電撃ドットコム > 電撃オンライン > インタビュー > ウェーブマスター・ロングインタビュー

SOFT インタビュー
『SWITCH』と『ルーマニア#203』をひっさげてPS2に参入!
ウェーブマスターのキーパーソン2人にいろいろ聞いてみた!
タイトル ウェーブマスター・ロングインタビュー 

昨年セガから分社化し、音楽を中心に新たなゲームの可能性を追求し続けている「ウェーブマスター」。新進気鋭のこのメーカーがこのたび、異色作と話題を呼んだメガCD『SWITCH』とDC『ルーマニア#203』をPS2に移植することを発表した。そこでそれを記念(?)し、電撃オンラインでは開発者に直撃インタビューを敢行。気になるゲーム内容やその独創的なゲーム制作に迫る!

■ウェーブマスターに聞く! SWITCH(スイッチ)編
 1993年にセガからメガCD用ソフトとして発売された、ひたすらスイッチを押して、その反応(ギャグ)を楽しむという、かなり斬新なソフト。制作には「ゲバゲバ90分」など往年の人気TV番組で演出を担当してきた喰始(たべはじめ)氏や「ガチョン」でおなじみの谷啓氏、さらにアニメ作家の木下蓮三氏などの豪華スタッフが参加。また、久本雅美さんや柴田理恵さんなど「WAHAHA本舗」のメンバーも音声で参加している。

■熱い思いと奇跡が生んだ 『SWITCH』の復活

――タイトルを聞いた時「えっ、あの『SWITCH』がPS2に!?」と、かなりびっくりしたのですが…。メガCDで発売された、知る人ぞ知るこの作品を移植することになった経緯というのは?

牧野:僕がものすごく『SWITCH』のことが好きなんです。大好きなWAHAHA本舗のスタッフが制作に絡んでいるということもあって、当然製品版はもちろん何度クリアしてますし、開発当時は頼まれてもないのに開発途中のロムをやるほどで。でも、『SWITCH』ってすごくカルトなゲームってイメージが強くて、不幸な扱いを受けていて…。それが非常に残念だったんですね。
で、僕個人の『SWITCH』というゲームに対する思い入れをなんとかしたい、いつか絶対に復活させたいなって、ずっと考えていたんです。『ルーマニア#203』以降のプランの中にも、『SWITCH』移植というのは常に入ってましたし。
とはいえ、制作には喰始さんや谷啓さんなど、そうそうたるスタッフの方々がかかわっている作品なので、僕の一存では移植を決めるのは難しい。……なんて思っていたところに、なんとメガCD版『SWITCH』の制作の際、お世話になったオフィスアイのスタッフの方が、突然僕を訪ねてきまして、「牧野さん、『SWITCH』っていうゲーム知ってます? ぜひ復活させたいんですけど…」って(笑)。そこからは、もう話がトントンと進んで、現在に至るというわけです。

■二度とかかわりたくない? メガCD版のツラい過去

――お話の中で「頼まれてもいないのに開発途中のロムを~」ということでしたが、牧野さんはメガCD版の開発には参加されていないのですか?

牧野:メガCD版の『SWITCH』を制作していた当時、現在のウェーブマスターっていうのは、セガのいちサウンドセクションだったんですね。ですから、効果音などのサウンドに関する部分の制作を担当していたんですが、残念ながら僕は直接かかわってはいません。もちろん制作には参加したかったんですが、別のメガCDのプロジェクトを3つぐらい抱えていて、とてもそれどころじゃなく…。佐々木は制作に参加していたんですが、彼女が仕事をしているのを、「いいなぁ~、いいなぁ~」と横目でうらめしそうに、いつも見てましたね(笑)。

――メガCD版の制作に参加した立場として、佐々木さんは『SWITCH』の復活を聞いて、どう思われました?

佐々木:『SWITCH』に関しては、牧野が異常に熱を入れているんで、そんなにやりたいのなら、いいんじゃないかなーと。まあ、個人的にはやめたほうがいいと思うんですけど…。実際メガCD版の開発にかかわったほかのメンバーも「『SWITCH』もう1回やらない?」っていうと、すごくイヤ~な顔をしますし。

――それはどうして?

佐々木::ギャグ全部の効果音を1つ1つ作らなくちゃいけなくて…。しかも、そのギャグの数が約500個! さらにその効果音の出すタイミングをフレーム単位で調節するとか、地獄のような作業の連続で、牧野がいうように「いいなぁ~」なんてことはぜんぜんなくて、今までこれほど作業がたいへんだった仕事ってありませんでしたね。実はWAHAHA本舗の人たちに会える!…なんてミーハーな気持ちから「なんでもいいからやらせてほしい」といって、ムリヤリ開発チームに入れてもらったんですけど、結局、仕事が終わって今でも強烈に思い出すのは、『SWITCH』=「会社で段ボールを敷いてごろ寝をした思い出」です(笑)。

牧野:喰さんの中に、ギャグは“間”だという考え方がありまして、効果音を出すタイミングもフレーム単位で彼から指示が出るんですよ。それはやっぱり、現場のスタッフにとってはそうとうツラかったんじゃないかと思いますよ。ただしまぁ、それだけ喰さんが、こだわって作られていたということなんですけどね。

■10年後を狙っていた!? 早すぎた名(迷)作

――やっぱり気になるのが、ゲームの内容なんですが、メガCD版では「スイッチを押して反応を楽しむ」というゲームでしたよね。そのシステムはPS2も同じですか?

牧野:『SWITCH』には、マザーコンピューターの暴走を止めるという目的はあるんですが、これはゲーム性を高めるための目的で、このゲームの根本的な目的はあくまで「ギャグを楽しむ」ソフトだと思っています。なので、PS2版でも「スイッチを押して、ギャグを楽しむ」というシンプルさは変えていません

――新たなシーンやギャグの追加はあったりしますか?

牧野:ゲ-ム内容は基本的にメガCD版と同じなので、ギャグの数自体は増えません。ただしグラフィックとサウンドはかなりクオリティアップを図る予定です。さすがに今、メガCD版を見ると、グラフィックなんか「あらららら…(汗)」ってカンジですからね。あと、PS2版のオリジナル要素をなにかつけるつもりです。これについては詳しいことはお話できませんが、もうすでに喰始さんや谷啓さんとも打ち合わせ済みで、開発は着々と進んでおります。それとゲーム内容の話ではないんですが、PS2の発売に合わせて、谷啓さんとお笑いユニット「ポカスカジャン」によるコラボレートアルバム(※注1)を発売する予定です。まだ詳細は未定ですが、このアルバムには『SWITCH』のBGMも収録される予定です。

――それにしても今考えると、谷啓さんやWAHAHA本舗のメンバーなど、参加しているスタッフがものすごく豪華ですよね。

牧野:そうですね。今や久本さんをはじめ、WAHAHA本舗のみなさんは大メジャーですけど、当時はまだブレイク直前といったカンジでしたね。そういえば、『SWITCH』の発売のイベントで、WAHAHA本舗のメンバーが集まって、銀座の街をねり歩いたことがあって、大騒ぎになったみたいですよ。

――それからもう8年も経ちますが、内容やシステムが古いんじゃないかって、不安はありませんか?

牧野:古くなってないと思います。最近、昔のテレビ番組がビデオやDVDで復刻されて、それがまたいいセールスを出している。ああいうものに対するユーザーのとらえ方というのは、決してネガティブではないと思っていますので、10年近く前の古いゲームだからといって、誰も見向きもしませんっていうことには絶対ならない。特にお笑いというものは普遍ですから、逆におもしろがってくれる人のほうが多いと思いますよ。あと確かにメガCD版の当時は、バリバリの硬派なゲームが多かったので、異色とか馬鹿ゲーなんて言われてましたが、最近はこの手のヘンなゲーム(笑)が増えてきているし、PS2ユーザーにもすんなり受け入れてもらえるんじゃないかなと。そういった意味で、逆に今のタイミングがベストなんじゃないかなってぐらいに思っています

■ウェーブマスターに聞く! ルーマニア#203編
 プレイヤーがアパートに住み着く神様となり、“ネジ・タイヘイ”という平々凡々な大学生にいたずらをするという、ちょっと変わったSLG。ただ単にいたずらを仕掛けて、ネジのリアクションを見るだけでも楽しいが、いたずらの仕方によっては彼の人生が変化。ネジにかわいい恋人ができたり、鏡の世界に行ってしまったりする。ネジの生活に干渉して、彼の平凡な毎日をドラマチックに演出してあげよう!

■PS2版も あの独特な雰囲気はそのまま!

――次は『ルーマニア#203』について。DCからPS2へ移植されるということで、やっぱりゲーム内容がどうなるのか気になるところなんですが、なにか変更点はありますか?

牧野:『SWITCH』同様に、オリジナル要素をいろいろつけるつもりです。それで、どういう要素を新たに追加するか考えたんですが、『ルーマニア#203』って、世界観やテイストが売りのソフトだと思うんですよ。だから、それを崩さないものを新要素としてつけたいなと。イメージとしては、ティム・バートンの「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」という映画があるんですが、そのオマケとして上映された犬の短編映画(「フランケン・ウィニー」)のような感じ。あくまで「世界観の延長線上にある」オマケをつけたいと考えています。

――それ、なんなんですか? ズバリ教えてください!

佐々木:う~ん……(苦笑)、簡単に言っちゃえば、ミニゲームをいくつか収録しようと思っています。当然、単なるミニゲームをつけてもしょうがないので、『ルーマニア#203』テイスト満載の、かなりヘンテコなものを

――DC版には、ネジが留守の間に部屋の中にいるチビネジという謎の生物(?)を探す、「チビネジ探し」というミニゲームがありましたが、それに近いものですか?

牧野:いいえ、ぜんぜん別のものですね。「チビネジ探し」は本編の中に組み込まれていましたけど、PS2版に収録されるミニゲームは、メニューでミニゲームを選んで、本編とは別のところで遊べるようにしようと。もちろん「チビネジ探し」はPS2版でも遊べます。

佐々木:ミニゲームはいくつか収録するつもりなんです。特定のシナリオをクリアすると、それに対応したミニゲームが遊べるようになって、シナリオ本編で語られなかった物語が判明する仕組みになってます

■ますます広がる 『ルーマニア』の世界

――それ以外の変更点というのはありますか?

牧野:DCからPS2への移植ということで、グラフィックやサウンドといった技術面での変更は多少あると思いますが、ゲーム内容での大きな変更点はミニゲームの追加以外には特にありません。

――DC版ではネジが観たり聴いたりするテレビやラジオ番組がありましたが、あのへんもそのままですか?

佐々木:基本的にテレビ、ラジオ番組に関してはDC版のものは全部収録します。もしかすると多少オマケ映像があるかもしれません。未定ですけど。

――シナリオの追加はないんですか。

牧野:そうですね、シナリオの追加も今回のところは考えていません。とりあえずは『ルーマニア#203』の世界をPS2のユーザーの皆さんに味わっていただきたいというのが、PS2への移植の目的なので。ここはあえて手は加えないで、新しいシナリオについては、次のお楽しみにしようかと…(笑)

――次のお楽しみ??? もしかして続編ですか!?

牧野:もちろん、続編のことは考えていないわけではないのですが…、まだ未定ですねぇ。

――ネジタイヘイの生みの親である佐々木さんは、親としてネジの将来はどうなってほしいと考えてますか?

佐々木:ネジタイヘイは、ユーザーの皆さんと等身大の存在だと思ってるんです。だから、ユーザーが成長するにしたがって、ネジタイヘイはネジタイヘイなりに年をとってほしいですね。

■メディアを越えた サウンド制作のプロ集団として

――『ルーマニア#203』といえば、DC版の発売の際、ゲーム中に登場する女性アーティスト「セラニポージ」のCDが発売されましたが、PS2版が発売されるにあたって、今回もなにか企画を?

牧野:現在いろいろなアイディアを考えているところです。まずはセラニポージのCDのリミックス版を発売しようと思ってます。

――セラニポージの今後の活動には目が離せませんね。でも、セラニポージというゲーム中のアーティストのCDを出すという展開って、今までにないサウンドトラックの形ですよね。

牧野:
ぼくらは音楽をやっていますので、ゲームのサウンドトラックもすごく大切な世界で、そこのユーザーの皆さんを大切にするというのも1つなんですが、ここだけでこじんまりおさまっててもしょうがない。ゲームサウンドトラックの枠からどう出るかってことも、常に考えているんです。それで、そのアプローチの1つが、セラニポージのアルバムだったんです。このアルバムは『ルーマニア#203』のサウンドトラックという位置付けなんですが、サウンドトラックという表記はどこにもないんです。アーティストのアルバムというコンセプトを崩さないために、あえてそうしたんですが。音に関しても、ピチカート・ファイヴとかのセッションをずっと手がけていた福富幸宏さんというプロデューサーといっしょにやりまして、言葉が古いですけど、渋谷系と呼ばれている音楽を狙ったんですが、そこも見事にささりまして、ゲームのサウンドトラックだと知らない人も買ってくれたみたいで。そういう意味では、今までのゲームサウンドトラックという枠からは一歩出たかなと思っています。

――ゲームの世界が音楽を通してますます広がりますね。では、最後になりますが、今後のゲーム以外のウェーブマスターの活動についてお聞かせください。

牧野:サウンド開発については、今までどおり、セガはもちろんそれ以外のメーカーのものも含めて行っていくつもりです。あと現在、テレビ番組の音響制作も担当してます。ほかにもテレビアニメや映画の音楽もいくつか制作を予定しています。サウンド制作はメディアが違っていても、基本的なノウハウは同じなので、他のメディアに入っていきやすいですから、セラニポージのような音楽CDのプロデュースも含め、いろんなプロジェクトを進めていく予定ですので、期待していて下さい!

――お忙しい中、お話ありがとうございました。
(文中敬称略)



牧野幸文さん

ウェーブマスター代表取締役社長。『ソニック』シリーズを中心にセガタイトルのサウンドを数多く手掛ける。ゲームのプロデュースはDC版の『ルーマニア#203』がはじめてで、『SWITCH』は2作目となる。

佐々木朋子さん

サウンドクリエイター。『ルーマニア#203』の生みの親で、DC版では原案からシナリオ、作詞作曲まで幅広く担当。メガCD版『SWITCH』のサウンド制作にも参加。











































※注1:9月29日に日比谷野外音楽堂で行われた「ポカスカジャン」のイベントで、『SWITCH』のコラボレートアルバム発売が発表された。写真はステージに登場したガリガリ君とポカスカジャンのメンバー。ガリガリ君が持っている巨大なアイスはソーダ味だと思われる。やはりガリガリ君といえばソーダ味なのだろうか?