思います。

――動画配信関係は、ほとんどがそうなっていますよね。

松原:映像、音楽、コミックと、ゲーム以外のメディアでは、定額を払って楽しみ放題というのがほとんどといってもいいですよね。たぶんゲームも、過去のゲームも含めてサブスクリプションモデルは広がっていくのではないかと。もちろん、買い切り、Free-to-play、またそれにIn-App Purchasesを組み合わせる等、いろんなビジネススタイルが考えられると思います。

――そろそろ次の家庭用機も出てきそうな時期ですし、サブスクリプションとかストリーミングも考えると、この先どうなるかの推測は難しそうですね。

松原:2012年くらいからスマホの台頭で業界がFree-to-playモデルに傾いて、もう6~7年経ったなかで、サブスクリプションモデルがでてきたとき、スマホに急速に移行したときのようなことがまた起きるのか、それとも混在するのか。そこの見極めは、ビジネスをしていくうえでは頭を悩ませます。

『新・龍が如く』(仮題)の盛り上がりに期待

――ここからは、そのほかのセガゲームスの主なシリーズについて、2019年度以降の展望をお聞かせください。まずは『龍が如く』シリーズはどうでしょうか?

松原:“龍が如くスタジオ”としては、『龍が如く6 命の詩。』を発売したあと、昨年は『JUDGE EYES:死神の遺言』を発売して、そして今は『新・龍が如く』(仮題)に向けて体制を仕上げているところです。しっかり準備を進めてきたので、これを世の中に出せるタイミングが近づいてきたと思うと感慨深いですね。

 しっかり成果を出さなければいけないなと思うのと、同時に期待しているところです。それには、やはり新しい主人公の春日一番にがんばってもらわないと(笑)。それと、今までの『龍が如く』のオーディションはサブ的な登場人物がほとんどでしたが、今回は準主役級の位置づけで“助演女優オーディション”を行います。こちらの盛り上がりにも期待しています。

――エイプリルフールに公開された映像も話題になりましたし、この先も盛り上がりそうです。では、いよいよ新エピソードが登場する『PSO2』についてはどうでしょうか?

松原:『EPISODE5』導入時は健闘しましたが、それ以降、お客さまの本当のニーズにお応えしきれずに、少し信頼を落としてしまった反省があります。これまでその回復のため、調整を繰り返してきましたが、十分には至らなかったというのが正直なところです。今まで大きな盛り上がりをみせてきたのが新エピソードだったり、新ハードでの展開だったりします。4月24日からは『EPISODE6』が配信されました。これをきっかけに、もっと盛り上げていきたいですね。

――『EPISODE6』は、いい意味でよりSFらしい要素が入っていて、セガフェスの会場でもかなり評判がよかったです。

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▲4月24日に実装された大型アップデートの『EPISODE6』。こちらは新システムの1つ、艦隊戦。

松原:私もセガフェスの様子を拝見しました。新しいシステムも入れましたし、“PS感謝祭2019”でも手ごたえがよかったので、ぜひ遊んでいただければと思います。

“世界に届ける”ことが1つのゴール

――セガゲームスの代表取締役社長になられて約2年になりますが、あらためてこれまでを振り返っての手応えをうかがえますか?

松原:この立場になって2年間、セガに入って4年半ほど経ちますが、モバイルに関しては伸び悩んだところがありましたので、今年はしっかりとお客さんに楽しんでもらうコンテンツを作り、原点を見直す形で挑みたいと思っています。

 コンシューマでは、4年前から開発の人間に対し、収益を上げて、それがあって次のタイトルを作っていくんだという意識改革を行ってきましたが、その成果が出てきたと感じています。また、海外での取り組みも進んで、日本で作ったタイトルがしっかり欧米で売れるようになってきたことは、手ごたえを感じていますね。

――『龍が如く』シリーズや『ペルソナ』シリーズは海外でも好調でした。

松原:『龍が如く』は欧米では『YAKUZA』というタイトルなのですが、『YAKUZA 0』はMetacritic(映画・ゲームなどをレビューするWEBサイト)で高い評価をいただきましたし、『ペルソナ5』は、全世界でのセールス240万本のうち、海外は日本の倍くらいのセールスを記録しました。

 2年前の社長就任時に、世界のスタジオで創って世界に届けようというのを1つのゴールとして考えていたのですが、欧米のスタジオも日本のスタジオも、自分がわかっている市場だけでなく、どうやって世界に届けるか、各地域のパブリッシングのチームと連携してやってくれるようになりました。

――海外のゲームが日本で同時発売されることも増えてきましたし、世界中でゲームの魅力の垣根がなくなってきた印象はあります。

松原:PS4の『コール・オブ・デューティ ブラックオプス4』が50万本出荷したり、『PUBG』や『フォートナイト』のようなバトルロイヤル系のゲームがヒットしたり、かなり垣根はなくなってきたと思います。それは我々も感じていますし、またチャンスでもあると考えています。日本の市場に海外も入ってきて、負けないようにがんばろうと、開発者も真剣になっていますね。

――もうすぐ元号も令和に変わり、来年にはセガゲームスも創立60周年を迎えます。この先の長期的な展望として、セガゲームスをどのように成長させていきたいと考えていますか?

松原:まだまだ具体的にはお話できないことばかりなのですが、ゲーム業界で60周年の歴史を持っていることは、やはり特別なことと感じています。60周年をお祝いするイベントもそうですけど、それに恥じないタイトル、サービスを作っていくことが、変わらない使命というか、私たちのやるべきことだと考えています。

 そのためには、開発の人間と経営の人間がきちんと話し合い、見ている方向を合わせることが必要だと感じています。「創る人と売る人を分けるのではなく、全員が"創って届ける人"として、しっかり連携しましょう」と、ずっとその体制を作ることに取り組んできました。それをみなさまにも実感していただけるよう、今後も取り組んでいきたいです。

――最後にセガゲームスを応援している方にメッセージをお願いいたします。

松原:まずは、セガの製品、サービスを愛してくださってありがとうございます。我々はモノを創ることにこだわりをもって仕事をしています。常にどうやったら楽しんでいただけるか、どうやって“感動体験”をしていただけるかを考えている人間が多い会社です。

 その人たちのモノを創る力と、届ける力を組み合わせて、世界中の人に「やっぱりセガっておもしろい会社だな」と言ってもらえるよう、がんばりたいと思います。今はハードを作っている会社ではありませんが、逆に言えば楽しみを届ける場というのは広がっているので、本当のおもしろさを届けて、セガのおもしろさが世界中に伝わるようにしたいと考えています。

松原社長インタビュー

(C)SEGA ※画面はすべて開発中のものです。

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