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『Battlestations: Midway(バトルステーションズ:ミッドウェイ)』兵器資料室:SBDドーントレス

レキシントン

 空母「レキシントン」は、大砲で敵の軍艦と撃ち合う花形の軍艦「巡洋戦艦」として着工された。しかし、建造中に締結されたワシントン海軍軍縮条約により、アメリカが所持できる戦艦の数が制限されてしまったのである。
  制限の枠の中に入れず巡洋戦艦にはなれないことが決まった「レキシントン」には、改造か廃棄の二つの選択肢しかなかった。そういった背景の中、「レキシントン」は航空機を飛ばすことで戦艦を補助する航空母艦へと改装されることになった。この当時、飛行機で戦艦を沈めることはできないというのが世界の常識であり、航空母艦は戦艦に比べて重要性が低い船だと考えられていた。

 巡洋戦艦から空母に変更されてしまった「レキシントン」だが、機関出力に余裕があり、34.2ノットという高速を発揮することができた。飛行甲板に障害物がない「全通式一段飛行甲板」や飛行機の発着の邪魔にならないよう船体脇に寄せて作られた「アイランド式艦橋構造」など、後に設計された空母に見られる設備も全て建造された段階で装備されており、飛行機搭載能力も大きかった。「レキシントン」は途中から改装された軍艦であったにもかかわらず、当時の世界最優秀空母と謳われるほど成功した航空母艦となったのである。

レキシントン

 また、「レキシントン」は第二次世界大戦中のアメリカ空母としては唯一、艦首と飛行甲板の間に開口部がない「エンクローズド・バウ」を採用。飛行機を格納しておく格納庫甲板も密閉式であった。艦首部分が密閉構造のため開口部がある設計の場合より大きな波に対応できる、飛行機が風雨にさらされないので錆びたり壊れたりしにくいなどの利点がある。

 しかし、この密閉構造が「レキシントン」の命取りとなった。ミッドウェイ海戦の直前に発生した史上初の航空母艦同士の戦闘、珊瑚海海戦において悲劇は起きた。魚雷2本と爆弾2発を被弾した際、発生した火災と浸水を一度は食い止めたかに見えた「レキシントン」は、突如大爆発を起こしてしまったのである。原因は被弾により航空機の燃料であるガソリンが漏れ出し、密閉構造の格納庫の中に充満したことだといわれている。大爆発により発生した火災はもはや手がつけられず、「レキシントン」は味方駆逐艦の魚雷により処分された。
  なお、「レキシントン」は第二次大戦中に日本海軍により撃沈された最大の空母である。