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●初代『鬼武者』開発終了時に決まっていた物語の結末
――まずは、『鬼武者 3(以下、3)』の完成おめでとうございます。そしてお疲れ様でした。
稲船氏(以下、敬称略):ありがとうございます。
――今度の『3』で『鬼武者』シリーズの信長3部作は完結ということですが、『鬼武者』『鬼武者2』と比べて、開発時の苦労は大きかったですか?
稲船:開発期間の後半に関しては、前作、前々作と比べてスケジュールが順調だったので、それほど苦労はしなかったんですよ。でも前半はゲームエンジンをイチから作り変えたので……。そこが一番苦労しましたね。あとは、ジャン・レノさんとかのキャスティングを決めるまでが大変でした。
――『3』は主人公が2人いたりと、設定からして今までの印象と違いますよね。
稲船:そうですね。左馬介は『鬼武者』からのカムバックだけど、ジャン・レノさんが演じるジャック・ブランは現代のフランス軍人ですからね。
――戦国時代の日本と現代のフランスという2つの時代で戦うわけですが、これは設定が先にあってからジャン・レノさんに出演依頼をされたんでしょうか?
稲船:これは設定が先ですね。だからジャックのデザインとキャラクター性は、最初はジャン・レノさんをイメージしていたわけではなかったんです。ジャックが今の姿になったのは、キャストが決定してからですね。
――ということは、2つの時代で戦うというコンセプトはかなり早い段階から決まっていた?
稲船:はい。それはもう『鬼武者2』を作っている頃から、もっと言うと『鬼武者』の開発が終わった瞬間には決まってましたね。
――そんな早くから決まっていたんですか!
稲船:『1』が終わった瞬間に、「最後は時代を超えてもいいよね」って(笑)。やっぱり、“侍が戦うゲーム”っていうと、どうしても表現が縛られちゃうじゃないですか。「『鬼武者』ってこういうものなんだ、こういう作りにしなきゃいけない」って。それがイヤだったんですよ。だからもう、『3』はタイムスリップもアリ、ユーザーが「えっ!?」って驚くものを入れてもいい、と思って。それで『鬼武者 2』をある程度ハチャメチャにしておいてですね。「タイムスリップが現実になっても仕方がない。『2』であれだけハチャメチャだったんだから」って思えるようにしておいたんです。そのおかげというか、『3』はやりたいことが規制をかけずにやれましたね。
――そのへんはやっぱり、“3部作の集大成”という意気込みがあったからこそ、でしょうか。
稲船:そうですね。『3』はいかにして左馬介が信長との戦いに決着をつけるか?というのがメインになってくるわけですけど、信長は『鬼武者2』の頃から9年もたって、さらに強大な力を得ている。これは左馬介1人はもちろん、十兵衛と力を合わせても倒せないんじゃないかと。で、日本だけでダメなら世界中から力を集めないと! というところで、フランスからジャンさんを招いて」、「ちょっと来て、コイツ倒して」みたいな(笑)。

●武器についてのこだわり
――ジャックの武器が「ムチ」っていうのも、開発初期から決まってたんですか?
稲船:武器はだいぶ迷いましたね。ジャックが現代フランスの軍人となれば、当然「銃」を使える設定ではあるんですけど、やっぱり『鬼武者』のおもしろさというのはバッサリ感なんですよね。直接敵を殴ったり斬ったりとかっていう一番おもしろいところが、「銃」だと出ないんですよね。そこで、直接攻撃でジャックのカッコよさを引き出すためにはどうすればいいかというところを、ほかのスタッフと相談したんです。そのときに、「普通に剣持たせるのもおかしいよね」っていうところがあって。じゃあ「ムチ」はどうだろうかと。ムチって攻撃以外にも使えるじゃないですか。そのおもしろさを使ったらどうかな? ってところから最終的にムチに決まったんです。「なんでジャックがムチ使えるんだ?」っていうところはおいておいてですね(笑)。結果的に、ムチの動きを物理計算で再現したりして、しっかりムチという武器の特徴を出せたし、よかったと思っています。
――銃は銃で、ヒロインのミシェルに受け継がれていますね。
稲船:ジャックの武器はムチで決まったけど、じゃあ銃の扱いをどうするかってことになって。設定上ムリなく銃を出せるのに、まったく使わないのももったいないですからね。だからムチで戦いつつ銃も使えて……っていうところで、ムチで捕まえてババッと撃つというアクションを入れてみました。それと、銃そのもののおもしろさも使いたいという気持ちもどこかに残っていたので、ミシェルの方で使えるようにしました。サブキャラならいいんじゃないかと。『鬼武者』シリーズは元々『バイオハザード』から生まれてきた作品なので、ミシェルに関しては元に戻った感じがしますね(笑)。でも、銃で一閃を狙えたり、しっかり『鬼武者』してますよ。

●2年半の歳月が生み出した『鬼武者』の新たな魅力
――アクションの部分に関してですが、前作までと差を付けようと意識したりはしましたか?
稲船:差を付けるというよりは、『鬼武者』には『鬼武者』のアクションというものがあるので、それを残しつついかにプレイヤーに違和感なく動かしてもらえるかを意識しました。だから今回はアナログコントローラに対応させて、より操作しやすくしてあります。敵の攻撃を紙一重でかわして反撃したりってことも、ラクにできるようになっていますよ。これまでの操作方法だと、華麗に立ち回るのにややテクニックが必要でしたから。それと回避といえば、ジャックは武器のムチを使って、敵の攻撃を紙一重でジャンプしてかわすこともできるんですよ。このへんはグラフィックがフル3Dになって、カメラも動かせるようになったからこそですね。
――ゲームエンジンを作り直したというのも、そのあたりが理由なんでしょうか?
稲船:そうです。あとは単純にグラフィック的な理由が大きいですね。『鬼武者2』までの背景はレンダリングの1枚絵だったんですが、とくに日本より海外でフルポリゴン化を望む声が多くて。作ってる方としても、それを欠点だとわかっていたんですが、『鬼武者』『鬼武者2』は早く出したいってところがあって。修正する時間がとれなかったんです。例えば、おいしいものを食べたときって、またすぐに食べにいきたくなるじゃないですか。でも、2回、3回と食べると「しばらくはいいかな」って思っちゃうわけですよ。だから『2』まではなるべく早く展開して、3作目は開発期間を長めにとって、もっともっと突き詰めたものを出していくことにしたんです。
――その1つがゲームエンジンの作り直しというわけですね。確かに、実際にプレイしてみると背景がポリゴンになって、カメラワークもかなり自由度が上がっていると感じます。
稲船:そうですね。自分では自由に動かせないんですけど。ただ、カメラワークについては、わざと少し不便なところを残している部分もありますね。『鬼武者2』までは、カメラの位置が固定だったので、敵が見えにくいところとか、カメラの死角になるところがあったと思うんです。だから、自分に有利な位置を探して戦わないといけない。それがアクション性の1つになっているんですよね。その部分を『3』でも楽しんでもらおうと、戦う場所を考えて立ち回るところは残しています。『3』をプレイするときはぜひ、その点を意識してプレイしてほしいですね。
――『3』の背景は一見するとポリゴンとは思えないようなキレイなグラフィックですよね。開発はすごい苦労されてるんだろうなぁと思いましたが。
稲船:最初は多少あきらめてたんですよ。「ポリゴンじゃ絶対にレンダーには勝てないよ」って。ポリゴン数が違いすぎるって。でも、実際にウチのスタッフが作ったのを見たら、「これは負けてない!」って思いましたね。本当に、スタッフがすごくがんばってくれて。たぶんどこの会社も同じことを言うと思うんですけど、ウチのスタッフ以上にいいものを作れる人はなかなかいないと思いますね。
――アクション面の話に戻りますが、3作目ということで難易度の調整にはこれまで以上に気を使ったと思うんですが?
稲船:今回はちょっと難易度を上げました。『鬼武者』『鬼武者2』は、アクションが苦手な人でも入ってこれるよう、難易度を下げたんですよ。主演が金城さんや松田優作さんということで、話題性があったぶん、ふだんゲームをプレイしない人にも楽しんでもらいたいという気持ちがありましたから。せっかくプレイしてもらったのに、「こんなの倒せないや」って「やっぱりゲームっておもしろくないや」って思われたくなかったんですよ。だから、間口を広げるために、とりあえずボタンを連打してても敵を倒せるようにしたんです。でも、『3』は3作目ですからね。『鬼武者』や『鬼武者2』を遊んでくれた人を中心に考えることができるじゃないですか。だからその人たちがよろこべるものを念頭において、バランス調整をしました。一閃なんかもタイミングがこれまでと比べて難しくなっていますよ。その分、連鎖一閃を決めたときなんかは、これまで以上に爽快感を味わえますね。
――魔空空間の分岐とか、修練の部屋とか、やり込める要素も増えていますよね。
稲船:隠し要素の「平八無頼伝」なんかは、かなり難易度を高めに設定してあるので、相当手ごたえがあると思いますよ。それとプレイ時間についても、「短すぎる」っていう声が多かったので、今回は長めにとってあります。10時間以内にクリアしようとすると、かなりやり込まないとしんどいですよ。

●ムービーとゲームが相互に影響しあう『鬼武者』の世界
――イベントシーンにも力を入れていると思うんですが、そのへんはどうですか?
稲船:そうですね。演出部分ってみんな意識してないと思うんですが、『3』はデモシーンもより自然になっていますね。ある種映画では当たり前のようにやっているカメラによる心の動揺の表現とか、今まではカット割でしか入れられなかったものが、カメラを動かすことで表現できたりとか、ごく自然にできている。今回シナリオ上でもジャン・レノさんと金城武さんが絡んでくるので、今まで以上に長くデモシーンが入っているんですけど、それを感じないくらいうまく演出されているので、これからプレイする人は楽しみにしてほしいですね。とにかく、『3』は足かせになっていた部分が全部外れて、思う存分作れました。
――『鬼武者』シリーズはムービーにも力を入れて制作されていて、『3』はとくに気合が入っている印象を受けましたが……。CGムービーアクションディレクターにドニー・イェンさんを起用したり。ビックリしました。
稲船:ドニーさんは、知ってる人だと相当驚きますよね。知らない人だと「誰だよドニーって」ってなるけど(笑)。ドニーさんを知っている人なら分かると思いますが、あのム―ビーにはドニーさんのよさが全部出てますよね。アクションが本当にカッコイイ。
――CGムービープロデューサーの倉澤さんとCGムービーディレクターの山崎さんにムービーの制作を依頼する際、何か注文したことはありますか?
稲船:えっとねぇ……これが、かっこ悪いんですけど、「自由にやれ」です。それが一番いいものができるんですよね。だから僕がお願いしたのは本当に少なくて、まず「ゲームは本能寺から始めます」と。それで、左馬介が本能寺にだどり着くまでの話であれば何でもいいですと。ストーリーも含めて。それで、ムービーを作る側が一番望んでいたのが「アクション」だったんです。本来、CGムービーって遠慮するところなんですよ。ゲームがアクションさせるものであって、CGムービーがアクションしちゃうとゲーム部分のおもしろさを取っちゃうというか、見せちゃうわけじゃないですか。それで、『鬼武者』、『鬼武者2』と、ムービーは遠慮しがちにアクションしてたわけです。でも今回は「全編アクションでいきたい」っていうのが制作側の頭の中にはあって。依頼したときに「それを受け入れてもらえますか?」って最初に聞かれたので、「当然受け入れますよ」と。それを僕も見てみたかったですから。それで、そのアクションを表現するのに何をしたらいいのか? というところで、今回のムービーができあがったわけです。ムービー中にはガルガントっていうキャラクターが出てくるんですけど、あれもこっちから指定したわけではなくて、デザインとか設定は全部山崎さんの方から出てきたものなんですよ。あとは話し合いで、「ガルガントと左馬介がライバル関係にあるから、片目をつぶして左馬介にやられたことにしよう」とか、ネタを出し合って。でも、大きなところでは本当にただ「お願いします」と。僕は山崎さんを信じてますから。山崎さんのやるものは絶対におもしろいって映画で証明されてますからね。倉澤さんとも、『鬼武者』『鬼武者 2』と一緒に仕事してきて、クオリティを裏切らない方だとわかってましたから、「クオリティは大丈夫ですけど、納期だけはお願いします」とだけ言いました(笑)。
――できあがったものを最初に見てどう思われましたか?
稲船:僕は開発途中からずっとムービーを見ていたので、「初めて見て感動!」というのはなかったですね、残念ながら。でも、できた映像に初めて音楽とSEが入ったときは、そのクオリティの高さにあらためて「うわ! すげぇ!!」って思いましたね。見た瞬間に鳥肌立ちましたよ。
――先ほどの話に出てきたガルガントですが、『鬼武者 無頼伝』にも隠しキャラとして登場しますね。あれは『3』のムービーが反映されたわけですね。
稲船:はい。最初は入れるつもりはなかったんですけど、ガルガントがあまりにもカッコよかったので。それで、開発スタッフに「ガルガントって作れる?」って聞いたら、「ちょっと難しいです」って言われて。だから、「じゃあとりあえず、ゴーガンダンデスのモーションでいいからやってよ」って言ったんです。そうしたら、『無頼伝』の開発スタッフが「こいつはこんな動きをしてるのにゴーガンダンデスと同じ動きじゃだめだ!」って。「中国拳法を取り入れた動きにする!」ってガーッと作り出して、結局ゴーガンダンデスを全然使ってないじゃん、みたいな(笑)。ちなみに『無頼伝』のガルガントは片目のケガがないんです。その頃はまだ左馬介にやられてないということで。

●2人の鬼武者の印象を聞く
――今回ジャン・レノさんと一緒に仕事をしてどうですか?
稲船:ジャン・レノさんの印象は、本当のプロフェッショナルですね。今回、アフレコとモーションキャプチャーをお願いしたんですけど、モーションキャプチャーはやっぱり初めての経験ということで、さすがに最初はとまどっていたんです。例えば壁を叩くシーンでも実際には壁がないところで「叩いて下さい」でしょ。でも、絵を見せたり、説明をちゃんとして「こうで、こうで」ってやったらすごく飲み込みが早い。「あぁ、わかった。こうだ。こうだ」ってやっててくれて。後半はすごくノリノリでやってましたね。ジャン・レノさんも、決して若くはないじゃないですか。だから順応性というところでは不安はあったんですけれども、ゲームの仕事だから適当に……っていうのもまったくなくて、キッチリやってもらえましたし。本当にプロフェッショナルな方です。
――金城さんとは2回目のタッグになりますね。
稲船:金城さんとは素で話せる関係だし、本当にゲームが大好きな方で、「こうしたい、ああしたい」っていうのをすごく聞いてくれて。スターなのに飾ったところがないし、フランクに接してくれてますし。とても仕事がやりやすいですよ。
――今回はアフレコの方式を変えたそうですが、具体的にはどう変化したんでしょうか?
稲船:『鬼武者』のときは、金城さんもあまり時間がなかったので、役者さんには1人ずつアフレコをしてもらったんです。でも、やっぱりよくなかったんですよね。それで、『2』では初めて掛け合いで録音したんですよ。やっぱり演技って掛け合いじゃないですか。例えば「おい!」「なんだ?」っていう会話も、1人だと、どういう「おい!」を言われたのかわからないんですよね。でも掛け合いならセリフのニュアンスも伝わるし、すごく自然に録音できるんですよ。だから『3』も掛け合いで録音してもらいました。ただ、この方式は声優さんとのスケジュール調整とか、同時に録ることによってかかる時間が1.5倍になったりして、正直効率はよくないんです。でも、クオリティはあがるので、金城さんにもお願いして。「時間かかりますがお願いできますか?」って聞いたら、「いいよ」って言ってくれたから……。このへんの役者さんのリアルな掛け合いも、ユーザーさんには注目してもらいたいところです。


●『鬼武者』シリーズのこれから
――やっぱり『鬼武者』は3部作で完結ということに?
稲船:もちろん。3部作で完結というより、3部作の完結なんですよ。みんな誤解してるんじゃないかな。3部作完結って言ってるんですから。「全何部作」って言ってないもん(笑)。
――確かに、エンディングも見させていただきましたが、ああいう感じの終わり方に……。いい感じで、まだ何かありそうですよね。
稲船:やっぱり「何かありそう」はないといけないじゃないですか。でも、信長との戦いはこれで完結ですよ。ちゃんとエンディングで決着ついてましたよね。
――では、最後にいくつかお聞きします。まず、今回、難易度が少し高いということですので、もし『3』から『鬼武者』シリーズをプレイする人のためにアドバイスか何かあれば。
稲船:『3』からやる人は迷わず「易しいモード」でやってください(笑)。もう迷ったらダメ! 初めて『鬼武者』を触る人は『易しいモード』から。一閃も出しやすいから、楽しさも味わえますよ。それか、『3』からやらずにベスト版の『鬼武者』を買っていただいて……。
――それがいいかもしれませんね(笑)。では、電撃オンラインの読者に向けて一言お願いします。
稲船:ついに『鬼武者』3部作の最後になります。本当に集大成という形で開発して、ある種『鬼武者』の世界観の中で究極のアクションができたと思っていますので、是非このアクションをしゃぶりつくしてほしいなと。「もうしゃぶれない!」っていうくらい、しゃぶりつくして頂けると作ったかいがありますので、ぜひお願いします。
――今日はどうもありがとうございました。



稲船 敬二 氏
稲船敬二氏
(株)カプコン第2開発カンパニー プレジデント
『鬼武者』『ロックマン』など、数多くの人気シリーズを手がける。

鬼武者3
画面写真
■メーカー:カプコン
■対応機種:PS2
■発売日:2004年2月26日
■価格:6,980円
■関連リンク:公式サイト
        :カプコン
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