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SOFT 『サーヴィランス 監視者』 開発者ロングインタビュー(1)
『サーヴィランス 監視者』開発者4人が語る開発秘話
あの「やるドラ」シリーズを生み出したSCE×プロダクションI.Gのコラボ再び! 他の追随を許さない映像技術だけでなく、独自のシステムをひっさげて登場する最新作『サーヴィランス』は、いったいどのようにして制作されたのであろうか。開発者4人が『サーヴィランス』開発秘話を語る!!(2002年4月11日収録)

――本日は、お忙しいところ「電撃オンラインpresents 『サーヴィランス』開発者座談会」に出席していただき、ありがとうございます。まずは、みなさんの自己紹介からスタートしたいなー、と。ということで、みなさんはどのような形で『サーヴィランス』に関わったのですか?
寺川英和氏(以下、敬称略):では私から。『サーヴィランス』の企画の段階からゲームのデザインとプロデュースをしましたプロダクションI.Gの寺川です。
前島昌格氏(以下、敬称略):『サーヴィランス』でディレクターをやりました、プロダクションI.Gの前島です。もともと本作の試作を作った段階ではプログラマーだったんですが、そのうちディレクターになっていました(笑)。周りに迷惑かけながら、助けてもらいながら、なんとか製品に辿り着いたという感じです。
藤咲淳一氏(以下、敬称略):プロダクションI.Gのゲーム開発のスタジオを任されている、チーフディレクターの藤咲です。『サーヴィランス』には、初めからは関わってはいないのですが、最後の方でデータベース回りやシステムのブラッシュ・アップっという意味で途中参加しました。
山口晋平氏(以下、敬称略):SCE制作1部の山口です。『サーヴィランス』にはSCE側のディレクターとして参加しています。たとえばユーザーさんから見てどれくらいのゲームバランスがいいかとか、ユーザーさんから見てここはどういう風に作っていったらいいのかとか、なかなかクリエイターさんが作っていると見えにくい部分があるのですが、それを私なりに解釈してお伝えしたり、マーケティングしたり、そういった事のお手伝いをさせて頂きました。

●「やるドラ」シリーズと一線を画す作品『サーヴィランス』
――ありがとうございます。さて、本日は『サーヴィランス』開発秘話などを目一杯お話していただければ、と考えておりまして。まずは、開発しようとしたきっかけは? というコトからお聞きできれば、と。
山口:きっかけ、ですか。…うーん、「やるドラ」シリーズの開発が終わる頃、早速「やるドラ」からさらにゲームアビリティを高めたモノを作ろうという意見が浮上してきまして。とはいえ、I.Gさんは当時、すでに藤咲さんを中心に「やるドラ」シリーズ最新作『BLOOD』を作っていたので、それとは別ラインで寺川さんを主軸にして実作業がスタートした、という感じですね。
寺川:I.Gとゲームという関係からお話しますと…、ナムコさんの『テイルズ』シリーズなど他社様のアニメーションパートの制作を積極的に行っていましたが、殊ゲーム制作という部分に関しましては、何もやったことがありませんでした。そんなI.Gが、「やるドラ」を開発することで――要するにゲームをゼロから作ることが行なわれたことで――、ようやくゲームに関する本格的な意見が社内で活発化してきまして。それをうちの社長の方が拾い上げてですね、「まあ、それならやってみろ」ってことで、スタートって形になったワケです。
――『サーヴィランス』は、最初から「やるドラ」シリーズとは別の枠組みでスタートしていたのですか?
寺川:そうなんですよ。『サーヴィランス』の開発当初、「やるドラ」は「やるドラ」で動いていたんですもんね。『ダブルキャスト』『季節を抱きしめて』『サンパギータ』『雪割りの花』、この4本に関して僕はアニメーションのプロデューサーとして参加していたんですけど、自分の仕事が落ち着いてすぐに『サーヴィランス』の企画、試作に入ったんです。
藤咲:その頃「やるドラ」開発チームはそのまま『スキャンダル』『BLOOD』と、立て続けに制作していってましたね。
寺川:そう。そういった流れがあったので、「やるドラ」チームと『サーヴィランス』チームはライバルみたいな関係だったかもしれませんね。お互いを妬けるほど気にしていました(笑)。
――I.Gさんが制作されるということで、「やるドラ」シリーズと『サーヴィランス』、どちらの作品もゲームとアニメーションの融合が一番底にあるコンセプトなのかなって思うのですが、『サーヴィランス』は「やるドラ」とは違うという形で、どういうアプローチでいこうという考えがあったのでしょう?
寺川:I.Gが培ってきたアニメーションというスキルをそのままゲームに融合するような形でモノを作らない限り、世の中に受け入れられないだろう。その中でゲームを作るわけですから、当然ゲームとしても面白いものを作らなければいけない。ゲームの方で頼りになるスタッフとアニメーションの方で頼りになるスタッフを、企画の段階から一緒にディスカッションしながら作り上げていこう、と。その時に僕が思ったのは、その結果出来上がるモノは、どこにも作れないモノになるはずだ、と。その一念のもと作業に入っていきました。とはいえ、「やるドラ」がそれを全然やってないってことはないですよ。やっぱり「やるドラ」で垣間見えたモノ、明らかに見えたモノは、全部含めて発展の仕方として何かやりようがあるはずですし。それを踏まえてシステム面を大胆にしたいな、と。でもやっぱり、アニメーション素材を大量に使うっていうのは、外せませんでしたね。試作一本目はフィールドをフル3Dにして、その上にアニメーションのキャラクターが移動してゲームが行なわれるような、3Dと2Dを強引に融合してしまったようなモノでした。結構見た目も面白いし、操作感も良かったんですけど、なかなかゲーム性を増す演出を付けにくいとか、スケジュールと予算が破綻するとか(笑)、いろいろ問題があったので没になりました。
――ちょっと見てみたいなあ。
寺川:とにかく初めてなコトばかりだったので、SCEさんには多大なるご迷惑おかけしたと思うんですけど、最終的に『サーヴィランス』というものを見出すまでに、時間とお金はかかっちゃいましたね。試作の2つ目くらいで、今回の「サーヴィランスシステム」のプロトタイプが出来上がりました。だから試作の1つ目と2つ目の間にはものすごく差があるんですよ。見ていただければものすごく分かりやすいんですけど、アクションゲームがアドベンチャーになっちゃった。明らかにそれぐらいの変化がありました。最終的に残った部分が、リアルタイムということ。リアルタイムで始まったらノンストップで遊んでくださいよ、というのがアニメーションをネタにゲームを作る時の1つの武器じゃないかな、と思っていまして。リアルタイムと新システム「サーヴィランスシステム」の合体、それが今回の作品『サーヴィランス』になったんです。すごく大雑把な話になるんですけど(笑)。その辺を詳細に話したら1日、2日かかりそうなので、ね(笑)。
――ということは、この作品は、まず「サーヴィランスシステム」が完成されたことでゲームの方向性が固まっていった、と?
寺川:そうですね。このシステムが見つかって、「いけるいける、これはゲームになるよ」というコトになったんですよ。それからSCEさんの方からGOサインを頂いて、晴れて本制作に入る状況を作れたんですね。

●新しい試みだからこそ、プログラムでの苦難も数知れず…
――リアルタイムで動く画像をボタンを押せば、すぐ別の映像に切り替わるというのは、今までにない試みになっていると思うのですが、プログラムで苦労された点などはありましたか?
前島:試作の2本目はPSでの試作だったのですが、プラットフォームをPS2にしたことで、ムービーをMPEG2で再生しなくちゃならなくって、けっこう手間取りましたね。でも、それよりもゲーム周りのデータの読み込みが、ムービーの再生とかち合っちゃうというので…。
――そのデータの読み込みというのは、たとえばサーチするポイントを読み込む時の…?
前島:であったり、次のムービーを読みに行くタイミングでティムが出てきたがったりとか(笑)。そこで読み込みがかち合って止まるという。あとはプレイヤーが何かをしてそのタイミングで出てくると、たまたま変な所で読み込みしているとかち合ってしまう、と。
――なるほど。この作品は常に6つの映像を同時に読み込んでいる形なんですよね? だとしたら、単純に作業が6倍になるということなんですか?
寺川:基本的にはそうですね。
――そもそも6つの映像を同時に読み込むこと自体大変なのでは?
前島:まあちょっと仕掛けがあって。原理は単純なんですけどね。
寺川:あれを思いつくのはなかなか難しい。
前島:いや、思いつくのが大変というよりは、あのクオリティで画面に表示させるのが実はけっこう大変ですね。
藤咲:かなり裏技っぽいですよね。
前島:まあ、ちょっと言い方が違いますが、ある意味PS2の最大限の性能を引き出している……エンコード面ではかなり限界近くまで引っ張った…、というコトです。これってI.Gぐらいじゃないですかね、アニメーションのMPEG2エンコードにあれだけの実験を重ねたのは。
寺川:やっぱりそれは、アニメーションを専門にやってきたI.Gだからというこだわりも多大にありますし、ね、ゲーム性を重視しようとすればするほど、多少映像が劣化してもしようがないし…。「ゲーム性」を採るか「アニメーションの精度」を採るか、ジャッジを迫られる時がかなり頻繁にありましたね。とはいえ、最終的には納得できるぐらいの絵を再生できるような状況になりました。すごい実績だと思います。
――PS2というと一般的に3Dのイメージがありますけど、その中で「やるドラ」シリーズや『サーヴィランス』をプレイしてみると、他のゲームに比べて2Dのスゴさというものを実感できますよね。「PS2でもこんなアニメーションを再生できるんだ!」みたいな。
前島:出来るところまでは本当にもうやり尽くしましたね。納得いくぐらいは作業しきったんじゃないかと思いますね。
――ちなみに『サーヴィランス』のアニメーションの時間はどれくらいあるのでしょうか?
山口:ゲーム内には6本映像があるわけなので、それぞれ違うアニメーションであるという考えだと、約5時間半くらいでしょうか。
――映画の2本分ぐらいですね。
山口:1クール13本で構成されているテレビのドラマなどと比較すると、ちょうど1クール分、13話分ですね。

●ストーリー、世界観設定はシステムが決定してから詰めていった
――物語をSFの世界観にしたというのは、「サーヴィランスシステム」の採用と大きく関わるのでしょうか?
寺川:大きいですね、やっぱり。常にアイデアが"監視"ってトコロから出てしまうんですよね、このシステムを採り入れようとした場合。で、現代の世界観であのシステムを採り入れようと探ったんですけど、万引きを監視するデパートの監視カメラであったり、刑務所で見張っているカメラがあったりとか、どうもイメージがPS2のタイトルっぽくないんですよ。でも近未来という設定だったらイケル、ということでチョイスしました。だからまず、ゲームのシステムありきで、後からストーリーと世界観を載せました。ちなみに試作2本目の時の設定はというと、アミューズメント施設で遊んでいる若い男女の話だったりします(笑)。
――ストーリーはクローンについて考えさせられるモノであるわけですけど、ストーリー、世界観をつめる過程で、そのようなテーマが出てきたのですか?
前島:明るいSFをやろうとは思っていませんでした。かといって、「ブレードランナー」みたいなモノもどうかと(笑)。人類の未来は明るいんだけれども、その裏にあるモノは絶対にあるよねっていうトコロからああいうストーリーになったんです。宇宙に進出して新しいトコロが開発されて、病気も今の技術では治療できないモノも治るようになってはいるけれど、その技術が違う使い方をされちゃうこともあるんじゃないのか? そんな考えがあったので、ああいう話になったワケです。ゲームの表立ったトコロには出ては来ませんが、ライターの方と監督と私との間で、かなりドロドロなカンジのお話を作ったんですよね。

まだまだ続きます!
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サーヴィランス 監視者』データ
画面写真
『サーヴィランス 監視者』
■メーカー:SCE
■対応機種:PS2
■発売日:2002年4月25日
■価格:5,800
(C)2002 Sony Computer Entertainment Inc.


寺川英和氏
寺川英和氏
プロダクションI.G
企画プロデューサー
藤咲淳一氏
藤咲淳一氏
プロダクションI.G
Gスタジオ/ソフトウェア開発部
チーフディレクター
前島昌格氏
前島昌格氏
プロダクションI.G
Gスタジオ/ソフトウェア開発部/ディレクター
山口晋平氏
山口晋平氏
SCE
制作1部 ディレクター