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■ インタビュー ■

ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リング・オブ・フェイト オリジナル・サウンドトラック

『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リング・オブ・フェイト』の世界を彩色する音楽がつめこまれたオリジナル・サウンドトラックが9月19日に発売された。この音楽を手がけた作曲家・谷岡久美さんに、楽曲をつくる上での苦労や、ご自身についてお話を伺った。

本作の音楽を制作するに当たって、苦労したのは世界観?

──本作の曲をつくるに当たって、クリエイターサイドからはどのような依頼があったのでしょう?

谷岡久美さん(以下、谷岡。敬称略):私は最初、今回の作品は、前作『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル(以下、FFCC)』と同じ世界観だと思っていたんです。ところが、一番最初の打ち合わせの時に、「今回はストーリーモードがあって、しかも世界観すごく重いよ!」って言われたんです。それを聞いて正直「前のようにのんびりした楽曲ではダメだ」って戸惑った記憶があります。その後にシナリオを読み世界観を理解していくことで、ようやくイメージが固まり、最初の1曲が出来ました。実は、開発開始から、ここまでが一番時間がかかりましたね。

──50曲以上の楽曲がゲーム中に含まれているとお聞きし、「曲数が多い」という印象を受けましたが、谷岡さんはどう感じましたか?

谷岡:世界観が広く、シナリオは同行するメンバーが入れ替わったり、イベントシーンは明るい部分と暗い部分で曲がはっきりしている。さらに、マルチプレイ専用の曲も用意が必要。そういったことを考えるとこれくらいになるのかなって最初から想定はしていました。なーんて言っていますが、正直言うと、ホントに曲数が多くって苦労しました(笑)。

──曲を作る際は、どのような環境で臨まれるのですか?

谷岡:ブースのなかに1人でこもって曲を作るんですが、浮かばない時は他のサウンドスタッフのブースに行って茶々を入れたり。天気がいい日は散歩に行ったりもしましたね。

──本作の音楽にかけた制作期間というのはどれくらいになるのでしょうか?

谷岡:最初の曲ができてからは、約1年間くらいです。曲を作るというよりは、楽曲の方向性を決めることに悩んだため、最初の曲ができるまでの道のりが長かったんです。

──曲を作るにあたって苦労された点は?

谷岡:まさにその方向性についてですね。私のなかでは前作からのイメージができあがっていたので、その印象を崩して今回の世界観へと作り変える。これが至難の技でした。

──そういった苦労がつまった曲は、ゲーム中でもしっかりと聴いてほしいですよね。

谷岡:プレイしている時って、音を意識して聴いている方ってのは少ないと思います。ですが、あとから音楽を聴いて「あのシーンの曲だ」「あそこはおもしろかったな」「あそこはむずかしかったな」って思い出してくれたらやっぱりうれしいですね。あとは、音楽は消さずに、ムービーは飛ばさずに見てほしいと思います。「音楽を聴いてくれ」というよりは、音楽もゲームのなかの演出の1つなので、一つの作品として楽しんでほしいです。

──前作の曲を作る際にもあったかもしれませんが、『ファイナルファンタジー』シリーズに代表される「クリスタルのテーマ」や戦闘シーンの音楽などを意識されたりしませんでしたか?

谷岡:新たな世界観ということなので、そのフレーズを使おうということは考えていませんでした。ただ、クリスタルの旋律がハープや琴のイメージ、ということは意識しました。あと「クリスタルのテーマ」のフレーズはすごく強いインパクトなので、それをあえて隠しで投入させて作ったというのはあります。でもまったく同じものは使わず、『FFCC』の「クリスタルのテーマ」というものを作りました。


プライベートでも音楽生活?

──谷岡さんは普段ゲームを遊ばれますか?

谷岡:実は私、3D酔いをするんであまりしません(笑)。ゲームが嫌いというのではないんですよ。

──ゲーム機はどのハードをお持ちですか?

谷岡:ハードは家に一通りあります。最近ですとWiiなら『Wii Sports』にある「ボーリング」を、DSなら能力トレーニング系ですかね。

──最近、プライベートでハマっていること、楽しみなことなどあったら教えてください。

谷岡:しいて言うと、バッティングセンターにはまっています。あまり運動神経は良いほうではないんですけど(笑)。先日なんかは、バッティングセンターで知らないおじさんに「そんな強く握ったらあたらないよ」って指導されました(笑)。

──ゲームミュージック以外には、どのような音楽に興味をお持ちですか? お気に入りのアーティストなどはいますか?

谷岡:誰か特定のアーティストを追いかけるというよりは、友だちに借りたり、街で流れている音楽を聴いたりと、いろいろなものをかじり聴くというものでしたね。小さいころからピアノを習っていたんで、音楽がずっと好きでした。

──ピアノ以外に、これまで演奏してきた楽器は?

谷岡:かじったという程度だと、クラリネットや琴、三味線などです。あとはドラムやパーカッションなども経験があります。小太鼓を演奏していて「お前の太鼓はうるさい!」って言われましたが(笑)。大学に入ってからは合唱団に入っていたので、歌とピアノは常に回りにあった環境でした。

──なるほど。では、どのような経緯でゲーム音楽の作曲に関わることになったのでしょう?

谷岡:最初は「ゲーム会社に入りたい」というわけでもなかったんです。作曲も小学校の時に遊びでやっていた程度で、その後は大学に入った後も特に曲を作るということはしていませんでしたから。でもいざ就職を決める段階になった時に、本当はピアノでと思っていたのですが、大学四年間で、演奏よりも制作の方に興味が沸くようになり、思い悩んでいたときに、音楽をクリエイトする作業がおもしろかったことをふと思い出したんです。その人にたまたま曲を作らせてもらった時の楽しさがふと頭に浮かんで。今思うとあれも作曲家になろうって決めたきっかけの一つだったのかもしれませんね。

──それでこの業界に入ろうと思ったわけですね。

谷岡:ゲームは弟がよく遊んでいたので、割と身近にありました。植松伸夫さんや崎元仁さんや、伊藤賢治さん、下村陽子さんの音楽ばかりを当時聴いて、「こういった曲を作れる」といいなと漠然と思っていた頃がありました。現在、そんな皆さんの近くで仕事をさせてもらったり、個人的にお付き合いさせていただいたりしているとさらに刺激になりますね。

──これから挑戦してみたいことなどありますか?

谷岡:友だちにフルートをもらったんで、それを練習したいと思います。今は曲を書くのが仕事になってしまっているんですけど、やっぱり音楽をやっていることが好きなんで。プライベートでも遊んでいます。他にもやってみたい楽器はたくさんありますね。ただ、ギターにも挑戦したんですが、指が短くてダメだったんで(笑)。

ファンへのメッセージ

──サウンドトラックの発売を控えた、今の心境をお聞かせください。

谷岡:プレイした人がどれだけ無意識のうちに音楽を覚えていてくれていたか。みんなの頭の片隅に残るものをつくれたのだろうか。そういう意味ではサウンドトラックを発売して、どれくらいの人が音楽に興味を持ち、手にとってくれるのかが一番気になります。

──聴きどころを教えてもらえますか?

谷岡:曲順はストーリー仕立てで並べてあります。シングルモードの曲が流れ、そのあとにマルチプレイの曲が入っていてという順番になっているので、そのプレイした状況を思い出していただけるのではないでしょうか。あとは、ボーナストラックが1曲入っています。世界感を表した3曲にアレンジをかけ、1曲にまとめたピアノVerです。ちなみにこれは私が演奏させていただきました。ゲームをプレイしたあとに聞くと、ちょっと回想してもらえるような曲になっています。

──では最後にファンの方へメッセージをお願いします。

谷岡:音楽を聴くことでゲームを思いだし、プレイした皆さんが個々の思い入れに浸っていただく事ができたらいなと。そのあとで、このサウンドトラックをヘビーローテーションで聴いてくれたらそりゃもっとうれしいです(笑)。

──本日はありがとうございました


なお、このときの様子を動画で収録したものが、電撃オンラインのニュースコーナーに掲載中! 谷岡さんが、ピアノ以外のある楽器を使ってボーナストラックを演奏するというレアな映像になっているので、こちらもぜひチェックしてほしい。

作曲家
谷岡久美さん

谷岡久美さん

PS『チョコボの不思議なダンジョン2』やXbox 360『プロジェクト・シルフィード』の音楽を担当。MMORPG『ファイナルファンタジーXI』に植松伸夫氏、水田直志氏と共に関わったあと、GC『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』の音楽を製作し、ユーザーに高い評価を受ける。

ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リング・オブ・フェイト オリジナル・サウンドトラック

「ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リング・オブ・フェイト オリジナル・サウンドトラック」

■発売元:スクウェア・エニックス
■品番:SQEX 10101
■発売日:2007年9月19日
■価格:2,100円(税込)
■関連サイト
公式サイト / SQUARE ENIX MUSIC
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ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リング・オブ・フェイト

『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リング・オブ・フェイト』

■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:DS
■ジャンル:A・RPG
■発売日:2007年8月23日
■価格:5,040円(税込)
■関連サイト
公式サイト / スクウェア・エニックス
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