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タイトル 『サイレントヒル2』プロデューサー今村哲裕氏ロングインタビュー 傭兵

あの町に再び霧が立ち込める……
プロデューサー今村哲裕氏が語る『サイレントヒル2』の魅力

日本&海外含め、150万以上のヒットを飛ばしたホラーAVG『サイレントヒル』。その続編『サイレントヒル2』がついに発売された。その発売を記念して、『2』のプロデューサーをつとめる今村哲裕氏に『サイレントヒル2』の開発秘話を語っていただいた。これを読めば、さらに本作の魅力がわかるハズだ。

●今村氏と『サイレントヒル』の関係

――ついに『サイレントヒル2』が発売されましたね。今作が、今村さんにとって初のプロデュース作品ということになりますが、プロデューサーという立場はいかがでした?
今村氏:大変でした(笑)。初めはディレクターをやらないかと言われて引き受けたんですけど、制作しているうちに関わる人間が多くなってしまって。

――だいたい何人ぐらいが携わったんですか?
今村氏:前作は最終的なスタッフは15人ぐらいだったんですけど、今回は50人ぐらいでした。

――ざっと約3倍強、ということになりますね。
今村氏:ええ。ですから、製作の途中でゲームの中身を見る人間と、プロジェクトを全体的に見る人間の2人に分けようということになったんです。それで、ビジュアル関係をメインで見ていた坪山君(※1)にディレクターとしてゲームの中身を見てもらって、僕はプロデューサーとしてプロジェクト全体を見ることになりました。

――ちなみに今村さんは、1作目の『サイレントヒル』ではどのような立場に?
今村氏:1作目ではメインプログラマーをやっていました。でも、単にプログラマーというわけではなく、企画の立ち上げ当初から関わっていましたね。

――では、今村さんが『サイレントヒル』の企画を考えた?
今村氏:というわけではないんです。企画の立案はホラーが好きな別の人間がやったんですけど、企画自体は何人かでチームを組んで進めたんですよ。僕もそのチームのメンバーの1人だったということです。

――今村さんご自身はホラーが好きだったんですか?
今村氏:ホラーって、それほど興味ある分野じゃなかったですね。でも、企画を立てるということで、小説を読んだりとか、映画を観たりして勉強しました。『サイレント』の場合、ホラー的な要素が一番強いんですけど、それだけではない要素もあるので、ホラーだけに限定せず、不条理な映画とか、サスペンスとか、いろいろなジャンルのものに触れましたね。それを境に、やっぱり興味を持つというか、好きになっていきました。

――となると、今作ではプログラムにはまったくタッチしなかった?
今村氏:初めは自分でもプログラムをするつもりだったんですけど、結局できませんでした(笑)。CGを作っている人たち、ドラマ部分を作っている人たちとか、とにかくいろいろな人たちと個別に打ち合わせをしている時間が多かったです。

――元プログラマーとしては、ちょっと寂しかった、なんて(笑)。
今村氏:そう考えると、メインプログラマーの時の方が、作品に直接関わっているという感じがしましたね。プロデューサーって、ホント大変な仕事ですよ。ただ、今回はディレクターの坪山君にアートディレクションを任せられたので、その辺はすごく助かりましたけどね。

誰でもプレイできる丁寧なコンフィグは注目!

――『2』の製作期間はどれくらいだったんですか?
今村氏:企画立ち上げから考えると、だいたい2年とちょっとですね。ゲームを作っていくと紆余曲折ありますんで。何回か大きな選択に迫られたこともありましたね。

――どのような選択を迫られたのでしょう? 非常に気になるところですけど…。
今村氏:まあ、すべていい方向にいったな、ということで。でも、世界観だけは揺るぎませんでしたね。

――と言いますと?

今村氏:『サイレント』の絶妙なアナログ感というか。僕自身『2』の製作に入るとき、ビデオデッキはあるけど、携帯電話やCDはないみたいな、『サイレントヒル』の微妙なアナログ感のある雰囲気は壊したくないと思ってましたし。

――確かにゲームをプレイすると、ストーリーは違うんですけど、前作と全然違和感を感じないですよね。ところで、今回はストーリーなど人間をメインにおいてますよね。前作はどちらかというと、オカルト的な面が前面に出てたと思うんですけど。
今村氏:今作は、ストーリーの方向性としてオカルトから離れようというのがあったんですよ。オカルトとは違うアプローチで、怖さを描く。そう考えたときに、人間の内面を掘り下げて、そこにある狂気や怖さを描くと怖くなるかなと思ったので。それで、今回のような形になりました。

――それが世界観のポリシーだったとすると、ゲームシステム面でのポリシーは?
今村氏:これは前作からなんですけど、メインの画面にHPゲージとかゲームっぽい部分を出したくない、というのはありましたね。これは完全に僕の趣味なんですけど。

――確かに、普通のゲーム画面には、ゲージ類は表示されていませんよね。
今村氏:ゲージがあるかないかで、画面から受ける臨場感や躍動感が全然違うと思うんですよ。それに、せっかくサイレントヒルという町の雰囲気にこだわっているんだから、そういうちょっとした部分で雰囲気を壊したくないな、と思って。

――あのコントローラの振動とかいいですよね。HPゲージとか表示されていない分、いつゲームオーバーになるかわからないといったドキドキもありましたし。
今村氏:そうなんです。体力ゲージとかゲームっぽい部分はすべてステータス画面に集約させて、体力の低下など、極力画面に影響を与えず、なおかつわかりやすいように、コントローラの振動を使うとかいろいろ工夫しました。

――あと、今作ですごい感じたのが、コンフィグというか、オプションがすごく親切だなということなんですが、この辺も注意を払っているんでしょうね。
今村氏:ええ。ゲームが怖すぎて先に進めないっていうのは僕らでも残念ながら対応できないんですけど、アクションや謎解きが難しすぎて先に進めないっていうのがすごくイヤだったんですよ。

――「怖いからプレイできない」だけは、お手上げですよね、確かに(笑)。
今村氏:あと、こういったゲームは難しそうだからって敬遠している人にも遊んでもらいたいというのもあったので。ですから、アクションはビギナー、イージー、ノーマル、ハードの4段階、謎解きはイージー、ノーマル、ハードの3段階から選べるようにしました。ビギナーならアクションが苦手な人でもゲームオーバーにならないでプレイしてもらえると思いますし、謎解きも決してイージーだからといって謎が無くなるわけではないのですが、変に頭を使わなくてもいいように遊んでもらえるものにしています。

――謎解きにも難易度の差があるっているのはオドロキですよ。既存のゲームにこのような仕様はありませんよね、きっと。
今村氏:コントロール方法も、3Dタイプ(方向キーの上を押すと前進。後ろで後退。左右で旋回する、いわゆるラジコン操作)と画面の見たまんまで操作できる2Dタイプの2つを選択できるようにしました。とにかくいろいろなプレイスタイルに対応できるように工夫しましたね。

●発売後だから話せる『サイレント』のあんなこと、こんなこと

――発売後の今だから話せる! なんて開発ウラ話をぜひ!
今村氏:うーん。では、アクションのビギナーモードのお話を。開発の段階ではハニーモードっていって呼んでたんですよ。でもいろいろ考えるところがあって、それはやめました。

――「ハニー」ですか。面白いですね。そのままでも良かったのでは?(笑)
今村氏:あと、エンディングが4種類あるんですけど、いわゆるGoodやBadというのではなくて、物語の答えを表から見るか、裏から見るかみたいな感じになっているんですね。ですから、4つのエンディングを見れば物語の全体像が完璧ではないんですけど、わかると思います。

――深いですね。
今村氏:それともう1つ。これはスタッフが遊びで入れたんですけど、歴史資料館のある部屋にスタッフの写真が飾ってあるんですよ。壁に近づいてサーチビューで上のほうを見てもらえば、見つかると思います。それ以外にも、ちょっとしたお遊びが入ってますので、探してみてください。

――イロイロなトコロをチェックすれば、楽しいことがいっぱいありそうですね。
今村氏:戦闘とかも楽しみの1つなんですけど、特にユーザーの皆さんには、ストーリーを楽しんでもらいたいですね。今回僕らが表現したのは"愛"なので、そういったところを感じてほしいです。あと、途中途中に入ってくるデモの人の表情だとか、セリフの間とか、そういうところに力を入れて作っているので、注意というか、気にしてプレイしてもらえるとウレシイですね。

これからの『サイレントヒル』、そして気になる×box版は?

――最後に『サイレントヒル』の今後の展開をお聞きします。まずはXbox版について教えてください。Xboxの発表会のとき、『完全版』と言っていたと思うんですけど。
今村氏:まずあらかじめ言っておきたいのは、Xbox版の『完全版』の意味は、決してPS2版が未完で、Xbox版で本当に物語が完結するというわけではないということです。あれは、PS2版をただ移植するというわけではなく、Xboxの性能を最大限に活かした作品を作るという意味での『完全版』ということです。今はまだ詳しくは言えないのですが、PS2版にはないXboxならではの要素も用意してますので、PS2をプレイしたかたでも楽しんでいただけるものになると思います。

――最近発売されたゲームキューブへの移植は?
今村氏:現状では考えていませんね。任天堂さんのハードはどうしてもターゲットが低年齢層なので少し対象年齢がかけ離れているかな、と。『サイレント』のストーリーはどちらかといえば難しいほうなので、子どもは理解できなのではないかと思いますし。そういうわけで、今のところは考えてないですね。

――ゲーム以外の展開などはどうですか。ポピュラーなところでは小説化とか。最近では、フィギュアとかもありますよね。
今村氏:そうですね。僕ら作り手としてはあの世界を大切にしたいので、あまり広げすぎたくないというのがあるんですけど、設定など、世界観を壊さない範囲での展開はいろいろ可能性として考えています。フィギュアかどうかはわからないですが、キャラクターグッズとか、今後は若干出てくるのかな、とも思いますね。

今村氏の言葉にもあったが、ゲームをいろいろなプレイスタイルに対応させるというのはすごく大変なことだと思う。しかしこのゲームは、それに挑戦し、成功したといっていいだろう。実際、これだけオプションや難易度の設定が親切なゲームは珍しいし、それによって多くの人がプレイできるようになっているのである(実際、こういうゲームが苦手という人も、『サイレントヒル2』をクリアしていた)。また、今村氏が見て欲しいと語っていた人の表情やセリフの間も、ストーリーに説得力を持たせていて実に素晴らしい。普通ホラーもののAVGというと、回を重なるごとに怖さが薄くなっていくものだが、このシリーズはそれがない。実際プレイしてみて、基本的な表現方法は同じなのに、前作以上に恐さを感じた。それはグラフィックのリアルさもあるが、やはりゲームのテーマやストーリーの持っていき方がしっかりしているからだと思う。これだけの作品を、恐いのが苦手という人はともかくとして、ホラーAVGは難しいからといってプレイしないのはあまりにももったいない。ぜひ、手に触れてほしい1本だ。

※1:坪山優史氏、コナミコンピュータエンタテインメント東京・制作1部所属。1作目から『サイレントヒル』の制作に参加。ゲームのディレクターと背景統括デザイナー(いわゆるアートディレクター)を務める。


(C)1999 2001 KONAMI COMPUTER ENTERTAINMENT TOKYO
ソフト紹介

サイレントヒル2

●機種:PS2
●コナミ
●AVG
●2001年9月27日発売 
●6,980円



今村哲裕氏

コナミグループ、コナミコンピュータエンタテインメント東京・制作1部所属。『サイレントヒル』シリーズは1作目から参加。『サイレントヒル2』でプロデューサーを務める。これまで関わった作品は、『ハイパーオリンピック・イン・アトランタ』など。