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タイトル
『セガガガ』超ロングインタビュー
対談
ゾルゲール哲 氏 vs 電撃オンライン編集部

 プレイヤーはセガの経営者となって、与えられた三年の間にシェア100%、つまりゲーム業界制覇を目指すというトンデモないゲーム『セガガガ』。このゲームが、2001年5月31日に店鋪販売を開始したことを記念して、電撃オンラインでは開発者にインタビュー取材を敢行いたしました! この、ぶっとんだコンセプトのゲームが生まれるまでの経緯や、開発中のアブナイ裏話を完全掲載しちゃいます! 長文注意!!

●涙! 『セガガガ』はこうして誕生した!

――発売からかなり時間が経ってはいますけれど、まずはあいさつとして…、開発おつかれさまでした! 開発中のイヤなコトなんかもそろそろ忘れてきた頃だとは思いますが、開発中のコトをいろいろとほじくりかえさせていただきますので、よろしくお願いいたしますね。では、さっそく月並みな質問かもしれませんが、開発に着手されたのはいつ頃からだったのでしょうか?
ゾルゲール哲(以下ゾル):最初に企画があがったのが、1999年のお正月。それでプレゼン(会議での発表)をしたのが、その年の1月中旬かな。そのときのプレゼンでは、いっしょに『スペースチャンネル5』なんかもやってましたよ。社長がまだ中山さんの頃ですね。プレゼンの評判はすごくよくて、人気は高かったんですけど、企画が企画だけに誰も本気にしてくれなかったようで…。プレゼンが終わったら、みんなゾロゾロ帰っちゃうんですよ、何事もなく。ですから、「この企画はマジなんです」って認識させるべく、もう1回プレゼンをやりました(笑)。そんなこんなで、実際に開発がはじまったのは1999年の秋ですね。いろいろありましたよ…。
――ゲームのコンセプトからして反響がかなりありそうなのは、よくわかりますが…。具体的にはどんなカンジだったんですか、その反響というのは? 
ゾル:ゲーム中のオープニングと雰囲気的に同じようなモノをビデオで作って、プレゼンで流したんですけど、コレが馬鹿ウケで! みんな「オッケ~オッケ~」ってカンジで、ウケは最高でした(笑)。とはいえ、誰もこれが本気だとは思っていなかったみたいで。だから、オレはプレゼンの席でウケを取りにいったようなもので、「企画を通す」という本来の目的とはまったく違った方向での反響がありました。「おもしろい! おもしろい! じゃあね~」って言って、みんなそのまま帰っちゃった。よかったんだか悪かったんだか。最初にビデオを見せられて、本気の企画だと信じてくれる人は、あんまりいなかったですね。
――プレゼンが同時期だった『スペースチャンネル5』なんかは、もうかなり前に発売されてますよね。そう考えると、開発がかなり遅れたようで…。それにしても、"ドリームキャストの生産中止"などのセガの一連の出来事と、『セガガガ』発売の時期ってのが、いろんな意味ですごく合っていましたけど、もしかして何か狙ったトコロがあったりのです? なんて勘ぐりたくなりますけど。
ゾル:当初は、2000年の秋頃には発売できるかな、というペースで開発を進めてたんですけどね。出来上がったモノを会社に持っていって「出来ました! こんなカンジです」って見せたら、みんなが真っ青になって…。それからまた紆余曲折があって、スケジュールが順調に遅れていきました(笑)。発売日を2001年3月29日に決めてくれたのは、ヒットメーカー広報の笹原くんです(※1)。最初は「なんでそんな時期に売るんだよ」って意見も出たけど、みるみるうちに会社(セガ)が傾いていってねぇ。まるで『セガガガ』の発売日に合わせたように…(苦笑)。え~、まとめますと、特に狙ってやったというワケではなく、開発中にいろいろな問題が起こったり、事態が変な方向に転んだりする度に、『セガガガ』が何かしらウマイ目を見る! そんな不思議な運命の巡り合わせがあって、これはすべて仏様のお導きかな、と。信仰の毎日でございます(笑)。

● 涙! 『セガガガ』はこんなコンセプトで作られた!

――『セガガガ』は、セガを立て直そうというぶっとんだ設定のゲームですが、最初からこういう設定のゲームを作るつもりだったんですか?
ゾル:不思議なことでねぇ。企画書に書いたコト100%そのままが、なぜかできてしまったという。…今でも「よく途中で止まらなかったなぁ」と思っていますね(笑)。
――これもやっぱり仏様の御加護なのでしょうかね(笑)。そもそも、こういう設定にしようと思われたきっかけは何だったのですか?
ゾル:何か1つのアイデアがあって、そのアイデアを具現化するべくお金や人などの工面をつけて作りましょうっていうのが、そもそものゲームの作り方だったんですけど、最近ではそういう作り方が成立しにくいんですよね。本当にそのアイデアがゲーム化するに値するモノなのか、という検討の基準のハードルがすごく高くなってしまって。作りようがないんです。そこで、GOサインを出させるためには、相当の変化球を投げる必要があるだろうと考えまして、こういうインパクトのあるコンセプトのゲームを作ろうと思ったわけです。
――コンセプト自体は変化球かもしれませんが、ゲームにまつわる業界を包み隠さず、ストレートに表現しているあたりはある意味、直球といえますよね。
ゾル:こんなゲームを作っているわけで、開発現場ではいろんなトコロから冷たい視線をいつも感じてましたから…。これでテキトーなことやったら許されないでしょ。会社とか上司とかじゃなくて、身の回りの親しい人に「おいおいテキトーなモノつくってんじゃねーよ、なに半端なことやってるんだ! このヤロー」って言われちゃうので。こういったゲームを作りましたけれど、オレはもちろんオレの周りにいる人たちにとっては、飯のタネじゃないですか。飯のタネをセルフパロディという形で人前に出す、それは決して茶化していいことじゃないと思ったんで、企画自体は変化球でもいいけど、実際にその変化球で語ることは、変に細工せずに直球でいこうというところはありましたね。でも、これがもしも最後まで茶化したモノだったら、プレイヤーのみなさんは画面にコントローラぶつけてますよ(笑)。まあ、ある意味賭けではあったんです。これだけ全部茶化しておいて、でも最後にグルっとひっくり返って、ちょっとでもマシな結論が出せないかな、みたいな。そういった意味では、最終的に変化球の中でも語るべき部分は直球になってますし、結論もうまくまとまったのでは? と思っていますので、自分では満足していますね。
――うーんとても深い。深すぎます! ゾルゲールさんカッコイイっす! 感動しました! さて、「企画自体は変化球だ」というお話ですけど、「時が未来」という設定も変化球を投げやすくするためでしょうか? 実際の年代、2001年とかの方が感情移入しやすく、すんなりゲームの世界に入れていいように思えたんですけど…。なにか2025年じゃなきゃいけない理由があったのかなぁ、と。
ゾル:2001年とかだと「これは誰それのことを批判しているんじゃないの?」と、言われる可能性があったので、関係者がみんないなくなっているであろう年代に設定して、「これは未来のお話です」と言い訳しようと思っていたので…。25年も経っていれば、ひょっとするとセガもないかもしれない、それならいいだろうって思いで(笑)、2025年にしました。やっぱり2001年のセガを舞台にしちゃうと、現実っぽくなっちゃうんですよね。そういった現実のドロドロしたところをあんまり見せたくなかったから、アニメにしたり工夫したんですけど、それでもかばいきれないだろうと…。うっかりすると、感動はできるけどベタなモノになってしまうか、ふざけたモノにしかならないと思ったので、ほどよい風化作用として、25年ぐらい経っていればいいんじゃないか、と。とはいえ年代については、ちょっといいかげんで、実は途中までは2015年だったですけど(笑)。
――え?
ゾル:ステータス画面に表示したときに、1だと少し幅が狭かったので、2にした方がいいだろうというごくくだらない理由で、2015年から2025年に変更しました(笑)。
――がははは(笑)。あ、今の笑い声で思い出したんですけど、この『セガガガ』というタイトルって、いったいどんな意味があるんですか? このタイトルを初めて聞いた時、正直な話「インパクトがある変な名前」って思ったんですけど、どうしてこういうタイトルをつけられたんです? 実はこの4文字にすごい秘密が隠されていたりします?
ゾル:実はキーをうっていたら、多く打っちゃって…もちろんウソですよ(笑)。まあ、いろいろ理由はあって、開発中には『セガつく』でもいいんじゃない? みたいな話があったんですが、それだと別の会社(スマイルビット)さんの作品になっちゃう。やっぱりセガが題材であること、あと名前の語感として、すごく変なことをやっているという雰囲気があって、しかもあわよくば壮大なイメージが出たりせんかなと…。
――欲張り~。
ゾル:はっきりしたことはもう覚えてないんですけど、企画段階の一番最初のイメージノートとかを読み返してみると、『セガセガ』とか『セガガガ』とか書いてあったので、たぶんこの辺の言葉が変なふうに脳細胞につながって『セガガガ』ってタイトルになったんじゃないかと思います。特に秘密は隠されていませんが、企画書に書いてあった言葉が、そのままタイトルになったという意味では珍しい例ですね。

●涙! ある意味セガじゃなければできないゲームだった!


――『ファンタシースター』とか、『ゴールデンアックス』とか、ゲーム中では、歴代のセガハードのゲームが実際に開発できますよね。ファンにとってはかなりうれしい演出なんですけど、開発できるゲームをセガの往年の作品にしようというのも、当初から考えられていたアイデアで?
ゾル:それはちょっと微妙でしたね。オレはマニアなんですけども、一般的なユーザーが、こういったことを喜んでくれるかだろうかって、迷っている時期がありました。ただ、"ゲームを作るゲーム"っていうのは、『セガガガ』が初めてじゃなく、過去に何本かあるんですけど、すごく苦労してシミュレーションをやって、見たことも聞いたこともないゲームができても、思い入れないから、あんまりうれしくないんですよね。でも、『スペースハリアー(※2)』ができました! ってなると、やっぱりグッとくるでしょ?
――やっぱり実名の方がウレシイですよね、ファンにとっては。
ゾル:で、オリジナルをいくつか入れようと思いまして。編集デザインという部署に歴代ゲームのパッケージが保管されているという話を聞いて、行ってみたんです。すると、誰も見たこともないようなピッカピカの「MarkIII(※3)の」ソフトのパッケージがズラーと並んでいるのを見た途端、「これは何が何でも絶対入れるだろッ!」ってことになって(笑)。
――(笑)マニア魂に火がついたんですね。
ゾル:当時、まだゲームが形になってなかったにも関わらず、毎日編集デザインに行って、部屋の端っこでガッコンガッコンとパッケージをスキャンしてました。たぶん、あれは絶対、怪しい人間だと思われてましたね(笑)。
――ゲームでは「SGー1000(※4)」とかの作品も開発できますよね。それを考えると、かなり古い作品のパッケージも残っているようですね。

ゾル:そうですね。でも、ホントはSGのソフトをもっと入れたかったんですが、さすがにもうほとんど処分しちゃったということだったんで…。そんなわけで、開発できるゲームは、Mark3以降のソフトが多くなっちゃってます。まあ、SG用のソフトでも個人的な思い入れの強い『占いエンジェル キューティー』なんかは、どうしても絶対に入れたっかったので、無理矢理入れましたがね…。
――そう言えば『セガガガ』で最初に作ったゲームが、『占いエンジェル キューティ』でした(笑)。
ゾル:あれはオレの心の中のハズレソフトのナンバー1だったので、最初に仲間になるディレクターが一番最初に作るようにしました。なので、何も知らずにプレイすると、『占いエンジェル キューティー』を作るようになってます(笑)。
――そういうカラクリだったのか…。そうそう、開発と言えば、キーワードから開発できるソフトを想像するのが楽しいですよね。思わぬソフトができたりして…。
ゾル:キーワードを考えたのは、あまりセガの古いゲームを知らない人で…。単なる印象だけで考えているから、ああいうキーワードが出てくるんですよ。あれ、ゲームを知ってる人が考えていたら、もろヒントになっちゃって、つまらなかったでしょうね。
――でも、すごいですよね。どんなソフトでも開発の仕方次第で150万とか売れちゃいますから。
ゾル:そのヌルさがいいですね。「ゲーム業界の夢をもう1度!」みたいなカンジで。なんかユーザーの人で『占いエンジェル』をテレビアニメ化して、137万本売ったって人がいましたし(笑)。実は開発当初「どうせゲームなんだから、何作っても10万本いっちゃおうぜ!」ってことで、100万本なんかも当たり前だったんです。でも、それだとゲーム性が維持できなくて。逆に1万本っていう設定だと、現実のソフトの売り上げみたいで。この前某誌の売り上げランキングを見たら、『リボルト(※5)471本とか書いてあって…むーん。で、結果的に夢いっぱいの数字にしてしまいました(笑)。
――開発できるソフトって、かなりたくさんの数ありますが、よく考えてみると、基本的にセガのゲームなんですよね。
ゾル:基本的にはセガの作品です。でも、スキャニングしていて思ったんですけど、ホントにソフトの数はすごいですよね。ナムコさんなんかでもあんなにいっぱい持ってないんじゃないですか。あれだけザクザクとソフトを資産として持っているのは、セガしかあり得ないと考えると、「やるじゃん!セガ」と思いましたね。
――ソフトの数の面だけじゃなく、それ以外の部分でも、やはりセガだからこそ出来たってのはあるかなという気がするんですが。
ゾル:そうですね。正気とは思えませんものね(笑)。こういうコンセプトのゲームを出してしまうこと自体…。
――冷静に考えて、他のハードメーカーさんがこういうゲームが作れるかっていうと難しいですよね。
ゾル:1つすごくがんばってるのがあって、ジャレコさん(現パシフィック・センチュリー・サイバーワークス・ジャパン)の『ゲーム天国(※6)』。オレはすごくマニアだから、"ポニーチェンジャー"っていうのは、ちゃんとグっとわかるんだけどねぇ。普通のユーザーは「誰もわかんねぇだろうな…」って。その点、セガはいいなぁと思いましたね。「R-720(※7)」っていうのに、みんながピンと反応してくれますから(笑)。

●涙! 往年のキャラクターはこうして登場した!

――アレックスキッド(※8)が出てくるのには、ビックリしましたね。なにせメガドライブの『天空魔城』以来ですから…。
ゾル:昔のセガのイメージキャラクター、アレックスキッドは絶対入れたかったのでね(笑)。現在のイメージキャラクターは「ソニック」なんですけど、オレにとっては今でもアレックスキッドっていう気もするんです。すげぇ一生懸命がんばってるんだけど、明らかに方向性が間違っていて、「これからはこのキャラで、世界を目指します! ちなみに好物はおにぎりです」。世界を目指しているくせに、「おにぎり」なんて日本人にしかわかんない食べ物を堂々と謳っている(笑)。不思議なローカルさがありますよね。おまけに会社でバックアップしていたもんだから、作品は6本あるんですよ。しかも最初は主演だったのに、版権問題でこじれたゲームの、主人公の代役として入るようになって…。
――…そんな悲しい過去があったんですね…なんかしんみりしちゃいましたね。えー。話題を変えて…。もちろんソニックも登場していますよね!
ゾル:中裕ニさんに直談判したら、「使っていいよ」と。こういう企画が通ったからには、イメージキャラクターがアレックスキッドからソニックに至った経緯を押さえないと。しかも、そこにドラマがないとイカンだろうってことで、ゲームではああいう形にしました。
――アレックスキッドが38歳にはショックでした…。
ゾル:オレも計算してみたら、すごいショックで。「うわ~っ、あらビックリ」といったカンジでしたね。そう言えば、ゲーム中には声が入ってるじゃないですか、アフレコする時に絵がなくて、「38歳なんですけど、かわいい男の子なんです」って説明したら、すごく声優さんが困ってしまって。最終的に「運の悪いピーターパンみたいな声」でと、お願いしたんですけど、なんか『サクラ大戦3』のロベリアのしゃべり方にソックリらしくてね。意外なところでロベリアがしゃべってるって、ウワサになってるみたいですよ。でも、そういう反響からわかったんですけど、意外とアレックスキッドのことを知っている人が多かったですね。「まったく知らない、これ誰だ」とか言われたら――まあ、少しは言われたんですけど(笑)――、どうしようかと思っていただけに、かなりたくさんの人がわかってくれて、うれしかったですね。
――またアレックスキッドの話に戻ってしまいましたが…、アレックスキッドと言えば、『ミラクルワールド』が頭に浮かぶんですけど、今考えると、すごいゲームでしたよね。
ゾル:(『アレックスキッド ミラクルワールド』のソフトを手にとって)セガならではの負けん気がこもっている作品ですよね。「マリオのマネじゃない。うちはボタン配置が逆だ」とか、最悪のオリジナリティを発揮していて…(笑)。あと、苦労してステージの最後までたどりついくと、ボスとジャンケンで勝負するんだけど、これがイベントじゃなくて、負けると死んじゃうですよ。これが不評だったので、続編の『天空魔城』では、相手の手のうちが見えるアイテムが新たに追加されたんだけど、かえってわかりづらくて負けちゃう(笑)。おもしろいゲームだけど、なんかすごいよね。
――あと「アソビン教授(※9)」も出てきますね。あれなんか、かなりマニアックなので、知ってる人もかなり限られてくると思うんですけど、反響はありましたか?
ゾル:ごく一部からのごく小さな声だったんですけど、手応えはすごかったです。「オレは間違ってなかったんだ」って実感しましたね。オリジナルのイラストが残ってなくて、説明書からわざわざスキャニングして、色をペタペタ塗って作った甲斐がありました。ちなみに「ゲームズ博士(※10)」も出したかったんですけどね。まぁ、この辺りのキャラがわかってくれるユーザーがいるっていうのは、やっぱりセガならではだと思いましたね。

●涙! イラストはインパクト重視!

――パートがRPGとSIMの2つあったり、キャラの数が多かったりと、なにかと作業が多くて、開発に携わっていた人の数が多いように思えるのですが、ズバリ開発されていたチームの人数は?
ゾル:のべ3,000人ということになっているんですけど(笑)、実際には多い時には13~14人で、平均で10人ぐらいでやってました。今どきのゲームとしては少ないのでは、と言われるんですが、本来はあれぐらいじゃないと、全体が見えなくなるので。特に作業で不都合を感じたこともなかったですし。
――ゲーム中では、開発メンバーは最大7人ですけど、最終的にその数字にいきついた理由というのは? 実際の開発の経験がもとになっていたりしますか?
ゾル:ゲームを設計する時に、既存のゲーム製作シミュレーションを遊んでみたんですよ。オレ自身、シミュレーション自体が好きじゃないっていうのもあるんですが、とてもおもしろそうに見えなかったんです。例えば、背中を向けたキャラが何人か座ってて、コマンドを入力すると、ターンとして動き出す。こんなおちゃらけたゲームで、「さぁシミュレーションです!」っていっても、堅苦しさがあったら、誰もやってもらえないと思ったんですよ。そこでまず第一に、とってもわかりやすい絵面にしようと考えたんです。それで仕上がっているイラストを並べて、ゲームを作っているように見えるミニマムの人数を考えてみました。で、7人ぐらいがちょこちょこ動いているとそれらしく見えるので、7人にした、というわけです。特に実際のゲーム開発の経験からというわけではないですよ。
――イラストのお話が出ましたが、開発者などのキャライラストは何人の方で…。軽く100人以上いるくらいですから、相当多いんじゃないです?
ゾル:みんな嫌がって、誰も描いてくれなかったので、ラフ画はオレがまとめて描いています。クリンナップや色塗りなどは、いろいろな人に手伝ってもらいました。でも、だんだんムチャクチャになってきてね。イラストがない時に、白いダミーのデータを入れておくんですが、見分けが付かないから手書きで名前を入れておいたんですよ。ゲーム中に「ヌシ」って登場するんですが、あれ、実はダミーデータがそのまま製品に入っているんです。ちゃんとイラストは一生懸命描いてたんですけど、白い画面に「ヌシ」って書いてあった方が、インパクトが強い! 「んじゃあ、こっちにしよっか」って。このゲームのイラストは、絵のうまい下手は問わず、とにかくインパクトの強いものを採用しました。
――すごいですね! ほとんど1人で描かれたんですか…。でもそのわりに、というと変ですが、登場キャラ"週一秋葉"のTシャツに「秋葉原電気祭り」とさりげなく書いてあったりと、細かい部分までかなり凝ってて、気合い入ってますよね。
ゾル:よく気が付きましたねぇ。ちなみにあのキャラが持っている紙袋には「メッセサンオー(※11)」ってて書いてあるんですよ。それはさておき、今どきのRPGの戦闘シーンは、敵がアニメーションしてくれるとか、口から吐いた火がエフェクトでキレイに見えるとかじゃないと、申し訳ないじゃないですか。でも、このゲームは設計の時点で「戦闘シーンは絵が1枚出るだけ」ってことになっていたので、こだわれる部分って、イラストの細かさだけなんですよ。だから、細かさについてはそれなりに凝りに凝りましたね。
――でも、どのキャラもインパクトがあるっていうか…はっきり言っちゃうと、変なキャラばっかりですよね(笑)。
ゾル:最初は全体的にもうちょっとマシな、人間型のキャラが多かったんですよ。でも、基本となる人間型のキャラを描いて並べたら、次から人間型のキャラを置いても見分けがつかなくなっちゃって…。見分けがつくようにするために、頭だけのヤツとか、箱に入っているヤツとか、下半身が水中モードになっているヤツとか、変なキャラばかりになっちゃたわけです。
――変と言えば、D研で開発できた新ハードにもビックリしたんですけど…。あの超次世代機はどなたが考えられたんです?
ゾル:あれもひどい話で…。ドグマ社(セガの架空のライバル会社)に勝つためのハードだから、すごいモノができる予定だったんだけどね。オレが考えるつもりだったんだけど忙しかったもんで、開発メンバーに「すごいの考えてくれ! どんなのでもいいから!」って頼んだら、ハムスターとか、ゴミ箱とか、目玉焼きとか(笑)、めちゃくちゃなものが上がってきて(笑)。トンカツをおごってイラストをお願いした人(後述)なんか、ラーメンと変なおっさんのイラストとか描いてきちゃって。「このおっさんのどこが超次世代機なんだよ!」って(笑)。でも、スケジュール的にきつかったので、途中からは見なかったことにして、結果的にバリエーションが増えた、と開き直ることにしました。ちなみにポリバケツとか、使い捨てカメラとか、フルCGなんですよ。当時は「そのくだらない情熱を、他に生かせないのか!?」なんて思いましたね。
――インパクトがあったと言えば、シミュレーション中に起こるイベントのイラストですね。プレイした人間はみんな「あの絵はいいよ~」って言ってました。あれはどなたが描かれたんです? もしかして、これも…。
ゾル:あれも半分くらいオレが描きました(笑)。最初はデザイナーにイラストを描いてもらったんですけど、そのイラストが内容的にヤバくて。で、描き直しをお願いしようとデザイナーを訪ねたんだけど、もうスケジュール的に申し訳なくて…。しようがなくオレが描き直すハメに…。コテコテの絵はオレが描いたイラストです。
――ということは、ひらめいた時のイラストって、もしかしてゾルゲール自身さんが…?
ゾル:あれもねぇ。「いかにもひらめきというイラスト描いて」って頼んだんだけど、「ひらめきのイラストってどんなイラストですか?」って言われて。結局、オレが描くことになったその時、はたと気づいたんだけど、そんな絵ってありえないのね。だから、しようがないから、アルキメデスが裸で走っているイラストにして…。でも、これは元ネタを知らなかったら、意味全然わからないよな(笑)。
――ホントにあそこの絵はおもしろいですよね。個人的には「バグ襲来」が一番爆笑しました(笑)。
ゾル:ありがとうございます。でも、あの絵なんか、ゲームの中のアイコンとしては、まったく用途を果たしてないよね。こういうゲームだからOKだけど、普通のゲームであんなイラストを描かれたら、「ふざけるな、描きなおせ」って、怒るでしょうね(笑)。
――でも、その一方で「ドットコム子ちゃん」みたいな萌えなキャラクターがいたりもして(笑)。
ゾル:あれいいでしょ! 今はもうかなりビッグになられましたが、ビッグになりかけのころに、片倉真ニ(※12)先生に蒲田でトンカツをおごって、食べ終わったところで話を切り出して…、トンカツ1枚で描いてもらったんです。ホント、みなさんの熱い友情に応援されましてね。スキヤキで描いてもらった人なんかもいますよ。
――トンカツをおごって、イラストを描いてもらったというのは笑えますが、すごい方が参加されてますね。あと、すごいと言えば、みんだなお(※13)さんとか、岡田斗司夫(※14)さんとか、豪華な面々がゲストとして出演されてますよね。
ゾル:岡田さんとか、最後までゲームに登場することを知らなかったと思いますよ。「ファンです。写真撮らせてください」って言って、撮った写真を使って…。ほとぼりが冷めたころに、ゲームのサンプルを送る(笑)。どうしても「コミケ」というモノを入れたかったんですよ。ゲーム業界だけのパロディだったら省いちゃう要素かもしれないけれど、オタク的な要素も半分悪意を込めて入れたくて。「それならコミケだろ」ってことになって、そこで誰かに出演してもらおうと思ったんだけど、コミケの人気作家さんだと、どうせ手伝ってくれない…。それなら、コミケ→オタクの代表→オタキングということで、面識のあるみんだなおさんを通じて、岡田斗司夫さんにお願いしたんですよ。

●涙! こうしてムービーは作られた!

――オープニングはもちろん、研究室に入るシーンといった、ゲーム中の随所に挿入されるアニメーションって、見た目がにぎやかで、とっても気に入ってるんですけど、企画当初から入れる予定だったんですか?
ゾル:このゲームにアニメがなかったら、見た目が今よりショボくなったと思うんですよ。ゲームの魅力の1つになってくれれば、ということでアニメはがんばって入れました。アニメ製作は、数社にお話を持っていったんですけど、予算が予算だけに難航しまして。最終的には、『ドラゴンボールV.R.V.S』以来お付き合いが深い東映アニメーションさんにやっていただくことになり、いろいろお世話になりましたね。でも、アニメの予算は5分間分しかないのに、入れたいムービーは20分間ほどあったんですよ。で、どうしたかというと…濃縮還元卵スープみたいに…相当涙ぐましいことをやってなんとかしのぎました(笑)。
――実写のムービーも強烈ですよね。
ゾル:「モゲタンとおねえさん」ですか(笑)。
――そう、モゲタンとおねえさん(笑)。あれは各話の最後に総括として入ってますが、最初から各話の最後に入れていこうと?
ゾル:そうですけど、実はもっと入る予定だったんですよ。第2話で「セガはどうしてできたの?」っていうセガ創設についての話が出てくるけど、結論が出てこないでしょ。ホントはあったはずなんですよ。オレともう1人が、ツケ鼻して、まぶたに青い目を書いて、外国人のフリをして、「アイム デビット・ローゼン!」とか言って、「ここに会社作るね」とかやろうと思ったんだけど。肝心の相方がみつからなくて…ポシャりました(笑)。
――う~ん、それは残念…ちょっと見てみたかったです。でも、モゲタンを見られたからいいかな。モゲタンを最初に見た時の衝撃は、今思い出してもすごかったですね。「この生き物はなんなんだ~!?」って。相当インパクトありますから、彼の容姿は(笑)。
ゾル:最初はもっとかわいかったんだけど、作っているうちに、だんだん目が出てきちゃって。魔獣みたいになってきて(一同爆笑)。
――おねえさんはなぜか手がドリルだし。
ゾル:実はアフレコの時、まだぬいぐるみが完成していなくて。かわいいヌイグルミとしか声優さんに伝えてなくて、すごくほがらかな雰囲気で「おねえさん、おねえさん」って。まさか魔獣が出てくるとは、声優さんも思ってなかったでしょうね。
――笑ったのが、話が進むにつれて、後ろの窓ふきの人が、徐々に降りてきてて…。
ゾル:カメラを回してて、「あれ、降りてこないだろうな」って心配していたら、案の定だんだん降りてきちゃって(笑)。実はあのセガの看板の裏って、植え込みがあって人が入れるスペースがないんですよ。這いつくばっての撮影でした。しかも会社前の道にはトラックがバンバン通るんで、排気ガスがすごい。おまけに9月で残暑が厳しく、やってるうちにハイになってきて。正気の沙汰じゃなかったですね(笑)。あれでゲームが発売中止になってたら、ただの危ない人ですよ(笑)。
――コミケのシーンのムービーも笑いましたね。なんか同人誌を買うための戦士が集う戦場、修羅場みたいで…。
ゾル:あれは、まだゲームが企画書の段階の時に、ゲームにも登場しているディレクターの鈴木さん(ゲームでは鈴キ)といっしょに撮りにいったんです。鈴木さんは、全然オタクっけのない人。「スノボ行きたかったのに…」って言うのを無理に連れてきての撮影だったので、彼にとっては地獄のような風景だったと思いますよ。この時点でゲームが本当に完成するとは、彼は思ってなかったらしいですし…(笑)。

●涙! ゲーム中に流れる歌はこうして採用された!

――オープニングシーンで社是が出ますが、あれはセガの本物の社是ですよね。どうして入れたんです? 
ゾル:あれは最初から絶対入れてやるつもりでいましたから。ゲームを作ろうとしてセガに入ってきて、「なんだ、この社是っていうのは、ムカツク!」ってずぅっと思っていて。だから、入れました(笑)。
――社是が入っているので、セガの社歌「若い力」が入ってるかと思ったんですけど…。
ゾル:「セガガガマーチ」っていうのを作ってもらったんですが、「若い力」よりもよっぽどよくできていて、これをさも社歌のように使ってしまおうと(笑)。だって、若い力は最後にしかセガって言わないじゃないですか。でも、セガガガマーチは、セガって言いまくりだから(笑)。とはいえ、「どうして『若い力』が入ってないの?」と言われることもよくあったので、入れてもよかったかもしれませんね。
――歌と言えば、秋葉原でバックにかかる「♪アキハバラ~、アキハバラ~♪」って、歌もグーですよね! テレビのボリュームを上げて、聴き入っちゃいましたよ(笑)。
ゾル:今回、音楽を担当された金子さんという方が、もともと歌謡曲の関係の人で、ゲーム音楽しか作れない人と違って、頼めばいろいろ作ってくれるんですよ。それで「アキバにテーマソング作ろうよ」って言って、シャレのつもりで詞を書いたら、本当に作ってくれて(笑)。しかも、勝手に2番も作ってくれて、聞いたこともない外国語でしゃべってるの(笑)。
――あの謎の言葉は何語なんです? 気になるんですけど…。
ゾル:金子さんが作ってくれた造語だと思います。あと、なにがスゴイって、普通ドリームキャストソフトは内蔵音源で鳴らしているんですけど、それだと金子さんが作ったこの曲が再生できないので、プログラムを作り替えたんです。この曲のためだけに。すごくいらんところに、手間がかかっているゲームなんですよ(笑)。それと、「ふたりのドリームキャスト」という曲とエンディングのテーマ。あれも金子さんが勝手に作ってきた曲なんですよ。こちらとしては、安いお金でお願いしているにも関わらず、率先してヴォーカルの方とかも連れてきてくれたりと、今でも頭が下がる思いですね。エンディングの曲なんか、本当だったら、別にお金をお支払いするべきなんですが、「このエンディングムービーにつながるんだったら、こういう曲じゃないとダメだ」と、金子さん自身がおっしゃって、収録までして頂き…。最初はエンディングの後に、「チャッチャラッチャチャ、セ~ガ~」とかにしてたんですけど、あの曲のおかげでゲームがギュッとしまり、本当に大助かりでしたね。あと、そう言えば、ソフトをCDとして再生したときの警告音も金子さんが勝手に作ったモノです。

●涙! 他にもイロイロな話を聞け!

――ストーリー面だと、やっぱりC研で語られる「萌え」の解釈、「小萌え」とか「大萌え」っていうのが、心に残ってますね。
ゾル:どうでした? 逆にオレが伺いたいんですけど…。
――「萌え」という言葉って、かなり抽象的でイメージとしてはなんとなくわかるんだけど、具体的な定義、説明って今までありませんでしたよね。ですから、なんだかノドにつかえていたモノがとれた、みたいな。
ゾル:よかったよかった。まあ、正直なお話をしますと、A研、B研とやってきて、ネタが尽きちゃったんですよ。またA研とそんなに変わらない話のダンジョンがもう1度あっても、誰もおもしろがって遊んでくれない。そこで「C研は萌えにしよう」って提案したら、すごく反対されたんですよ。「オレたちはそんな薄気味悪いモノを一生懸命やりたくない!」って。その嫌がり方が妙におもしろかったなぁ。実際、「オタクとか、なんかヤダよね~」って言うヤツが、ガンダムのマスターグレードを集めたりしてるんだよ。キミたち、もう少しその辺はしっかり見た方がいいだろってことで、採用しましたね。あとは、ゲームが取り上げられる時、あまりにもカッコ悪い部分をマスク(隠)してはないか。「そんなにカッコいいものじゃないんだよ。ゲーム業界は、実際はこういうモンなんだよ!」ってところを表現したかったんですよ。ちなみに、社長の声を担当された声優の岸野さんに、ついでに「萌え老」というキャラの声もお願いしたんですけど。「どんなキャラですか?」と聞かれたので、「100歳のオタクです」って答えたら、めちゃくちゃノってくれて、思わずセリフ増やしました(笑)。最高でしたね、あのアフレコは。最初はアニメがどうとか、オタクがどうとかいうセリフは嫌がられると思ってたんですが、嬉々としてやってくれましたよ。
――セリフの話になりましたが、戦闘中のセリフなどは、かなり鬼気迫るモノがあるんですけど、やはり開発の方全員で考えられたんですか?
ゾル:そうです。開発の人間で考えました。実は最初、あんなに入れる予定はなかったんです。従来のゲームだったら、ランダムで20種類も入っていれば十分だと思ってたんですよ。それで10種類ぐらい書いて、「あとテキトーにいくつか足しておいて」って頼んでおいたら、300種類ぐらい入ってるの(笑)。日頃「アイデアを出せ!」って言っても、2つか3つ出てくるのが関の山なのに、こんこんと湧き出てきて、しかもどれも痛い…。なんだかシャクだったので、さらにオレも追加したりして(笑)。
――ホント、痛いですよね。
ゾル:現実のことを言っているだけにね(笑)。
――ゲームでは開発中、デザイナーとかが途中でいなくなったりすることがありますよね。雑誌なんかでもライターが締め切り直前に原稿もあげずにいなくなるなんてことが実際にあるんですが、やっぱりあれは実体験をもとにしたイベントだったりしますか?
ゾル:オレはそういう経験ないんだけど、イベントを担当したプログラマーはあるらしくて。最初はいなくなるといっても、パッと消えるぐらいだったんだけど、彼の実体験をもとに「わぁ~」と駆け去る、という仕様になりました(笑)。あと、ゲーム中の開発室の独特のドンヨリとしたリアル感は、メインプログラマーの手によるものです。
――この前、ゲームメーカーの開発の方とお話した時に、「『セガガガ』は開発現場はリアルすぎて、プレイするのがつらい…」と、のけぞっておっしゃってましたよ。
ゾル:話が戻りますが、キャラクターといったって、1枚絵しかないじゃないですか。やることがないんですよ。だから、サボっている人は寝かそうとか、元気なキャラは回そうとか、むちゃくちゃになってきて。とても開発現場とは見えないんだけど、結果的にそれが妙にリアルな雰囲気を表現できて、よかったなぁと思っています。ちなみに話は全然変わりますが、プレイされてシェアは何%までいかれました?
――一応、100%取りました。あと真のエンディングも見てます。そう言えば、ちょっと攻略的なお話になってしまいますが、真エンディングの正確な条件というのは?
ゾル:ネットとかで大変盛り上がっているので、教えるのがもったいない気がしてならないんですが…。今のところは、がんばってくださいとしか言えないです。わりとこのゲーム、謎の部分、キーの部分を2つ、3つ明かしちゃうと、あとは「な~んだ」になっちゃうので。なけなしの謎ということで、秘密でお願いします。ただ、理不尽な条件ではないですし、追加プレイで資金が増えるなど、プレイはどんどん楽になりますので、3回もプレイすれば、真のエンディングは見られるようには作ってます。でも、この前、26回プレイしても見られないって人がいて。さすがにメールでちょっと教えてあげよっかなと思いましたね(笑)。

●涙! 『セガガガ』はセガマニアじゃなくとも楽しめる!

――プレイする前は、昔からのセガファンじゃないとわかりづらいゲームだと思ってたんですけど、トータルに見ると、ゲーム好きな人だったらひっかかる部分がたくさんあるように思いました。企画当初のターゲットはどのあたりと考えてましたか?
ゾル:セガマニアというよりはゲームマニアでしたね。やっぱりセガマニアにターゲットを絞ってしまうと、ネタがあんまりにも揃わないんですよ。あと開発側としては、『セガガガ』という名前はついてますが、セガという入口を通して、出口でゲームそのものがなんだったのかというところまで、持っていければいいなぁと…。
――『セガガガ』って、先程ゾルゲール哲さんがおっしゃられたように、かなりの変化球じゃないですか。そうなると、次はもっとすごい変化球のゲームを作ってほしいとユーザーは期待してしまうかもしれませんよね。そういった意味で、次の作品を作りづらいのではありませんか?
ゾル:ゲームっていうのは、小説とか映画とかマンガとかと同じで創作だから、創作すること自体は、いくらでも続けていけると思うんですよ。ですから、次が作りづらいとは思っていません。ただし、商業的な創作ということになると、儲けや人を動かすだけの内容がないと動けないわけですけど。お金があって、ゲームを作る環境が整うのであれば、いつでも「やってやるぜ!」という気持ちはありますね。
――安心しました! 次の作品もがんばってください! 最後になりますが、『セガガガ』をプレイした人、これからプレイしようと思っている人に、メッセージをお願いします。
ゾル:基本的にすごく変化球なソフトなので、手に取って頂いて、楽しんで頂ければ、それで満足という部分がまずあります。あとはこのゲームを遊んでみて、ゲームにも出演しているプログラマー岡の言う「ゲーム屋の心意気」というものを感じ取っていただけるとウレシイです。実際のプログラマー岡っていうのは、もっと無口で最後まで黙って一生懸命ゲームを作ってくれる人なんです。ゲームを支えているのは、基本的に、こういう語らないなりに「誇り」を持ってやっている人たちなんだ、というのを感じ取ってもらえれば…。今回は代表としてオレが話をさせて頂きましたが、プレイする時には、その後ろにいる金子さんとか、鈴木さんとか、岡橋くん(プログラマー岡)といった開発メンバーに思いを馳せて頂ければ、幸いです。
――わかりました。ゲーム屋の心意気、ですね。今日は貴重なお話をありがとうございました!


特別付録 初回限定版の話
(語り:広報企画室室長/笹原拓氏)

『セガガガ』は、セガマニアだけのゲームと見られがちだったので、特典はキャラ寄りにしたくなかったんですよ。それで、一般の人が冷静に見ても欲しがるような特典を考えてみました。製作に関しては業者さんが非常にがんばってくれまして、こちらのテキトーな注文にも、しっかりした物に仕上げてくれて…。特にピンバッチの木箱なんかは「宝石箱か、へその緒が入っているような箱」というアバウトな注文に対して、予算外で木の豪華な箱を作って頂き、しかもサービスで焼き印まで…! 本当に感謝しております。ちなみに最初、初回限定版は1,500セットしか作る予定はありませんでした。しかし、注文が殺到したため、できるだけ多くのユーザーに提供したいということで、急きょ生産ラインを増設。出荷本数を増やしましたが、初回限定版の特典の原価は3,500円なので、ほとんど儲けがありません(笑)。あと、メガドライブ仕様のビジュアルメモリですが、私も実物を見たことがないほどレアです。持っている人はぜひぜひ自慢してください。
ソフト紹介
セガガガ
●機種:DC
●セガ
●S・RPG 
●2001年3月29日発売 
●5,800円
(C)SEGA CORPORATION/Hitmaker Co.,Ltd.,2001
ゾルゲール哲 氏
 『セガガガ』の生みの親。企画は当然のこと、キャラなどのイラスト製作からプロデュースまで、トータルに開発に参加。この人がいなければ、『セガガガ』が生まれなかったといっても過言ではない。ちなみに余談ではあるが、本作の広告費は、氏が着用している特製マスク(3万円)のみとの話。

代表作:『ドラゴンボールV.R.V.S』

●注釈
※1 発売日が決まった理由

 まず、D-Direct専売ということで、受注期間をきちんと取る必要があったんですよ。あとは初回限定版を作ろうという話がありまして、ユ-ザ-に納得してもらえるクオリティの高いモノをちゃんと作るには、どれぐらい時間がかかるかを計算し、それを踏まえた上で発売日を考えたら、あのタイミングになりました。(ヒットメーカー 広報企画室室長/笹原拓氏)


※2 スペースハリアー

 1985年にセガがアーケードで発表された3Dシューティング。大型稼動匡体として話題を呼んだ作品で、Mark3、セガサターンなどの歴代のセガハードに移植されている。鈴木裕氏が手掛けたことでも有名で、ドリームキャストの『シェンムー』にも収録されており、遊ぶことができる。

『スペースハリアー』(MarkIII版)

(C)SEGA 1986


※3 MarkIII(マークスリー)

 SG-1000、SC-3000の次に発売されたセガの3台目のハード。周辺機器で拡張可能だったFM音源を内蔵した、マスターシステムもある。ちなみに海外のみで発売された、マスターシステム2というモノも存在する。

マスターシステム本体


※4 SG-1000

 セガが家庭用として発売した、初のコンシューマゲームマシン。デザインの 変更と付属品が追加されたSG-1000II。パソコンとして使用可能なキーボード一体型のSC-3000もある。
SG用ソフト『ボーダーライン』

(C)SEGA 1983


※5 リボルト

 2000年の夏に発売された、ラジコンカーを題材にしたレースゲーム。 価格は3,800円。


※6 ゲーム天国

『エクセリオン』『プラスアルファ』『モモコ120%』などの歴代のジャレコ作品のキャラクターが登場するSTG。もとはアーケードの作品だが、セガサターンやプレイステーション(一部システムを変更9にも移植されている。ちなみにポニーチェンジャーというのは、ジャレコが製作した両替機のことで、ゲームではボスとして登場している。


※7 R-720

『セガガガ』の中で登場する架空の大型ゲーム匡体の名前。現実にR-360という大形ゲーム匡体があり、それをパロッている。


※8 アレックスキッド

 本名はアレックスキッド・オサール。『セガガガ』の中では、ゲーム屋の店長だが、各主演作品(下記参照)では明るく勇敢な王子として、国の平和のために戦っていた。ソニック以前のセガのマスコットキャラクターで、グッズなども販売されており、走るカンペンケースはマニア垂涎のグッズ。

主演作品
●アレックスキッドのミラクルワールド(MarkIII)
●アレックスキッド ザ ロストスターズ(MarkIII)
●BMXトライアル アレクッスキッド (MarkIII)
●アレックスキッド イン シノビワールド(マスターシステム 海外版のみ)
●アレックスキッド イン ハイテクワールド(マスターシステム 海外版のみ)
●アレックスキッド 天空魔城(メガドライブ)

『アレックスキッド ミラクルワールド』

(C)SEGA 1986
『アレックスキッド 天空魔城』

(C)SEGA 1988


※9 アソビン教授

 セガ・ゴールドカードリッジの説明書に登場する謎のウサギ。ゲームの攻略法を教えてくれるのだが、「敵はうまく倒そう」といったように、全体的にアバウトで役に立たない。

アソビン教授


※10 ゲームズ博士

 SGー1000、SCー3000用の説明書に登場する謎の博士。アソビン教授同様、わかりきったゲームの攻略法を伝授してくれる。

ゲームズ博士


※11 メッセサンオー

 東京・秋葉原の中央通りにあるゲーム専門店。全部で5店鋪あり、家庭用ゲーム機のソフト&グッズ以外に、パソコンゲームや同人誌、同人ソフト、さらに海外ゲームorアジアの怪しいオモチャなどを取り扱っている。


※12 片倉真ニ

 ゲ-ム雑誌の表紙や小説のカバーなどを手掛ける人気イラストレーター。
 ホームページ : http://www.net24.ne.jp/~deku/


※13 みんだなお(正式には眠田直)

 83年に漫画家デビューし、主にアニメのパロディ漫画家として活躍。その後、ゲームやアニメなどの製作などに参加、漫画以外にジャンルでも活動範囲を広げている。また、唐沢俊一氏(※)と 岡田斗司夫氏と"オタクアミーゴス"を結成しており、定期的にトークショーを開催している。
 ホームページ : http://member.nifty.ne.jp/mindy/

※唐沢俊一
 作家、評論家。趣味の古書蒐集で発掘したB級カルト本を、雑誌などで発表している。また、弟の唐沢なおき氏とは「唐沢商会」という名で、漫画も多数出している。
 ホームページ : http://member.nifty.ne.jp/uramono/



※14 岡田斗司夫

 映像/イベントプロデューサー。オタキングと呼ばれており、オタクの教祖的な存在。オタクに関しては、この人の右に出る人はいない。「オネアミスの翼」「ふしぎの海のナディア」といったアニメや『プリンセスメーカー』などのゲームを手掛けている。
 ホームページ : http://www.netcity.or.jp/OTAKU/okada/