電撃ドットコム > 電撃オンライン > インタビュー > 『サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~』広井王子氏

SOFT  
総合プロデューサー 広井王子氏インタビュー


 約3年半ぶりに完全新作として登場する『サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~』。完成に至るまでのさまざまなエピソードや、キャラクター設定についてお話をうかがった。

●『サクラ大戦V』は集大成的な作品に!

――いよいよ発売を7月7日に控える『サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~』ですが、完成の手応えはどうですか?
広井王子氏(以下、敬称略):ゲームとしてすごい良くできてるのはもちろん、今まで以上にいろいろな部分が上手くいきました。いつもは意外ともめたりとかするんですが、今回は最初から細かいところが見えていて、それに向かってスタッフみんなが丁寧にきちっと仕事をこなしていくことができました。それで破綻することなくカチッて上手くはまったんですよ。いい作品になっていると、すごい手応えが自分だけでなくスタッフ全員にあります。新しいこともずいぶんやりましたしね。『サクラ大戦』は、TVアニメーションの中に入って何か操作してるという感覚になって、それで次回予告を見て次の話が待ち遠しいみたいなところをずっと追い続けててきたんですよ。『V』では、ある意味集大成的な感じで出来上がったと思いますね。
――舞台をニューヨークに移したことで、開発する上で特に気を使ったことなどは?
広井:
1930年台近辺の実際のニューヨークってどんなだろうなぁとか、ニューヨークでその時代に生きてるってどういうことなのかなぁとか、そんなことを考えてて、ヒントになったのはジャズの「エイトライン」。今の「ハーレム」はすごく怖いというイメージがあるんだけど、当時の「ハーレム」は光輝く場所として、黒人たちがいつかハーレムに行きたいって願っていた楽園だってということが、歌を聴いてるとわかる。で、当時「ハーレム」に住みたいって思ってた人たちはどうなの? っていうところから始まりました。移民の人々はとてもエネルギッシュで、アメリカって、正しいことをしている人間をすぐ認めてしまう風潮があるから、それを上手く表現したいなと。これなら、今日本でやる意味があるなと思ったんですよね。
――“サジータ”がハーレム育ちのキャラクターとして登場しますが、まさに彼女がそれを表現している感じに?
広井:
自分の中では、"サジータ"と"ジェミニ"が一番最初に出来あがったんですよ。とくに"サジータ"は黒人で、差別の中にある。それを歌にも書いたんだけど、黒人がのし上がるために、白人と対等の立場で戦えるのが法律、法の前には平等なんだと。絶対にこれはやろうと思ってて、あかほりさんに話したら、そこ面白い、それやろうってことになって。で、もう1つ違った1面がほしいというのがあって、元暴走族という設定をつけたと。元暴走族で仲間を助けるために法律を学んで弁護士になる、これは黒人としての1つの生き方としてあると思うんですね。
――“リカリッタ”、“ダイアナ”、“昴”はどのように生まれたのですか?
広井:
“リカ”は「マカロニウエスタン」を考えてて、はじめはニヒルな少女ってイメージだったんだけど、ポンチョきて、中に銃器がいっぱいあって、すごい明るくおバカな感じの「マカロニウエスタン」という感じで“リカ”ができてきた。彼女は百発百中の銃の名手で、バウンティハンター(賞金稼ぎ)。ニューヨークに来る前は大自然で獲物を狩って生活をしていて、生きていくためには、。もう動いているものはなんでも撃って、みんな食べちゃう。だから、“リカ”と一緒にいるフェレットのノコも、“リカ”にとっては非常食になっているんじゃないかと。彼女の中にはペットというものは存在しないんですよ。そんな感じでキャラを作っていく中で、ただ、おバカにするだけでなく、どこかに傷をつけようかってところで悩みましたね。
――確かに今までのヒロインにはない毒っぽいところもありますね。
広井:
キャラクターの設定を作るときって、僕とあかほりさんの呼吸がすごく大事なんですよ。僕が言ったことに、あかほりさんが乗ってきたら上手くいく。で、あかほりさんが「う~ん」と悩んでるときって、あんまり僕のアイデアがよくない。そういう時はすぐに「やめよう」って話になって(笑)。上手く投げないといい返事が返ってこない。そのへんの呼吸が合ったときに、キャラクターがいい感じに輝いてくるんです。『V』のメインキャラクターの中では“リカ”がそういう感じでしたね。
――なるほど。では“ダイアナ”は?
広井:
とっかかりは「病気」(笑)。病気で病院のベッドで点滴を打ってるって設定を打ち出した時は、スタッフみんなも驚いてましてね。でも、それが今回の面白さなので、使ってくださいと言ったんです。やっぱり、なんか全体に傷をつけておきたいというのがある。『3』の時は“ロベリア”の懲役1000年があったように、キャラクターを作ってるときに突発的に1人そういうのが欲しくなるんですよ(笑)。それが今回は“ダイアナ”だった。で、僕が提案した見た目に病気で病院のベッドで点滴を打つというのを、他のみんなが謎解きしながら考えてくれましたね(笑)。
――確かに、車イスに乗ってて、どうやって戦っていくんだと(笑)。
広井:
『サクラ』チームで偉いのは、それをなしということするんじゃなくて、それをどうにかしようっていうところがいいんですよ。そこが作ってて面白いところで、ひとつは無理難題を吹っかけてみる。それが今回は“ダイアナ”だったんです。点滴を持って移動するみたいなことを言ったら、それはさすがに勘弁してくれと言われたけどね(笑)。でも、"ダイアナ"は今までの『サクラ大戦』シリーズにはない不思議で変わったキャラクターになりましたね。
――では、“昴”はどうでしょうか? 
広井:
設定を作ってる時に、“レニ”に寄っちゃうので、そこはどうしようか迷いましたね。“レニ”は意識しないで完璧主義者なんだけど、“昴”は完全に自分で意識してる完璧主義者。あと“昴”は作ってる人間の中でみんな認識が違う。あるスタッフは“昴”は女だと思って作ってる。で、あるスタッフは“昴”を男だと思って作っている。また、あるスタッフは、両方だと思って作ってる(笑)。あかほりさんは両方って言ってる(笑)。10歳くらいの時の子供って男か女かわからないぐらいの性の状態がある。“昴”はその状態をずっと持ち込んでいるような感じかな。でも、“昴”の中で一番大事なことは、性別は関係ないということ。自分が生きていくことの中で「なぜ男であるとか女であることを聞かれなければならないのか」。この部分に一番反発するんですよ。
――その謎が“昴”の魅力になっている?
広井:
“昴”は年齢も言わないし性別も言わない。そういうこととはまったく関係ない世界で生きている。お面をかぶると、老人にもなるし若くもなる、性別とか年齢とかもまったく関係ないという能の表現がヒントになって、そういう子を作ってみたかったんです。
――“昴”が日系のキャラというのも、そこらへんからきている?
広井:
そうですね。“昴”は能をやらせようと決めていたので。『V』のキャラクターは見た目を今までと違ってちょっと地味にした。リアルなところで表現できるように、ファッションとか表情とかを抑えていった感じかな。だから、キャラクターを出したときに、すごい地味に感じたんじゃないかな。でも今回は、星組が地味な分、敵キャラが派手なんですよ。なんじゃこいつらは~みたいな(笑)。
――今回は敵キャラとして織田信長が出てきますが、このキャラがニューヨークの街に現れることになった経緯というのは?
広井:アメリカってすごく新しい国で、歴史がないから掘り返せなかった。日本やパリは、その歴史を掘り返しても大丈夫なような敵キャラが作れる。"天海"を敵として登場させても文句を言う人はいない、“パリシィ”って言っても古すぎてフランス人は怒らない。でも250年くらいの国で誰かを敵なんて言ったら国際問題になってしまう(笑)。だから、先住民(ネイティブアメリカン)とかを敵に出来ないんですよ。何度もいろいろな敵を考えたんだけど、絶対に侵略問題になっちゃうんだよね。で、どうするかってなったときに、日本人が敵なら問題ないんじゃないかとなりました。信長ってちょうど全世界を征服しようとしてたわけだから、ニューヨークから号令をかけるというのも1つありかなと。で、もう1つは自分の中のイメージで、摩天楼の上に安土城ができたら、アメリカ人はびっくりする。異文化だから、このやろーってアメリカは怒る。でも、面白いからいいじゃんってことになって(笑)。このアイデアを出してから、アメリカに取材に行って、現地でイメージを具体的に固めてきました。
――取材の時の体験談というのもゲームに反映されている部分がある?
広井:
取材の時の体験をそのままゲームに反映しているということはないですね。このニューヨークという街をゲームの中で再現していく作業は慎重に進めてきました。取材に行った時は、街中、警備が厳しくなっていて、ちょっと雰囲気が違いましたから、そういったものを再現しないようにとか、細かく気を配ってきましたね。ただ、各国が主要都市を守るっていうのは、すごく大事なことで、世界はそうやってできていると思う。だから、東京が壊滅すれば日本の国力が落ちる。そのための都市防衛なんですよね。各国が都市を防衛するというのはすごい大事なことで、それは軍隊じゃなくて小さい組織でやらざるを得ない。都市が平和になるってことは国が平和になるってことだと僕は理解していますから。それで、華撃団構想っていうのは、大きな軍隊をつぶして、小さい都市防衛をやっていくと。そういう意味では反戦の作品になってるのかなと思います(笑)。
――これからの『サクラ大戦』シリーズの展開について何か考えていることはありますか?
広井:
ゲームでは描ききれていないキャラクターの魅力をもっともっと描きたいとは思っていますよ。今回のお話が物足りないという意味ではなくて、このキャラクターたちを僕自身もっと見てみたい。それと、タイトルにある「さらば愛しき人よ」というのが、僕の大好きな“レイモンド・チャンドラー”を参考にしているので、次もそういった感じのものをもうひとつやってみたいですね(笑)。
――それは、今回の紐育華撃団でまた何かやりたいと?
広井:
そうですね。本当はラスベガスのイベントも入れて、アメリカ全土をやりたかったんだけど、今回では、そのラスベガスを入れることはできなかった。今は、紐育でもっと何かやりませんかっていう意見もあったり、そんな話で盛り上がってたりするところもある。いろいろアイデアは出てきています。まぁ、まだちゃんとは決まってないですけどね(笑)。
――そういうものがアニメーション作品とかになったりとかも?
広井:
アニメーションについては、いろいろ考えてますね。紐育華撃団のアニメーション作品をやりたいという考えはあります。それがOVAか、TVか、映画か、実際どんな形になるかまだ具体的なことはわからないけども、アニメ作品にはしていきたいですね。
――紐育華撃団の舞台公演なども今後は予定されている?
広井:
紐育星組さんたちは、またゼロからやらなければならないので、今の段階ではまたハッキリと何ができるのかが見えていないですね。ただ、そんなに遠くない時期に、星組さんたちのイベントはやりたいと思ってますね。
――舞台と言えば、今年の「スーパー歌謡ショウ」では“神崎すみれ”役の富沢美智恵さんがゲストとして登場することが決まってますね。
広井:
夏の公演は今年9回目で、来年10回目で終わりなんですね。で、来年はきっとお祭り騒ぎになっちゃうので、ちゃんとできるのは、もう今回が最後かもしれない。それで「きませんか?」って声をかけたらみんなきちゃったんですよ(笑)。今回は3人娘もそろってるし、薔薇組もそろってるし、脇侍も出るし、ホントにゲームのようになりますよ。皆さんがゲームで見たシーンのようなアレやコレが見られるかなと思います。今回は本当にみなさんいらっしゃいますので、バラエティショウとしてはこれ以上のものはないかなと思います。
――夏の公演が非常に楽しみなところです。では、最後にこれから『サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~』で遊ぶ人に向けて一言お願いします。
広井:
『V』はやり込みどころがいっぱいあるので、いろいろな分岐を試していただけると「えっ?」というような発見がいっぱいあります。スタッフ一同一生懸命に作りましたので、たっぷり遊んでいただきたいなと思います。いっぱい遊んでください。
――ありがとうございました。


広井 王子 氏
広井王子氏
レッド・エンタテインメント
代表取締役会長

 『サクラ大戦』総合プロデューサーにして同シリーズの生みの親。今回『V』に司令官として登場するキャラクター“サニーサイド”が、広井氏そのものだと言うスタッフもいるとかいないとか。

サクラ大戦V
~さらば愛しき人よ~
画面写真
■メーカー:セガ
■対応機種:PS2
■ジャンル:AVG
■発売日:2005年7月7日
■価格:通常版 8,190円(税込)/ ショータイムBOX14,700円(税込)
■関連サイト
公式サイト
サクラ大戦.com
セガ

(C)SEGA,2005 (C)RED 2005

【通常版】
【ショータイムBOX】

【潜入! 下町レッド】
 今回お話を伺いに足を運んだ先は、一風変わったオフィスで有名なレッド・エンタテインメント。かなりのこだわりが感じられる、その社内をちょっぴり紹介。
画面写真

エレベータを降りると目の前には地図が。

画面写真
入り口には帝国映画劇場。いきなりビックリさせられます。
画面写真
ストリップ劇場になっている社長室。ホステス募集の張り紙とか、とにかくもう細かすぎ!
画面写真
画面写真
画面写真
昭和初期の下町を再現したレッド・エンタテインメントの社内。同社広報曰く、かなりのお金をかけているそうな。