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SOFT インタビュー
『バイオハザード』シリーズがゲームキューブに独占供給!
生みの親であるカプコン・三上真司氏がその意図を語る!
タイトル カプコン・三上真司氏ロングインタビュー
「カプコンの中でマルチプラットホームじゃないのは僕だけなんですよ」

あの『バイオハザード』シリーズが、今後はゲームキューブに独占供給される! GC本体発売の前日にあたる9月13日、カプコン第4開発部部長にして、『バイオハザード』の生みの親である三上真司プロデューサーから、衝撃の発表が行われた。その発表会を受けて、電撃オンラインでは三上氏への直撃インタビューを敢行。
GCへの独占供給という方針転換の背景には、いったいどんな意図があるのか? そしてゲームキューブで『バイオハザード』はどう変わるのか? 文字にして1万字を超える膨大な言葉の中から、三上氏が『バイオ』に、そしてゲームに託した熱い思いが浮かび上がる! 

■もう一度『バイオ1』を作ることで、若いスタッフに恐怖の本質を発見してもらいたい

――今回、前作の『バイオ1』から5年ぶりにディレクターへ復帰されたわけですよね。これはやはり、『バイオ』という作品が大きくなって、三上さんがプロデューサー的な立場になったことで、自分で直接ゲームを制作できなくなったことへのストレスがあったんでしょうか?

三上:それは当然ありますよね。それはあるんですけど、一番の理由というのは、最初は『コード:ベロニカ』のディレクター(加藤弘喜氏)に、この仕事を振ろうとしたんですよね。どう変えるかの部分だけでも考えてよ、って。でも上がってきた内容が、なんかショボイんですよ。こんなオマケをつけてとか、ここをちょっと変えてとか。クリエイターとしてのレベルは高いのに、こんなことでお茶を濁すようなヤツじゃないだろうと。どうしたの、カトちゃん? って本人に聞いても、理由は言わないし。いろいろ考えてみると、他人の作った物を触るのはイヤなんじゃないかってわかったんですよ。彼らにとっては、『バイオ1』って恐れ多いところがあるみたいで、それを第3者が触ることをヨシとしない感じなんですね。それじゃあ、オレがやるしかないかと。
『1』のスタッフって、もう『バイオ』から離れていて、ほとんど残ってないんですよ。今の開発スタッフには、『2』や『3』の世代が多くて。でも、彼らに『バイオ1』をホントに分かってもらった上で、新しい『バイオ4』を作ってもらいたいと思ったんですね。ここらへんでオッサンが出ていって、ホンマモンの『バイオ』はこうなんや! って言うことで、それに対して「いや、そうは思わない」っていう彼らのバネがグーッと貯まっていって、それが弾けたものが『4』に繋がるんじゃないかなと。僕は彼らが波動砲を発射するためのエネルギーを、一生懸命に貯める役なのかなあと。基本が分かった上で初めて、新しい物ができるんですよね。1作目を知らずに「僕はこんな『バイオ』が作りたいんです」って言われても、何を根拠にそんなことを言ってるの? ってなっちゃう。ビジョンが明解じゃない。だから『デビル メイ クライ』(※1)みたいな作品が出来上がったりするんですよ。あれはゲームとしては面白いんですけどね、ここまで違うと『バイオ』じゃないだろうって。

――『バイオハザード』という作品の定義が大きすぎる状況になってしまった? 

三上:大きすぎるんですよね。やっぱり原点に帰って、本質を知ったうえで、若いスタッフで新しい恐怖を作ってほしい。あともうひとつ、新しいハードで新しいゲームを、ってやると、二重苦・三重苦になってどんどんしんどくなるんですよ。でも、『1』をもう一回作るってことで企画的な部分にレールが引かれていれば、表現であったり新しいハードをどう使いこなすかであったり、そういうことに専念できるんです。逆に、そうすることが『4』への近道にもなるんじゃないかと。二重苦・三重苦でいつまでも結果が出なくて、ここまでコストかけたんだからこのへんでそろそろ発売しようよって、そんな妥協はもうしたくないんですよね、『4』に関しては。シリーズとはいえ、僕たちはクリエイターなんで、毎回1から作るという気持ちで望んでほしいなあと思うんですよ。

■ひとつのハードで、できるだけ長い間ゲームを作り続けたい

――『1』をもう一回作るというのは、どのくらい前から動いていた話だったんですか? 

三上:
去年の暮れですよね。10月か11月ですよ。さっきお話ししたように紆余曲折があって、自分でディレクターをやるって決めたのが、12月の納会の時ですね。酒の席であんなことを決めるんじゃなかった(笑)。1月になってすぐプロジェクトが始まって、僕は部長職も兼ねてるじゃないですか。これは無理だって思いましたよ。なんてことをしてしまったんだって後悔しても、今さらって感じで。今でも泣きそうですよ(笑)。

――『1』を新しいハードでやるというのは、やはり『4』への布石というのが大きいのでしょうか? 

三上:
それは凄く大きいですね、やっぱり。

――では、それをゲームキューブでいく、っていうことに関しては、わりとすんなり決まったんですか? 

三上:
去年の暮れには、ほぼ決めてました。もちろん、儲けを考えるとリスクが大きいのは分かっているけど、もともとベンチャービジネスですからね、ゲームは。ヒットするかどうかは、発売してみないと分からないですから。僕としては、ひとつのハードでできるだけ長く作りたいんですよ。今、ハードの寿命がどんどん短くなってるじゃないですか。寿命は短くなるのに、新しいハードでちゃんとしたゲームが出るには、2、3年かかるんですよ。そのうち1年ぐらいは、新しいハードやツールに慣れるっていう期間でムダになってしまう。僕らはハードじゃなくてソフトを作ってるんであって、面白いものを作るのに労力の100%を使いたい。でも、技術を駆使しないとできないことがたくさんあって、そこはどんどんハイテク化して、すごくしんどくなってきましたよね。そういった部分でのロスを、できるだけしたくないっていうのがあって。

――新しいハードによって、新しいアイディアがひらめくのであればいいんでしょうけど。

三上:
新しいハードは、そういう呼び水にはなるでしょうね。ネットワークだったり、そういうことのきっかけにはなるでしょうけど、それはしょせん、きっかけにしかすぎないですから。

――ゲームキューブで『バイオ』が出るって聞いたときにまず思ったのは、表現的に大丈夫なの? っていう部分なんですが。暴力描写的な部分で、問題はなかったんですか? 

三上:
そこは任天堂さんも迷ってましたね。結果的にOKを頂けたんで、今回の独占供給って話になったんですけど、もしそこがダメだったら、今回の話自体なかったと思いますから。ただ、本当はそこの部分って、任天堂さんがどう言うかじゃなくて、僕らソフトメーカーの問題であって。ハードメーカーさんが作品を作っているわけじゃないので、ソフトの表現についての責任を取るというのはおかしな話ですよね。本来、作品を作っているメーカーが責任を取るべきであって、ハードはレールでしかないですから。サーキットでF1レースをやっていて車がぶつかっても、サーキットを作ったヤツは誰だ? お前が責任を取れ! って話にはならないですよね。あくまでドライバー、つまり作り手の問題であって、ハードメーカーが責任を取る問題じゃないと思うんですよ。そういう意味では、任天堂さんがどんなスタンスでも関係のない話なんですけど、でも任天堂さんのハードで出す以上はやっぱり一応確認は取らないと、ということですね。

■デジタルな画面の中に、人の手が加わっている感覚を残したかった

――GC版の画面を見てすごく驚いたんですが、三上さんの中では『バイオ』という作品を発想した当時から、今回のようにリアルなクオリティを頭に描いていたわけですか? 

三上:
リアルにはしたいと思ってましたけど、でも実写ではイヤなんですよ。絵を描く人のセンスが、クリエイティブな部分に入ってこないと。手描き風なところを残したいというのが、コンセプトにあったんですよね。実写のような感じなんだけど、ただカメラでそこにある物を写したっていうのじゃなくて、手で描いたんだっていうアナログ感というか、職人が作りましたよっていう証しみたいなものを残したかったんで。
 前作の『1』を作る前に言ってたのは、実写みたいなほうが望ましい、できるだけ緻密な映像のほうがいい、でも写真のようになってはダメだ、ってことなんです。写真になってしまうと、クリエイティブな要素が入らない。やっぱり手描き風なところを残したい。ちなみに映像方面の人たちのためにフォローをしておくと、カメラで撮るとクリエイティブじゃなくなるっていうわけではないんですよ。あくまで僕としては、手描き風なテイストを残したいっていうだけで。あと、写真のままで一枚絵の背景にすると、背景が死んじゃうんですよね。どんなに緻密に描かれてても、実際には何にも動かないじゃないですか。時間がリアルタイムに流れないから、世界が死んでしまう。『バイオ』っていうのは結局のところ、雰囲気を楽しむゲームなんですよ。それをどんな雰囲気かと聞かれたときに、「恐い」っていう冠をつけただけであって。

――建物に入ったとたんに寒気がするっていう、その雰囲気を味わうゲームだと? 

三上:
そうですね。そういう恐さがなかったら、たぶんホラーじゃない。僕はそこを求めてたんです。画面を出してみてビックリしたんですけどね、最初のときは。ポリゴンでやってみて、ぜんぜんその雰囲気が出なかったから……。

――自分が考えていたイメージより、クオリティが低かったってことですか? 

三上:
そうですね。普通はCGでできてスゴイよって思うじゃないですか。僕はプログラムを組んだりできるわけじゃなくて、そのへんはよく分かんないですから。こんなことできるんだ、けっこうスゴイなあと思ったり、やっぱり雰囲気が出ないと思ったり……今はもう、そんなことはないですよ。僕も経験をボチボチ積んできたんで、だいたいこんなものかなぁというのは分かるようになってきましたけど。でも僕はCGの技術的なところは知らないから、そのぶん自分の理想に近いところにできる限り持っていこう、っていう感じですね。今回のGC版でも、そこは引き継いでいるところです。
 それと、前回はすごくやりたいと思っていたんだけど、今回は逆に切り捨ててるところもあって。それは映像のきらびやかさっていう部分ですね。そこに関しては、今回は切り捨ててるんですよ。渋い映像っていうか、玄人受けする方向に、どっちかというと寄せたいなという思いがあって。そこは前回と違うところですね。

――ハリウッド映画というよりは、ヨーロッパ映画の色味みたいな感じですよね。

三上:
そうですね。それは、僕だけの思いじゃなくて、背景を担当するスタッフの個性や思いでもあるんですが。

――すごく、光というか、空気感があるという印象を受けました。

三上:
空気感には凄くこだわりました。前から空気感ということは言ってたんで、今回は生(なま)感って言い方をしてますけど。

――部屋に光が差すと、ゴミというか埃みたいなものが浮いてるのが見えますよね。

三上:
あれも、最初はスタッフがやりすぎちゃって、なんかゴロゴロしたものが浮いてる感じで、ギラギラして汚いものになっちゃって。もうちょっと細かくして、やっとOKを出したんですけど。映像的にはそういうノイズをのせないほうが、格段に綺麗ですよ。でもそこはあえて、ホラーなんだし生感を出したいし、背景のスタッフもどうしても死んだ絵はイヤだっていう強い思いがあって、今回のような形の絵作りになってるんです。

――綺麗な絵にすることと、作風や演出とはまた違いますよね。

三上:
だから、今回は綺麗な映像じゃなくて、恐い映像を作ろうとしたんですよ。生きた恐い映像を。

――暗いところが、黒いんだけど黒くないみたいな。

三上:
そうなんですよ。以前のハードでは、そういう暗さは出せなかったんですよね。真っ黒になっちゃって見えないんですよ。認識不能。でも今回は、暗いところでもよく見たら「あ、なんかいる!」とか、そういう微妙な表現ができるようになって、すごく良くなったなあと。前は、あんまり暗くて見えづらいから、ドアの脇には必ずライトをつけたりしてるんですよ。でも今回は、それを外そうって言ってるんです。ドアの目印みたいになってるから。空気が積み重なって海のように暗くなっていくパターンってあるじゃないですか。周りが暗くても、近くの物だったら見えますよね。暗い中を歩いていくと、ドアがうっすら見えてくる。それでいいやん、って思うんですけど。でも、ドアにガッ、ガッと明かりをつけちゃう(笑)。前作のときにユーザーさんから寄せられた苦情であったり、自分たちがテストプレイした時にドアが分からなくてハマった経験だったり、そういう記憶が刷り込まれていて、分かりやすくしないとヤバいって気持ちがあるみたいなんですね。別にそんなもん気にせんでええよ、ドアが見つからないなら、クリアできなくてもいいから、って、今はそう言ってるんですけど。



三上真司さん

カプコン第4開発部部長にして、『バイオハザード』シリーズのプロデューサー。ゲームキューブ版『バイオハザード』では、ディレクションを担当し、新たな『バイオ』の世界を切り拓く。


『バイオハザード』
■メーカー:カプコン
■対応機種:GC
■発売日:2002年3月22日
■価格:未定
(c)CAPCOM CO.,LTD




※1 『デビル メイ クライ』
『バイオハザード2』において三上氏の下でディレクターを務めた、神谷英樹氏が制作したスタイリッシュハードアクション。当初は『バイオハザード』シリーズの新作として制作されたが、あまりにも『バイオ』のテイストからかけ離れてしまったとの三上氏の判断により、独立した別作品になったという経緯がある。


■任天堂さんと組んで、本当に良かったと思ってます

――ゲームキューブになって、ハードの技術が上がっていくなかで、こういう見せ方ができる、こういうことがやれるっていう部分はありますか?

三上:
それは、さっきもお話ししたように、デジタル的じゃなくてアナログ的にっていう、生っぽい雰囲気を肌で感じられるところがメリットだと思うんですよ。ホラーというテイストに非常につながりやすい部分ですから。「恐い」という感覚が、ビジュアルとサウンドの面でより伝わりやすいという。技法的に言えば、たとえば動画背景で草が揺れたりしているところに、キャラが乗っかってるところだったりするんですけど。そのへんはやっぱり、生感というか臨場感が分かりやすいですよね。

――木が揺れているだけでも、感覚としてはずいぶん違いますよね。

三上:
普通に考えると、霧や雨だったり、風が吹いたりとかね、そんなことしかないとは思うんですけどね。でも、生きている感覚というのは、それだけじゃないじゃないですか。あらゆる情報を使って、そういう生感や臨場感を出していきたいと。
 ホントは、ゲームの画面を写真で見せるっていうのもイヤなんですよ。僕らは光を発しているブラウン管を通して、そこでのクオリティがいちばん良くなるように画面を作ってるんで。写真にした時点で、やっぱり雰囲気が壊れちゃうんですよね。写真になった時点で、違う媒体になっちゃうんで。そういう意味では、DVDとかを使って動画で紹介してもらえる形式になるのが、いちばん有り難いですよね。ゲーム画面をブラウン管じゃなくて写真で見ると、「なんじゃこりゃ?」って思いますから。最近はもう、そういうレベルで気になるところまでいっちゃってるんで。どれだけその世界に入りこめるかっていう。

――僕らゲーム雑誌で仕事をしている人間でも、画面写真を扱っていて「上手く伝わらないなあ」と思う時はありますからね。

三上:
それと同じようなことは、GBAとかでもあるんですけどね。GBAの液晶って、反射型じゃないですか。『逆転裁判』(※2)の画面をモニターに出して見ると、「あれ? これじゃあ紙芝居のキャラやんけ」ってなっちゃう。綺麗には出ているけど、ペラペラな感じなんですよね。やっぱり、反射型の液晶で綺麗に見えるように作っているんで、他の形にするとキビシイですね。そういうふうに、ハードが変わるたびに作り方を変えなきゃいけないんで、それがしんどくて。

――発表会では、動画背景の上でキャラを動かすのに、任天堂の技術協力があったっていうお話をされてましたけども? 

三上:
最初の頃は、動画を再生するだけでCPUのパワーをかなり使っちゃってたんですね。それだと、キャラを動かすのは難しかった。「これじゃあ、ゲームにならんわ」って。それで、自分たちがこんな画面を作りたいっていうデモ映像を動画で作っていたんですけど、そのデモ映像を任天堂さんの技術スタッフの人に見てもらったんです。「こんなことをやりたい、でも今のスペックじゃ難しいんですけど」って。向こうの担当の人も、「なんとかしたいですよね」って言ってくれて。ところが、任天堂さんのほうでも「どうにもならん」ってことで、ハードをいじってるアメリカの技術屋さんを日本に呼んでもらって、それでやっとキャラが乗っけられるようになったんですよ。
 だからお金の問題とかじゃなくて、純粋にクリエイターとして「ぜひやってみたい」という気持ちの面でつながって、それが技術の引き上げやクオリティアップに結びついてるんですね。そういう環境が、任天堂さんの社風の中にあるんです。「そのコストは、どっから出てるん?」って思いますから。僕らには、お金の話は何も言われてないですけどね。任天堂さんの中では言われてるのかなあ(笑)。かなりコストはかかっているはずですよ、向こうのエース級の技術者さんを投入して、ずーっとやってましたからね。いいものを作るためには、努力を惜しまない人たちがたくさんいる会社ですよ、任天堂さんは。そういうところが、これまでのゲームを引っ張ってきた大きな要因じゃないかと思いますね。やっぱり間違いじゃなかった、任天堂さんと手を組んでホントに良かったっていう気持ちですよ。売上の面を考えるとたしかに不安はありますけど、人事を尽くしたら後は天命を待つしかないですから。

■前作からは、仕掛けの7割以上を変えてます

――表現の部分に関しては、光と影であるとか動画背景であるとかって変化がありますけど、ゲームの内容については、前作からどれぐらい変わるのでしょうか? 

三上:
前のバージョンだと、右へ行くか左へ行くかみたいなアミダくじ的な部分でシナリオが分岐しましたけど、それってある意味、ゲームらしからぬ部分ですよね。それをなんとか、自分のゲームプレイに対しての因果関係が存在するんだという方向に持っていきたいなと。ある意味、運で死んじゃうっていうリアリティも必要だと思いますけど、やっぱり自分がどこかで頑張ったことが結果を変えていくというところがないと、ゲームとして満足感がないと思いますから。そこは直してますね。あとは、絵が変わったからということで買う人もいると思うんですけど、そういう人たちがもう一回ゲームを楽しめるように、仕掛けの7割以上を変えてます。解き方は知ってるよ、ってなると、ゲームが作業になってしまいますから。そのほか、少しでも新鮮さを感じてもらえるように、森のステージを増やしたり。そんなところですかね。

――けっこう変わってるような気がしますが? 

三上:
完全新作と言い切るつもりもないですけど、焼き直しじゃないかと言われるのもイヤですから。それはゲームを遊んだ人が決めてください、というところですね。

――GCでは『1』の後、『0』『2』『3』『ベロニカ完全版』『4』という順番でリリースされるとのことですが? 

三上:
そうですね。『2』『3』『ベロニカ完全版』の3作は、『1』のように作り直すわけじゃなくて、本当に単なる移植ですけども。欲を言えば、全部のシリーズを作り直したほうがいいんでしょうけど、そんな労力があるのなら、『4』を早く作ったほうがいいですから。でも、任天堂さんにも言われたんですよ。いきなり『4』を出すのもねえ? って。『1』と『4』に関しては、GCで出すと決めてたんですけどね。たしかにシリーズの他のタイトルも、出したほうがいいだろうと。そのへんはビジネス的な面よりも、任天堂さんとしてはやっぱりユーザーさんのことを考えてますよね。

――N64からGCに移行した『0』も新作になるわけですが、そちらはいつ頃になりそうですか? 

三上:
『0』に関しては、『1』から1年以内ですかねえ。わりとタイムリーに出てくると思いますよ。やっぱり新作は欲しいですからね。じつは『0』のことを、発表会で言い忘れちゃったんですよ。発表会では言うことがいっぱいありすぎて、頭の中が真っ白になっちゃったんで。

――『0』について、どんなお話をされるつもりだったんですか? 

三上:
GCでは、背景に動画を使ってるじゃないですか。でも『1』の舞台って、洋館ですよね。それに対して『0』は、列車のシーンから始まるんですよ。走っている列車だから、背景は当然、常に動いてるんです。これがまた、カッコイイんですよ。

――景色が流れていくわけですか。

三上:
ええ。窓が反射してちょっと見えない部分があったり、トンネルに入るとバーッと見えなかったり。電車だから常に揺れてて、食堂車に置いてあるワイングラスが横になって転がったりするし、テーブルクロスの端がフワフワしたりします。火災が起きて、煙が上にゴーッと流れたり。これは面白いねえ、つかみバッチシやん、って感じですね。それを計算して、列車にしたわけじゃないんですけど。N64で発売する予定だった頃から、始まりは列車の場面でしたから。「いいなあ、うらやましいなあ。ウチは洋館だよ」って。


























※2 『逆転裁判』
三上氏率いるカプコン第4開発部制作のGBA用ソフト。弁護士となって無実の依頼人を救う、法廷バトルAVG。




















■任天堂の宮本茂さんとは、あくまでクリエイター同士のおつき合いです

――発表会といえば、9月13日の発表会で任天堂の宮本茂さんが登場したのには驚かされました。宮本さんが出てこられた経緯っていうのは、どういうことだったんでしょうか?

三上:
僕のほうから、「宮本さんに出てもらえませんか?」ってお願いしたんですよ。「そのほうが盛り上がりますから」って。ただそれだけの話なんですけどね。最初、任天堂さんとしては難色を示されて、僕としては「あくまでクリエイターとして」という形でお願いしてたんです。そうしたら、ちょうどその場に宮本さんが入ってきたんで、「どうですかねぇ、宮本さん?」って聞いたら、「いいですよ。空いてるかなあ、その日は」って手帳を開き始めてくれて。
 これがカプコンと任天堂という位置付けだったら、絶対に実現しなかったと思いますよ。あくまでクリエイター同士の関係で、ということですから。だからステージで紹介する時も「任天堂の宮本茂さんです」とは言わずに、「宮本茂さんです」と、そこは気を使ったんですよ。僕のほうも「第4開発部の三上です」と挨拶して。発表会場のカプコンのロゴも、できる限り取ってもらったんですよ。貼ってあったものをはがしたりして、必要最低限にしてもらいました。カプコン全体としては、あくまでマルチプラットフォームですからね。僕だけなんですよ、マルチじゃないのは。僕が『バイオ』っていうでっかいタイトルを持っているんで、カプコン全体がどうこうって見られがちですけど、僕以外の人たちはみんな、マルチプラッチホームで一致団結してやってますから。

――発表会の前に、三上さんと宮本さんのお2人でじっくり話し合う機会はあったんでしょうか? 

三上:
仕事の都合上でというのは、任天堂のほうで何度かありました。あと、カプコンの開発部を案内したんですよ。宮本さんが、他の会社の開発現場をぜんぜん見たことないんです、って言うから。じゃあ、一度カプコンに来てくださいよ、ウチはオープンですからなんでも見せますよって。それでウチの会社に来てもらって、ガーッと案内して、「どうですか、宮本さん?」って聞いたら、「……ホントは見たくないんだよね」って。「えええ!」(笑)。宮本さんとしては、「他の人のを見ると、自分が作れなくなっちゃう」っていう気持ちがあるみたいなんですね。クリエイターはやっぱりプライドを持ってますから。その気持ちっていうのは、僕もよく分かりますけど。

■自分が面白いと思う物を作らない限り、まったく新しい物は作れない

――『バイオ』をGCに独占供給することに対して、経営側のほうからは「やっぱりマルチプラットフォームでやってくれないか」っていう要請はなかったんですか? 

三上:
うーーん。(カプコンの辻本憲三)社長は、すごく大らかですよ。そのへんのことを自分で考えずにやっているような人は、カプコンの上層部にはいないでしょう、っていうスタンスなんでしょうね。クリエイティブな部分に関しては、本当に自由にさせてもらってます。『バイオ』をGCに独占供給するってことに対して、営業サイドはもちろん難色を示しましたよ。そのぶん、リスクが高くなりますから。でも社長からは、「クリエイターがやりたいっていうんなら、いいんじゃないの」って言ってもらえて。それを聞いたときに、この社長の下で働けてよかったと思いましたね。

――三上さんとしては、マルチプラットフォームというものをどう捉えているんですか? 

三上:
たしかにマルチでやっておけば、どこかのハードがグーッと伸びてきたら「はい、こっち」って、どれでも出せますよね。どのハードを持っていても、カプコンのソフトが遊べますよ、っていう。でも、ゲームってそんなものじゃないような気がするんですね。ハードを買って良かったなって思う瞬間は、やっぱりいいソフトに巡り会えた瞬間じゃないですか。そういう自分のチョイスも含めたものが、ユーザーさんがハードに対して感じる価値だと思うんですよね。これからのゲームっていうものは、そういう付加価値の部分を、もっともっと大事にしなきゃいけないんじゃないかって思うんです。
 ゲームっていうのは結局、嗜好品じゃないですか。嗜好品である以上は、自分が好きか嫌いかっていうことだけが問題であって。僕はやっぱり、純粋に自分が納得して人に勧められる物を作りたいんですよ。後はそれを好きと言ってくれる、僕のこだわりに共感してくれる人がどれだけいるかということで。ユーザーさんを無視するんじゃなくて、僕の気持ちが通じるところに必ずユーザーさんはいると思うから、その人たちが満足してくれるように、プロとして頑張りますよ。ただ、必要以上にユーザーさんに媚びてまで、作る必要はないんじゃないでしょうか。少なくとも、それは僕の目指すところではないですね。

――でもそれは、綿密なマーケティングに基づいて、最大公約数のユーザーにまんべんなく受け入れられるものを、っていう考え方とは、正反対ですよね? 

三上:
じつは前に僕自身も、マーケティングから立てた企画で痛い目にあってるんです。グループインタビューをして、いちばんいい反応の企画をスタートさせるっていう。でも、失敗しましたね。ユーザーさんが何を望んでいるか? ってところからスタートしちゃダメなんですよ。ユーザーさんが望むものっていうのは、じつはすでに世の中にあるものなんですね。過去に似たようなものがすでにあって、こんなのを作ってほしいって言うわけです。シリーズ物とか、まさにそれじゃないですか。でも僕らクリエイターは、まだ世の中にない新しいものを作りださなければいけない。僕らが時代をリードしていく以上は、僕ら自身が面白いと思うことを突き詰めなければいけない。でも、それはユーザーさんを無視するっていう意味じゃないんです。これは宮本さんも僕も共通してるところなんですが、最初にユーザーさんの意見を聞くんじゃなくて、ある程度形になった時に初めて、ユーザーさんに「どう?」って聞くべきなんですよ。「ここがつまらない」「じゃあ、そこは直すよ」っていうふうに。最初のアイデアは僕ら自身のものでなければいけないけど、それをどう分かりやすく伝えるかってところでは、ユーザーさんの声を聞かなきゃいけない。そうじゃなくて最初から「こんなゲームがいいな」「よし分かった、オジサンが作ってあげよう!」ってやっちゃうと、「こんなの前にあった」って、結局そうなっちゃうんですね。

■クリエイターの顔が見えるようになれば、ゲームはより面白くなる

――ゲームをやればクリエイターの顔が見えるというか、そういう形になったほうが分かりやすいですよね。

三上:
僕がゲームをやれば、そのゲームを作ったクリエイターの性格分析ができますよ。意地悪なヤツが作るゲームは意地悪だし、子供っぽいヤツが作るゲームは子供っぽいし。ラブシーンを見るだけで、「ああ、こいつは恋愛の経験値が低いなあ」っていうのが分かる。『デビル』とか(笑)。そんな簡単に恋に落ちたりせえへんっちゅうのに(笑)。でもそれはようするに、クリエイターの顔が見えるってことですから。『デビル』なんて、よくも悪くもディレクターの神谷の世界、神谷ワールドですよね。『バイオ2』のレオンとエイダとのキスシーンだって、あれは元々のシナリオにはなかったんですよ。神谷が自分で入れたんです。あのキスシーンは、神谷本人がプログラマーのところにベッタリ張り付いて作ってましたから。『バイオ2』も『デビル』も必ずこう、天井の高いところでキスしてる(笑)。これからもウチのゲームの中でそういうシーンが出てきたら、「あ、神谷だな」と思ってください(笑)。でも、その神谷ワールドを好きと言ってくれるユーザーさんがいてくれれば、それでいいんです。そこで逆にクリエイターの顔が見えないと、カプコンの商品っていう大きな枠組みの中で、そのテイストがよく分からないままにゲームを買わなきゃいけなくなっちゃいますから。

――映画でもありますよね、この長回しはこの監督の特徴みたいな部分が。そういう感じと共通するものですよね。

三上:
クリエイターの個性って必ず作品に出るし、それを知ってると作品が余計に面白いですよね。神谷が作った作品はホントに分かりやすいですよ。どこもかしこも神谷ワールドですから。あそこまで恥ずかしげもなく自分をさらけだしてゲームを作るヤツは、他にいないですから(笑)。僕にはできないですね。僕はこっそりと裏テーマみたいな形で入れるのが好きなんで。コスチュームとかでも、奥ゆかしいのが好きっていう。大胆に見せるのはオゲレツになるから、僕は好きじゃないんですよ。気づく人だけがそれに気づいて、「あ、いいじゃん」って思ってもらえればいいっていう。
 ホントのことを言うとクリエイターは、ユーザーさんがゲームを終わらせてクレジットが出てきたときに、「このゲームを作った人は好きだ」って言ってもらえるのが、いちばん嬉しいんです。こうしてクリエイターがインタビューに出てくるのは、ホントは良くないんだろうけど、でもやっぱりゲームだけだと分かりにくいところがあるんですね。濃いユーザーさんであれば、ツボを押さえて理解してもらえるんですけど、普通の人に対しては、ある程度ゲームのポイントを絞ってあげないと、そのゲームのツボが分かってもらえないんですよ。「ほら、ここをよく見てね」っていうことを伝えるために、ある程度の道筋を作ってあげなきゃいけないかなあと思うんで、こうやって取材にも応じてるんですけど。でもホントは、クレジットだけで認知されればカッコイイなあとは思います。もっとも、それには相当に実力が必要なんだろうなあとは思いますが。宮本茂さんみたいにね。

(文中敬称略)