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 メキシコの伝統的な動物人形「ピニャータ」を、自分だけの庭で育てていく箱庭SLG。草木を植えたり、池を作ったり、建物を建てたりと、好きなように庭に作り上げれば、さまざまな「ピニャータ」たちが続々と集まってくる。Xbox LIVEに接続すれば、友だちの庭にお出かけしたり、“ピニャータ”を交換したりと遊びの幅も広がっていく。

  • ■メーカー:マイクロソフト
  • ■ジャンル:SLG
  • ■価格:2,940円(税込)
  • ■年齢区分:全年齢対象(A)

ライトユーザー代表:田渕健康

 作り手の「個性」が色濃く出ているゲームシステムやエキセントリックなストーリー展開が好み。アクションからシューティング、はては美少女ゲームまで「広く浅く楽しむ」ライトユーザー系ライター。

箱庭世界の中で自分だけのガーデンを築こう!

 ある日、森の中にある荒れ地に降り立った主人公。そこで渡されたのはエクスカリバーならぬ1本のシャベル。『あつまれ! ピニャータ』の始まりは、あらゆるゲームをぶっちぎってしまうほどに唐突でマジカルでファンタジック。ゲームは与えられた荒地をシャベルで耕して、自分だけのガーデンを作り上げていくのがとりあえずの目的。最初は殺風景なガーデンも草木が生えていくにつれて不思議な生きもの「ピニャータ」が集まり、ひとつのコミュニティを形成していく。いわゆる「育成系SLG」のジャンルに属するゲームなのだが、全編を貫く独特なビジュアルと個性的なシステムが他に類をみない仕上がり。アクが強すぎるキャラクターデザインと原色全開の色味がきっついなーと思ったりもしたけど、そこには目をつぶってさっそくレポートしていく。

『あつまれ! ピニャータ』 『あつまれ! ピニャータ』
ガーデンに「ピニャータ」たちを集めて、繁殖させていこう。さまざまな種類の「ピニャータ」をどの順番で繁殖させるかが腕の見せどころ。

見た目に反してピニャータ世界は弱肉強食!?

 前述の通り、ゲームの目的は自分のガーデンに「ピニャータ」と呼ばれる生物を繁殖させていくこと。最初は虫や小型の鳥たちがガーデンの住民となるが、徐々に大型の「ピニャータ」たちが集まって、ガーデンはにぎわいを見せていく。しかし! 「ピニャータ」たちをガーデンの住民とするには「条件」があり、プレイヤーはそれを満たすためにさまざまな試行錯誤をしていかなければならない。「ガーデンの設備を整える」といった基本的なことから、「指定されたピニャータを○匹食べさせる」といった食物連鎖を発動させる情け容赦ないイベントまで……。ゲームの雰囲気から連想するに「ピニャータたち、仲よく一緒に遊ぼうよ☆」的なファニーさがあふれているものの、実際にあるのは力こそ正義という生物界の不文律なのだ。さっきまで楽しくガーデンで遊んでいたお気に入りの「ピニャータ」がコーヒーを入れに目を離した途端、他の「ピニャータ」のエサになっていた光景を見たときのインパクトたるや……。せっかく名前を付けてやったのに。

『あつまれ! ピニャータ』 『あつまれ! ピニャータ』
徐々に増えていくピニャータたちを眺めながらニヤニヤする喜び! しかし、「ピニャータ」だって生き物。腹も減れば恋もする。そこには小さなドラマが……。ちなみに病気にもなります(涙)。

やらなきゃソン! キミも今日からガーデナーだ!

 結論からいうと『あつまれ! ピニャータ』は掛け値なしにおもしろい! 「ピニャータ」たちを交配させて数を増やし、食物連鎖を発生させてガーデンを発展させていく……このシステムが実によくできており、ついつい時間を忘れて遊んでしまう。登場するキャラクターたちは萌え要素ゼロの個性派揃いですが、ゲームを続けていくにつれて「なんか馴染んできたな」という印象から、「これはこれで味があっていいかも!」に変化し、「もうこれ以外はありえねええええ!」と移ろいでいくので問題ありません。一見、低年齢層向けに作られているように見えますが、年齢を問わずに楽しめるうえに「生きるって大変」と生物界の過酷さをしみじみと感じさせてくれる本作。10年後、Xbox 360を語る上で外せない1本になっていると断言します、いや本当に。

『あつまれ! ピニャータ』 『あつまれ! ピニャータ』
愛らしいピニャータたちのグラフィックだけでなく、朝昼晩と時間とともに変化するガーデンの描写も秀逸。パンチの効いた登場人物たちも付き合っていくうちに愛着がわきます。

SLGユーザー代表:弩左右衛門

 ヘビーではないけどゲーム歴は長い、SLGプレイヤー代表。SLGと聞くと心がうずく偏執狂。SLGとつけば、ドライブライフSLGだろうが環境シミュレーターだろうがなんでもやります、楽しめます。リアルな趣味は車いじりですが、最近ガソリン高いし、車壊れてるしでゲームに逃避中。

気付くとハマってた……

 さあ、庭を作ろうと意気込んだものの、渡されたのはシャベル1本。とりあえず荒地をシャベルで耕せば種が撒ける&虫が来る、その虫用の巣を作れば、交配して数を増やせると、徐々にできることが増えていく。この「徐々に」というところに中毒性があります。羊が来る、兎が来る、だんだんとにぎやかになっていくマイガーデン。だが我が庭は、ミニマムな生態系なので、弱肉強食の法則は健在。マイ「ピニャータ」を食べさせることで定着する種もいるので仕方ないと思いつつも、「ピニャータが食べられちゃうよ」という表示が出るとちょっと切なくなります。生きるって大変なことですね。あ、「バニーコーム(兎型ピニャータ)」の“ベッキー”が野良犬に食べられた……。

『あつまれ! ピニャータ』 『あつまれ! ピニャータ』
集めた「ピニャータ」と育てた花などの植物は売ることができます。その他、巣箱を作るとはちみつが作れたりもします。

さすがレア社と、うなってしまいます。

 洗練されたインターフェイスを含めて独特の世界観が非常によくできています。開発を行ったレア社の底力を見ることでき来る作品ですね。一応説明すると、レア社はイギリスのゲームメーカーで、NINTENDO64用ソフト『007 ゴールデンアイ』やスーパーファミコン用ソフト『スーパードンキーコング』なんかを開発した、任天堂のセカンドパーティだったメーカーです。マイクロソフトに移ってどうなるかと思いましたが、その心配は無用だったようです。
庭を作りながら動物を集めていくというのが大雑把な話ですが、食物連鎖のなかでいろんな「ピニャータ」を定着させてバイオスフィアを構築する楽しさは、収集、育成といった要素もあって、ユーザーを選びません。シミュレーションというと、難しいとアレルギー反応を起こす人にもこれなら安心してすすめられます。

『あつまれ! ピニャータ』 『あつまれ! ピニャータ』
お邪魔キャラクター「サワーピニャータ」も生態系には大事な役割を持っています(多分)。こいつらのせいで大事な「ピニャータ」が病気になっても医者呼べばいいだけですし(ただし有料)。

ヘビーユーザー代表:西岡浩二郎

 模型などの立体物やメカ好きでしたが、RPGをきっかけに剣と魔法の世界にはまったことから、世界観とか設定重視の3DRPG好きとして今に至ります。アニメや漫画もたしなみつつ、最近はフィギュア(主に美少女系)も…。

ガーデニングという名のコロニー作り?

 そもそも「ピニャータってなに?」という素朴な疑問がまずわいてきますが、それは公式サイトなどを見てもらうとして、画面を見るだけでは、どんなゲームだかさっぱりなのはもったいないですね。簡単に説明すると、本作は「ピニャータ」がいる島の一画を整備することで、彼らが自然に集まってくるような場所を作っていってあげるゲームです。がらくたが放置された荒れ地を整備して彼らが次第に集まってくる様子はなかなか楽しく、野良猫とか野鳥を餌付けする感覚で、あれやこれや誘惑材料をそろえてあげることに意外と熱くなってる自分がいました。

『あつまれ! ピニャータ』 『あつまれ! ピニャータ』
最初はただの荒れ地ですが、邪魔者を撤去して土地を耕して……とやっていくと、次々と「ピニャータ」が現れます。それに、近くにオープンしたお店の告知などのメッセージが相次ぐので、最初はなんだかかなり急がしい印象でした。

お邪魔キャラもいるけど、自由度は高い

 ちゃんとゲーム性も考えられていて、悪さをする「ピニャータ」も現れたりします。また、「ピニャータ」が増えてくると、限られた敷地の中でいかに彼らを同居させながら、「ピニャータ」と仲よくなる条件を満たすのかといった、やりくりも必要になってきます。自分は、最初にあるがらくたの一部をオブジェとしてあえて残してみたり、家の横に池を作るなど、自分なりにコーディネートして遊んでましたが、特に問題はありませんでした。全体的な制限はゆるく、プレイヤーの裁量に任されている部分が大きいので、自分のペースでできるゲームですね。

『あつまれ! ピニャータ』 『あつまれ! ピニャータ』
住人になったピニャータ2匹を仲よくさせることで「ベイビー」が生まれてきたりします。こういう小さな目標を次々とクリアしていく快感にいつの間にかはまってるんですよね。